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風桜青紫さん
平均点: 5.62点 書評数: 290件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.23 6点 Another- 綾辻行人 2015/12/29 04:39
恩田陸みたいな学園ノベルに、ドカンと綾辻的な理不尽虐殺がぶちこまれる有り様がなかなか痛快。トリックは焼直しなんだが、伏線がところどころに張ってあるし、まあ、素直に驚けた。鳴はいろいろとあざといし、サカキは嫌な裏口入学男だけれども、アーヤのいままでの作品に比べて、作者がキャラを突き放してる感がそんなにないので青春ノベルとしても結構楽しめます。もっちーも水野さんも可愛くていい。もっと活躍してほしかった(笑)。アニメ版も見たのだが、こっちは鳴に違和感ないし、サカキが普通にいいやつだし、玲子や桜木さんが普通にヒロイン(?)してて印象に残るし、鮮血もなかなかよく飛び散って迫力があったので、原作より面白く感じた(原作読んでなかったら結末に物申したいところではあるけど)。原作は6点だが、アニメは8点ぐらいつけてもいいかもしれない。

No.22 4点 深泥丘奇談- 綾辻行人 2015/12/29 04:07
「こういう情景を書きたい」って感じで描いてったんだろうか。語り手がなんか陰気(アーヤは関口巽似らしいし)なのに、一部の登場人物が妙にハッスルしていてちょっと笑える。『サムザムシ』処方してほしいです。

No.21 2点 最後の記憶- 綾辻行人 2015/12/29 03:54
長ったらしい割には気の利いたオチはないし、記憶障害って材料があっても主人公がふわふわしている電波男なのでいまいち怖さが伝わらない。グロ描写も必然性がわかんないし、なんかせこい。唯たんのおせっかいが可愛いぐらいで、退屈な作品だった。読み終えたとき、「俺、生きるのは楽しい?」といろんな意味で思わせてくれる点ではよくできているんじゃないかと思う。

No.20 5点 鳴風荘事件- 綾辻行人 2015/12/29 03:36
一作目に比べればやや地味で、トリックの難易度も低いんだが、それでも、まあ、楽しめます。今回は無垢(?)な人妻みーちゃんが可愛いです。というかみーちゃんを可愛く書こうとしたであろう綾辻行人の努力がなんかいいです。そんなみーちゃんでも話の都合上ぼこぼこにされるのは、麻耶雄嵩ほどシビアじゃないにしろ、本格作家だなあ、といったところ。

No.19 6点 殺人方程式- 綾辻行人 2015/12/29 03:26
一般向けの刑事小説を書けと言われてこんなもんを生み出してしまうのはさすがアーヤと言うべきか。飛鳥井兄弟とかみーちゃんとかキャラも頑張ってる感があるんだが、やっぱり注目は「死体の切断理由」についての推理。切断理由だけをとって見ればありふれたものであっても、それがメイントリックと絡み、そこから犯人が解き明かされる。この構造がなかなかよく出来ていて、正直アーヤの作品じゃ一番本格っぽい楽しみかたができるんじゃないかと思います。こういうもっと読みたいけど、館シリーズの江南くんが「機械トリックなんかつまらん」と言ってくれてるから、アーヤ自身はあんまり好みではないのかも。残念。

No.18 3点 黄昏の囁き- 綾辻行人 2015/12/21 07:32
犯人は意外なのだが、伏線の出し方が小出しだし、動機も例によって微妙だからいまいち納得できない。叙述トリックについても、恒例すぎて、「ああ、まだやってなかったっけ」という感じ。滑稽さの入り交じった気味悪さは確かにあるんだけど、いまいちトリックとストーリーの肝がからみあってる気がしないのよ。殺戮シーンも前二作を踏襲してるんだろうが、なんかマンネリ感が出ていてどうも退屈。テイストの強さは前二作に勝っているとは思えないし、いまいち面白さがわからんかった。

No.17 6点 暗闇の囁き- 綾辻行人 2015/12/21 07:23
亜希のキャラ造形がなかなかいいのよね。こういう罪悪感をじわじわとかきたてるような存在。罪悪感が嫌悪感に変わって、それが異物のような恐怖感に変わっていくって感じの。救いがあるようなないような後味の悪さも印象深い。

No.16 5点 緋色の囁き- 綾辻行人 2015/12/21 07:10
あや様を始めとした変な高校生たちを楽しむ学園小説……なのか? まあ、ホラーもののというより、ホラーものっぽいテイストを楽しむ作品だろう。ミステリもストーリーも薄味なんだが、アーヤの演出力がそこそこあるおかげか、退屈せずに読むことができた。まあ5点はつけてもいいかな。

No.15 6点 眼球綺譚- 綾辻行人 2015/12/21 07:00
『特別料理』のシュールテイストが好きなのですよ。登場人物がなんともノリノリな調子でゲテモノ食いしていくアレ。なんともいえないおかしさに怖いもの見たさが合わさってぐいぐい引き込まれる。アーヤの短編ではこれがベスト。『再生』もなかなか旨味。単純な発想ながら、意外性と納得があって、ほっとさせつつも気味の悪いラストがなんとも絶妙。『呼子池の怪魚』も先行きに恐怖を予感させる設定と、どこか安心と寂しさが余韻を残す結末が印象深い。この三つだけなら7点なんだが、アーヤがノリで書いてしまったような「なんじゃこりゃ」な作品が余計。『鉄橋』とかどこらへんを楽しむのか気になったんだが、アーヤ本人がコミック版のあとがきで「面白くない」と書いてるから、やっぱり面白くないのだろう。まあ、総合で6点。

No.14 6点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2015/12/21 06:32
メタ視点を交えての仕掛けに重点を置いた作品。作中作の形式で登場人物に作品をフォローさせているのがなかなか新しい。『どんどん橋、落ちた』みたいなせこいトリックを納得させるにゃこれ以上の方法はなかろう(笑)。でもまあ、『ぼうぼう森、燃えた』みたいな作品は確かにこの形式じゃなきゃ種明かしできないし、犯人当てを組み立てる手法のひとつとして十分あり。楽屋裏っぽいネタは嫌いじゃないし、なかなか楽しめた。それにしても『伊園家の崩壊』のやっつけぶりときたら。アーヤの自己嫌悪っぽい「疲れてるな……」がじわじわくる。萎えた表情で民平だのタルちゃんだの書いてたのかアーヤは。

No.13 5点 フリークス- 綾辻行人 2015/12/21 06:06
『夢魔の手~三一三号室の患者~』はアーヤの好きそうな結末が二転三転するホラーもの。月並みな話だが、まあ、そこそこ面白い。『四〇九号室の患者』は某フランスミステリのオマージュ。途中で明かされる「なにやっとんねん」な真相には苦笑い。しかしオチは月並みでやや呆れた。フランスミステリっぽいのならアーヤよか連城のがいいかな。そういやこの作品、連城からツッコミくらったんだっけ。わかる気がする(笑)。『フリークス~五六四号室の患者~』はホラーの皮を被った本格ミステリ。ネタ本であろう『孤島の鬼』はビックリ人間大集合みたいなハチャメチャ作品なんだが、こっちはジトッとしたフリークスの物悲しさを演出しているらしい。そんなに幻想味うんぬん良さは感じんかったのだが、ややマニアックな犯人当て小説としては楽しめた。暗黒館でプッシュされてたアーヤのビックリ人間趣味がちょっと出てきてるかな。それでもこのあたりはまだミステリの一線を守ってる感じがする。アーヤには、このタイプの短編をもっと期待したいんだが……。

No.12 7点 霧越邸殺人事件- 綾辻行人 2015/12/21 05:19
トリックはそうインパクトがあるわけじゃないし、SF設定を用いた謎解きについてもそう成功してるとは思わんのだが、いかにもって感じの雰囲気がいいんだよね。作品のタイプとしては水車館と近いんだろうけど、ストーリーの盛り上がりではこっちのほうが上。ヤリさんのうんちくもウザいけどなんか嫌いじゃない(笑)。幻想小説ってほど高尚(?)じゃないにしろ、アーヤは雰囲気作りがうまいな、と思えた。遊び心に満ちあふれたワクワクする館ミステリ。十角館を別格にすれば、これが綾辻行人のベスト作品かな。

No.11 5点 殺人鬼2- 綾辻行人 2015/12/21 04:56
もはやミステリ部分が投げやりすぎて笑えてくる。あまりに伏線が露骨すぎやしないか。これでは「どうぞ驚いてください!」と真相が明かされたところで「お、おう」としか反応のしようがない。まあ、謎解きは前作から期待していなかったし、楽しそうなアーヤの筆運びを見れたので満足。風船ガエル、風船ガエル。

No.10 6点 殺人鬼- 綾辻行人 2015/12/21 04:49
作者がなんかノリノリのスプラッター小説。みみっちいトリックもついてるが、それよりも、神の視点が機能しまくりの殺戮風景が読んでいて楽しい。「おなかがぐちゃぐちゃにかきまわされてるぅ!」とかきっと笑顔で書いてたんだろうな(笑)。なんだかんだで終始面白かったから6点。

No.9 6点 奇面館の殺人- 綾辻行人 2015/12/21 04:37
フェアな伏線の提示から、そこそこ納得のいくロジカルな謎解き。初期の館シリーズらしいって意見もあるけど、館シリーズでこういうクイーンっぽい作品は初めてなような気がする。全員仮面を被るってなふざけた設定だとか、島田さんが正体を明かすところの盛り上がり(悪魔の折り紙!)だとか、読んでて飽きなかったし、バランスの取れた作品。まあ、叙述トリックは「ああ、うん……」と呆れちゃったけど。犯人当てだけでも良くできた作品と思うんだが、インパクトが薄めになると思ったのかな。現実味のなさMAXなうえに、暗黒館みたいに変な説得力のある説明もないし、正直要らんかった。アーヤについてきた(暗黒館で切らなかった)読者だからといっても、ある程度の納得は欲しいのよ。

No.8 5点 びっくり館の殺人- 綾辻行人 2015/12/21 04:21
「伏線からするとこんなトリックか?」と思って読み進めたら、予想以上のトンデモぶりだった。こういう物語の構図が変わってくるトリックは嫌いじゃない。ただ、その説明についてはトンデモぶりを消化させるほどではなかったかな。もっと上手く料理してほしかった。あと、「びっくり館」が中村くんの失敗作としか思えないほどつまらない(『消える総生島』の霧越館のがずっといいレベル)。ただのおもちゃ王国じゃないですか。館シリーズっぽい道具仕立てが楽しめなし、全体的に、なんていうか、地味。館シリーズにする必要あったのかな。島田さんに至っては子どもたちからジャングルジムを占拠してただけだし。本当にただの不審者じゃないの(笑)。

No.7 6点 暗黒館の殺人- 綾辻行人 2015/12/21 04:05
時計館が館シリーズの決定版なら、暗黒館は囁きシリーズの決定版かな。アーヤが趣味全開でキャラクターを書いてったらとんでもない長さになってしまったって感じ。トリックについては、館シリーズのバカバカしさが悪い方向に行っちゃってるんだよね。あざとい親切設計を免罪符にしてるかもしれないけど、やっぱ、なんていうか、無理だわ。ハッと驚くというより、単に「なんじゃそりゃ」って気持ちが先にきちゃう。犯人当ても、途中の推理がなんともしょうもないし、あざとさばかりが目立ってしまう。ただ、アーヤがメイントリックとして設定したであろう中也くんの正体は素直に驚けた(お前かよ!)し、暗黒館のいろいろカオスな雰囲気は楽しめたので、まあ、6点はつけてもいいだろう。館の住民のグロさが『孤島の鬼』を思い出させたので、玄児さんが諸戸道雄みたいなホモに見えてしかたがなかった。たぶんホモとして書かれているのだろう(笑)。

No.6 5点 黒猫館の殺人- 綾辻行人 2015/12/21 03:49
「ここが伏線になっていたんだよ!」をやりたいがための親切設計。メイントリックにしろ、老人の正体にしろ、伏線が露骨すぎてすぐ気づいちゃうんだよね。密室トリックに関しても、もうちょいやりようがあるだろうと。まあ、アーヤは同期(法月や有栖川)に比べて細かいトリックを煮詰めるのがヘタクソっぽいしねえ。いつもはメイントリックの派手さでごまかしてるが、こういうあざとい作品だとそこが浮き彫りになっちゃう。アーヤのフェアっぷりが伝わるのはいいんだが、これ以降、館シリーズが長らくお休みしてしまった理由がなんとなくわかります。舞台の雰囲気は相変わらずいいし、読み物としては結構楽しめるので5点。なんでソバージュヘアの人たちはいつも不幸になるんですか(笑)。

No.5 7点 時計館の殺人- 綾辻行人 2015/12/21 03:38
一番館シリーズっぽい作品といえばやっぱこれ。先行きを気にさせる大量殺戮、つっこみどころ満載(仮面ってなんやねん!)の怪人物たち、バカらしいがなんだか納得してしまう大トリック。まさしく十角館の冒頭でエラリイが求めていたような遊び心に満ちた作品。同じバカバカしいジャンルでも、新本格第一期の作品がメフィスト系作品より好感が持てるのは、「道具」よりも「仕掛け」に重点を置くところなのよ。まあ、館シリーズは、「館」って「道具」の魅力で売ってるところもあるから、後追い作家がここを使いたがる気持ちもわからんでもない。アーヤもこのあたりから道具重視にシフトしてくしね。

No.4 6点 人形館の殺人- 綾辻行人 2015/12/21 03:06
盛り上がりに関してはシリーズの前三作よりトーンダウン。まったり(?)した京都のニートの日常なんて退屈です。ただトリックのインパクトに関しては十角館や時計館に次ぐんじゃないかな。シリーズ通して探偵役の島田さんって影が薄いんだけど、やっぱあのプータローは殺伐とした世界観の館シリーズにとって一種の清涼剤になってると思うのよ。それを逆手にとって一物語をカオステイックにしようってアイデアにはなかなか感心したんだが……多くの読者が館シリーズに求めていたものとはずれていたらしい。残念。しかしこの作品に限らずアーヤの作品の語り手はプータローが多いねえ。作者たるアーヤが半分プータローみたいなもんだと言ってしまえばそれまでなんだが(笑)。

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