皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1159件 |
No.219 | 5点 | ちょっと探偵してみませんか- 岡嶋二人 | 2012/10/10 13:40 |
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何かの合い間合い間に気軽に楽しめるこういうのは大好き。ショート・ショート形式で、一話にほとんど時間がかからないのもいい。
もう少し謎の難易度が高くてもよかったかな…とも思うけど。なんにしても楽しめたことには間違いない。 |
No.218 | 9点 | 霧越邸殺人事件- 綾辻行人 | 2012/10/10 13:34 |
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※多少ネタバレ気味
新本格の旗手としての「らしさ」が存分に発揮された、厚みのある作品。綾辻ファンの多くの人は、こういう作品こそ氏の真骨頂であると思っているであろうし、私もそうである。 意匠の凝らされた豪奢な館、C.C、謎めいた館の人々、複雑な人間模様をなす若者たち、事件の鍵を握る白秋の童謡、それになぞらえた見立て殺人―そしてその犯人を探る純粋なフーダニット。しかも、今回は氏のミステリの多くを占める「叙述トリック」ではなく、ストレートなロジカル・ミステリであったことも好感を強くした。 唯一、四つの連続殺人の犯人が、こういう結論になるのは、アンフェアとは言わないが、やや肩透かしの感もあったが…それを差し引いても文句なく綾辻氏の最高傑作の一つと言えるだろう。 |
No.217 | 7点 | 二流小説家- デイヴィッド・ゴードン | 2012/10/10 13:19 |
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連続殺人鬼ダリアン・クレイの塀の中からの依頼を受け、自伝的小説を書くことになった主人公。ダリアンのもとにファンレターを送ってくる幾名かの女性を取材して回るが、彼女たちが猟奇的な殺され方で殺される。その事件及び、過去のダリアンが犯したとされる連続殺人の真相解明に主人公とその仲間たちが乗り出す。
前半は主人公ハリー・ブロックの遍歴や現在の状況が描かれ、やや冗長気味。だが、SFやホラーまで様々なジャンルを書き分けるハリーの作品が断片的に挿入され、退屈はしない。取材に行ったダリアンファンの女性が殺害された所から物語は急展開。ラストはミステリ要素十分のスリリングで意外な謎解きが行われる。 多様なジャンルに渡るハリーの作品、ハリーを取り囲む人々の人間模様、猟奇的で過激な描写と、楽しむ要素が満載で、ミステリとしてもクオリティーの高いものに仕上がっていると思う。 |
No.216 | 7点 | 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 | 2012/10/09 22:15 |
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一つ一つの作品の水準が高い、良質な短編集。基本的には、犯人が概ね(はっきりとではない)明らかになっている上で話が進むいわゆる「ハウダニット」中心。短い各話の中にもきちんと材料が散りばめられ、刑事コロンボのように加賀恭一郎が謎を解き明かしていく。表題作と、「冷たい灼熱」「狂った計算」が面白かった。まぁ、多少強引さを感じる展開もあるが。 |
No.215 | 4点 | シャム双子の秘密- エラリイ・クイーン | 2012/10/09 22:08 |
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私の好きなクイーンの国名シリーズだったが、他作品とは色が違う。この色の違いをよしとする人もあれば、そうでない人もいると思うが、私は後者である。要はクイーンに何を求めるか、だと思うが。
さらにきっとクイーン自身も新たな境地に挑む意欲作だったのではないかと推察するが。 怪奇的な要素も盛り込まれ、いつも以上に特殊な状況下での展開は、確かにリーダビリティが高い。が、ダイイングメッセージの解釈の二転三転が中心となったこの話は、それにしては冗長すぎる。その埋め合わせとして、怪奇的な要素や、山火事の進行という要素を盛り込んだという感じがする。そう思うと、このタイトルもどうかと思う。 唯一、「クイーン国名シリーズ」の特異性という点で印象に残った。 |
No.214 | 8点 | 折れた竜骨- 米澤穂信 | 2012/10/09 21:55 |
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読み慣れない設定と人物名に最初は戸惑ったが、中世ヨーロッパを舞台とし、魔術や伝説を「アリ」としてうえでのロジカルミステリという(少なくとも私は)今まで接したことのない世界に、非常に引き込まれて読んだ。青銅の巨人を意のままに操る魔術師が出てきたり、何度切り刻まれても生き返る人種が存在したりと、科学的にありえないのだが、作中ではそれが全て「アリ」とされ、その上で「走狗(ミニオン)」と呼ばれる事件の犯人をロジカルに追う。私自身それほど詳しくないのでかなりいいかげんな想像だが、甲冑や剣をまとった中世の剣士を頭に思い描きながら、楽しく読めた。登場人物それぞれに同情や反感を感じながらも、どれも憎めないキャラクターで、読後感もよかった。
「春期限定…」などのライトミステリ、「インシテミル」などの本格物も手がける著者の、懐の深さというか幅の広さに本当に感心してしまう。 |
No.213 | 6点 | フリークス- 綾辻行人 | 2012/10/09 21:39 |
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ミステリとしての面白さ、つまり謎の解明やどんでん返しという点では前半2編、ホラー小説としては最後の表題作。相変わらずのこのテのトリックだが、本書ではよく考えられていて飽きない。そこに幻想・ホラー的な要素も加わってくるので、ある意味氏らしい作品といえる。タイプ・ジャンルとしては「眼球奇譚」と同じ?(違う?)
あっという間に読めるし、そういう意味ではこの作家らしさを知る入門作品にしてもよいと思う。 |
No.212 | 8点 | ビブリア古書堂の事件手帖3- 三上延 | 2012/08/13 02:50 |
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近年まれに見る,シリーズ作として巻を重ねても質の落ちない良作。前作までと作品としての評価はさほど変わらないが,そういう点で評価を高くした。
篠川家の秘密に何らかの形で関わって来る話が増えてくるため,どうしても最後に不穏さや謎が残る話が多い中で,2話目の坂口夫妻の話が心がほっとする感じでよい。本シリーズの本来の魅力はこういう「古書を介して人がつながること」にあると思うので。 だが,そうした要素を織り込みながら,シリーズを重ねていく中で少しずつ栞子,篠川家の秘密が明かされていく段取りは秀逸。本作品ではプロローグとエピローグの位置づけもうまく,作者の腕を感じる。 次作にも期待。 |
No.211 | 4点 | 回廊亭の殺人- 東野圭吾 | 2012/08/13 02:42 |
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まったくアンフェアではないと感じる。むしろ,トリックとしては確かに意外だったが,「そこに何らかの仕掛けがある」というのはそれまでの描き方で薄々感じていたので意外ではなかった。だから「ミステりー三昧」さんが書かれているように,まさに「あぁそう」と言う感じ。
面白い,考えられた仕掛けだと思うのでミステりーとしてそれほど不満はないが,ストーリーとして読後感が不快。報われない感じが強く,そういう意味で評価が下がった。 |
No.210 | 7点 | 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 | 2012/08/13 02:30 |
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多様な作風及びジャンルを書き分ける作者だが,やはり私はこういうミステリを主体とした本格的な東野作品が好き。
ページ数も適度で,テンポよく読め,一晩で本格ミステリが楽しめるという点でも良質な作品だと思う。仕掛けは後半に気付いたが,それでも楽しみが半減することはなく,その部分を見届けたいと思い一気に読めた。結末の受け止め方は人それぞれかもしれないが,私としてはある意味後味のよい終わり方だった。 このサイトのプロフィールで「人に薦めた作品」を書くが,今後はこれも入りそう。ミステリの魅力を初心者が味わうにはとてもよい作品だと思う。 |
No.209 | 5点 | 烏丸ルヴォワール- 円居挽 | 2012/08/13 02:16 |
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双龍会までのくだりが長く,しかも場面が転々として過去の話も出てきて,少し読むのが苦痛だった。達也と流の高校時代の顛末,達也の高校生活の「敗北」など,自分でも分かっているのか分かっていないのか分からなくなる。含みのある描写や言い回しが多いところもそういうのを助長している。
肝心の双龍会の攻防も,前作のほうが断然よかった。論理で勝ちさえすれば真実すら度外視,というのが双龍会の魅力なのに・・・なんだか,という感じ。 ただ,個人的にとてもよかったのは,瓶賀流のキャラクターが大いに生かされ,彼女の魅力が前面に描かれていたこと。 |
No.208 | 7点 | 嫁洗い池- 芦原すなお | 2012/08/13 02:03 |
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前作より,河田の持ち込んでくる事件が本格的になり,「ミステリ」っぽくなっている。が,河田と主人公のお間抜けなやりとり,それを止めて「河田さん,続きを」と促す奥さんというくだりは相変わらずで,笑いが止まらないユーモアな雰囲気は健在。
謎解きの過程は大味ではあるが,わずかな手がかりから真相を見出す奥さんの聡明さは読んでいて気持ちがよいし,何と言っても本書の魅力は「笑い」と,その奥にある登場人物たちのあたたかな人間関係。「我が身・・・」も必ず読みたい。 |
No.207 | 7点 | 放課後探偵団- アンソロジー(出版社編) | 2012/08/13 01:53 |
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やはり私も梓崎優と相沢沙呼という名に惹かれて読んだが,他の作品も学園生活を舞台にユニークな設定,仕掛けで存分に楽しめる。普段濃厚なミステリにどっぷりつかり,たまには肩の力を抜いてライトミステリを・・・なんてときに読んでもよいと思う。とはいえ各作品は良質。
相沢沙呼はあの「サンドリヨン」のシリーズで,短編もGoodだった。これを読んで,「いいな」と思ったら読んでみるとよい。鵜林伸也「ボールがない」梓崎優「スプリング・ハズ・カム」が個人的には好きなタイプだった。 |
No.206 | 6点 | 奇面館の殺人- 綾辻行人 | 2012/06/03 19:37 |
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ファンとしては待望の館シリーズ最新刊。名前すらはっきりしない各人物の登場の仕方、全員が仮面を被るという設定、中村青司設計の館と、疑いどころ満載の物語展開で、読者もいろんな想像をめぐらせて推理し放題。つかみどころがなさすぎる感もあるが、この「妖しさ」は館シリーズ本来の魅力でもあり、久しぶりに堪能した。
事件の凄惨な様相、強引なC.C設定も待ってましたの満足感。ただ、事件が結局一件だけであったこと、解決の決め手にパンチがなかったことなどがやや物足りなかった。 最終作はいつになるのだろう。待ち遠しい。 |
No.205 | 6点 | 罪悪- フェルディナント・フォン・シーラッハ | 2012/06/03 19:09 |
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刑事弁護士である作者が、実際の事件に基づいて描いたものとして、前作「犯罪」に続き書かれたもの。前作の好評を得て執筆されたものであるならば、自然ネタとしては前作がベストだったわけで、まぁそんな感じになる。とはいえ、「子どもたち」「解剖学」などは、これが実際にあった話だとするとすごい。「アタッシュケース」などは結局真相自体は何も分からないままでぞっとする。
一話ずつの長さもくどすぎずに読みやすく、とんとん拍子で最後まで読んでしまう。今後も出すのであれば読みたいとは思う。 |
No.204 | 6点 | 密室殺人ゲーム2.0- 歌野晶午 | 2012/06/03 18:58 |
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1作目は設定自体の衝撃、面白さがあったので、同程度の内容であれば必然的に本作は評価が下がってしまう。しかも、こういうものの常かどうかはわからないが、知らず知らずのうちに「初代メンバー」に愛着を抱いてしまっている。
最後の話は作者なりに工夫されたものと思い、確かに面白かったが、これもやはり前作のラストのほうに軍配。 どうしても比較して評価してしまうためこうなるが、「マニアックス」もいつか読みたいと思っているので、本シリーズ自体は好きであることは変わらない。 |
No.203 | 7点 | 館島- 東川篤哉 | 2012/06/03 18:50 |
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※ ネタバレ気味注意!!
作者らしいユーモアタッチでありながら、推理の過程や手がかりの散逸具合など秀逸で、ミステリとして上質な作品と感じる。メイントリックはバカミスともいえるものだが、個人的にこういうのは好き。島田荘司の某有名長編ミステリを彷彿とさせる。 登場人物のキャラクター等は相変わらずだが、作者の違う一面が見られる作品とも言える。 |
No.202 | 6点 | 山魔の如き嗤うもの- 三津田信三 | 2012/06/03 18:40 |
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忌み山と言われる金山をめぐる揖取(かじとり)家と鍛炭(かすみ)家の対立がもとで、六地蔵の童謡に見立てた連続殺人が起こる、という本シリーズらしい雰囲気は期待に応えるもの。ラスト前に、消去される推理も全て丁寧に論じられ二転三転するのもお決まりのパターン。その、どんでん返しにつぐどんでん返しも十分に楽しめた。
ただ、本作は特にあまりにもご都合主義的なきらいがあった。犯人のたどった道筋も、あまりにも危なすぎるのではないか(逆に言えば偶然に助けられすぎではないか)とも感じる。トリックや仕掛けの面で現実離れしているのは、こうした探偵小説的な本格ミステリではむしろ歓迎だが、偶然要素が現実離れしているのは、読者に対してある意味アンフェアな気がしないでもない。 |
No.201 | 5点 | はやく名探偵になりたい- 東川篤哉 | 2012/04/30 09:42 |
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ここまでの書評(2012/4/30現在)が全部「5点」なのが一番分かりやすくこの作品評を示していると思う。まぁ、格段よいわけでもないが、楽しむことはできる。烏賊川市の私立探偵鵜飼杜夫と、弟子の戸村流平のドタバタコンビが活躍する、とても作者らしいユーモアミステリシリーズ。肩の力を抜いて楽しんで読める。「七つのビールケース」などは、仕掛けとしてもなかなかのものだった。一作目「藤枝邸の完全なる密室」は「何だそりゃ」と笑ってしまうが、こういうのこそが作者の持ち味といえる。 |
No.200 | 9点 | 幻の女- ウィリアム・アイリッシュ | 2012/04/30 09:35 |
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以前から本棚にあったのだが、ずっと放置していた物をやっと読んだ。感想は、「不朽の名作」といわれる評価に納得。確かに、時代を感じさせる大味な所はあるが、そんなことは気にならない。息つく暇もない展開、巧みな筆致、高いリーダビリティ、40年近く前に書かれたものなのに今でも全く色褪せない。期待させておいて振り出しに戻ることのくり返しで、やきもきする感もあったが、それがラストの仕掛けをより引き立たせた。「幻の女」の正体は(作品としての評価とは別にして)、自分は明かされたほうがスッキリするタイプ。 |