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ミステリーオタクさん
平均点: 6.98点 書評数: 181件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 7点 マザー・マーダー- 矢樹純 2026/06/15 21:20
 漫画原作者でもある作者の多分5作目のミステリ短編集。

 《永い祈り》
 経済的に追い詰められた主婦の物語で所謂「イヤな話」の様相を呈するが読み止まらず。
 ただ女性心理には理解しづらいところもあった。オチもやや唐突の感があるがインパクトが大きく、少し不可解だった夫の言動も明確になる。エンディングもこの作者らしい作品。

 《忘れられた果実》
 この話も家族や夫婦やお金の問題など第1話とかぶる要素が多く(同じ脇役が登場したりもする)、意外性や捻りも十分だが第1話に比べるとややパンチが弱く、無理感が大きい。
 蛇足だが看護助手が患者のマッサージをすることなどあり得ない。

 《崖っぷちの涙》
 前2話とはガラリと変わって自立支援施設に勤務する主人公達の物語だが、ここでも前2話の脇役が登場、いや、この話では脇役ではない。
 ただこの話はどうもよく分からないところがいくつかあった。が、最後のサプライズがそれらの怪訝を払拭するに余りあった。

 《シーザーと殺意》
 再び母と娘の物語。
 で、「あの人物」の名前が語られた時は「出たーっ」という感覚に捕らわれる。
 そして事件の検証、推理と解決編。
 真相とあの人の人物像は自分の想像など微塵も掠らない遥か遠いところにあった。

 《Mother Murder》
 文字通り「まとめ」の作品だが動機が心情的にイマイチ理解できない。「それ」で殺すものだろうか。
 また結末は皮肉にもタイトルに包括されている。

 
 グッドエンド、バッドエンド、どちらとも言えない話が混在し、勿論全て最後まで全く分からないヤギジュン色全開の一冊。

No.3 8点 罪の棲家- 矢樹純 2026/04/28 21:33
 短編集「夫の骨」の表題作で日本推理作家協会賞短篇部門を受賞した作者の多分一番最近の短編集。

 《裏山》
 いやー、全く思いもつかない展開。しかしいくら何でもこれはあり得ないだろう。でもこんなことを思いつけるのは裏山しい。

 《ずっと、欲しかった女の子》
 これも全く読めないオチだがチョットねー。

 《嘘つきと犬》
 これも意外なネタがあるが、前2作に比べるとパンチが弱い。
 変な話(全作そうだが)だけど何か寓意があるようにも思える話だった。でもそれが何かは分からなかった。

 《吸血鬼の⬛し方》 (⬛には「ころ」と仮名がふられている)
 前3作とは打って変わってスマホアプリの戦略ゲーム真っ最中で幕を開ける。
 自分はゲームやSNSにはあまり強い関心がないので途中はイマイチ乗れなかったが、読み終わってみればよくできたミステリだったし、面白い作品だった。

 《三年目の帰還》
 田舎の農家の話かぁ、と少々気が重くなるのを感じながら読み始める。
 事が起こってからも眠気(睡眠不足のせいもあるが)と戦いながら物語を追っていく。そしてメイントリックが明かされた時に・・・覚醒。そうきたか。多少は◯◯だろうとは思っていたがそこまでとは。
 トリックだけでなくこの話もまた読み終わってみればなかなか味のある話だった。  
 
 《運命の天使たち》
 途中までは割と平凡ミステリかなという感じで終盤に唐突に別件が出てきたりするが、流石にそうそう鋭い作品ばかりは続かないかと思っていたら・・・

 《罪の棲家》
 ここまでのミステリとしてのレベルの高さから、表題作にして最終話の本作には当然大きな期待を抱いてしまう訳だが・・・まぁ、ある意味最終話らしいと言えるのかもしれない。
 

 これほど「殆ど」の作品で驚きを感じた短編集は本書以外には殆ど記憶にない。しかも読みやすくて話が巧い。
 この作者の短編集は多分3冊読んだと思うが、自分的には現時点での国内の短編ミステリにおいて法月綸太郎と並ぶ最高の名手。ロジックのノリリン、意外性のヤギジュンという印象。

No.2 7点 夫の骨- 矢樹純 2024/07/30 22:12
 うゎ、またしてもやってしまった・・・・自室の、気の向くままにネットで買い溜めしてきた文庫本の山の中に本書が2冊・・・
 まぁ、しょうがない。気を取り直して気になっていたこの短編集に取っ掛かる。


 《夫の骨》
 この作者らしい曲者ぶりがよく出ている。

 《朽ちない花》
 途中かなり面白い話になりそうな流れを感じたが、終わってみれば個人的にはそこまでは盛り上がらなかったかな。

 《柔らかな背》
 昨今時々見られる○○○を使ったミステリだが、その類いとしては、まぁ普通かな。

 《ひずんだ鏡》
 前作に続いてソッチ系が絡むが、主人公の心理葛藤や予想外の展開は深刻な話のようでもあり喜劇のようでもある。

 《絵馬の赦し》
 これは・・・・・う~ん・・・・
  母親とは何か。

 《虚ろの檻》
 前作までウェットな家族の問題ばかりの作品がここで一変して突然ワイルドな話に。(以前に読んだこの作者の短編集「妻は忘れない」でも似たような変異パターンがあった)
 漫画原作家でもある作者の一面とも言えるのかも。

 《鼠の家》
 再び湿った家族物に戻るが、作者らしい捻りが効いているなかなかのサスペンス。

 《ダムの底》
 この作者にしては珍しい(?)男目線で語られるファミリーストーリー。更に珍しく折原張りの「騙し」が使われている。
 
 《かけがいのないあなた》
 最終作は・・・・そう纏めてきたか・・・
 

 この人の文章はとてもよみやすいが、他の方も指摘しているように時々突然時系列がジグザグして混乱させられることがある。それでも気にせず読み進めていけば見えてくるようになっているので慣れればさほどの支障にはならない。というか故意の所作である気がしなくもない。
 それはともかく個人的には、あまり明るくない作品に混じっての意外なグッドエンドの○編の読後感がとてもよかった。

No.1 7点 妻は忘れない- 矢樹純 2024/06/07 20:35
 漫画家出身という作者のサスペンス中心の短編集。

 《妻は忘れない》
 こういう話は全く前情報なしで読まないと興趣が激減する。
 シビアな男女サスペンス、とだけ書いておくが最もシビアな「告白」にはつい笑ってしまった。

 《無垢なる手》
 日常を舞台にしたジワジワ系のストーリーだが、ちょっと無理が大きい。そういう経過になることはまずあり得ない。だがそれだけで終わらないエンディングは流石。

 《裂けた繭》
 前二作とはまるで異なる作風の作品で、ちょっと白井系で驚かされる。
 たまに見られるトリックが少し騙し度を上げて使われるが、これはあまり効果的とは思えなかった。それにもっと早く○○できたはず。

 《百舌鳥の家》
 日常・・・というか平凡な家族の奥に潜む慄きらしきものが段階的に露呈されてくるがイマイチしっくり来ない。話も何か散乱している。

 《戻り梅雨》
 最終作は・・・うーん、そうきたか。


 以上全5編。
 この作者の本を読むのは初めてだが、かなりの曲者であることは間違いなさそうだ。盲点の突き方がエグいし、多彩な珍球を投げてくるタイプらしい。各話とも最後までハッピーエンドかそうでないのか分からないのもいい(当サイトに限ったことではないが時々ミステリの感想欄に「いい話だった」などと書かれていることがあるが、それってネタバレになることも多いよね)。
 
 何はともあれ機会があったら他の作品も是非読んでみたい。

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ひとこと
γーが3桁に突入してから週3日禁酒すると強く心に決めているが、なぜか週2日あるいは1日になってしまうことが多い。(仕事上週1で「泊まり」があるため0にはならない、ていうか休肝目的で泊まりを始めました。貴...
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