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青い車さん
平均点: 6.93点 書評数: 483件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.26 8点 逆転の構図- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/10/12 20:58
 『死者の身代金』『悪の温室』に続いてシリーズ3度目となる偽装誘拐殺人。終始視聴者を退屈させることのない流れるような展開で、凝った趣向でなく犯行トリック、推理、対決というシリーズ本来の面白さで1時間半を持たせています。犯人ポール・ガレスコがカメラマンであることを活かしているのも見逃せません。コロンボがガレスコの捨てた不出来な写真を持ち出すところなど、非常に「らしい」推理だと思います。あと、救済所のシスターにヨレヨレのコートを気の毒がられるなどコメディパートも冴えていて、見る側の慣れを意識した中期ならではの楽しさがあります。

No.25 7点 自縛の紐- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/10/05 19:17
 犯人のマイロ・ジャナスは、健康的で爽やかなイメージを売りにしていながら、裏ではインチキ経営で私腹を肥やし、他を見下す卑劣極まりない人物。それを珍しく本気の怒りを見せたコロンボがあくまで理詰めで落とす流れが見事です。靴の跡、火傷、バーベルの重さと手掛かりをぶつけるごとにマイロを苛つかせ、最後には意外且つゆるぎない証拠で問答無用に追い詰めてしまう、ミステリ好きに受けそうな作品です。

No.24 7点 権力の墓穴- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/10/05 19:10
 別個の犯罪の隠蔽を手伝ってやる代わりに自分の殺人の補助を強要するトリッキーな犯罪が新鮮です。コロンボの直属の上司であるハルプリン部長が最後まで高圧的な態度だったために、ラストの痛快すぎる逆トリックは伝説的なものになっていると私見ですが思っています。寝間着の位置などから居直り強盗の犯行であることに疑問を持つ流れもコロンボらしい気付きです。

No.23 6点 白鳥の歌- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/10/05 19:03
 飛行機から簡易パラシュートで脱出する決死の犯行には、実現性に疑問がありますが、大切なギターだけは飛行機に乗せなかったという目の付け方は実に「コロンボ的」で印象に残っています。ラスト直前のコロンボが推理を間違えた?と思わせるような展開もこのエピソード独自の見どころではないでしょうか。

No.22 7点 第三の終章- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/10/05 18:54
 犯人が最初わざと自分に容疑を向けさせるというパターンは覚えている限りではシリーズで唯一の例です。殺し屋を雇うのもミステリーの御法度に近い手法ですが、今回はその殺し屋に架空の動機まででっち上げてすべての罪を着せて殺すという、実に複雑な犯罪計画でした。ただし、その手の込んだ計画がある一点の想定外で崩れてしまい、結果的に犯人の自縄自縛ともいえる事件でもあります。ラストの畳み掛けるようなコロンボの追及には見応えがありました。

No.21 6点 意識の下の映像- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/10/05 18:45
 細かい粗が無いわけではないのですが、当時あまり知られていなかったサブリミナル効果を本格的に取り入れた意欲は素晴らしいと思います。犯人の使用したトリックをそのままやり返すことで逮捕するという収束性も見逃せません。コロンボがケプル博士に鎌をかけ、それをケプルが見抜いてとぼける所は古畑任三郎でも引用された名シーンです。

No.20 7点 野望の果て- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/10/05 18:36
 特殊な趣向に頼らず、犯人が周到な計画殺人を起こし、残されたミスや証拠からコロンボがその犯罪を瓦解していく、正統な『刑事コロンボ』の秀作のひとつです。特に弾道や車の位置に着目してヘイワードに付きまとうコロンボのねちっこさは出色のものです。ラストの名BGMとともに訪れる幕切れも素晴らしく、これが見たくて最初から見返してしまうような魅力があります。

No.19 6点 別れのワイン- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/23 09:33
 『別れのワイン』のエイドリアンは果たして同情されるだけの人間でしょうか?決して嫌いなわけではありません。ただ、他の犯人と同等に身勝手なところがあるのに、「いいやつだ」「殺された義弟の方が悪者」とされるような風潮が引っかかるのです。職業意識が高いのはすばらしい個性ですが、人に生き死によりワインの方が大事、というのは人格としてかなり歪んでいるとさえ思えます。さらに、その義弟の母親を侮辱するような発言をしているのも好きになれません。個人的にはむしろラムフォード大佐やトミー・ブラウンの方を同情して見てしまいます。

No.18 5点 二つの顔- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/16 18:34
 この回の本来の目論みは、双子のうちどちらが犯人?と思わせることなのですが、慣れた人ならその真相を簡単に見破ってしまうのが惜しい所です。コロンボの追及も今回あまり厳しくなく、デクスターと料理をするところがハイライトのように感じてしまいます。『スタートレック』で変装の達人を演じた人が犯人であると知り、アイデア一本で勝負したことにようやく納得できました。

No.17 8点 断たれた音- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 21:19
 驚異の記憶力を持ち抜群に頭が切れる一方で、過剰に臆病でナイーヴという痛ましい弱さも抱えている、エメット・クレイトンのキャラが好きです。コロンボは執念深く矛盾と証拠を集め、彼を容赦なく追い詰めていきます。ニンニクの匂い、歯ブラシ、便箋、塩と胡椒、ボールペンのインクと細かい手掛かりをぶつけ続け、さながらチェスの攻防のような応酬です。最後の詰めは証拠としてやや弱いため完璧な作品とは言えないものの、個人的に偏愛してやみません。

No.16 8点 溶ける糸- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 16:57
 オープニングから切れ味鋭いラストまで極めてスピード感のある傑作。電話に出ながら時計を直していた、モルヒネの瓶に指紋が無かった、といった着目はまずまずのレベルです。しかし、時限装置的な第一の犯行が次の殺人の呼び水になるという意欲的な構成や、事件の全貌をコロンボが解明していく流れるような展開、そしてメイフィールドの冷酷さなど魅力的なポイントが尽きません。ただひとつ、ネタバレ的な邦題だけがちょっと気になります。

No.15 7点 偶像のレクイエム- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 16:43
 ノーラを演じたアン・バクスターがまさに「映画界が斜陽となりTVドラマで生き延びている人」だったと知り、そのリアリティに当時のアメリカの視聴者は引き付けられただろうと思いました。『パイルD‐3の壁』と同様、視聴者に伏せた秘密がラストまで引っ張られますが、今回はそれがドラマ性を豊かにするために効果を挙げています。コロンボのノーラへの紳士的な振る舞いも印象的でした。

No.14 4点 ロンドンの傘- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 16:36
 全編海外ロケの特別回という趣向は楽しくて成功しています。ただし、この解決はいかがなものでしょうか。決め手がない犯人から証拠を引き出すためにコロンボは逆トリックを度々用いますが、今回のそれは100パーセント捏造と言っていい代物です。ニコラスとリリアンの夫妻がコロンボと対決はおろか接触すらしない場面が多いのも気になります。お祭り編として雰囲気を味わうべき一作。

No.13 6点 アリバイのダイヤル- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 11:08
 このエピソードは推理の内容以上に演出が素晴らしく、最後の犯人と二人きりでの対決シーンに魅力が詰まっています。よくよく考えれば今回コロンボが突きつけたのはハンロンのアリバイ崩しに過ぎません。言い逃れは可能なのですが、BGMの緊張感、コロンボの表情、黙って水を飲むハンロンといった見せ方の上手さはシリーズでも上位に登ると思っています。エンドクレジットが、廻っているテープだけを映した画面で流れるところも好きです。

No.12 6点 悪の温室- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 10:59
 『死者の身代金』とは違ったアプローチの誘拐殺人もの。犯行計画のミスをコロンボが次々と指摘していき、そこまで彼を苦労させた事件ではありませんが、「落とし方」の意外さが面白い所です。アナログ人間なイメージのあるコロンボが、機械を手にして捜査する姿は他では見られません。新キャラクターであるウィルソン刑事もいい味を出しているのですが、次の登場はかなり後のエピソードになります。

No.11 6点 黒のエチュード- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 10:51
 妻の母親の力で今の地位を得ており、また美しい妻がいながら不倫をしている指揮者のアレックスをジョン・カサヴェテスがダンディに演じています。ろくでもない男ではあるのですが、嫌悪感をそれほど感じないキャラクターに仕上げているのはこの役者によるところが大きいでしょう。ミステリ的には小粒ですが、夫の罪を認めるかどうかを妻のジャニスに委ねるシーン、そして全てを集約する小道具カーネーションには美しさを感じます。

No.10 7点 パイルD-3の壁- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 10:41
 直接犯行シーンを描かず、視聴者に情報を伏せるという試みを最初にしたエピソードです。心理トリックとして優秀なだけでなく、カーラジオがクラシックチャンネルだったのに、車内のカセットテープはカントリーだけだった、という手掛かりは実にコロンボらしい気付きで印象的です。また本作では、犯人以上に被害者の現在の妻と最初の妻の対比に面白さがあります。

No.9 4点 死の方程式- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 10:35
 コロンボの推理がほとんど見られず、全体的に大味でミステリマニアには受けないエピソードかと思います。個人的にも残念ながらシリーズ中で下位の出来だと思いますが、ファンが多くいる回でもあり、それは特有のインパクトによるところが大きいでしょう。葉巻に爆弾を仕込むという犯行、ロープウェーでの逆トリック、そしてロディ・マクドウォールによる軽妙な演技と、4点を付けましたが時々観返したくなる魅力があります。

No.8 5点 もうひとつの鍵- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 10:22
 犯人側のドラマに重点を置いたタイプの回で、対決の充実感は弱めです。電球、芝生、鍵の跡といった物証の揃え方はいつも通り気が利いているだけに、ラストの決め手があまりの弱く、面白味を欠いているのが惜しいです。しかしそれでも、邪魔者だった兄を殺し自由になったのに、恋人をはじめ周りの人々が離れていってしまうベス・チャドウィックの悲壮な姿、そしてラストシーンのムードはこのエピソードならではの美点です。

No.7 6点 二枚のドガの絵- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2019/09/15 00:12
 一刀両断に証拠を突きつける、切れ味鋭いラストがシリーズとして新鮮で面白い所です。第三者の○○を証拠にするというアイデアは意表を突くもので、その後も様々なミステリ作品で手を替え品を替え使われています。ただし、犯行計画が杜撰という指摘がある作品でもあり、ディテールの作り込みが甘いのも否めません。

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青い車さん
ひとこと
正面からロジックで切り込むタイプの作品を愛好しています。ただ、横山秀夫『半落ち』なども夢中になったので、面白ければ何でも読む、というのが本当かもしれません。
雰囲気重視の『悪魔が来りて笛を吹く』『僧正...
好きな作家
エラリー・クイーン、アガサ・クリスティー、D・M・ディヴァイン、横溝正史、泡坂妻夫...
採点傾向
平均点: 6.93点   採点数: 483件
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