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斎藤警部さん
平均点: 6.68点 書評数: 1235件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.38 6点 青い記憶- 佐野洋 2019/06/13 12:48
手練れに過ぎて、あまりにスイスイ読めちゃうよ、もっと引っ掛かって立ち止まって考えさせて、みたいなな不満さえもたらしそうな、良く書けたミステリ作品群。文章がスムーズ過ぎて全体的に地味に感じてしまうかも。書くに当たっては悩みの無さそうな、しかし題材は悩みの多そうな不倫がらみのお話がほとんど。(全部だったかも)

赤い蝶・青い猫/密告/細い橋/九回裏二死満塁/重苦しい空/赤い時計/二年ぶりの街/通話記録/暗い偶然/脱がされた/青い記憶  (講談社文庫)

No.37 5点 華麗なる醜聞- 佐野洋 2019/06/13 12:44
アリャ、A氏が二人いるぞ。と思ったら更にもう一人。。 社会派をダシに使い切れなかったのが悪いのか、サスペンスの道筋と糾弾の矛先が大いにずれたまま大爆発無くモヤモヤと終了。ルポルタージュの真似事(あまりに小説臭い!)風に視点がコロコロ替わる構造の面白味も終盤近くで自然消滅。最後の最後でバランス悪さを露呈。でも結末に至る前までは中々に面白く、実にリーダブル。

昭和三十年代中盤の実社会を騒がせた複数事件を組み合わせたモチーフを使いつつなお「これは実際に起きた事象である」振りをしているコンセプトの故か”疑似ドキュメンタリー”の嘘っぽさが溢れ出てしまい、スリルだとか知的興味だとか、大事な何かを削いでしまっている気がする。それでもまず面白いのは、洋ちゃんの底力ですな。

No.36 5点 密会の宿- 佐野洋 2018/04/27 00:45
ご内聞に/乱れた末に/残念ながら/お手をどうぞ/知らぬが仏/論より証拠/虚栄の果て
(徳間文庫)

昭和の’TSUREKOMI’を舞台にした短篇シリーズ第一弾。日常の謎もどきからささやかな犯罪、警察沙汰の顛末まで、時には人も死ぬ(まあこの手の場所には付き物)。 主人公は宿のおかみ(ワトソン+α)と同居する男(ホームズ+少しジーヴズ)、決して個性が際立っちゃいない二人の造形はなかなか温かい。思わず膝を打つような瞠目の展開や真相は見当たらないが、意外な所で変化球を見せるなどして単調さを緩和。が、やはりファン向け、且つ読み捨て上等かな。それでいい。

No.35 6点 緊急役員会- 佐野洋 2017/08/25 01:04
破綻 /蛇の群れ /広い藪 /狼の巣 /武士の情 /白い蝙蝠 /震える肩 /緊急役員会 /誇り高い女
(集英社文庫)

社会派というより、いい意味で会社派(労組絡み多し)の、されど地味ならずいい具合にザワザワ派手目の短篇集。中でも出色は、いにしへの労組スパイ問題を俎上に、ミステリ興味もたっぷりと正面突破で取り組んだ表題作。その直後、デザートの様に置かれたビター・スウィート・ショート・ショートはまるで日本式クリスチアナ・ブランドの味わい。「武士の情」の見え透いチゃァいるが何とも微妙にいやらしい真相構造も忘れ難し(実生活で応用上等。。)。総じて他の作品群にもう一押しのサムシング・エルスがきらめいていたら7点行ってた。惜しい。

No.34 7点 入れ換った血- 佐野洋 2017/08/25 00:42
医学ミステリに微かなお色気で六品。結末で突然にイヤミス毒が染み渡る表題作、犯罪動機の意外な重さに圧倒される「メスの怒り」を始め、読み易くもずっしり来る充実の作品が並ぶ。「棘のある肌」エンディングの(現在の出版コードではかなり際どかろう)悲痛な叫びもアンフォゲッタブル。。。

入れ換わった血/狂女の微笑/棘のある肌/満月様顔貌/メスの怒り/毛皮の家
(講談社文庫)

No.33 6点 金属音病事件(角川文庫版)- 佐野洋 2016/12/18 11:41
金属音病事件 /人脳培養事件 /かたつむり計画 /F氏の時計 /匂う肌 /チタマゴチブサ /異臭の時代
(角川文庫)

軽SFミステリ集。SF濃度はまあまあ、ミステリ濃度もまあまあなのでバランスが取れている。
中では際立ってハードな表題作、は飽くまでミステリベースで、SFがミステリの味付け&香辛料として機能する事に従事。後の方になるにつれSF濃度が高くなる、と共にエロスさんがかなりの調味料として活躍。 佐野ファン、昭和三四十年代ミステリ好きならひとまず読んでおきたい。

No.32 5点 死体が二つ- 佐野洋 2016/10/18 02:40
夫と妻、被告と証人、作家と編集者 等、何らかの対となる二人の関係(と言い難いものもある)をタイトルとし、必ず二人の死人が出るという企画連作。   果たして表題の二人がヤられるのか、殺し殺されるのか、  或いは表題の二人と如何なる関係のどの二人が被害者になってしまうのか、、物語興味を引く。  ミステリの深みを求め過ぎさえしなければ決して悪くない読み捨て本。

夫と妻/教師と学生/投手と捕手/夫と夫/父と娘/被告と証人/父親と愛人/作家と編集者
(角川文庫)

No.31 6点 隠された牙- 佐野洋 2016/10/18 02:30
佐野洋マンネリ期のスナック菓子と思いきや案外と謎の彫りが深いブツもいくつか混じる短篇集。
それでも余計な風格は漂わせないのが洋チャンの良い所。

隠された牙/死の入選作/なぜか誰かが・・・/親しすぎる姉弟/通話中/鉄の串/乱反射/戸籍の散歩/仮面の女
(角川文庫)

No.30 8点 白く重い血- 佐野洋 2016/09/12 09:57
こりゃ隠れた快作。ジャンルはサスペンス。現在(’70年代初頭)と過去(終戦後)のカットバック(章立て等に工夫あり)で進む真相追及は「ゼロの証明」だったか「焦点の人間」だったかそのへんをあからさまに連想させる、が、、清張が凄みで圧倒すれば、或いは森誠が思い込みの熱さで驀進すれば『そこ一点突破』でも充分読ませるわけだが、しかしそういった重々しい武器を敢えて持たない佐野チンの場合は『そこ』に更に何かかぶせて来るはずだ。。とカラフルな期待が増殖するってもんだ。。 嗚呼、違和感最高!! 二つの時代が重なる最終章、ラス前シークエンスの摩訶不思議な一対一対一(三人)の対話構造!!! 思った通りに、しかし思わぬ方向からの意外性かぶせにクラクラしているうち最後はちょっとした人情の深淵を覗かせて〆。

登場人物の伏線性とか、とっ散らかったままで終わる要素も結構多いから本格主義の読者なら最後ちょっとがっくり来るかも知れん。しかしこれは実に良く出来たサスペンス小説。やっぱこういう、形式に企画性の強い、構成の妙で勝負みたいなのは大の得意だね、佐野チンは。

No.29 5点 重要関係者- 佐野洋 2016/08/17 22:43
掘る/探る手/刑事の妻/組織の本能/おとり/検事の罠/誘った人/密室の裏切り
(角川文庫)

意外と(?)最初期の短篇集。 全体標題が暗示する如く、司法、警察、ブン屋(新聞記者)等、職業上いわゆる事件に関係の深い者達が事件そのものの中心に置かれる様な物語の数々。例によって男女間のナニ(愛欲だとか打算だとか)に振り回される話が多い。ず~いぶん時間が経ってから(1962⇒1983)やっと角川で文庫化された事からも匂う様に、まるで80年代佐野洋の様な書き飛ばしの薄味感がどうも付き纏う。つまらない代物ではないんだけど。悔しいけどファン向け限定かな。 いや、中にはそうでも無い興味津々の反転ストーリーも紛れ込んでいるんだが。。

No.28 4点 闇の告発- 佐野洋 2016/08/17 22:23
「佐野洋の挑戦ミステリー」 闇の告発(問題編①) 配達殺人(問題編②)/死体と眠る/被害者さがし/白っぽい男/殺人クイズ/「佐野洋の挑戦ミステリー」 闇の告発/配達殺人(解決編)/”挑戦”について
(角川文庫)

目次で一目瞭然(?)の様に、全体的に推理クイズ本っぽさ漂う一冊。その割にと言うべきか、むしろその所為でなのか、何ともカサカサ味気ない文章が目立つ。ちょっと詰まらな目かな。。
ところで目次を見ると「佐野洋の挑戦ミステリー」なるもの、問題編は①②と明確に分けているのに、解決編の方はどういうわけか二つ繋げてるみたいでしょう? どうしてでしょう? 気になりますか。。? 

No.27 5点 牧場に消える- 佐野洋 2016/07/05 01:38
洋チャンが本作の取材のため半年だか一年だか競馬界にどっぷり浸かったとか言う”競馬ミステリ”長篇。その割に力作感はあまり無いが。。サラブレッドの成長を撮影した貴重な記録フィルムがすりかえられた。。。。という事件から始まる正体の見えない疑惑への追及劇。結末に意外性は薄いけど、ある種の社会派スリルで押し切ってまずまず。 

No.26 6点 赤い熱い海- 佐野洋 2016/07/01 00:46
飛行機事故の死者は三名、疑惑たっぷりの行方不明が一名。森村誠一に遊び人の艶を吹き込んだ様な展開にちょっとハードな旅情が魅力。探偵役はなんと四人~わたしはこの事件の探偵です、わたしもこの事件の探偵です、おいらもこの事件の探偵です、おっとアチキだってこの事件の探偵です~という逆シンデレラの罠状態(??)。結末に意外性の新機軸有りだが、やや企画と技巧に走ったか。ま悪かない。

No.25 6点 奇しくも同じ日に……- 佐野洋 2016/06/01 23:58
いやー、表題作の後味悪いこと、佐野洋なのに、佐野洋で野球の話(プロでなく高校野球)なのに!
あっさりとはしているが割と内容有りめ(なんだその言葉)の短篇集。 これもまぁファン以外に薦めてもいい、のかな。。 

奇しくも同じ日に・・・・・・/屋根の上の犬/切り抜きの意味/風流な使者/白い雲/なぜ、いまごろ/絡んだ糸/灰色の軌跡/消えた女
(講談社文庫)

No.24 7点 匂う肌- 佐野洋 2016/06/01 22:13
ピンク・チーフ/虚飾の仮面/匂いの状況/賭け/匂う肌/反対給付/死者からの葉書/内部の敵/手記代筆者
(講談社文庫)

割と「いい内容」の短篇選集。ひとまずファン以外にも軽く薦められるレベルか。
最後尾の「手記代筆者」なる題名が清張っぽくて唆る。

No.23 5点 地下球場- 佐野洋 2016/04/21 12:29
黒い鞄を狙え/ロスからの男/強打者牽制

常勝川上哲治監督が携行するという『黒い鞄』の謎を追う表題作。連続V記録更新中の読売巨人軍が実名付きで登場するが、現実人気球団をダシに使ってかなり踏み込んだ想像話ゆえか、なんとも歯切れの悪い終わり方。ミステリ腹に落ちない。 他二作は軽い娯楽作。悪くはない。

No.22 6点 10番打者- 佐野洋 2016/04/21 12:19
急映、大毎、太陽ロビンス、金星スターズ、巨人の加倉井に坂崎、後楽園にはアンラッキーネット(!)。。魅惑のアーリーデイズプロ野球用語がポンポン飛び交う中、速やかにクールに展開する戦後ニッポン陰謀物語、の飽くまで一側面、に軸足置いたサスペンス・ファンタジー。 星野組はプロ化を意向するも頓挫、ですって。。

序章 彼との出会い   第一話 不均衡計画  第二話 ウイニング・ボール  第三話 盗まれたサイン.

「桜機関」の「桜氏」(どちらも仮名)なる衆議院議員にして正体不明のフィクサーの下に職を得た「私」は、氏の幅広い暗躍領域の中で『(戦後復興した)日本プロ野球人気を今度こそ定着させる』というミッションのために奔走する。(その真の目的は、果たして。。) 氏と「私」の出逢いを描いた序章と第一話は、社会派に振れ過ぎない政治スリラー的様相でスイスイ進行。(森村誠一だったらどんなに熱く脱線しまくったろうか)
かと思うと第二話、出だしのつかみどころの無さは底知れぬ陰謀のようで日常の謎のようで。。急に社会的要素が蒸発してしまったかのような微妙な中弛みを見せつけ、核心はまさか色事絡みかと匂わせ、、 と思うと唐突な感動秘話に向きを変えて締める。。なんだこりゃ?
二話三話と連作が進むに連れ黒幕から主人公(共に十数の歳を取り)へと物語上での存在感が軽くシフトする、かと思いきや。。 第三話ではやにわに謎解き要素が色濃くなるが、最後の最後で急にリアリティの薄いトンデモ陰謀論に転んで終わっているのは。。 週ベ(週刊ベースボール誌)連載時色々あって、ひとまず冗談めかしといて様子見、という事なのかしら? なんて穿った見方をせずにいられませんね。 (まさか、佐野流の『逆トリック』ってやつだったりして)

ちょっとバランス悪い連作集だけど、まずまず。

No.21 7点 婦人科選手- 佐野洋 2016/02/18 11:29
タッチは軽くとも、しっかりした筋骨を感じる信頼の短篇集。

ある証拠 /噂の夫婦 /蛇の卵 /婦人科選手 /五十三分の一 /馬券を拾う女 /チタマゴチブサ /違法駐車 /陽の当る椅子
(講談社文庫)

表題作。。ミステリの骨格は初めから見え透くようだが、、物語は最後にまさかの深みを突き付け。。
五十三分の一。。なる若き日の行き過ぎた過ち談らしき話も、最終コーナー前から予想外に濃ゅい方向へ。。でもオチはちょっと安易。”マジック”を期待していたからね。
馬券を買う女 。。日常の謎のような滑り出しから犯罪露呈へという佐野洋得意の枠組み。この話、実は骨格が日常の謎、そこに犯罪ストーリーをごってりコーティングした形だろうか。落語のオチのようなエンディングと言い、味付け濃い目の小噺のよう。そういや氏は実際’ちょいエロ日常の謎’短篇、よく書いてたよなあ。
ちょっとした機転のアリバイトリック、だけどちょぃと危ないサイコ小噺の。。違法駐車
色事擦れした鮎哲みたいな恐喝小噺。。陽の当たる椅子

なんかやたら’小噺’って使っちゃったけど、実際後半はそんな触感のストーリーが目立つ。浅いんじゃないよ、切れ味と引き際の問題だよ。上に記さなかった各作も悪くないよ。軽エロSFもあるぞ(笑)。

No.20 7点 轢き逃げ- 佐野洋 2016/02/16 13:13
力も入った事だろう、稀代の短篇名手が二部構成の大長編を完遂。愛人を伴っての轢き逃げ事件を巡り、第一部は犯人側視点で犯罪隠匿のサスペンス、第二部は被害者側視点で犯罪暴露の謎解き。ところが、犯人側と被害者側、それぞれ一枚岩で単純に追われる者と追う者の立場とだけは言えないものになっており。。 登場人物割と多く、人間関係何気に錯綜。 言ってみりゃ堂々の社会派本格ミステリ。社会派要素はどちらかと言うと物語の核心より表層寄りに位置しているが、作品の快い緊張感をキープするには不可欠な助演級スパイスだ。

さてこの力作、必ずしも作者のベスト・オヴ・ベスト級にならなかった(ように私には思える)のは、紙面に余裕がありどうしても幾ばくかの構造の緩みが生じてしまった所為かしら。昔はいざ知らず今や本作が「佐野洋の代表作と言えば何を措いてもコレ!」的な存在になっていないのは、短篇巧者の称号を掲げる作者にとってイメージが混濁せずラッキーなのかも。余計なこと言い過ぎましたが、かなりよく出来た面白い小説ですよ。昭和ミステリ好きなら必読クラスでしょうね。

No.19 5点 金色の喪章- 佐野洋 2016/01/28 18:11
佐野洋平均的サスペンス。 いや、本当は平均ちょぃ下かな。本格の謎に近い不可能興味(人物系)は魅力だが、明かされる真相がちょぃと「チャンチャン」なんだな。。 読んでる間は楽しいんだけどね、再読ぁするわきゃ無いでしょうそんな暇じゃないよ、ってなくらい。熱心なファン以外には薦めませんが、イマイチとまでは落ちず。

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.68点   採点数: 1235件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(54)
松本清張(52)
鮎川哲也(50)
佐野洋(38)
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