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レッドキングさん
平均点: 5.25点 書評数: 808件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.13 3点 ファイロ・ヴァンスの犯罪事件簿- S・S・ヴァン・ダイン 2021/07/26 16:55
※ヴァン・ダインは「探偵小説」を「ミステリー小説」から分けて定義する。「探偵小説は文学作品には属さない・・それは、なぞなぞやパズルの領域に属するものだ・・」 作者は読者に全ての手掛かりを前もって「公正に」明示し、結末まで読み終えた読者が、頁をめくり返して、全てのパズル断片が隠されることなく提示されていたことに納得できるものでなくてはならない。それこそが「探偵小説」で、「ミステリー小説」(=サスペンス・ファンタジー・ホラー・冒険小説・アクション・ハードボイルド etc)とは席を同じゅうせず、の所以となり・・。まあ、さして異論ないが、彼言うところの「探偵小説」、自分なら、「本格ミステリ」と呼びたいかな。
※叙述トリックミステリについて。ヴァン・ダインは「作者は読者を故意に騙してはならない」とお堅い戒律を掲げる。でーも「探偵・ヒロインが犯人であってはならない」なんて不文律は昔々に破られ・・だって元々、猿や蛇が犯人でもいいんだもん・・「叙述者が犯人であってはならない」「叙述中に書かれない断片があってはならない」「読者が誤解するような叙述があってはならない」とかも破戒の憂き目に遭っている今、叙述・・第一人称であれ第三人称であれ・・で明確に虚偽(=反事実)が書かれてさえいなければ、「anything goes」だなあ。

No.12 3点 ウインター殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/11/29 20:52
ヴァン・ダインの記念すべき遺作。

これで全12作・・短編集除く・・採点したんで、わが私的ヴァン・ダインベスト5。
 第一位:「ベンスン殺人事件」
 第二位:「グリーン家殺人事件」
 同二位:「ケンネル殺人事件」
 第四位:「カブト虫殺人事件」
 第五位:「ドラゴン殺人事件」

なんだかんだ言ってもいつまでも記憶されるべき作家の偉大な業績に追悼!

No.11 2点 カシノ殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/11/29 20:46
「ファイロ・ヴァンスが生涯で出会った、最も巧妙を極めた、最も凶悪な犯罪・・」なんてチンプな謳い文句で話が始まっちゃうと、「最もつまんねえ話なんでないの?」て危惧を抱かざるを得なくなり、ハードルは下がるが、結局・・「うーん」な話だった。犯人、「グリーン」「ガーデン」「誘拐」と同パターンの誤魔化し行為やらかして・・この作では容疑者二名出てきて若干賑やかだが・・そもそも「毒殺事件」ての好きでないのよ。

No.10 3点 誘拐殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/11/20 22:55
資産家のろくでなし次男の身代金誘拐事件。あまりにも明白な「狂言」誘拐の証拠群に一人疑義を唱え、「偽装」狂言誘拐の殺人事件と指摘するファイロ・ヴァンス。これまた分かり安い犯人で・・けして「グリーン家」「ガーデン」みたいに容疑者キャラからして分かり安いって言うのではないが、かれらと同じ事やらかして実に分かり安くて。
※本格のキモが密室殺人ならハードボイルドのそれは行方不明(誘拐)てことで、ここではヴァンスもチョビッと「ハードボイルド」して・・軽く3人射殺しちゃった。
※ヴァンスの「今ならワーグナーの二幕に間に合う」てセリフに思わずニヤり。

No.9 5点 ガーデン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/11/19 21:05
ガーデン家の屋上ガーデンで起きた事件。銃による自殺であること明白な状況で、些末な物証から殺人を宣言するファイロ・ヴァンス。アリバイトリック解明から殺人が可能だった犯人を割り出し、証拠なき状況から「おとり捜査」仕掛けて解決へ。あまりにも分かり安すぎる犯人。序章でヴァンスの対女性抒情匂わせ、「大博打」云々の「カナリア」ネタ再現匂わせて、ミスリード狙ったのか微妙な叙述トリックにはなってはいるが・・・あそこまで露骨に「グリーン家」をなぞっちゃうとねえ。ところであの仰々しい「出馬一覧表」何だったんだ?

No.8 2点 グレイシー・アレン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/11/15 18:21
二人の登場人物・・妖精にして天然詩人のヒロインと虚無的哲学者のラスボス・・が魅力的。特にヴァンスとラスボスの「哲学対話」章は実に素晴らしく、知識人:W・H・ライトの面目躍如。 あんな場面、クリスティ、カーは無論、クィーンにも書けないだろう。

No.7 5点 ドラゴン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/11/08 22:43
これがもし「バスカヴィル家の竜」てな題の、ドイル19世紀作ホームズ物だったとしたら、「ミステリ史上の記念碑」の一つに挙げたくなっただろう。
でも、島田荘司の大技トリックや三津田信三「水魑の如き沈むもの」とか知っちゃうとねえ・・ヴァン・ダインて、なんか損な位置の人だな。

No.6 5点 カブト虫殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/10/19 20:24
あまりにも明確すぎる数々の証拠。だが、殺人容疑者Aを指し示す証拠群が、Aに冤罪を擦り付けるために、真犯人Bがバラまいたニセ手掛かりであったとしたら・・しかし、その展開それ自体が「真犯人B」を陥れるために、真・真犯人Cによる筋書きだったとしたら・・。「僕は知ったのだよ・・5分もたたないうちに・・○○が犯人だと・・」なんと超探偵なファイロ・ヴァンス。
※あの不在殺人トリック(ダミーだが)、「グリーン家」のやつより好きだ。

No.5 6点 ケンネル殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/10/15 19:30
「ベンスン殺人事件」新訳を読んで、「現象学的直観」探偵ファイロ・ヴァンスを再発見し、これも再読。面白かった。ただ、ここのファイロ・ヴァンス、現象学を飛び越して「超越論的独断」の超探偵=作者のネタ明かし役 にまで存在が後退しちゃってるけどね。だが、面白いことは面白い。愚直なまでに古色蒼然とした密室トリックの何と香り高い「骨董感」。もしも殺害場所と死体発見場所の移動不可能性に焦点を当てて、もっと作り込んでくれていたら、カーや「翼ある闇」の「バカミストリック」にまで飛翔してたかも。

No.4 3点 カナリヤ殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/10/12 19:44
「ベンスン殺人事件」に続いて、新訳文庫本にて再読。やはり、昔、記憶にあった通りのファイロ・ヴァンスだった。デビュー作のシンプルにして鮮やかな「現象学的解釈」推理が、ここでは単なる「心理学的」・・類型的行動学、~型人間学・・の独断のレベルにまで薄まってしまっていて残念。
「ポーカーは人生の縮図だ!」「碁を打てば相手の人間がわかる!」「車の運転は男の人生の象徴!」etc 今でもいろいろウンチクあるけどねえ・・。それにつけても、この二つの機械トリック、ショボすぎ(でもキライじゃない)

No.3 7点 ベンスン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2020/10/08 20:46
新訳・・といっても何年も前の出版だが・・文庫本にて再読。
そっか!ファイロ・ヴァンスって、1926年にして「現象学的解釈」「本質的直観」推理をやってたんだ! 笠井潔の矢吹駆より、ずっと根源的にシンプルに。ただ「グリーン」「僧正」のみならず、このデビュー作以降は、そうした「オーラ」は失せてしまってたような・・よくてロジック、多くはただの「心理主義的」独断に堕してたような記憶が・・でも、念のため読み返してみよう。

No.2 4点 僧正殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2019/05/23 18:57
「マザーグース童謡」の見立て殺人。容疑者は(「爺やはイカン」を除き)6人・・4人の科学者とその家族の女2人。キャラのエキセントリック度(「常識的には怪しい」=「ミステリ小説的には無実」)の高い順にA>B>C>D>E>Fと容疑者がいれば、ミステリ的には、「一番まともそうな人」のFが「意外な犯人」となるべきところだろうが、「グリーン」の前例があるせいか、「二番目に普通」のキャラのEが犯人で終わる。この時代は、まだこんな「意外な犯人」で驚かすことができたんだろうなあ。読者もすれちゃったから作家も犯人造形大変だな。

No.1 6点 グリーン家殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン 2018/06/26 20:36
この「グリーン家殺人事件」と「アクロイド殺し」「Yの悲劇」「陰獣・孤島の鬼」「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」・・・これらは中学生の頃から今に至るまで何回かの引っ越しを経た後でも廃棄することなく古本状態で本箱に残されいる。(ま 「ドグラ・マグラ」なんて実際に読んだのは二十歳すぎてからだけど米倉斉加年のあの表紙画本が本箱にあるだけで何か貴重な物持ってる気がしてた) いまさらこの「グリーン」を評価する人なんていないだろうけれども やっぱり自分にとっては思い出の一冊で「本格物とはかくあるべし真犯人はこうあるべし」の基本書のような一冊 だから2点ほどオマケつき

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レッドキングさん
ひとこと
ミステリは戦前の乱歩の様に 子供が親に隠れてコッソリ読むような、恥ずかしい存在でありたい。 ミステリ書きという驚異的な作業に神経を減らし 結果報われることの無いミステリ作家たちに心から崇敬を捧げます。 ...
好きな作家
ジョン・ディクスン・カー  PD・ジェイムズ  トマスH・クック  沼田まほかる
採点傾向
平均点: 5.25点   採点数: 808件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(88)
ジョン・ディクスン・カー(55)
エラリイ・クイーン(51)
F・W・クロフツ(31)
カーター・ディクスン(25)
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