皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
びーじぇーさん |
|
---|---|
平均点: 6.22点 | 書評数: 85件 |
No.3 | 7点 | 兇人邸の殺人- 今村昌弘 | 2023/05/18 23:46 |
---|---|---|---|
葉村譲と剣崎比留子は、班目機関の研究資料を探す企業グループとともにある人物が秘匿しているものを回収に、廃墟テーマパークにある、かつては監獄のアトラクションだったという通称・兇人邸へ向かう。そこで数カ月に一度従業員が経営者・不木玄助に招かれるが、中に入った者は二度と戻らなかった。屋敷で一同は不木に詰め寄るが、彼が案内した先には恐るべき者が待ち受けていた。
洋平たちの首をはねて回る●●。舞台となる迷路状の兇人邸の禍々しさも迫力十分だし、さらにそこで●●とは別の口の連続殺人が起きるとなればなおさらで、ホラー度は三作中トップなのではないか。 合間に挿入される「追憶」の章は班目機関の犠牲になったと思しき少年少女のエピソードを綴ったもので、哀切な演出が効果的。肝心の剣崎比留子は奥の部屋に囚われの身となり、今回は安楽椅子探偵役にとどまっているのが残念だが、葉村譲とのホームズ&ワトソン劇にも進展が見られたし、二人の関係は今後も楽しみ。 |
No.2 | 7点 | 魔眼の匣の殺人- 今村昌弘 | 2023/05/18 23:29 |
---|---|---|---|
好見村という僻村を抜け、崖の向こう側の真贋地区に建てられているのが「魔眼の匣」だ。ここには班目機関が撤収後も住み続けるサキミという老婆がいた。ところが村と行き来できる橋が焼き落されてしまう。剣崎比留子たちと同じバスでやってきた二人の高校生、車の故障などで迷い込んだ親子など、サキミを含めた十一名が真贋地区に閉じ込められてしまう。
サキミは村人に「十一月最後の二日間に、真贋で男女が二人ずつ四人死ぬ」という予言を告げていた。そして予言通り一人が不慮の死を遂げる。「世界」とキャラクターは前作を踏襲しているので、前作に言及されている部分がある。ネタバレは巧妙に回避されているが、順番通りに読んだ方がいいだろう。 典型的なクローズドサークルものだが、真っ先にそういう状況で実行する殺人の合理性に言及するなど、定型に甘んじない姿勢を感じる。そして本書の論理に影響を与える最大の要因が「予言」である。予言の真偽、予言に向ける信用と心理への影響が複雑に絡み合い、真相という未知数解明へのロジックが複雑化されたことに目を瞠らされた。 |
No.1 | 8点 | 屍人荘の殺人- 今村昌弘 | 2022/10/28 22:41 |
---|---|---|---|
主人公である大学一回生の葉村譲は、所属するミステリ愛好家の先輩であり、名探偵でもある三回生の明智恭介とともに、映画研究部の合宿に参加する。同じ大学のもう一人の名探偵、剣崎比留子の導きによるものだった。紫湛荘での合宿初日は、ホラームービー撮影やバーベキュー、肝試しと進行するが、その最中に事件が。
この紫湛荘が、クローズドサークルになるのだが、その密閉環境が新鮮極まりない。その紫湛荘で人が次々と殺されていく。密室状態とか奇妙なメッセージとか奇怪な姿態の状況とか、そうした彩りを伴って殺人が連続するのだ。 その果てにある謎解きも、圧倒的に素晴らしい。不可解な死体の状況は真相を知ると必然としか思えなくなるし、細かな手掛かりを積み重ねることで犯人を特定していくロジックの丁寧さも嬉しい。 名探偵はなぜ事件を解くのか、という興味までもが新鮮な味付けでトッピングされており満足。 |