皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 547件 |
No.11 | 4点 | ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン | 2025/04/14 18:28 |
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本作のほぼ全編が「帽子がなぜ、どのように消えたのか」という謎の解明に費やされるのだが、それ自体にまるで魅力が感じられない。
犯人特定プロセスのロジックも万全とは言い難く、何より特定する証拠が提示されない。 後年の代表的な作品群に比べれば、あらゆる面で格段に見劣りすると言わざるを得ない。 |
No.10 | 5点 | 十日間の不思議- エラリイ・クイーン | 2024/01/08 17:52 |
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非常に評価が割れる作品であろう。
犯人が犯行の完全性を担保するため、犯行全体に「十戒」というコンセプトを導入することで、探偵の参画を敢えて促し、その意図せざるところで犯行に協力させるというプロットは抜群に面白く、また、この綱渡りのようなプロットを成立させるために、相当な工夫が見られる点は認める。 ただ、減点材料も決して少なくない。 まず、著者がいかに偽装工作を施そうとも、これだけ登場人物が少なければ、読者にとっては犯人は自明と言わざるを得ない。 偽の解決における犯人は、置かれた状況に受動的に、場当たり的に対応しており、これを自らの意志で十戒を計画的に破っていったとする推理にはかなりの無理を感じるところ。 そもそも本件プロットを成立させるためには、定期的な記憶喪失という、いかにもご都合主義的な前提条件が必須という点でも印象は悪い。 これだけ無理のあるプロットを読ませ切る力は見事であり、本作に対して、あたら批判的な立場をとるつもりもなく、中立的な立場から以上の点を総合的に評価 |
No.9 | 6点 | 中途の家- エラリイ・クイーン | 2021/08/18 19:52 |
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犯人特定のプロセスにおける論理性の高さは、相変わらず出色のデキであり、それだけなら7~8点に相当する。
ただし、こうしたプロットを成立させている舞台設定は異様であり、それに何らの説明も付けられていない点を重く見て、大きく減点 |
No.8 | 7点 | 災厄の町- エラリイ・クイーン | 2020/02/09 16:49 |
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真相判明時におけるプロットの反転の鮮やかさは高く評価する。
評価するのだが、3通の手紙の存在とか、妻の訪問と滞在とか、とにかくご都合主義的な舞台設定が鼻に付くのは如何ともしがたい。 作品全体に中弛みの印象が強く、これだけのボリュームが必要であったかどうかも疑問。 世評の高い作品だが、これ以上の評価は難しい |
No.7 | 5点 | エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン | 2019/07/05 20:31 |
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推理プロセスの一部における論理性の高さには、目を見張るべきところがあるのは事実。
一方、本格ミステリとしての骨格に比してプロットが冗長すぎ、かつ一部に破綻が感じられる点、ご都合主義の印象が強い点等があり、世評ほどの傑作とは感じられなかった |
No.6 | 7点 | ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン | 2018/06/08 20:26 |
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登場人物が非常に多いにもかかわらず、犯人と目される人物が限定的で、かつ少数の証拠で容易に絞り込まれてしまう点で、筋肉質かつエレガントな「オランダ靴」には遠く及ばない。
また、プロットに盛り込まれたエピソードやガジェットが、その巨体に見合う十分な効果を挙げておらず、中だるみを強く感じさせる印象。 真犯人の衝撃を買って7点の最下層 |
No.5 | 9点 | オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン | 2017/11/23 16:04 |
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犯行動機を一切考慮せず、犯行機会と犯行プロセスのみを辿って、犯人を特定する正統的・古典的なパズラー。
そのパズラーとしての志向・態様の徹底度、真相解明プロセスにおける論理の美しさ、明快さ、蓋然性の高さ等において、有栖川有栖の「スイス時計の謎」と並び、それを超える最高傑作の一つであろう。 多すぎる登場人物と、やや単調さも感じさせる抑制の利いたストイックな前半部分は、本作の数少ない、わずかな瑕疵であるが、真相解明時のカタルシスを増幅させるためのレッド・へリングと考えれば、やむを得まい。 一切の反論と余白を許さない完成度の高さは圧巻と言えよう |
No.4 | 6点 | レーン最後の事件- エラリイ・クイーン | 2017/10/12 21:49 |
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プロットが一本道で登場人物が少なく、リーダビリティは高い。
ただ、本格ミステリとしては、推理における合理性・論理性の瑕疵、真相が明かされない、無理がある点等が散見され、真犯人も想定の範囲内に止まっており、目覚ましいデキとは言えない |
No.3 | 6点 | Zの悲劇- エラリイ・クイーン | 2017/05/07 09:34 |
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真相解明に至るプロセスにおいては、その根幹を成す利き手・利き足の根拠の薄弱さが大きな弱点。
その他、冤罪事件を生んだ当局による杜撰な捜査、魅力に乏しい容疑者の人物造形、レーンが犯人候補を3人に限定した後の不可解なまでに迂遠な捜査など、プロットの綻び・不味さが散見。 以上、本格ミステリとしての骨格は堅牢であるものの、随所に減点材料が見受けられ、この評価 |
No.2 | 8点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2016/12/22 18:20 |
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薬物に関する造詣の深さや、緻密な犯行プロセスから知的な犯人像が窺われるところ、毒が混入された傷んだ梨、床にまき散らされたパウダー、凶器に選択されたマンドリンと弱すぎる殴打、甘いバニラの匂い、犯人のすべすべしたやわらかな頬など、チグハグな犯行プロセスを想起させる数々の伏線が、もやもやとした違和感を惹起する展開。
その違和感ゆえに、こうした伏線が一点に収斂する真相解明時のカタルシスは強い。 登場人物の造形がことごとくトリッキーすぎることが、犯人候補の限定に作用している点は、本作のわずかな瑕疵。 作者の抜きんでた構成力の高さ、プロットの完成度の高さを称賛せざるを得ない |
No.1 | 7点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2016/05/06 18:48 |
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些細な物的証拠から真相解明に至る、緻密で堅実なロジックが光っており、とりわけ第三の犯行における真相解明のプロセスは評価に値する。
一方、第一の犯行において、個性的すぎる凶器の特性から容易に犯人が特定し得るにもかかわらず、その点に警察が気付かなかったとするのは大いに疑問で、本作の数少ない瑕疵と言えよう。 ただ、新本格を渉猟してきた立場からすれば、プロット全体や個々の仕掛けにやや地味な印象を受けるのは否めない |