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take5さん
平均点: 6.60点 書評数: 422件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.422 7点 八日目の蝉- 角田光代 2025/12/30 08:39
各々に課せらた、どう仕様もない
人生の荒波を如何に受け止めるか。
再生がテーマの世代を越えた物語。

一章が親視点、二章が子ども視点。
それぞれの視点が最後に交じる様に
読者はどちらかに共感して、そして
読者もまた再生の希望を追体験する
そういう解釈を持ちました。題名の
『八日目の蝉』は、一人きりで誰も
見られない世界を見るという象徴。
一見不安、しかし受け止める覚悟を
得た時に意味合いが変わるそういう
反転の題名でした。深い味わいです。

No.421 6点 葉桜の季節に君を想うということ- 歌野晶午 2025/12/28 11:35
十数年ぶりに再読。叙述トリックと分かって読むと
どのような感想をもつか試してみました。もちろん
初読のインパクトはありませんが、世間や私の中に
〇〇に対するバイアスがあると顕在化します。終盤
「桜も紅葉することを誰も知らないし見やしない。」
此処に登場人物の反骨精神を微笑ましく感じました。

No.420 6点 キングを探せ- 法月綸太郎 2025/12/22 20:11
何方かと同じ感想になってしまいますが、
中盤までの交換殺人の仕組みは面白いのに
最後の混ぜ返しをぶち込んだところが残念
深みにならず複雑さのみ残すという感じ。
そもそも、探偵が解決するために残された
トランプが、よく考えると違和感強めで、
そんな事を言ったら設定から破綻ですが、
ユーモア軽妙、ページ少なく好ましい分、
結論、最後の混ぜ返しが肌に合わなかった。

No.419 7点 うまいダッツ- 坂木司 2025/12/21 10:24
高校生おかし部の面々が織りなす、
お菓子がキーアイテムのミステリー

インスタのお菓子当てライブに纏る
3話目が特にそうですが、何気ない
顛末の中にさり気なくおっさん思考
に対するアンチテーゼ入れていて、
身につまされる話に作者のユーモア
また慧眼を感じます。結論として、
Y.Aを侮るなかれということです。

No.418 9点 ののはな通信- 三浦しをん 2025/12/14 18:34
女性の描く、女性の恋愛小説。
と思っていた概念を、それこそ
幾重にも壊して進む昭和〜平成
そして東日本大震災までの物語。
単なる物語ではなく往復書簡で
綴られる2人の25年間の歴史。
三浦しをんさんは、何故これ程
2人の主人公を書き分けられ、
また読者自身が3人目の主人公
の舞台に上がらざるを得ない様
書けるのだろうと衝撃的でした。

カトリック系の学校の様子から
ゾンダ共和国の情勢に至るまで
全てが当事者の視点で迫ります。
最終盤、車内で聞くエピソード、
テーマ「誇り」が胸に迫ります。

No.417 7点 クリスマスに少女は還る- キャロル・オコンネル 2025/12/14 13:07
尊敬する辻村深月さんが、アンケートに
答えた中で、このような作品を書けたら
作家人生を終えてもいい、とありました。

だから図書館の保存庫から出して頂いて
読みました。文庫本600頁超えの作品。

前半の登場人物紹介のエピソードが秀逸。
後半の謎解きはまあまあ。特に心に残る
エピローグの重み。決して単なる聖夜の
救いはなく、しかし題名にある還るもの
それが分かると、静かな重みを感じます。

No.416 6点 Another side of 辻村深月- 辻村深月 2025/12/06 19:23
辻村深月ファンとしては必読書。
全作品の本人による解説が素敵。
対談は大山のぶ代も登場します。
多くのミステリー作家と作品の、
執筆をめぐる興味深い話がよい。
アンソロジー他に登録すべき処、
国内になってしまいました失礼。

No.415 8点 白い衝動- 呉勝浩 2025/12/03 18:54
呉勝浩作では爆弾≪本作の評価。
エンタメ色薄め、社会派色強め。

臨床心理学、精神分析学から、
殺人の社会的捉え、その他諸々
綺麗事を一枚ずつ剥いでいくと
私達の認知の偏りや癖が如実に
表れてくる、その様が圧巻の作。
ミステリーは手段。描く手段で、
後半のフーダニットや、最後の
一行は大きなテーマのおまけ。
それでもこの作品に出会って、
よかったなあと満足しています。

No.414 4点 超短編!大どんでん返し- アンソロジー(出版社編) 2025/11/30 14:17
一人原稿用紙5枚×30人の作品。
1時間程度で読み終わり、徒労感。
作家図鑑としての価値の方が高い。

内容はかなり薄く改めて思うのが
ショートショートといえば星新一。
星新一は大々作家ということです。

No.413 8点 クライマーズ・ハイ- 横山秀夫 2025/11/30 11:59
日航機墜落事故を巡る、地方新聞社の有り様を、
情報屋の矜持と家族関係を絡め葛藤の中で描く。

どの分野でも悩むであろう、仕事の向き合い方、
そして、特に親子関係での向き合い方が泥臭く、
反面山の描写が鮮やかに描かれ素晴らしい対比。

作者が実際に、北関東の新聞社勤めだった事で、
理想と政治の葛藤等のアンバランスさがリアル。

後半、父に訪れる許しの様な場面は、落涙必至。

筆力の高さ際立つ作者の例に漏れない作品です。

No.412 7点 絶叫- 葉真中顕 2025/11/24 14:04
まず、ネタバレしないように触れますが、
最終盤のWhoのあたりは、さすがですが、
トリック自体は過去にも見られるもので
宮部作品でも似たものがあります。だが
本作は葉真中顕の作品故に社会派色増量。
保険レディの実態があまりに苛烈で痛い。
やはり人間生い立ちや出会う人は大切だ…

悪の巣窟がある土地、鹿骨を正しく読める
貴方はきっと東京城東地区に馴染がある!?

3時間で500ページを一気読みできる位の
リーダビリティあり、しかし内容救い無し。

No.411 6点 模倣の殺意- 中町信 2025/11/23 15:44
50年も前に書かれた叙述トリック作品。
叙述トリックといえば中町氏的な位置。
何度か改編されていて、今耐えうる様に
アレンジされているということですが、
確かにカットバックのアレンジとして、
改編は正解ですかね。しかし登場人物の
坂井正夫の扱いが、、、鮎川氏にはそこを
評価されていますが、私にはイマイチ。

他殺意シリーズを読むか否か迷い中です。

No.410 7点 ずっとあなたが好きでした- 歌野晶午 2025/11/23 11:49
さすがのまとめ方上手、歌野晶午。
13の短編集だが12作目で纏め上げ
ずっと誰かを好きなまま読了です。

個人的に10作目の『舞姫』が好き。
ビルバリンジャーの『赤毛〜』風。

『幻の女』はアイリッシュのまま。
全ての作品が恋愛もの風を装って、
叙述に凝っていたり工夫があります。

600ページをスイスイ読める手軽さ。
お二人書評されていましたが、男の
しょうもなさが軽く描かれています。

No.409 6点 A- 中村文則 2025/11/19 19:52
途中まで、筆者がクスリでもやっているかと思いました。
最後の4つはよかったです。特に表題作と続きの『B』が
戦争の狂気をえがく作品としてかなり真っ当で、GOOD。
最終話は御自身の作家としての有り様が知れて、GOOD。

No.408 6点 その可能性はすでに考えた- 井上真偽 2025/11/09 12:30
悪魔の証明+多重解決もの。
新興信仰団体+多重解決は、
毒入りや、タイプは違えど
名探偵のいけにえが最高級。
作者の賢さやミステリ愛は
感じます。だがなんだろう?
重箱の隅をつつく感が強い。
私考すみません。嗜好です。
最後の結末、救済に落ち着く
そこだけはドラマなのだが…

No.407 3点 フォトミステリー ―PHOTO・MYSTERY―- 道尾秀介 2025/11/08 17:43
道尾秀介作品は総じて好きですが、
本作はあまりにも練られていないと
思ってしまいました。毒も弱いし、
ショートショートの手練も感じず、
写真が先にあって無理矢理の合わせ
理解はしても唸らずばかり続いて、
こんなに刺さらないのも初めてで、
残念無念です。私見ですみません。
星新一を読んで口直ししようかと。

No.406 6点 探偵が早すぎる - 井上真偽 2025/11/03 21:38
図書館のY.Aコーナーで見つけました。
文庫本の上下巻のうち、上巻を読了し、
いよいよ49日で対決か?という段階。
殺させない探偵という設定が新鮮です。
忘備録として一度点数つけておきます。

こういう作品に高得点をつけることを、
そもそも躊躇される方もいそうですが、
人並さんの評価がまさに言い得て妙で、
キャラが立っていて、軽い文体がよい方
薄っぺらくなくよい方へはたらいていて
下巻も楽しめそうです。さてさて・・・


追記
上巻に輪をかけて早く読み終わりました。
探偵も読了も早すぎて、論理も何もなく
評価を1点下げ、真偽他作品へ進みます。

No.405 6点 コメンテーター- 奥田英朗 2025/11/03 12:37
伊良部シリーズの最新刊らしいです。

コロナ禍を歴て人間関係に悩む人々、
そこに関わる精神科医伊良部が視点を
まさに視点を変えて生き方を自ら導く
そんな手助けをする、荒唐無稽を装い
実は至極真っ当な論理で治療する姿は
文体で反転させるミステリーではなく
思考の反転を促すタイプのミステリー
深みはなくエンターテイメントよりを
装って、作中人物のように気楽になり
案外楽しめる人も多いのではないかと。

No.404 6点 きこえる- 道尾秀介 2025/11/02 18:15
人の情報収集は映像が大半と思っていましたが、
一つ前の読書で、音声こそ影響大なのだと知り、
たまたま次なる予約本が『きこえる』との偶然。

道尾作品は、叙述のどんでん返しが好きなので、
最近の意欲的な映像や音声の活用作品は、正直、
イマイチ好きではありません。食わず嫌いでは
いけませんので読んでいますが、やはりまだ……

最終話の前後にあるQRコードは、二つの違いから
作品の真相を露わにするところが興味深いですが
それも昔の名作ならば、現場検証や証言の取材で
時制の整理が成されて解決に至りそうなものです。
仏さんがいつ死んだかを映像でばらすのは単なる
ホラーだなと思ってしまいました。びっくり映像。

No.403 7点 作り方を作る- 佐藤雅彦 2025/11/01 20:14
古くは湖池屋スコーンやポリンキーを
やがて団子3兄弟を歴てピタゴラも。
テキシコー、0655、2355まで
刺さるものが生み出され続ける理由が
私はミステリーでしかなかったのです。

そうか、新しい物を作るのではなくて、
作り方が新しいから作品が新しいのだ。
そのロジックのエッセンスを垣間見る
思考の認知がいかに大切なのかを知る
そんな謎がスッキリする良書でした。

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take5さん
ひとこと
古今東西ミステリーは沢山ありますが、
すばらしい古典に出会った時、
人間が描かれている作品に出会った時に、
ああ読んでよかったと思います。
そういう作品に一つでも出会えればと、
このページを覗...
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