皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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アイス・コーヒーさん |
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平均点: 6.50点 | 書評数: 162件 |
No.4 | 8点 | 異邦の騎士- 島田荘司 | 2014/10/06 10:59 |
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「占星術殺人事件」以前に書かれた著者の実質的な処女作。記憶を失った男の過去を巡る、御手洗潔最初の事件。やはり、御手洗シリーズを何作か読んでからこちらに来るのがお勧め。
「占星術」や「斜め屋敷の犯罪」のような大掛かりなトリックは仕掛けられず、ストーリーを重視した本作だがその面白さはかなりのもの。記憶喪失の男と良子の恋愛、御手洗との友情、そして中盤からのサスペンスと終盤の感動まで、どこか青臭い内容ではあるが私は本作が好きになった。 一方で推理小説としても興味深い点は数多くあり、例の読者に対するサプライズはもちろんのこと、記憶喪失の設定を見事に扱った真相やそこに至るまでの伏線なども十分評価に値する。特に「○○の××が非常に似ている」ことを応用した一連のトリックは流石としかいいようがない。 物語のテンポも心地よいもので、かなり楽しい読書体験となった。 |
No.3 | 6点 | 星籠の海- 島田荘司 | 2014/01/06 16:32 |
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御手洗潔国内編最終章―瀬戸内海を舞台にして、御手洗達が凶悪犯を相手に行ったり来たりする大長編なのだが、トラベルミステリーっぽさが多くてそれ故ミステリーとかエンターテイメントとしては並。
事件にかかわってくるのはかつて瀬戸内海を支配した村上海賊の秘密兵器「星籠」。それをめぐって海辺の町・鞆で事件は進み、歴史ミステリー的要素もある。もともと映画化を前提に作った話であるためスケールが大きく、そこそこの面白さがあるのだが御手洗シリーズをついに映像化するなら、もっと謎解きを多用した方が良かったように思う。しかし、犯人の自白を引き出すためにあんなことをするとは…驚き。 発想や展開はさすがで、長いながらも飽きずに読めたので、島田先生には今後も頑張って執筆して欲しい。 |
No.2 | 8点 | 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 | 2013/11/26 17:22 |
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北海道最北端、宗谷岬に位置する斜めに傾いた館、「流氷館」。主人の浜本幸三郎のもとに集まった客人たちだったが、雪の降る中で悲劇が起こる。密室殺人や、奇妙な現象が起こる一連の事件を御手洗潔が解決する。
いわゆる「バカミス」として賛否両論の論争を引き起こした名作。斜めの屋敷をどういう風に使うか?というストレートな疑問と多発する密室殺人。本格好きにはたまらない要素だ。そして、メイントリックは鮮やか。「バカミス」覚悟で読んでいったため、騙されたときに嫌な気持ちはしなかった。むしろ爽快感の方が大きい。これを許容できるかできないかは趣味によって大きく変わるだろう。しかし、本格ミステリに「挑戦」され、見事に作者に打ち負かされたい読者なら満足できるのではないだろうか。 すべてが伏線となり、一つの答えに導いている。だから、犯人像やあの花壇の謎は比較的すぐに分かってしまった。しかし、それでいて最後まで気を抜けないのが本作の凄いところだ。粘り強く仕掛けてきて、読者を驚かせる。御手洗があそこまで計算していたとなると、もう人間業じゃない。 読んでいるときは、もしかして動機は…と思ったが、これも最後の最後で綺麗に処理された。本当はこちらにももっと仕掛けてほしかったのだが、某名作へのオマージュか? |
No.1 | 10点 | 占星術殺人事件- 島田荘司 | 2013/07/16 14:54 |
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体の一部分ずつを切断された女性の死体の数々。その体を使って完全な人間像を作る、という手記を書いた芸術家はすでに殺されていた。日本中が四十年間解決できなかった事件に占星術師・御手洗潔が挑むという話。
トリックは素晴らしいものだった。パズル的な点はまさに本格ミステリだ。問題点を挙げるとすれば最初に過去の事件の説明が長々と書かれていること、無駄な展開が一部あることだろうか。しかし、それ自体が仕掛けの一部で演出だとするならば、かなりよくできているといえる。 最後まで見抜けなかった自分に感謝したい結末だった。一つ一つの殺人にも合理的かつ論理的な説明があり満足している。 |