皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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よんさん |
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平均点: 6.58点 | 書評数: 90件 |
No.2 | 10点 | 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件- 白井智之 | 2025/06/20 13:46 |
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本作は1978年にガイアナで起きた実在の集団自殺事件を下敷きにしている。
信徒は「奇跡を信じる」ため、現実と矛盾する証言を無自覚に行う。これが密室や毒殺の謎を強化し、物理トリックと心理トリックの融合を実現している。全体の約1/3を占める解決編では、四つの不可能犯罪に対し、助手・りり子の初期推理、大塒の「信徒視点」推理、大塒の「外部者視点」推理という三重の解答が提示される。各段階で前説が論理的に否定され、新たな伏線が回収される構成は緻密である。 本作は、従来の物理的密室を超えた「心理的密室」を創出し、ミステリの新たな可能性を示した。「歴史事件の解釈」、「多重解答の革新」、「カルト集団の心理描写」を三位一体に融合させた傑作。 |
No.1 | 7点 | 名探偵のはらわた- 白井智之 | 2023/08/21 14:48 |
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過去の大犯罪が現在に蘇った。男性性器切断事件や三十人殺しなど、昭和の大事件めいた事件が、現代において現代の人間によって繰り返されるのだ。その奇怪な事件に挑む名探偵を、助手的な立場の原田亘という青年の視点から描いているのだが、作者らしく紹介分以上にひねくれた物語である。
犯罪が現代に蘇る理由も、現代に蘇ったそれぞれの犯罪の関連も、名探偵と原田の関係も、想定外のアングルで想像を超越する。そこに丹念なアリバイ吟味や、人の手によるトリックが組み合わさり、意外で合理的な結末を経て、ほのかな成長の香りとともに着地するところが素晴らしい。 |