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ことはさん
平均点: 6.34点 書評数: 222件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.82 7点 四つの署名- アーサー・コナン・ドイル 2020/04/23 23:20
長編代表作の人気投票をすれば、少し前ならば、まず「バスカヴィル家の犬」でした。最近は「恐怖の谷」の評価も高く、第1作として「緋色の研究」もあがるなか、本作は、世評はあまり高くないといえる。
でも個人的には結構好きなんですよね。
偶然の要素が強くて、ミステリ的構築度としては弱い。けれど、犯人の足取りを追っていく、探索行として面白い。こういうのなんかワクワクする。
私は古典の評価を考えるとき、「これを元にした作品は……」と考えるのだが、これにインスパイアされたと思えるかなり好きな作品があるので、この作品も点数は低くできないな。
インスパイアされたと思える作品は、御手洗ものの「ギリシャの犬」。

No.81 6点 - アンドリュウ・ガーヴ 2020/04/19 23:05
これは驚き。完全に謎解きミステリ。
クロフツ風……、というより、鮎川哲也のほうが空気感が似ているかな。ガーヴ、こんなのも書けるんだ。
全編、会話が主体で軽快に読める。
トリックは確かに有名なのかも(知ってるし)。軽い謎解きミステリとして、なかなか好感触。
とはいっても、ガーブの味がなく、個性が薄いといえる。埋もれていってしまうのは、しかたないのかも。

No.80 8点 ABC殺人事件- アガサ・クリスティー 2020/04/18 23:19
私は「この人読もうっと」と決めると、発表順に読むのだけど(クイーン、ヴァンダイン、ヒル etc)、クリスティーはそうでなく、体系的に読んでいないため、自分の中でとらえ方が定まっていなかった。けれど、ここ2、3年、発表年度を気にして何作か読んで、少し捉え方がわかってきた。
クリスティーは、50年の作家生活で、作品世界の構築については驚くほど変わっていない。そのためか、作家生活を「第x期」という区分に分ける話を聞かないのだが、騙しの仕掛けとしては「前期」「後期」に分けられると思う。1つのアイディアを核にして物語を構築する「前期」と、物語の見せ方に騙しを仕掛ける「後期」だ。
そして「前期」代表作のひとつが本書になると思う。
メインのアイデアは、今では読む前に知っている人が多いと思うけど、それも模倣されてきたから。(クイーンの「九尾の猫」でも引用されていて、1949時点で既に定形とされているのがわかるが)これが嚆矢と思えば評価せざる得ない。
クリスティーの凄さはアイデアの活かし方がとてもうまいことで、本作でも謎の人物の語りを入れるなど、嚆矢でありながらこの完成度はすごい。
ついでに、クリスティー文庫の解説はただの感想が多い中、法月の解説は作品の新たな見方を提示していて流石だ。

No.79 7点 緋色の研究- アーサー・コナン・ドイル 2020/04/14 00:59
今、これを新作で読んでも、評価できないけど、やはり古典としてどう評価するかですね。
私は、「ある作品を”面白い”と思い、それに元となる作品があったとしたら、元の作品に評価は移すべき」と考えているので、そんなに低くはできないです。
けど、どこまで「評価は移すべき」かは、難しい。
ホームズは、「冒険」以降の短編シリーズがあってこそ、後の評価があると思うし、とはいっても、ホームズのキャラは、ここですでに確立しているし……。
「冒険」の各話と比較して語ると……。
ミステリ的に「緋色」は、「冒険」の1話文しかないという感じ。
「緋色」は、ホームズ時代前、ディケンズetcの大長編時代をひきずっていて、キャラクター描写や因縁話など、いろいろな要素が入っている。
「冒険」は、枚数の制約から「事件とその解決」に特化したためか、無駄なくスッキリまとまった構成になって、そのため近代小説として短編ミステリの嚆矢となれたのだと思う。
では、「緋色」はつまらないかというと……。
ホームズのキャラ描写は大いにあるので、キャラ物としては、読みどころがある。
また、捜査の顛末は他作品より丁寧で、(快刀乱麻をたつというわけにいかないかわりに)ヴィクトリア朝の捜査小説の味わいがある。これは、プロファイリングなどを使った近代の捜査小説の直系の先祖ではと思うほど。クロフツの作品にも影響があるのではとも思える。
書いてるうちに、やはりひくくはできないなと思えるけど、8点はためらうので、7点。

No.78 7点 死は万病を癒す薬- レジナルド・ヒル 2020/04/14 00:34
ダルジール・シリーズで、クリスティ的なクローズド・サークルをやるとこうなるのか。
前半は、シリーズ・キャラでない人物視点がかなり長く(退屈ではないけど)いつもの楽しみとちがって、ちょっと戸惑った。
ダルジールは、まだ調子がいまひとつで、まるでパスコーが上司のよう。
ルートの件やら、ダルジールの暗躍(?)など、飽かずに楽しめたけど、長さの割にはインパクトはないかな。これは、(厚さのため)シリーズ・ファンでないと途中で飽きてしまうかも。

No.77 6点 ダルジールの死- レジナルド・ヒル 2020/04/14 00:28
謎解きミステリではないと思います。
ルエル名義の作の冒険スパイ物のプロットに、ダルジール・シリーズのキャラをぶちこんだ感じとでもいうのでしょうか。
ハスコーがとうとう独り立ち。以降の作でも、まるでダルジールの上司みたい。
シリーズ・ファンとしては、キャラ物としては楽しめますが、冒険スパイ物が好みではないので、後期作では、下から二番目かな。

No.76 6点 真夜中への挨拶- レジナルド・ヒル 2020/04/14 00:19
久しぶりに「謎」の興味でひっぱる話。
(後期作は、いろいろな話が並行してすすみ、「謎」はメインでなかったりするので……。ま、それがいいのだけど)
とはいえ、この話は「解決」はしりすぼみな感じ。ヒルは「謎と解決」でみせる作家ではないのだなぁと、あらためて認識。
ダルジールとノヴェロの関係性が、(当人同士の感覚はともかく)よんでいるといいコンビな感じがする。
作者としては、「ダルジール/パスコーでやっていたことを、パスコーが優秀になりすぎたためできなくなったので、かわりにノヴェロでやっている」のだと思う。
後期作では下の方。でも他ヒル作品が楽しめるならば、これも楽しめるはず。

No.75 7点 死の笑話集- レジナルド・ヒル 2020/04/11 22:05
「死者との対話」の続編です。「死者との対話」を読んでいない人は前作からどうそ。
「死者との対話」が楽しめた人は楽しめるはず。
前作につづいて、ボウラーもメインのひとり。複数の話が重層的にすすむ。
いやー、それにしても厚い。もうヒル、書きたいこと全部書いてるだろ。
飽きずに読ませるんだけと、パスコー/ルートのパートは、どうもあまりのれなかったなぁ。それが最後にああ絡んでくることはよかったけど、途中は冗長に思った。その分「死者との対話」よりは落ちる印象。

No.74 8点 死者との対話- レジナルド・ヒル 2020/04/11 21:59
(厚すぎてヒル初読には勧められませんが)ヒルの代表作だと思う。
複数の話が絡みながら重層的にすすんでいく構成は、この作品が最もよくできている。新人ハット・ボウラーも加わり、さらにチームの群像劇の風味が増してきた。
今回はここ数作の中では最も「事件」にフォーカスされ、謎解きミステリとしては充実している。
ある点は、結末がついていないので(続編「死の笑話集」につづく)、人によっては不満があるかもしれないが、個人的には気にならず、全体的に大満足。

No.73 7点 ただ一度の挑戦- パトリック・ルエル 2020/04/11 21:41
主人公が警官で、警察小説の趣が強いが、IRAなども絡んできて本筋はスパイ小説。とはいっても、他ルエル作品より、日常的設定なためか、迫真性を感じられた。
展開が読めずに、だいぶ楽しい読書だった。
最終5部で、こんなほうにいくとはという感じで、ルエル名義作では、これが一番好きですね。

No.72 6点 眠りネズミは死んだ- パトリック・ルエル 2020/04/11 21:32
(タイトルで象徴させた)主人公の女性が、少しずつ世界を自覚(世界から自立)していく様子がここちよい。
スパイ小説らしく、人物像の反転がいくつか仕込まれていて、ついていくのが大変だった。
ラストは腑に落ちず、意味を読み取れていないかも。

No.71 5点 長く孤独な狙撃- パトリック・ルエル 2020/04/11 21:28
情景描写は雰囲気はいい。
でもどこか、まとまりに欠ける。
主人公の設定、背負っている過去は重く、物語の本筋は、重いスパイ小説だ。しかし、本筋の脇で流れる、恋人と、その家族の話は、非常に家庭的。対象の妙を狙ったのかもしれないが、逆にちぐはぐに感じる。
ラストから考えても、全体をもっと重い感じにしたほうが、よかったような気がするなぁ。

No.70 3点 ミザリー- スティーヴン・キング 2020/04/06 00:06
これは、「世評」と「自分の評価」に乖離がある作品のひとつ。
最初は、ねっとりした描写が楽しめたが、同じような描写の繰り返しで、物語は進行しないし、ページ数は多いしで、最後には退屈してしまった。
好きな人は、ねっとりした描写を飽きずに最後まで楽しめた人なのかなぁ。
100ページくらいの中編にしてくれたら、切れ味がよくて面白かったのではないかと妄想するが、長すぎる気がするんだよなぁ。好みの問題なのでしょう。

No.69 5点 いま見てはいけない- ダフネ・デュ・モーリア 2020/04/06 00:00
どの話も不穏な空気が流れているが、どうも焦点が定まらない感じがする。
「レベッカ」では、「レベッカの存在感」、「過去に何があったのかという謎」などが、物語を牽引していたのだなと、あらためて感じる。
比喩、暗喩、皮肉などいろいろ入っていそうで、それらを拾えているかとなると、全然だめだと思うが、好みにあわなかったということか。

No.68 6点 武器と女たち- レジナルド・ヒル 2020/03/14 18:14
タイトル通り、女性陣が主人公。特にエリーは、エリーの小説まで挿入される。作者はエリーをいい女として描いているのだろうか? 鼻につくキャラに感じるのだが。
それでも語りの面白さは安定しているが、本作は長さが気になる。シリーズ後期作では、一番下かな。

No.67 7点 ベウラの頂- レジナルド・ヒル 2020/03/14 18:06
少女失踪事件とパスコーの家庭の問題が、「親子問題」という切り口で繋がり、重層的に語られていく(出版時はシリーズ最長の)大作。
冒頭に地図があり、謎解きファン心理をくすぐるが、その部分はなあんだという感じ。
パスコーの娘の話が他から浮いている感じはするが、それ以外は安定した語りの面白さ。
内容、作風とも、代表作といっていいと思う。

No.66 7点 幻の森- レジナルド・ヒル 2020/03/14 17:51
ノヴェロ初登場作。ノヴェロも好きなキャラだなぁ。
ダルジール、パスコー、ウィールドの三人にチーム感ができて、キャラが安定しすぎたため、三人を外からみる視点をいれる必要を作者が感じたのだろう。ノヴェロ視点での三人の描写が、評価も悪口も、読んでいてじつに楽しいのだ。
本作ではノヴェロの出番は少ないが、この後、3人に並ぶ4人目のキャラとなる。
マーヴェル初登場作。これによって、ダルジールに人間的弱みが垣間見えるようになる。
「骨と沈黙」以上に「厚っ!」となったが、この後さらに厚くなっていくとは。この作以降は、厚さと中身(シリーズ・キャラの人生を描く方向性)で、一見さんお断りのような気がする。
本作は、安定の描写の面白さはあるが、他の点では特筆すべきところはないかなぁ。製薬会社の描写は精彩がないかも。

No.65 7点 完璧な絵画- レジナルド・ヒル 2020/03/14 17:32
ウィールドの出番が最も多い作。ウィールド・ファン必読。
ダルジール、パスコー、ウィールドがほぼ当分の重み付けで、それぞれの話があり、ミステリより「群像劇」の趣がつよい。
「群像劇」の味わいはこの後もつづき、後期ダルジール・シリーズの型の始まりといっていいと思う。
本作では、「プロットを語る」よりも「(エンスクームという)世界を描く」ことに比重がおかれているようで、この世界に対する好みにより評価が分かれそうだ。
この作品が楽しめれば、この後のシリーズは全部楽しめるだろう。

No.64 8点 甦った女- レジナルド・ヒル 2020/03/14 17:19
ダルジール、アメリカに渡り大活躍の巻。
シリーズとしては異色作だろう。
いやあ、でもやっぱりダルジールが活躍する話は面白い。
プロットも(ヒルにしては)直線的にすすみ、一気に読める。ヒル作の中では世評は低く感じているが、個人的にはベスト5に入る。

No.63 7点 骨と沈黙- レジナルド・ヒル 2020/03/14 17:06
ゴールド・ダガー受賞で、世評的には代表作です。
ヒル作品としては、ミステリとしてしっかりしているので、そこが評価されたのかな?
でも、ヒルの面白さは、個々のキャラクターの心理/台詞だなぁと思う。
この後の作品のほうがますます面白くなるのでが、個人的には上位の評価ではないです。
発売時は「厚っ!」と思ったけど、これもこの後の作品のほうがますます厚くなるので、いま見ると普通に感じるようになってしまった。

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ことはさん
ひとこと
ホームズ生まれの、クイーン育ち。
短編はホームズ、長編は初期クイーンが、私のスタンダードです。
好きな作家
クイーン、島田荘司、法月綸太郎
採点傾向
平均点: 6.34点   採点数: 222件
採点の多い作家(TOP10)
エラリイ・クイーン(23)
レジナルド・ヒル(19)
アンドリュウ・ガーヴ(14)
近藤史恵(11)
アガサ・クリスティー(9)
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