皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ことはさん |
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平均点: 6.28点 | 書評数: 254件 |
No.19 | 5点 | 幸運を招く男- レジナルド・ヒル | 2023/12/31 01:44 |
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イギリスのヒルによる、モジュラー型・私立探偵小説。
ヒルは、ダルジールものでもモジュラー型といえる作品がいくつかあるので、お手の物。とはいえ、ヒル作品の読みどころは、キャラクターとその掛け合いにあるので、その点では少し物足りなかった。 ダルジールものは、長年書き継いでいるだけあって、くっきりとキャラが立っていて、掛け合いも実に楽しいのだが、本作ではいまひとつだ。作風をコメディにふっているため、ちょっと毒が足りないせいかもしれない。 ただひとり、辛辣な若い女弁護士のブッチャーは、とても好みだった。機会があったら、別の作品を読むのもいいかな。とはいっても、翻訳されていないものもあって、5作中の3作しか訳されていないんだよね。 |
No.18 | 6点 | 異人館- レジナルド・ヒル | 2022/10/05 01:41 |
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「秘密」というと大げさだが、「誰にも言わずにいること」といえば誰しも持っているだろう。本作の登場人物の多くは「秘密」をかかえていて、もちろんそれは簡単には話さない。話すとしても、駆け引きを行う。「ここまで知られたのなら、ここまで話そう……」。
ダルジールものでもそうだが、ヒルはこの駆け引きの描き方が、実にうまい。物語の後半、駆け引きの中で、それが少しずつ明かされていくところは、パーツがひとつひとつ組み上がっていくような構築感があって面白い。 それでも、ダルジールものと比べると、キャラクターがいまひとつ弱いかな。未読のダルジールものがあるならば、そちらをすすめます。 本作は、カソリックの歴史が背景にあって、イギリスの歴史の知識があれば、より楽しめそうなのだが、私にはそこまでの知識はなかったなぁ。直近の日本では、ちょうど「黒牢城」で荒木村重と黒田官兵衛のエピソードを取り込んでいるが、それと同程度にはメジャーな話なのかな? あと、女性主人公が何度も父親の金言を思い起こすが、それがまるでダルジールの言葉のようで面白い。例えば「蹴られたら蹴り返せ、むこうが蹴ってくるのをやめるまで蹴り続けろ」(208ページ)。うん、やっぱりこれはヒルの味だな。 |
No.17 | 7点 | 王子を守る者- レジナルド・ヒル | 2022/02/27 13:17 |
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ヒルはやっぱりキャラクター描写かいい。本作は、プロットとしては手堅い冒険スパイスリラーだが、陰影のあるキャラクターで印象深いものとしている。冒頭にふられる仕掛けも、いい感じで回収され、そつがない。
ルエル名義の作をいれても、ヒルのスリラーでは上位にくると思う。 |
No.16 | 7点 | 死は万病を癒す薬- レジナルド・ヒル | 2020/04/14 00:34 |
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ダルジール・シリーズで、クリスティ的なクローズド・サークルをやるとこうなるのか。
前半は、シリーズ・キャラでない人物視点がかなり長く(退屈ではないけど)いつもの楽しみとちがって、ちょっと戸惑った。 ダルジールは、まだ調子がいまひとつで、まるでパスコーが上司のよう。 ルートの件やら、ダルジールの暗躍(?)など、飽かずに楽しめたけど、長さの割にはインパクトはないかな。これは、(厚さのため)シリーズ・ファンでないと途中で飽きてしまうかも。 |
No.15 | 6点 | ダルジールの死- レジナルド・ヒル | 2020/04/14 00:28 |
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謎解きミステリではないと思います。
ルエル名義の作の冒険スパイ物のプロットに、ダルジール・シリーズのキャラをぶちこんだ感じとでもいうのでしょうか。 ハスコーがとうとう独り立ち。以降の作でも、まるでダルジールの上司みたい。 シリーズ・ファンとしては、キャラ物としては楽しめますが、冒険スパイ物が好みではないので、後期作では、下から二番目かな。 |
No.14 | 6点 | 真夜中への挨拶- レジナルド・ヒル | 2020/04/14 00:19 |
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久しぶりに「謎」の興味でひっぱる話。
(後期作は、いろいろな話が並行してすすみ、「謎」はメインでなかったりするので……。ま、それがいいのだけど) とはいえ、この話は「解決」はしりすぼみな感じ。ヒルは「謎と解決」でみせる作家ではないのだなぁと、あらためて認識。 ダルジールとノヴェロの関係性が、(当人同士の感覚はともかく)よんでいるといいコンビな感じがする。 作者としては、「ダルジール/パスコーでやっていたことを、パスコーが優秀になりすぎたためできなくなったので、かわりにノヴェロでやっている」のだと思う。 後期作では下の方。でも他ヒル作品が楽しめるならば、これも楽しめるはず。 |
No.13 | 7点 | 死の笑話集- レジナルド・ヒル | 2020/04/11 22:05 |
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「死者との対話」の続編です。「死者との対話」を読んでいない人は前作からどうそ。
「死者との対話」が楽しめた人は楽しめるはず。 前作につづいて、ボウラーもメインのひとり。複数の話が重層的にすすむ。 いやー、それにしても厚い。もうヒル、書きたいこと全部書いてるだろ。 飽きずに読ませるんだけと、パスコー/ルートのパートは、どうもあまりのれなかったなぁ。それが最後にああ絡んでくることはよかったけど、途中は冗長に思った。その分「死者との対話」よりは落ちる印象。 |
No.12 | 8点 | 死者との対話- レジナルド・ヒル | 2020/04/11 21:59 |
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(厚すぎてヒル初読には勧められませんが)ヒルの代表作だと思う。
複数の話が絡みながら重層的にすすんでいく構成は、この作品が最もよくできている。新人ハット・ボウラーも加わり、さらにチームの群像劇の風味が増してきた。 今回はここ数作の中では最も「事件」にフォーカスされ、謎解きミステリとしては充実している。 ある点は、結末がついていないので(続編「死の笑話集」につづく)、人によっては不満があるかもしれないが、個人的には気にならず、全体的に大満足。 |
No.11 | 6点 | 武器と女たち- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 18:14 |
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タイトル通り、女性陣が主人公。特にエリーは、エリーの小説まで挿入される。作者はエリーをいい女として描いているのだろうか? 鼻につくキャラに感じるのだが。
それでも語りの面白さは安定しているが、本作は長さが気になる。シリーズ後期作では、一番下かな。 |
No.10 | 7点 | ベウラの頂- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 18:06 |
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少女失踪事件とパスコーの家庭の問題が、「親子問題」という切り口で繋がり、重層的に語られていく(出版時はシリーズ最長の)大作。
冒頭に地図があり、謎解きファン心理をくすぐるが、その部分はなあんだという感じ。 パスコーの娘の話が他から浮いている感じはするが、それ以外は安定した語りの面白さ。 内容、作風とも、代表作といっていいと思う。 |
No.9 | 7点 | 幻の森- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 17:51 |
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ノヴェロ初登場作。ノヴェロも好きなキャラだなぁ。
ダルジール、パスコー、ウィールドの三人にチーム感ができて、キャラが安定しすぎたため、三人を外からみる視点をいれる必要を作者が感じたのだろう。ノヴェロ視点での三人の描写が、評価も悪口も、読んでいてじつに楽しいのだ。 本作ではノヴェロの出番は少ないが、この後、3人に並ぶ4人目のキャラとなる。 マーヴェル初登場作。これによって、ダルジールに人間的弱みが垣間見えるようになる。 「骨と沈黙」以上に「厚っ!」となったが、この後さらに厚くなっていくとは。この作以降は、厚さと中身(シリーズ・キャラの人生を描く方向性)で、一見さんお断りのような気がする。 本作は、安定の描写の面白さはあるが、他の点では特筆すべきところはないかなぁ。製薬会社の描写は精彩がないかも。 |
No.8 | 7点 | 完璧な絵画- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 17:32 |
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ウィールドの出番が最も多い作。ウィールド・ファン必読。
ダルジール、パスコー、ウィールドがほぼ当分の重み付けで、それぞれの話があり、ミステリより「群像劇」の趣がつよい。 「群像劇」の味わいはこの後もつづき、後期ダルジール・シリーズの型の始まりといっていいと思う。 本作では、「プロットを語る」よりも「(エンスクームという)世界を描く」ことに比重がおかれているようで、この世界に対する好みにより評価が分かれそうだ。 この作品が楽しめれば、この後のシリーズは全部楽しめるだろう。 |
No.7 | 8点 | 甦った女- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 17:19 |
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ダルジール、アメリカに渡り大活躍の巻。
シリーズとしては異色作だろう。 いやあ、でもやっぱりダルジールが活躍する話は面白い。 プロットも(ヒルにしては)直線的にすすみ、一気に読める。ヒル作の中では世評は低く感じているが、個人的にはベスト5に入る。 |
No.6 | 7点 | 骨と沈黙- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 17:06 |
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ゴールド・ダガー受賞で、世評的には代表作です。
ヒル作品としては、ミステリとしてしっかりしているので、そこが評価されたのかな? でも、ヒルの面白さは、個々のキャラクターの心理/台詞だなぁと思う。 この後の作品のほうがますます面白くなるのでが、個人的には上位の評価ではないです。 発売時は「厚っ!」と思ったけど、これもこの後の作品のほうがますます厚くなるので、いま見ると普通に感じるようになってしまった。 |
No.5 | 5点 | 闇の淵- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 16:41 |
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エリーに焦点があたった作。
エリーはいまひとつ好きになれないんだよなぁ。常に喧嘩腰という感じで、他キャラクターは深みがある感じがするのに、エリーだけは表層的なフェミニストという感じ。ヒステリックな感じも好きになれない。(作者は愛着がありそうだけど) 全体的には、ダルジール、パスコーはいつもの味でいいのだが、シリーズでは「薔薇は死を夢見る」以降では一番下。 (でも「薔薇は死を夢見る」以前よりは面白い) |
No.4 | 7点 | 子供の悪戯- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 16:27 |
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ウィールドの同性愛に着目された部分が面白い。
ダルジールの台詞が懐が深い。「それはべつに昇進の理由にならんぜ」etc。ヒル、この辺の台詞はうまいなぁ。 プロットとしては、遺産相続、新警察長任命などの、いくつかの話が並行してすすみ、重層的になってきた。かわりにミステリ興味は薄め。 |
No.3 | 8点 | 死にぎわの台詞- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 15:54 |
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三つの事件が同時進行していく。最後には、それぞれの話が見事にからんできて、プロット構成としてはヒル作品では一番だと思う。
ヘクター、シーモアも登場し、群像劇の味わいが増加してきた。この作品から「ダルジール・シリーズ」の味が固まってきたと思う。 最初に読むダルジール物としてお勧め。 |
No.2 | 9点 | 薔薇は死を夢見る- レジナルド・ヒル | 2020/03/14 15:37 |
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ヒルの既読では最も好きな作品。
「ひとりの男の過去に、いくつもの”疑惑の死”が……」という話。 この手の話、普通は後半にすすむにつれ、少しずつ事件の輪郭が見えてくるものだが、この話はどっちにすすむのか(作者の思惑すら)よめない。 後半に入ってもよめない。ラスト近くになってもよめない。 その綱渡りみたいな感覚に、独特のハラハラ感があって、とても好き。 傑作というよりは、個性的な味わい(珍味?)というのがあう。 ヒルの代表作(典型的な作)ではないし、ひろく好かれる作でもないと思うけど、わたしは大好き。 |
No.1 | 8点 | 午前零時のフーガ- レジナルド・ヒル | 2019/11/12 00:34 |
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あぁ、とうとう(既訳の)ダルジール・シリーズを読み終わってしまった。
今回も(タイトル通り)フーガのように重層的なプロット。同一時間を並行的に4つくらい進行させる。作者が70歳過ぎの作品なのに、全然耄碌していないなぁ。もっと生きて新作を書いて欲しかったよ。 ダルジールは、前々作の怪我から少しずつ調子を取り戻し、本作のラストで完全復活という感じ。次作があれば、またダルジールの活躍が見れたのにと思う。 最終章は、ノヴェロとの会話でしんみりして、パブで締めくくりと、いい感じだし、エピローグも「そうくるかぁ」という感じでよい。 シリーズでも上位の出来です。 でも、なんであまり読まれていないかなぁ。このサイトで(ヒル作品全体で)この投稿数なのは寂しい。英国小説らしい皮肉めいたユーモアが全編にきいていて、読んでいる間、実に楽しいのに。 例えば、7年前の事件に関わりを持たされたダルジールの台詞がこう。 「このショーは7年もロングランを続けていて、わたしはたった今、舞台の袖から迷い込んだばかりだ」 ジャンル小説にくくれないからかもしれない。「完璧な絵画」以降のシリーズは、謎解き/警察小説のテイストの群像劇になっているからなぁ。 ここはひとつヒル推しで、こつこつ書評を書いていこう。 |