皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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Kingscorssさん |
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平均点: 6.42点 | 書評数: 96件 |
No.4 | 6点 | 密室蒐集家- 大山誠一郎 | 2020/11/10 22:45 |
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単行本から改定された文庫版で読了。
(´ε`;)ウーン 悪くはないんですが、色々と指摘したいところは山盛りにあります。 まず、密室収集家のキャラクター。喪黒福造みたいな不思議系キャラ設定には好感が持てるんですが、設定以外はキャラクターが全く描かれておらず、ただの血の通ってない謎解きロボットと化しています。この辺は著者の他の作品も全て同じで、キャラクターを魅せようという志がそもそもないのかもしれません… そして肝心のトリックの方なんですが、本格として、ただのパズルとしてみればそれなりに仕上がっていると思うんですが、やはり、すべてのトリックが偶然頼みなのが個人的にいただけなかったです。ちょっと現実味のない、あまりにも超偶然の産物ばかりなのが… もとから密室トリックは現実面で難しく、読者を驚かせるためには偶然を取り入れるしかないかもしれません。でも、ちょっとやりすぎな気がしました。特に最後の雪のやつ… ありえなさすぎ。 今まで大山誠一郎さんの著者を四冊拝読しましたが、個人的には『アルファベット・パズラーズ』がダントツで、『赤い博物館』がそれなり、『密室蒐集家』はイマイチ、『アリバイ崩し承ります』が残念…という感じです。『ワトソン力』も機会があったら読んでみたいです。 |
No.3 | 8点 | アルファベット・パズラーズ- 大山誠一郎 | 2020/10/25 22:02 |
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文庫版(短編『Cの遺言』追加、全体的な改稿あり)で読了。先に同著者の『アリバイ崩し承ります』と『赤い博物館』を読了済み。
いや、デビュー作らしいですが、他の既に読んだ新し目のやつ二冊より面白かったです。もちろん本格ミステリーゆえの細かい整合性のなさとかトリックや動機等に強引なこじつけとかはあるんですが、まぁ許せる範囲だと思いますし、何より全体的にうまくまとまっているのが良かったです。この著者の特徴?でもあるキャラクター性は相変わらず弱目なんですが、『アリバイ』、『赤い博物館』よりは気になりませんでした。 今回は3つの短編、一つの中編で構成されているんですが、どれもおもしろく、特に最後の中編『Yの誘拐』が素晴らしかったです。おおまかなあらすじの構成は多分すでにある有名な古典とかが骨子なんでしょうが、それをふまえても出来がよく、グイグイ最後まで読めました。最後のオチも素晴らしい。 また、文章自体も全体的に改稿したためか、とても読みやすく素晴らしい筆致で大変おすすめの一冊です。特に『Yの誘拐』での絶筆手記の文章がとてもよく被害者の心情が出ていてよかったです。 まだ未読ですが密室蒐集家も楽しみです。 |
No.2 | 7点 | 赤い博物館- 大山誠一郎 | 2020/10/20 14:33 |
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文庫版で読了。先に最新作の『アリバイ崩し承ります』を読んでおり、そちらは正直イマイチだったんですが、これは面白かったです。
トリックや動機、プロットに強引なこじつけ感があるのが多いですが、『アリバイ』よりはこちらのほうがうまく馴染んでいるせいかそれほど気にはなりませんでした(『アリバイ』は結構こじつけ感や無理やり感がひどかった) 全体的に楽しんで読ませていただいたんですが、トリック等以外で少し残念だったのは、ヒロインの緋色冴子のキャラがかなり薄っぺらいことでしょうか… 『アリバイ』の時乃もかなりペラペラでしたが、こちらも負けじと『ただ頭のいい美人』にしただけといった感じです。大山さんの特徴でしょうか… 個人的に好きだったエピソードは『復讐日記』と『炎』。作者が文庫化の際に手間をかけて改稿を重ねた『パンの身代金』は一番イマイチでした… 本格モノなので、強引なこじつけや、現実的ではないが物理的に可能なら心理的に不可能でもトリックに組み入れちゃうのはしょうがないと思いますので、その辺に目をつぶれば楽しい読後感になるのではないでしょうか。 |
No.1 | 6点 | アリバイ崩し承ります- 大山誠一郎 | 2020/10/15 23:25 |
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はっきり言ってミステリー部分に関して言えば短編7つ中、第5話のおじいさんのアリバイと最後のダウンロードの話以外はかなりご都合主義&現実的に無理過ぎ感満載なので怒り狂う人が多いのもうなずける。二番煎じのトリックまで。
それだけならまだいいのだが、この作品が本格ミステリー・ベスト10で1位を取ったり、ドラマ化されたりしてるので余計腹が立って低評価してしまう人が多いのではないかと邪推してしまう。 ミステリー部分以外にも目を向けると、とにかくキャラクターが弱い。ヒロインの時乃や主役の刑事のキャラがとにかく薄い。特にヒロインの時乃は問題を入力してリターンキーを押したらすぐ答えの出てくるコンピューターのAIみたいな感じで全く共感や愛着がわかない。メディアやコミカライズ、ドラマ化などを狙ったためか、寒い決め台詞『時を戻すことが出来ました。犯人(または〇〇さん)のアリバイは、崩れました』と、機械的に毎回言うだけのマシンだ。いつ行ってもそこにいて、どんな事件も嫌な顔せず、たった5千円(警視庁の人権費、捜査費を考えると、はっきり行って桁が2つは足りないと思う)で天下の警視庁のエリートたちが解決出来ない難事件を0.1秒で解いてしまう、とても”都合のいい女”なのだ。 多くの人が感じるように、この本は”本格ミステリー入門クイズ集”という位置づけがぴったりである。悪いところばかり目が行くが、良いところも羅列するならラノベっぽいが、時計屋の若い女主人が毎回”アリバイ崩し”を請け負うというキャラ設定等は好感が持てる。ドラマ化や漫画化に向いている。ただ掘り下げ方が甘いせいで活かしきれてないだけなのだ。 そして、小説としてとても読みやすい。かと言ってラノベ等と違い筆致はしっかりしている。この辺を考慮して+1点加点で6点つけました。確かに本格ミステリー・ベスト10で1位になるような作品ではないと思いますが、そもそもああいうランキングは実力とか関係なく、ランキングをつける会社が”売りたい順位”なので(本屋大賞とか芥川賞とか露骨…)、あまりあてにはしないほうが良いかと思います。 |