皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ぷちレコードさん |
|
---|---|
平均点: 6.32点 | 書評数: 242件 |
No.5 | 8点 | 大鞠家殺人事件- 芦辺拓 | 2024/01/21 22:22 |
---|---|---|---|
昭和十八年、美禰子は大鞠家の長男・多一郎に嫁ぐ。だが、軍医の夫は間もなく出征に。彼女は大阪で商家・大鞠家の人々と共に暮らすことになる。そして昭和二十年。一族の本宅で奇妙な殺人事件が起き、やがて奇妙な探偵が訪れる。
謎とその解決が織り成すドラマもさることながら、その枠からはみ出したところにある要素が心に残る。悲哀とユーモアの入り交じった船場の描写、時代の移り変わりを経て失われていくものへの郷愁。ただノスタルジーに浸るだけでなく、旧弊なしきたりが人々にもたらす過酷な運命をも描き出している。 時の流れと人々の運命を、謎解きのフォーマットに載せて語って見せる。波瀾に満ちた物語を堪能できる作品。 |
No.4 | 6点 | 裁判員法廷- 芦辺拓 | 2023/01/28 22:16 |
---|---|---|---|
裁判員制度が導入されたある日。読者である「あなた」はある事件の裁判員に任命され、法廷に座っている。あなたはあなたの責任において、あなたの目の前にいる被告が有罪か無罪か、また刑の量定までをも判断しなければならない。
読者まで参加させる実験小説の趣があるとはいえ、中編三作の連作による法廷推理という構成は、やや地味かもしれない。しかし、連作という形式や、シミュレーション小説という形式そのものを逆手にとって、最後に驚きの仕掛けが用意されている。 ノスタルジックな雰囲気で、主人公をはじめとする登場人物たちが、みな正義を信じ法を順守し、奇怪な謎の裏に隠された真実を追い求めようとする姿勢を崩さない。異常者ばかり登場させるのに、いささか辟易していたミステリファンにおすすめ。 |
No.3 | 6点 | 時の密室- 芦辺拓 | 2021/09/11 23:15 |
---|---|---|---|
エッシャーの騙し絵をキーポイントにした連作的な長編で、個々の事件の独立性が高くて、それが揃うとまた違った様相を見せるのが面白い。
小ぶりなネタ、素っ頓狂な仕掛け、テキストレベルの工夫などバラエティに富んでいる。 |
No.2 | 6点 | グラン・ギニョール城- 芦辺拓 | 2020/11/06 19:27 |
---|---|---|---|
作者の凝り性ぶりが見事に結実した作品。事件そのものの行方は言うに及ばず「城」の世界と探偵森江春策の世界をどのように近づけていくのかという展開方法にも激しく興味を掻き立てられた。 |
No.1 | 6点 | 紅楼夢の殺人- 芦辺拓 | 2020/07/16 19:16 |
---|---|---|---|
個々の事件、やや古風な犯罪トリックが、隠れた動機が明らかにされる時、全く新しい必然性を帯びてくる趣向、その動機の普遍性、夢幻的な余韻に満ちた結末まで間然することがない。中国古典と現代の本格ミステリを融合させることで、全く新しい本格をつくり出している。 |