海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

八二一さん
平均点: 5.73点 書評数: 373件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.273 6点 千尋の闇- ロバート・ゴダード 2022/11/07 20:46
回顧録をたどって過去の事件や謎を追求するというのは、珍しくもない設定であるし、特にミステリ的要素が強いわけではないのだが、登場人物の造形の確かさや語り口がうまいので、一気に上下二冊読めてしまう。

No.272 4点 ストーン・ダンサー- マレー・スミス 2022/11/07 20:44
各国の諜報機関に加えて、マフィアまで巻き込むスケールの雄大な話ではあるのだが、冗長な描写がサスペンスに歯止めをかけてしまっているのが残念。

No.271 7点 偽りの契り- スティーヴン・グリーンリーフ 2022/11/07 20:41
人工授精という現代的な問題をテーマに、その裏にうごめく、金銭欲や体面に目にくらんだ人々の生きざまを巧みに描き分けられている。

No.270 5点 賛美せよ、と成功は言った- 石持浅海 2022/10/25 20:10
優佳たちが集まった祝賀会で撲殺事件が起きた。事件は皆の目の前で発生し、撲殺犯も明確に特定されている。
つまりは、ミステリとしてフーダニット興味もハウダニット興味もない状況なのだが、そこから緊迫した推理劇を紡ぎだす手腕は大したもの。

No.269 4点 オーパーツ 死を招く至宝- 蒼井碧 2022/10/25 20:07
トンチが効いた作品集で、当時は制御不能だったはずの古代の工芸品がモチーフ。第一話での密室の十三髑髏の処理は最高。しかしそれ以外は...

No.268 5点 金木犀と彼女の時間- 彩坂美月 2022/10/25 20:03
同じ時間を繰り返して生きてしまう女子高生の物語。特定の一時間が五回繰り返されるという彼女の特殊状況を巧みに操り、男子生徒の死を防ごうとするヒロインの奮闘を、その世代の生々しい毒の部分も含めて、瑞々しくかつ意外性に富んだサスペンスに仕上げている。

No.267 8点 葬式組曲- 天祢涼 2022/10/09 20:48
葬式が廃れた未来の日本を舞台に、鋭い論理のアクロバットが炸裂。
最終話の推理合戦は圧巻。

No.266 6点 ビースト- ピーター・ベンチリー 2022/10/09 20:47
凶暴な深海の巨大生物と人間の接近遭遇を、怪物側の視点も交えて描くことで、侵略SFホラー風の味わいを出している。
UMAしょうせつとしても、よく書き込まれている部類だろう。

No.265 5点 バーニング・ワイヤー- ジェフリー・ディーヴァー 2022/10/09 20:44
電力網を巡るディテールが今の日本の電力事情を連想させる。
目的のためなら手段を選ばないというのが作者らしいが、手段の規模が動機に合っていない。

No.264 4点 チャイナ・レイク再び- アンソニー・ハイド 2022/09/24 20:14
語り口が悠揚として重く、サスペンス・ストーリーに重要なリズム感に欠けるのが大きな難点。
もつれ合った人間関係が少しずつ解明されて、結末に到達するのだが、人間相互の葛藤や解き明かされる謎の意外性など描き尽くされているとは言い難い。

No.263 7点 粘膜蜥蜴- 飴村行 2022/09/24 20:09
露悪趣味に辟易しつつも、軍国ワールドと密林の冒険譚に仕掛けられた伏線が昇華する愛の衝撃に呆然。
広義のミステリの境界線上の一歩外側を歩みながら、愛をテーマとし、その対象が明かされる瞬間がミステリとして素晴らしい。

No.262 4点 暗号名シルク・ストーム- レイモンド・タイラー 2022/09/24 20:06
東京を舞台にしたCIA、公安、暴力団の三つ巴の争いを中心に、日本の暗部を描いた小説。
作者は、アメリカ情報部員の一人として活躍した人物らしいが、こうした小説に共通しているように、人物の描き方が不十分であり、本書でも努力の跡が見えるのだが、かえって不器用さを目立たせる結果に終わっている。

No.261 6点 密偵ファルコ/白銀の誓い- リンゼイ・デイヴィス 2022/09/06 20:42
ブリタニア(現在のイギリス)の銀鉱山に鉱山奴隷として潜り込んで、銀のインゴット横領事件を暴こうとする。犯人捜しや謎解き、クライマックスの活劇シーン、身分違いのロマンスなどさまざまな要素が盛り込まれている。
古代ローマ時代を舞台にする歴史ものという枠の中で、それらの要素が絶妙に絡まりユニークな効果を上げている。

No.260 8点 第四の扉- ポール・アルテ 2022/09/06 20:38
会話主体で物語が進行するので、人物造形に深みはないが、軽いタッチで非常に読みやすい。分量も軽量級だが、短い中に不可能趣味と怪奇趣味がぎっしり詰まっていて、贅沢な印象を受ける。
終盤における転調は、少々やりすぎの感もあるが、どうせなら「最後の一撃」も盛り込んでやろうという作者のサービス精神のなせる業であり、そういった部分での現代的センスが、日本の新本格とも共通している。

No.259 5点 霧と雪- マイケル・イネス 2022/09/06 20:34
のんびりした序盤、何が焦点なのかわからない中盤を経て、怒涛の多重解決が待ち受ける終盤に圧倒された。真相の意外性のひねくれ方に唖然。

No.258 8点 都市と都市- チャイナ・ミエヴィル 2022/08/22 20:27
殺人事件は、社会体制の異なる二つの都市国家にまたがる形で発生する。市民らは互いに相手が存在しないものとしてふるまうことが義務付けられていて、それを「ブリーチ」という謎の組織が監視している。この二重都市という特殊な舞台設定に、SFとミステリの双方向から挑んでいる。

No.257 8点 犯罪- フェルディナント・フォン・シーラッハ 2022/08/22 20:24
現役の刑事弁護士である作者が、実際に関わったり、見聞きした事件にヒントを得て書いたと伝えられるが、収録作の十一編は「事実は小説より奇なり」という域を超えて読み手の胸に迫ってくる。
語り口はシンプルで力強いが、人間描写は濃やか。ユーモア、残酷さ、奇妙な味といった使い方も絶妙。

No.256 4点 冬の棘- ウィリアム・D・ピーズ 2022/08/22 20:21
クリスティーンをはじめとした個性的な警察官の活躍する警察ミステリ・法廷小説としては、確かに力作ではある。
だが、事件解明の重要な鍵ともいえる少年の怯えの原因の説明不足、犯人の行動の不自然さなどは、作者が先を急いだせいもあるのだが、犯人捜しの推理小説である以上、納得がいかない。

No.255 6点 太閤暗殺- 岡田秀文 2022/08/07 20:17
老獪な秀吉が垣間見せる状の深さにホロリとし、狂気に走る秀次の壊れっぷりにハラハラし、クールな五右衛門にクラクラしながら、息つく間もなく一気呵成に真相まで突っ走り、明かされた真実に息をのみ凍り付く。
密室トリック、どんでん返しに意外な犯人と本格のうま味がたっぷり。不可能なミッションに挑む冒険小説のスパイスが効いた時代活劇ミステリ。

No.254 6点 アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿- 澤村伊智 2022/08/07 20:13
Webマガジンのライターが、奇怪な出来事を追って取材するうちに、思いもしない結末にたどり着く。都市伝説めいた実話系怪談の衣の下にミステリをしのばせた作品。
軽妙なタッチで気軽に読ませながら、やがて不穏な真相へと着地する。その瞬間のぞわぞわする感覚は、ホラーで実力を発揮している作者ならではのもの。ミステリとしてのカタルシスとホラーとしての衝撃が同時にやってくる。

キーワードから探す