皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1121件 |
No.341 | 4点 | 謝罪代行社- ゾラン・ドヴェンカー | 2015/09/27 16:50 |
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よくできているし、読み進めるのがそれなりに楽しいのは間違いないのだが、この手のサスペンスが昨今世にあふれている気がして、突出してよいとは感じない。
何よりも、この「謝罪代行社」というタイトルに惹かれて手に取ったのに、結局その謝罪代行業は事件に巻き込まれるきっかけになっているだけで、本筋とはあまり関係がない。そこが一番期待外れだった。話の中で謝罪代行業が出てくるところなどほとんどないし、その業種や業務形態が本筋に関わってくることはほぼ皆無(ゼロではないけれど)。 別のタイトルにしてほしかった。 |
No.340 | 6点 | 化石少女- 麻耶雄嵩 | 2015/09/20 22:31 |
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学内で次々と起こる殺人事件について、化石オタクの女子高生がそのお守り役の男子高生に自分の推理を開陳する。「あり得ない」とスルーされ、現実では別の解決がされていくのだか、どうやら主人公の推理の方があたりらしい…という、いかにも麻耶作品らしい短編集。
そうした設定による面白さがむしろメインで、各章の事件でのトリックは小粒なカンジ。偶然要素により成り立ったトリックも多い。 というわけで、麻耶作品としても小粒な出来という感じが強かった。 |
No.339 | 7点 | 三角館の恐怖- 江戸川乱歩 | 2015/09/20 22:24 |
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お酒を飲みながらこのサイトをフラフラするのが至福の時なのだが、そんな中で書評が目に留まり、急に読みたくなって読んだ。
子供のころ「少年探偵団シリーズ」のものを読んだ記憶があり(ということはそちらは明智小五郎だったか?)、エレベーター内の殺人だけ妙に記憶があった。 創元推理文庫で読んだのだが、内容もさることながら、連載当時のそのままの体裁で、挿絵などが施されていることがすごくよかった。 2015年の現代では昔以上に現実との隔たりが大きく、逆にそれがよくて妙に懐かしさを感じて読んだ。 海外作品の翻案ということだが、その本家を知らないので単純に面白かった。トリックは今となってはチープだが、もともとそれよりも愛憎劇、動機の方が作品の魅力ということで納得。 読んでよかった。 |
No.338 | 7点 | 致死量未満の殺人- 三沢陽一 | 2015/09/20 22:16 |
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トリックは、「よくぞそこに着目した!」と思う秀逸な着眼点。その点では満足。過去の焼き増しや、諸要素の複合ではない、一点モノという感じがした。
鼻についたのは、青臭い心理描写や人物描写。今後磨きをかけていただきたい。 また、トリックが秀逸なだけに、下手な偶然要素でここまでかさを増す必要はなかったのではにかとも思う。「これが最終の真相ではなくて、実は…」の仕掛けは、やっても花帆まででよかった。最後は自分としてはくどかった。 ミステリとしての出来はかなり上々だと思う。 |
No.337 | 8点 | 死のドレスを花婿に- ピエール・ルメートル | 2015/08/30 19:47 |
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第2章の冒頭を読んだ時に、仕掛けはわかる。このサイトの投稿者ならおそらくみなそうだろう。
しかし真相解明が主のストーリーではないのでそこからがむしろ面白い。終わり方はちょっとあっけなかったが、痛快な締め方なので〇。 「アレックス」と似たような、物語全体に仕掛けられているスタイルだが、その発想や構成は斬新な感じがして、こういうネタがいくつもあるのならこの作家はすごいと思う。 とても楽しめた。 |
No.336 | 6点 | 後妻業- 黒川博行 | 2015/08/30 19:32 |
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老い先短い資産家の男を籠絡して財産をかすめ取る「後妻業」。稼業としてやっていないだけで、実情はそう、というケースは芸能界の年の差婚とかで実際あるんじゃない?(笑)
裏稼業の世界で生きるギラギラした人間性、悪趣味なブランド志向、金への執着がよく描かれている(知ってるわけじゃないけど・笑)。後妻業者・小夜子と、仲介役の柏木の悪行が暴かれていくのが本筋だが、暴いて追及していく側もクリーンな人間ではなく、「らしい」感じがして作品に雰囲気をもたせている。 ただ、ラストはえらく尻切れトンボな感じがしてしまったなぁ。もうちょっと丁寧に決着つけてほしかった。 |
No.335 | 5点 | ナミヤ雑貨店の奇蹟- 東野圭吾 | 2015/08/20 17:20 |
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「ナミヤ」という名前を「ナヤミ」とからかったことから始まった雑貨店の悩み相談所。店主もとうにこの世を去り、今や廃屋と化した雑貨店に逃げ込んだ空き巣3人組に起こる、不思議な出来事。ハートウォーミングなファンタジーもの。
児童養護施設に纏わる人間関係で、全体を通して次々につながっていく構成はさすがだが、ちょっとミエミエ感があったかな。後半になると登場した瞬間、「きっとあのときのあの人だ」とわかる。 第2章の「魚屋ミュージシャン」の話が一番よかった。父親の生き様にもグッと来た。 |
No.334 | 8点 | ミザリー- スティーヴン・キング | 2015/08/20 16:54 |
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人気作家ポール・シェルダンが自動車事故に遭い、偶然その現場から彼を助け出したのは彼の「ミザリーもの」作品に心酔しているファン、アニー・ウィルクス。ただアニーは「異常な」ファンだった―。
ポールを幽閉し、「自分の為だけに」ミザリー作品を執筆させようとするアニー。精神にも異常を来し、実は過去にも罪を犯しているアニーに、身も心もずたずたにされていくポールの苦しみ、痛み、恐怖。登場人物はほとんどこの2人しかいない展開でありながら、臨場感ある場面描写、リアルな心情描写に引き込まれる。 そして、徹底的な悪役であり、ポールにとっては憎悪の対象でしかないはずのアニーなのに、なぜかそれだけでは割り切れないような感情が描かれている。それは、生殺与奪の実権は完全にアニーが握っていながら、アニーが心から求めている「ミザリー作品」の実権はポールが握っているところに起因するのであろうが、要はアニーはイカれているけれども馬鹿ではなく、「ミザリー作品はポールが書く」というところを弁えているところが話に深みをもたせている。ポールだけでなく読んでいるこちらも、いつの間にかアニーに憐憫というか、可愛さというか、一方的に唾棄すべき存在ではなくなっていくのは私だけだろうか。 単なるサイコホラーではなく、そのあたりの2人の微妙な立場というか位置関係が、作品を秀逸ならしめている。 |
No.333 | 6点 | 魔女は甦る- 中山七里 | 2015/08/20 15:37 |
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原形をとどめないほどにバラバラ、ミンチ状にされた死体から始まる序盤から、一気に読みたくなるほど読ませる筆力はこの頃から健在。殺された青年、桐生隆の経歴、背後関係を明らかにしていくにつれ事件の背景が見えていくあたりはミステリなのだが、真相が明らかになってからの後半は完全にパニック映画の様相。
さらに結末があまり好きになれない。 そんな感じでいろいろと思いはあるが、読んでいるときはのめりこんでいたので、一応「楽しめた」で。 |
No.332 | 7点 | 夢幻花- 東野圭吾 | 2015/08/14 16:46 |
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アサガオがどういう意味合いを持つものなのかは読んでいくうちに大体見当がついた。最終的にはなんだか救いのない話って感じ…だけど、主人公と兄、家族についての複線の結末はよかった。
相変わらずの緻密な筋立てとリーダビリティ。よくもまぁ次から次へといろんなネタが…と感心してしまう。 |
No.331 | 5点 | 貘の檻- 道尾秀介 | 2015/08/14 12:06 |
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電車のホームで、主人公の目の前でホームに落ちて死んだ女性。それは、亡き父が「殺した」とされていた女性だった。父親を殺人犯とされ、故郷を追われて暮らしていた主人公。自身の結婚生活もうまくいかず心が病み、たびたび湧き起る妄想・夢想に、薬を服用して逃げながら生活していた。そんな主人公が女性の死を機に故郷に戻り、過去と向き合う決意をする―。
村を拓いた偉人を祭る祭事、水を引く穴堰、地元で崇めれられている名家など、土着的な旧村を舞台とした本格ミステリ。関わる人物の言動や残された写真などから、気付かれなかった真実が徐々に明らかになっていく展開は読みごたえがあり、ミステリの魅力は十分にあるといえる。 ただ、まさむねさんが書いている主人公の夢(妄想?)の部分は、私は「難」のほうの評価。随時挟まれているが読むのが煩わしく、一番の難点は真相解明に不要であったこと。京極夏彦の同じような構成だと苦に感じないのに、なぜだろう・・・。 |
No.330 | 7点 | 女王はかえらない- 降田天 | 2015/08/14 11:51 |
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小学校女子のスクール・カーストを題材にした学園ミステリ。何だったか忘れたけど、前にもこういう類を読んだ覚えがある。最近ちょくちょく見られますね、こういうの。子どもの残酷さと、歯止めの利かない怖さがうまく描かれている。
(ネタバレあり) 物語は子ども側からと、教師側から描かれた章で構成されているが、子どもたちがお互いをニックネームで呼び合っていることから仕掛けには薄々気づいていた。まぁ叙述トリックなのだが、それと分かっていても読んでいてストーリー自体が面白かった。このコンビ作家の今後の作品に期待。 |
No.329 | 8点 | 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 | 2015/08/14 11:34 |
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少年期に殺人を犯した前科者という異色の経歴を持つ弁護士、御子柴礼司。先に「追憶の夜想曲」を読んでいたので、御子柴の少年刑務所時代が描かれている本作は、ルーツがわかるという点でも非常に面白かった。
中山七里は非常に描写が優れた作家だと思う。場面や心情の描写が特徴的で、かといってレトリックを駆使しすぎてうるさすぎる感もなく、非常に引き込まれる。 悪役でありながら、実は徹した悪漢ではなく、奥底に人間的魅力を備えた御子柴礼司はとても惹きつけられるキャラクター。このシリーズいっぱい書いてほしい。 |
No.328 | 4点 | 吊るされた女- キャロル・オコンネル | 2015/08/14 11:25 |
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キャシー・マロリーの相棒、刑事ライカーの情報屋だった娼婦が吊るされた。美しい金髪は切られて口に詰めこまれ、周囲には虫の死骸。さまざまな推理や憶測が飛び交う中、マロリーは過去に起きた女性殺害事件との関連を考え、連続殺人鬼の仕業と見る。過去の事件について調べていくうちに、当時には見えていなかった真相が明らかになり・・・・。
素直な感想は、「読みにくかった」。なんでだろう。このシリーズをこれまでにも読んでいたら違ったのかな。とにかく、過去の事件の話と、現在の娼婦殺しの話(捜査)が混在している感じで、外国らしいウィットを含んだ登場人物のやりとりも、わかりにくさを助長している気がした。 |
No.327 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖6- 三上延 | 2015/08/14 11:14 |
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相変わらずの安定感。巻を重ねてもクオリティが落ちず、安心して購入することができる。
今回はまたもや太宰の稀覯本を巡る謎解きストーリー。ミステリとしてだけでなく、こうした文学に纏わるサイドストーリーが楽しめるのも本書の魅力。太宰って、本当に近年の作家で、直に親交や接触があった人がいるというのがなんかすごいなって思った。 どうやらもうすぐ本シリーズは終わりらしい。最後まで読み切ろう。きっと最後は栞子さんと母親の確執中心だろう。 |
No.326 | 5点 | 首折り男のための協奏曲- 伊坂幸太郎 | 2015/05/17 14:37 |
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「首折り男の周辺」、「濡れ衣の話」、「僕の舟」、「人間らしく」、「月曜日から逃げろ」、「相談役の話」及び「合コンの話」の7つの作品
趣向が凝らされた小粒の短編集。一話目「首折り男の周辺」が面白かったかな。「僕の舟」の話はでき過ぎ感が強かった。「人間らしく」(だったと思うが)塾のいじめの話は何の関係があったのか?私の理解力が追い付いてないのか。「月曜日から逃げろ」の趣向は〇。どこがスタートなのか?「相談役の話」は話の仕掛け以上に、嫌味な幼馴染の描写の方がなんか共感できた。「合コンの話」、見事なオチ。 |
No.325 | 6点 | 人質- 佐々木譲 | 2015/05/10 21:58 |
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冤罪で4年間刑務所暮らしを強いられた男、中島喜美夫が、札幌にある洒落たワイン・バーに居合わせた客を人質にとって立てこもり、自分が冤罪を着せられた当時の刑事部長の謝罪を求める。偶然(だんだん行き過ぎの感もしてきたが…)そこに居合わせた小島百合巡査。純粋な冤罪被害者の要求からの事件と思われたが、どうやら裏があるような―。
複数の事件を巧妙に一本につなぐことも多い本シリーズの中で、この作品は基本的に2本線で解りやすい。しかもこの仕掛けの発想は秀逸だと思った。 (ネタバレ) とはいえ、相手が絶対に公にできないネタでの脅迫なら、やはりわざわざ衆目を集める方法をとるよりも、徹頭徹尾陰でやったほうがよいのでは…。考えられる一番の理由は、人質となった家族にも本当のこと(つまり脅迫相手の汚い部分)が解らずに済むということだが…。いくら暗号的な文句でやりとりするとはいえ、HPのような公の場でやり取りするのもあまりに安易な気がするが… |
No.324 | 7点 | 密売人- 佐々木譲 | 2015/05/10 21:21 |
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釧路、函館、小樽の三か所でほぼ同じ日に起きた三つの不審死事件。身元をたどっていくと、3人には「道警のエスだった」という共通点があることが見えてきた。偶然だとは思えない。誰が、何のために、なぜこの日に―?
「エス」がらみの、警察の暗部を描くのは氏のお得意。佐伯・新宮、津久井らがそれぞれに捜査を進める中で見えない糸がだんだんと明らかになっていくパターンも。その過程が面白い。 タイトルから、てっきり麻薬犯罪のような話かと思っていたが、読み終えて本当の意味が分かった。なるほど。 唯一、篠原学園の話は必要だったのか?違う側面から本筋に絡んでくるのかと思ってたのに…。 |
No.323 | 7点 | 巡査の休日- 佐々木譲 | 2015/05/10 20:56 |
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以前、ストーカーに襲われて危機一髪のところを、小島百合巡査に助けられた村瀬香里。その香里のもとに「見つけたよ、気をつけな」という脅迫めいたメールが届く。以前のストーカー、鎌田は療養中の病院を脱走していた。鎌田の復讐か…?警戒を強め、香里の護衛にあたる道警。
以前は風俗店に勤めていた香里も、事件後は店を辞め、今は「よさこいソーラン」の舞踊チームに所属し、演舞の中心的存在として活躍中。時は奇しくもその「よさこいソーラン祭り」の時期。演舞を休むわけにはいかない、という香里を護衛するため、小島百合巡査も演舞に参加することに…! よさこいソーラン祭りの時期の道警の多忙・混乱ぶり、その中で奮闘する警官たちの様子がよくわかり興味深い。本シリーズは全てそうだが、事件発覚から解決までの数日を一日一日描写するテンポのよさ、スピード感が〇で、非常に読みやすい。 事件の真相はかなり前の方でわかってくる。ミステリを多く読んでいる人なら大抵気付くだろう(伏線の示し方がわかりやすすぎる)。であるが、やはり面白い。 このシリーズは突出して評価が高いものにはならないが、基本水準が高い。ハズレと感じたものはない。 |
No.322 | 4点 | 解錠師- スティーヴ・ハミルトン | 2015/05/02 21:24 |
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家庭事情や生い立ちの状況から、幼くして金庫破りにならざるを得なかった青年の物語。金庫破りになった経緯と、現代の話が交互に展開される構成だが、両者の時期が近くで読むのに混乱した。最後に明かされる主人公の過去の真実は、そうして引っ張った長さに見合うだけの深みは感じず、「ふうーん」と思う程度だった。 |