皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
SUさん |
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平均点: 5.93点 | 書評数: 82件 |
No.22 | 6点 | 悪魔の参謀- マレー・スミス | 2023/03/24 23:14 |
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ニューヨークのグランド・セントラル駅で若い娘の死体が発見され、市警殺人課エディ・ルーコウはその事件を担当することになった。一方、ダブリン刑事裁判所に勤めているユージーン・ピアソンは有能な判事として知られる人物だったが、IRA政策顧問という裏の顔も持っていた。また一方、イギリスSIS南米局長デーヴィッド・ジャーディンは、新しい工作員を探し出し、訓練したうえでコロンビアの麻薬カルテルの中に送り込むという任務を受け持たされる。
これらの世界中に散らばる三人の男たちは、やがて一つの事件に巻き込まれていくことになる。こういった作品にはありがちな構成ではあるが、作者はBBCのテレビ・ドラマシリーズのライターと知られる人物らしく、登場人物や舞台の描写はさすがに手慣れたものである。また周到な取材をしただけのことはあり、作品内に散りばめられた情報量も極めて多い。 |
No.21 | 5点 | ララバイ・タウン- ロバート・クレイス | 2023/02/25 19:42 |
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以前、エルヴィス・コールが離婚するのに手を貸してやったハリウッドで働くパトリシア・カイルから、依頼人の紹介の電話がかかってきた。依頼人はピーター・アラン・ネルソン。彼は学生時代、映画監督として売り出す前にカレンという女性と結婚し、トビーという息子を持っていた。別れた後、ネルソンは監督として大成したが、その女性はそれきり彼の前に姿を現さなかった。別れたきり会っていないその女性と子供をコールに捜し出してほしいという依頼だった。
コールは、マフィアから逃れられない女性とその元夫であり有名監督でもある男の双方を手助けをする立場に追い込まれ、彼らの生活を守ろうとして努力する。 依頼人の女性とコールが、ほとんど知り合ってもいないのに、マフィアから逃げ出す手助けをコールが申し出るのは描写不足だろう。全体的に、描写が散漫であるのが見受けられるが、マフィアの陰謀を暴く過程はじっくり書けている。 |
No.20 | 5点 | ナルシスの誘惑- ダイアナ・ハモンド | 2023/02/25 19:31 |
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才能と美貌に恵まれ多くの人を魅了しながら、不可解な死を遂げたセオ。一人のフィアンセとして、セオに興味を持っていたジェインだが、二人の間で彼女が話題になることはなかった。それに、幸せな結婚生活を送るうちジェインの好奇心は次第に薄らいでいきもした。結婚して三カ月目のある日までは。
複数の視点から描かれる複雑に入り組んだプロットと、それを包み込むような甘く妖しい雰囲気を楽しむことが出来るが、セオの死の謎よりもむしろ「演技者」が物語の中心になっているので、多少はぐらかされたような気分になるかもしれない。いくつもの欠点を抱えながらも魅力的な作品ではある。 |
No.19 | 5点 | 巡礼たちが消えていく- ジョン・フラー | 2023/01/31 22:40 |
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舞台となるのは、中世と思しき時代のある孤島。この島には、奇跡を起こすと信じられている聖リューダットの井戸と、それを守るべく建てられた修道院がある。多くの巡礼者たちがこの島で消息を絶ったまま戻ってこなかったのを知った司教の命を受け、ヴェーンはその調査を行うために島へやってきた。
本書は自己探求の物語というわけではないが、ジャンルを越えたポストモダン的な作品である。そう聞くと、ミステリと同じものを期待して不満をを覚える人がいるかもしれない。しかし、中世の孤島で繰り広げられる、生と死をめぐる怪奇小説といったように受け取ってしまえば魅力的でもある。何よりも、死の香りを放ちながら横たわる孤島の黒い影と、そこから旅立っていく恋人たちの対照的な姿は深く印象に残るだろう。 |
No.18 | 5点 | パーフェクト・マッチ- ジル・マゴーン | 2023/01/31 22:28 |
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未亡人ジュリア・ミッチェルが湖畔で死体となって発見される。最後に彼女と会っていたと思われる青年クリス・ウェイドは、自分に殺人の容疑がかかることを恐れ、訪問したばかりの不倫相手であるヘレン・ミッチェルの家から失踪。
失踪中のクリスは、過去のトラウマと二日酔いのために記憶がはっきりせず、事件の当日の細部を思い出せない。並行して描かれるロイドとヒルの捜査からは、クリスの容疑は動かないように見える。 捜査の過程で自然と謎が立ち現れる。そして捜査とディスカッションを通して次第に矛盾が露になっていく。論理に基づくサスペンスにワクワクが止まらない。ただ、鬼面人を驚かす類のトリックに慣れてしまった方には、物足りなく思われるかもしれない。 |
No.17 | 5点 | 陰謀と死- マイクル・ディブディン | 2023/01/11 23:19 |
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イタリア内務省刑事警察の副警察本部長アウレーリオ・ゼンは、念願の地位のほかに美しい恋人も手に入れ、満たされた日々を送っていた。しかし、飛び降り自殺の調査を依頼された彼は、これが容易ならぬ事件であることに気づいて不安を抱いた。
イタリアの警察内のパラドキシカルな状況を描いたゼン・シリーズの三作目である。複雑な官僚機構の矛盾した状況に置かれ暗殺組織に殺される恐怖に怯えながらも、うまく立ち回って生き抜いていこうと切実に考えるゼンの滑稽味を帯びた姿を描き出している。 |
No.16 | 4点 | 夜の子供たち- ダン・シモンズ | 2023/01/11 23:01 |
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ストーリーは、ドラキュラの世継ぎとなるべき嬰児を偶然にも養子にした米国の女医が、吸血鬼一族によって奪還された我が子を追ってルーマニア各地を転々、圧倒的な闇の力に捨て身の戦いを挑むというもの。
吸血行為に、ユニークな現代医学的解釈を施したメディカル・ホラー風の前半はともかく、「スパイ大作戦」風のサスペンスとなる後半の展開は、作者の持ち味である独創的な「悪」の描写もやや精彩を欠き、いまひとつ食い足りない印象を残した。 |
No.15 | 7点 | あの本は読まれているか- ラーラ・プレスコット | 2022/12/18 22:40 |
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冷戦下のソ連において発禁処分となった詩人・ボリス・パステルナークのノーベル賞受賞作「ドクトル・ジバゴ」を東側の圧政の証としてCIAがソ連国内で流通させようとしたという実話からとられたエスピオナージ作品。
一冊の小説が体制を揺るがす武器になると信じる人々へのロマンもさることながら、CIAの中では下に見られがちなタイピストたちやパステルナークの愛人など女性たちを主人公に、冷戦という女性やマイノリティといった被差別者が抑圧されやすい状況下において、彼女たちがいかに戦い、生き方が克明に描かれている。 |
No.14 | 6点 | 死んでもいい- 櫛木理宇 | 2022/11/23 20:21 |
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よくぞここまでと言いたくなるくらいに嫌なシチュエーションのもとで話を展開させ、思いがけない地点にフィニッシュを決めて見せる。特に「彼女は死んだ」で使われる「いい人」「やさしい人」といった言葉のニュアンスが印象的。
なお、収録作はそれぞれ独立した内容ながら、竹本健治の「ウロボロス」シリーズや澤村伊智の「恐怖小説キリカ」を想起させる巻末の「タイトル未定」だけは最後に読んでいただきたい。 |
No.13 | 5点 | 突破口 弁護士アイゼンベルク- アンドレアス・フェーア | 2022/11/23 20:12 |
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交際相手を自作の爆弾で殺害したという容疑で逮捕されたテレビドラマ・プロデューサーの弁護と真犯人の捜査を描く作品。五年前に起きた事件と現在を描くことで明らかになるつくりはサスペンスフル。
ラヘルが探偵バウムという男を雇うことで、法廷ではなく捜査が主体になり物語が進んでいくため、法廷ミステリを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。 |
No.12 | 6点 | 暗黒館の殺人- 綾辻行人 | 2022/11/23 20:02 |
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怪しげな住人、いわくありげな儀式、嵐で閉じ込められ孤立、連続殺人、密室、出生の秘密など「お約束」を斜に構えたりせず、大上段に振りかぶって斬り下ろす。真正面から堂々と、重厚長大、しかも大ネタ炸裂。
前作を読んでいることが前提となるトリックはいかがなものかとか、幻想的色彩が強く本格ミステリとしてはどうなのかという批判もあったそうだが。 |
No.11 | 8点 | ユダの窓- カーター・ディクスン | 2020/10/04 09:22 |
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密室トリックは、ある予備知識を持っているかどうかで、解明に意外性が伴うか否かが分かれるトリック。個人的には感心しない。しかし、ストーリー・テリングは巧み。 |
No.10 | 7点 | シンプル・プラン- スコット・B・スミス | 2020/09/13 08:48 |
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大金を見つけた3人がネコばばしようとして、ドツボにはまるというサスペンス・スリラー。人間心理の怖さを、じっくりと堪能させてくれる。特に主人公の妻であるサラの変貌が薄気味悪く興味深い。 |
No.9 | 4点 | モルグ街の殺人- エドガー・アラン・ポー | 2020/09/05 19:13 |
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説明のつかないような事柄に説明がついたように思いこませようとする。探偵の直観による、単なるまぐれ当たりに過ぎないものを推理だという。その典型的な例。歴史的意義を認めプラス1点。
何か面白いミステリ小説を教えてといわれ、これをすすめる人はいないだろう。 |
No.8 | 8点 | 貴婦人として死す- カーター・ディクスン | 2020/08/16 18:08 |
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個性的なキャラクターが事件発生から解決まで、やたらと騒ぎを起こしてくれるので飽きることがない。ラブロマンス要素を含めたドタバタコメディでありながら、トリック・ロジックともに良く出来ている。 |
No.7 | 3点 | 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 | 2020/08/02 18:51 |
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気持ち悪い。エログロ描写に耐性のない人には、とてもオススメ出来ない。叙述トリックとして優れていることは認めます。しかし、もっとやり方あっただろう。 |
No.6 | 6点 | キッド・ピストルズの醜態- 山口雅也 | 2020/07/13 18:11 |
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濃密な仕掛けとねじくれた趣向に満ちあふれている。 |
No.5 | 5点 | 北半球の南十字星- 沢村浩輔 | 2020/07/06 17:16 |
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誘拐された提督を救うため、若き海軍大尉が潜入したのは謎の青年リスター率いる海賊集団。海賊の長を狙う連続殺人の真意は?海洋冒険小説と本格推理小説が融合していている。 |
No.4 | 5点 | 帝都探偵大戦- 芦辺拓 | 2020/06/08 17:28 |
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帝都東京。犯罪者たちと名探偵たちが繰り広げる死闘を、江戸、第二次世界大戦前、そして戦後と三つの時代を通して描いている。本格愛を極限まで注いだパスティーシュ。リーダビリティーに難あり。 |
No.3 | 5点 | 人魚と十六夜の魔法- 白鷺あおい | 2020/06/02 18:37 |
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高等部に進級した綾乃のクラスにロシアから転校生が。その頃から学院内で奇妙なことが起こり始める。妖怪と人間が学ぶ魔女学校を舞台にした、愉快な学園ファンタジー。 |