皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ねここねこ男爵さん |
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平均点: 5.65点 | 書評数: 172件 |
No.6 | 3点 | 連続殺人鬼 カエル男- 中山七里 | 2020/04/25 19:07 |
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同作者の「さよならドビュッシー」と共にこのミス大賞最終選考にダブルエントリーされたというエピソードをもつ本作。大賞は結局ドビュッシーの方だったのだが、本作を読んで納得した…というか、こちらは出来が著しく劣るように思う。
作者は過去の選評を読んで研究し「選考委員ウケを狙って書けばいける」と踏んで本作のプロットを考えたそうで、事実だとすれば選考基準に疑問を抱きたくなる。大賞どころか最終選考に残るクオリティとは思えないのだが。 本作は一応社会派だろうから本格の視点で批評するのは的外れであることを承知の上で言うと(ネタバレ風味)、 1.連続殺人の意図(の一つ)が手垢のついたもの 2.ミッシングリンクが手垢のついたもの 3.どんでん返しの連続のつもりなのだろうが、仕掛けが手垢のついたもの…なのでスレた読者には早い段階で完全に見透かされる 4.項目2などから、ラストの1行も完全に予想通り 5.作者の誠実さなのだろうが、手掛かりの置き方が見え透いている 6.一応言い訳めいた事は言っているが、猟奇殺人にする必然性が無い。「密室殺人だから、密室の謎が解けない限り捕まらない」と言ってるのと同じでこんな理屈は通らない 7.普段「捜査に先入観を持ち込むな」と言う刑事が、本作では先入観を持ちまくり語りまくりで違和感がすごい…というか読者に刷り込もうというのがミエミエ 8.マスコミの報道や、警察署を襲撃する暴徒などの描写が大分おかしい。「マスコミもネットも恐れているんだ」この程度の、しかも第一の事件だけでビビるなんてありえない つまり、本作は本格ですでに濫用され消費されゴミ箱行きとなった出し殻パーツをリサイクルし社会派風に仕立て上げたもの。組み合わせ方はデビュー前の素人とは思えないほど素晴らしいが、そもそものパーツ自体が過去の偉大な作家たちの創造物なので、他人の褌で相撲をとっていることに変わりはない。 リサイクルの腕は化け物級、ただし伏線等の描写はやはり素人+αというところか。もっとも前述の通り作者は意図的にこのように書いているようなので、そうするとデビュー前の時点ですでに選考委員すら手玉に取っていたのかも知れない。ただ自分のようなひねくれた読者は対象外だったのだろう。 |
No.5 | 4点 | 切り裂きジャックの告白- 中山七里 | 2018/04/03 20:24 |
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うーん、この作者さんにしては凡作かと。
以下ネタバレ含みます。 元々社会派色の強い作家さんなのですが、社会的テーマとミステリが高次元で融合しているのが魅力であるのに本作は脳死移植テーマに話の分量や惹きつけが片寄りミステリ部分がかなりがっかりです。新本格前に流行った業界裏事情モノみたいな。 そもそも犯人が犯行声明を出す理由がありません。目くらましのため云々言うてますが、わざわざミッシングリンクが移植に関わることを自分から教えるのは自殺行為でしょう。多少物騒な事件として少しだけ報道されるだけで済んだものを、日本中の一大関心ごとにしてしまったら二件目くらいでコーディネーターが情報提供するのは自明で、目くらましどころか解決を早めるだけです。結局コーディネーターはこの移植に絡んで不祥事をやらかしていたため保身を図り情報提供しないのですが、情報提供を拒むことは犯人が知るはずもなく偶然であり、言ってしまえば作者の話の都合でしょう。犯行声明も作品タイトルにジャックと入れたかったからでしょう。この辺の作者の商売の都合がすぐ見えるほど露骨で評価する気にはなれません。それで話が面白くなったわけでは微塵もないので… また、動機はどうでもいい派なのですが、本作はちょっとチープかつ作者の他作品にほぼ同じものがありネタ切れなのかなぁと思いました。この動機は確かに使い勝手は良いのでしょうが。 |
No.4 | 7点 | ヒポクラテスの誓い- 中山七里 | 2018/02/16 16:08 |
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連作短篇集。なかなか面白い。
いやいや法医学教室に所属することになった新人女性医師。そこには超凄腕の法医学者がおり、圧倒的な司法解剖の手腕で捜査陣が見落としていた真実を探り当てていく…という、海外ドラマっぽい設定。 実際、海外ドラマで使われるスーパーコンピューター超技術を、口が悪く近寄りがたいが腕は超一流の法医学者に置き換えただけで斬新さはない。さらに最終話以外は割と展開が似たりよったり。 なので本来であれば凡作まっしぐらなのだろうが、この作者のさすがの筆力で水準以上の作品になっている。飽きるギリギリ一歩手前できちんと締めくくるのはすごい。 登場人物も展開もテンプレ通りというか、マンガ的ドラマ的な分かりやすさで、斬新さは欠片もない分安定と信頼の面白さ。おすすめ。 |
No.3 | 9点 | 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 | 2018/02/14 14:07 |
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これは面白かった。
弁護は絶望的と思われる案件の弁護を買って出るダークヒーロー御子柴弁護士シリーズの第一作です。 社会派・法廷ミステリということになると思いますので、トリック等の解明ではなく謎の提示やその解決、取り巻く人間関係や人物描写が面白さの中心になりますが、本作はそのお手本のような出来。魅力的な人物描写や文章、構造の転換による衝撃成分などお約束事をきちんと網羅した上にオリジナリティもしっかり確保されており文句なし。 好みもあるかとは思いますが、この作者は異常に文章が上手く、岬洋介シリーズで特に顕著ですが演奏シーンの文章は感動的です。本作中にもピアノの演奏シーンがあり、(評者の表現力が貧弱で恐縮ですが)演奏されている曲が聞こえるどころか色彩が目に浮かぶほど文章が巧みでスピード感に溢れ読むたび震えます。調べてみるとこういったシーンでは文字数や読みのリズムを考慮し文章に緩急をつけて書かれているそうで、文章から曲や色彩を感じた作家はこの方が初めてです。 本サイトでは二作目の方が高評価なようですが、個人的にはエンターテイメントの各要素を高水準で取り揃えた本作をより高評価します。 |
No.2 | 8点 | 追憶の夜想曲- 中山七里 | 2018/02/11 15:38 |
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一応言っておくと、このサイトでは本格/新本格にカテゴライズされていますが、本作は本格ミステリではなく法廷ミステリです。
これは面白かった。 主人公である御子柴弁護士のぶっとんだ設定に戸惑う人もいるかと思うが、個人的には全く気にならず。 弁護は絶望的とも思われる案件を主人公はなぜ買ってでるのか?刑期を出来るだけ縮めるよう要求するにもかかわらず時に自分に不利になる証言をしてしまう被告人は単に天然なだけなのか?などなど魅力的な謎が次々提示され、衝撃とともに締めくくる筆力は素晴らしい。いろいろな証拠や伏線をさりげない描写に混ぜ込むのがやたら巧みで、ストレスなく読める文章はさすが。登場人物も整理されていて非常に良い。 法廷ミステリなので本格物のような推理の楽しみはないが、魅力的な謎とその真相、法廷でのやり取り含めた人物描写、駆け引きなどが楽しめる。高評価も納得の作品。 |
No.1 | 8点 | さよならドビュッシー- 中山七里 | 2017/10/25 20:56 |
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すご〜く採点しづらい。もし本格ミステリ読むぜ!という前提で読んだら5点くらいだったかも。書評って読者の心持、予備知識などに大きく影響されるケースがあるという事を再確認させられた本作。
恥ずかしながら全く予備知識無しで読んだので(映像化されていたことすら知らなかった)、思いがけず結構驚いた。 ミステリ要素と同様に音楽パート部分にも賛否あるみたいですが、ワタクシはものすごく惹き込まれたクチ。演奏時の、おそらく字数のリズムすら考慮された文章にシビレたぜ。最後の演奏は泣きそうになったのは恥ずかしいが。 ミステリ部分の批判はもっとも。ただ、伏線は非常に上手いものと失敗しているもの、フェアなものとアンフェアなものがあり、読者によってはマイナスが目立つが、よく出来ている部分も評価してほしいなぁと。某アマゾンでも賛否入り混じりですが否の中に全く仕掛けを理解していない的外れなものが多いので。 繰り返しますがミステリとしての採点ではありませんのでご容赦を。 |