皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ALFAさん |
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平均点: 6.67点 | 書評数: 190件 |
No.3 | 9点 | あやし~怪~- 宮部みゆき | 2022/02/15 10:40 |
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イヤーいいなあー
宮部みゆきは時代物が特にいい。妙に生真面目なメッセージ性が目立つ社会派物と違って、時代物はとてもこなれている。深川生まれで代々続く江戸っ子の血だろうか。 9編からなる短編集。タイトル通りいずれもホラー風味だが、話法や構成がそれぞれに違っていて工夫がある。一人称の叙述はやや現代的だが三人称の地の文は纏綿たる江戸情緒。 お気に入りは対照的な鬼二つ、「安達家の鬼」と「時雨の鬼」。「安達家の鬼」はホラー風味の人情噺。ホラーというのはそもそもロジックが通っていなければならない。そのロジックが現世の秩序と断絶したり微妙にずれたりするところが怖いのだ。ここでは見る側の性根にふさわしい姿の「もの」が見えるという点でロジックが通っている。そしてそれが現世の「もの」ではないという断絶が怖い。ホラー風味とはいえ、ほの明るい人情噺になっている。 一方「時雨の鬼」。こちらは心に住む鬼だからホラーではない。サスペンス風味の極辛口の人情噺。モヤっとしたエンディングがよく似合う。 もう一つのお気に入りは「蜆塚」。世間にまれに見かける年を取らないヒト(らしきもの)。こちらがあえて騒ぎ立てない限り何も悪さはしない(はず?)。妙に美人やイケメンで人柄もよさそうなのが可笑しい。気の利いたエンディングなので当方も引用させてもらう「やっぱり、知らん顔しておくのがいいんじゃねぇかな」 |
No.2 | 6点 | 火車- 宮部みゆき | 2022/02/12 08:52 |
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話の出し入れといい人物造形といい、達者なストーリーテラーだと改めて思う。このところ本格派の名作をいくつか読んで、大胆なトリックや精妙なプロットのわりに薄っぺらな人物造形や晦渋な(要するにヘタクソな)文章で辟易していたから余計に新鮮。
500ページを超える長編だが、被害者も犯人も表に登場しないままWHO, WHY, HOWダニットが少しずつ水面に現れてくるのがスリリング。犯人は最後の3ページでようやく姿を現す。それも遠景で。 あえての瑕疵を その1.弁護士の長大な演説はいらない。小説において、社会的メッセージは個人の問題として語られてはじめて意味を持つ。選挙演説のようなこの一節は、かえって作品全体のメッセージ性を薄っぺらなものにしている。弁護士は専門的な見地から問題点を語るだけで十分。 思うに作者は「社会派」という看板を背負って奇妙な使命感を持っていたのだろうか。あるいは取材した大物「社会派」弁護士宇都宮健児への義理立てか。 元祖「社会派」松本清張は社会的な問題をあくまで小説のモチーフとして消化したうえで再構成した。結果として社会的なメッセージ性を持ったということだ。「社会性」の扱いを誤ったためにこの作品は早々に古びてしまった。 その2.大阪梅田のスーツを着たサラリーマンは初対面の人間にあんな言葉遣いはしない。あまりにも馴れ馴れしいうえに、上方落語の高座でしか聞けないような言い回しもある。丸の内のサラリーマンが銭形平次の江戸弁をしゃべるようなもの。東野圭吾にアドバイスを受けたそうだが不思議だ。ここは高村薫の監修でも受けておくべきだった。そこまでの関係かどうかは知らないが・・・ その3.この作品に限らず、一部の比喩表現が陳腐。まるで古手のオヤジギャグみたい。 その4. やはり長い。2/3程度でいい。 エンディングはとてもいい。これ以上語るべきことも聞くべきこともないはずだから。 私的な捜査だから逮捕状もないはずだし、この後どうするんだろうというのは余計な心配かな。 |
No.1 | 4点 | 人質カノン- 宮部みゆき | 2017/03/11 18:40 |
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7編からなる短編集。
ミステリ風味の人情噺か、「社会派メッセージ」仕立てのミステリか。 それぞれの割合がちょうど五分五分なのが気持ち悪い。 同じく社会派と言われた松本清張の場合、どんな大きな社会的テーマも傑作ミステリ創造のための材料に過ぎなかった。結果として大きなメッセージ性を持つ場合もあったということだ。 この短編はメッセージ発信のために書かれたように読めてしまう。 さすがにスラスラ読めるが、やたらモチーフにいじめが出てくるのも食傷する。 敢えてフェイバリットは「八月の雪」。この主題をしっかりしたミステリ仕立てで読みたかった。 |