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アイス・コーヒーさん
平均点: 6.50点 書評数: 162件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.9 5点 アメリカ銃の秘密- エラリイ・クイーン 2014/03/31 13:13
2万人の容疑者と、消えた拳銃の謎に挑む、国名シリーズ第六作。
「読者への挑戦」を前に、アメリカ銃の隠し場所は分かったが、さすがに犯人に結び付くあの手掛かりは見落としてしまった。その点は、エラリーの論理が発揮されていて見事といえるが、いくらなんでもこの犯行計画は実現不可能。「バカミス」というか、何というか…。個人的には「国名シリーズ」の魅力の一つはリアリティだと思うのだが。
また、かなり早い段階で犯人の目星をつけておきながら、大きな損害を出してしまったエラリーも良くない。この方法で失敗したことも数多くあったのに…。
論理という魅力はあるものの、全体としては微妙な仕上がり。

(余談)図書館で借りた本書は創元推理文庫版(井上勇訳)だが、出版年月日のページが切り取られていた。どうやら、93年に入荷した本らしい。しかし、ビル・グラントの息子を「《巻き毛》のグラント」と表記するのは無理がある気がした。ストレートに「カールのグラント」か、「カール・グラント」とすれば良かったのに。

No.8 6点 スペイン岬の秘密- エラリイ・クイーン 2014/03/05 17:09
全裸で発見された男の死体を巡る、国名シリーズ第九作にして本国での最終巻。
本作の見どころは何といってもエラリーの「全裸講義」だろう。被害者はなぜ全裸であったのか?この部分が本作の鍵である。しかし、真相を導くこの論理にも疑問点があるように思う。ネタバレは避けるつもりだが、これ以上の論理は本格ミステリにとっての限界なのだろうか。
また、中盤の展開の必然性がつかめない。というより、あれが真相ならもっと序盤に解決するべきだったのでは?その点がいささか冗長である。ミステリとしてはもう一工夫欲しいところではあった。
一方、特徴的な登場人物たちの活躍が面白い。鋭い観察力を持つティラーや老齢のマクリン判事、さらには手ごわい悪役等々。ストーリーとしては結構面白かった。

No.7 7点 ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン 2014/02/18 19:11
美術商ゲオルグ・ハルキスの棺から発見された死体を巡って、若きエラリー・クイーンと真犯人が一騎打ちするシリーズ第四作。
読んでみるとやはり長い。本作の特性上やむを得ないのだが、それにしてもエラリーの引用癖が全開で、冗長な部分がある。せめて、伏線にでもなっていれば…。そして、装飾過剰な点が本作の特徴であるのもまた事実である。
一方で、「ローマ」「フランス」「オランダ」を経て最終形態に達した論理は気合が入っている。捜査と推理の掛け合いが見事で、この点は引き込まれる。また、本作は一見、複雑で異色に思えるが、読み終わって全体を見渡してみると実に単純である。エラリーの最初の事件にふさわしい作品だといえる。
ストーリーの点では、冒頭の遺言書紛失と死体発見のあたりが一番面白く感じられたが、その部分の真相は大したことなかったため少し残念。途中で出てくるダ・ヴィンチの絵に関しては、先日「協会の壁の裏側に、未発見の絵があるらしい」というニュースを耳にして、作中での解説もあって余計混乱してしまった。それにしても、エラリーの「あれ」は徹底しすぎ。

No.6 7点 エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン 2014/02/03 13:08
首を切断され、磔にされた死体を巡ってエラリーが奔走する国名シリーズ第五作。シリーズ最高傑作として人気も高い。
本作の売りは、何といってもアメリカを縦横無尽に飛び回るエラリーと犯人の頭脳戦。ただし、連続殺人がテーマとなるため捜査パートが長くアクションが必ずしもメインではない。一方、肝心の論理は小粒ながら見事で、満足感があった。登場人物もそこそこ多いが、それぞれの書き分けが上手くて面白い。エジプト古代宗教の狂信者や怪しげなイギリス人夫婦、医者に富豪に教授など。ストーリーに勢いがある。
「エジプト十字架の秘密」とは何か?この疑問も(今となっては有名すぎるパターンとなってしまったが)論理的な結論が出されている。それだけに、あの一行の印象は強い。
残念だったのはダミーの証拠が散乱していて、あらゆる伏線が回収される快感が味わえなかったこと。確かに、一応あれやこれも必要な要素ではあったのだが…。

No.5 5点 シャム双子の秘密- エラリイ・クイーン 2014/01/16 19:18
国名シリーズでは珍しい、山火事で脱出不可能になった山荘での事件。冒頭からその雰囲気は良く出ていて、どこか「Yの悲劇」を思わせるが、推理の方はもっぱらダイイングメッセージで物的証拠の組み合わせなどはない。ただ、この手のミステリで、ここまでき壮絶な終わり方は珍しいんじゃないだろうか。さすがに「骸骨」はひどいだろ、と思ったり。そこが気にいった。
しかし、論理が中途半端でいくつか不満も残った。詳しくは下に。
以下ネタバレ気味。


多重解決のような構成をとっているうえ、物的証拠がほとんどないなら、最終的にエラリーが出した答えが正しいとは一概に言えないのでは?伏線も少なかったし、少し物足りない。それにトランプにあれだけしっかりと指紋が残っているなら対処のしようもあると思うのだが…。
自分の好きなクイーンらしさが出ていないような気がしてならない。評価は好き嫌いで大きく分かれるはずだ。

No.4 7点 フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン 2014/01/13 13:03
「国名シリーズ」二作目。デパートを舞台に不可解な事件をエラリー・クイーンが捜査する。犯人や事件に関しての意外性はそれほどでもないが、あらゆる物的証拠から犯人像を絞り込んでいくクイーンらしさがでている。
しかし、50ページにわたる解決編はいささか強引な個所や詭弁が数多く見られ完成度が低い。地味な警察の捜査でも犯人がつかめそうで、エラリーが「手がかりはこんなところにあったのか!」と豪語した割に、「フランス白粉」の論理が大したことなかったのはがっかり。物語としても、全編が手がかりになっていて起伏がない。
それでも、作中で本人たちが「ヤマ勘」だと認めているし、初期クイーンの犯人当てとしては楽しめるので満足。エラリウス・ビブリオフィルスが活躍する珍しい機会でもある。

No.3 10点 レーン最後の事件- エラリイ・クイーン 2013/12/28 19:12
悲劇四部作の掉尾を飾る長編。本作で今までクイーンのイメージが変わった。
まず特筆すべき点は次々と謎が解明されて捜査が進むにもかかわらず、事件も速いスピードで進んでいき謎が続出する構成。物語の展開が絶妙で引き込まれる。
そして、いかにもな文章がいくつもあるのだが、その全てが正しく伏線として回収される美しさがある。じっくり読んで味が出てくるタイプの名作だ。
これらの点で、作品としてのグレードは「Zの悲劇」くらいなのだが、ここで過去三作品の総ての伏線が回収されるために最高点とした。ラストにつながる「Yの悲劇」でのレーンの行動や「Zの悲劇」でのアレ、さらにはシリーズ全体にわたってつくられた罠。
悲劇四部作はその一つ一つが「幕」となっている一連の「悲劇」なのだと思った。だからこそエピローグのない唐突な終わり方やレーンのあの行動が生きてくるし、本格の限界に挑む超大作が浮かび上がってくる。

というわけで、「レーン最後の事件」だけで8点、四作まとめて10点。

No.2 8点 Zの悲劇- エラリイ・クイーン 2013/07/23 18:14
前作「Yの悲劇」から十年ほどたって、私立探偵となったサム警部とその娘パティが上院議員の殺害と謎のZに挑むというストーリー。
この作品について深く言及する必要はない。雰囲気はレーン四部作らしく、論理的な推理は素晴らしかった。Y程の衝撃はなかったが面白い作品だ。ただ、あまりZである意味がないともいえなくもなくそこは残念。

No.1 9点 Yの悲劇- エラリイ・クイーン 2013/06/03 18:38
クイーンらしいロジックの光る作品。かなり緻密な構想を経て作られた作品であり完成度は高い。衝撃的な真相は勿論の事、ミステリ全体に渡って読者をひきつける。
個人的にはクイーンの中で一番気に入ってる作品です。

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アイス・コーヒーさん
ひとこと
本格ミステリが大好物ですが、国内海外ともにいろいろ読んでいます。拙い文ですが、参考にしていただけると幸いです。
採点は絶対評価なのであてにならないと思います。
好きな作家
クイーン、クリスティ、綾辻行人、泡坂妻夫、島田荘司、麻耶雄嵩、北山猛邦…
採点傾向
平均点: 6.50点   採点数: 162件
採点の多い作家(TOP10)
北山猛邦(11)
エラリイ・クイーン(9)
泡坂妻夫(8)
麻耶雄嵩(8)
綾辻行人(8)
七尾与史(7)
米澤穂信(6)
島田荘司(4)
東川篤哉(4)
殊能将之(4)