皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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ぷちレコードさん |
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| 平均点: 6.25点 | 書評数: 305件 |
| No.5 | 8点 | 孤島パズル- 有栖川有栖 | 2025/12/25 20:50 |
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| 推理小説研究会に所属する有栖川有栖は、部長の江神二郎とともに、新入部員・有馬麻里亜の伯父の別荘へ遊びに行くことになる。麻里亜の祖父・鉄之助は、島のどこかに五億円相当のダイヤを隠し、その在処の謎を解く鍵として二十五体の木製のモアイ像を残したというのだ。しかも三年前には謎に取り組んだ麻里亜の従兄が海で溺死するという事件も発生していた。
いわくありげな人物が登場し、台風が接近、徐々にサスペンスが高まったところで事件が発生し、それと共に外との連絡も絶たれる。かくて不安な状況の中で宝探しと殺人劇が同時進行していく。ユーモラスな会話に、青春小説のような印象的な描写を交えながら、クイーンばりの論理主体の謎解きが展開されるという本格ミステリファンにとって至れり尽くせりといった感がある作品。 |
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| No.4 | 6点 | 月光ゲーム- 有栖川有栖 | 2025/12/25 20:40 |
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| 英都大学の推理小説研究会は、夏休みを利用して矢吹山へキャンプに出掛け、そこで他の大学の学生たちと合流する。そして三日目の朝、女子大生の一人が置き手紙を残して立ち去った後、突如山が噴火し、下山コースを絶たれてしまう。さらに翌朝にはメンバーの一人が刺殺体となって発見され、現場には「Y」と書かれたダイイングメッセージ残されていた。
噴火と殺人という二重のサスペンスに加え、初対面同士であるはずのグループ内で殺人が起きるという設定は充分生かされている。ラストの胸キュンシーンは余韻が残る。 |
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| No.3 | 10点 | 双頭の悪魔- 有栖川有栖 | 2024/05/07 22:25 |
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| 江神部長以下四人の推理小説研究会メンバーは、麻里亜の父から娘を連れ戻して欲しいと依頼され、木更村とは橋一本で繋がった隣村の夏森村までやってきた。しかし芸術の里の住人達はことさら外部の人間を警戒していて、麻里亜との接触も拒絶されてしまう。
物語は江神部長だけ潜入に成功した木更村と、陸の孤島となってしまった夏森村とで二元中継的に進む。木更村の方は有馬麻里亜が、夏森村の方は作者と同名の研究会員・有栖川有栖が、それぞれ語り手を務める。荒天のさなか、両方の村で時を置かず殺人事件が発生し、片やシリーズ探偵の江神が、片や残された研究メンバーが、物証と証言をもとに推理を積み重ね、論理的に犯人を限定していく。その詰め筋は、着実かつスリリングである。 |
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| No.2 | 7点 | スイス時計の謎- 有栖川有栖 | 2020/10/22 19:25 |
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| 表題作は小説の形式は極めてオーソドックスな型の探偵小説。
しかし、その論理展開には新鮮なものがあり、かつ理詰めで物事を突き詰めていくことの美しさや楽しさを十二分に伝えてくれるものだった。 設定、構成などの外見的な部分でケレンに頼らず、純粋に論理のみで勝負しており、本格ミステリとして高度な達成をなしえている。 |
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| No.1 | 7点 | 鍵の掛かった男- 有栖川有栖 | 2020/04/20 20:09 |
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| 大阪中之島にある銀星ホテルに長い間逗留していた、身寄りのない年配男性、梨田の死は自殺なのか他殺なのか...。
一本一本の紐を解きほぐすような聞き込みと行動、そして考察は梨田の鍵の掛かった人生に丁寧に歩み寄り、難航する調査の中にあって確実な光を見出す。 ハウダニットの楽しさというよりは、全編を通してひとりの男の人生を味わう大人の小説として読み応えがある。都会の喧騒を忘れさせてくれる佇まいと居心地の良いホテルの贅沢な時間を存分に堪能できる。 |
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