海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

虫暮部さん
平均点: 6.21点 書評数: 2040件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.260 10点 クビシメロマンチスト- 西尾維新 2015/07/22 14:31
 何度目の再読か。ミステリ部分は小粒かもしれないが、ストーリーとキャラクターにガツンとやられたこの作品。私のミステリ生涯ベスト10に選びます。巫女子ちゃんは印象深かったミステリ登場人物ベスト5に入ります。何度読んでも後半1/3は指が痛いよ~。
 “X/Y”についての色々な考察をネットで読んだがすっきりしない。あれが瑕と言えば瑕かな。

No.259 5点 パズル崩壊- 法月綸太郎 2015/07/22 14:30
 音楽関係の無粋なネタバレを幾つか。タッカー、リード、モリスン、ケイルはいずれもザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(米バンド)のメンバー名。「トランスミッション」で“僕”が思わず言う“「ルー・リード?」”も同じひと。
 ニール・ヤングの未発表曲を歌うシーンがあるが、レコード店の試聴室から漏れ聴こえる「ヘルプレス」も彼のナンバー。
 「GALLONS OF RUBBING ALCOHOL FLOW THROUGH THE STRIP」はニルヴァーナ(米バンド)のアルバム『イン・ユーテロ』の最後にボーナス・トラックとして収録されているナンバー。原典に三点リーダは付いていない。
 巻末の JASRAC 出願済み表示で、ジョイ・ディヴィジョン(英バンド)の「TWENTY FOUR HOURS」なんて作中に出て来たっけと思ったが、巻頭の4行の詩(というか歌詞)がそれである。
 「SHADOWPLAY」の表記の仕方について、“acting out your own death”でひとかたまりの意味であって、行換えの位置が適切ではないと思う。

No.258 5点 身元不明 特殊殺人対策官 箱崎ひかり- 古野まほろ 2015/07/22 14:29
 相変わらず必要以上に読みづらい書き方。もはやそれを如何に読み解くかも含めて古野まほろを読む醍醐味となっている。が、もう少し伝わり易くしたほうが、例えば加害者のやむにやまれぬ心情とかが感じ取れる気はする。
 ところで、この犯人隠匿のトリックは、島田荘司『占星術殺人事件』の変奏である。純粋に自分で謎が解けたのではなく、“あの話に似ているなぁ~”という形でなんとなく見当が付いてしまったのは勿体無かった。

No.257 5点 太宰治の辞書- 北村薫 2015/07/16 08:21
 『六の宮の姫君』よりは判り易かったけど……北村薫にはもっと純粋なミステリを書いて欲しい。

No.256 5点 チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン 2015/06/30 09:14
 エラリーは見当違いな推理で必要以上に捜査を引っ掻き回していないか。殺人の謎そのものよりも、それをきっかけに発生するコメディ、を楽しむべきなのだろうか?
 この事件最大の不思議は、“家具をドタバタ動かしているのに、隣室にいた人間は気付かなかったのか?”だと思うのだ。解決してみれば、その謎は確かに解けている……。

No.255 5点 天国ゆきカレンダー- 西本秋 2015/06/24 09:01
 基本設定がああである以上、最後に本当に死んではオチにならないのであって、その“転向”の説得力の如何が作品の出来を決めるわけだが、畑野の仕掛けた罠はシンプルながら有効打で合格点と言える。ミステリというよりは青春小説。

No.254 3点 スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 2015/06/24 08:59
 何か変だ。大いにネタバレするが、遺体移動のトリックに関して。
 母屋にいた犯人は、どうやって離れに眠り込んだ酔っ払いがいることを知ったのか?

 (また、重りの代わりなんて何でもいいわけで、いつ目を覚まさないとも限らないリスキーな人間を使う必然性は乏しいのでは?他人の眠りの深さを外側から測ることは出来ないのだから)

No.253 6点 暗闇・キッス・それだけで- 森博嗣 2015/06/16 14:38
またぞろ近年の森博嗣作品によくある、面白いフレーズが散見されるものの、ミステリとしての責任を途中で放棄したような、尻切れ蜻蛉の物語、かな? と途中までは思ったのだが、あにはからんや結末ではそれなりに納得出来るところに着地し、所謂パズラー的な良さではないにしても、微妙な切なさを後味で残す佳作であった。森博嗣はこのあたりを最低ラインに設定して欲しい。

No.252 4点 スペイン岬の秘密- エラリイ・クイーン 2015/06/11 08:32
 訳文が古いせいかなんだか読みづらいし、謎のサイズの割に話が長過ぎる。“最も犯人らしくないものが犯人”という勘でこのひとかなと思ったら当たってしまった。なんだかなぁ。“キッド船長のとほうもない失策”などといった文言はアンフェアではないのだろうか。

No.251 6点 ビブリア古書堂の事件手帖6- 三上延 2015/05/20 10:43
 謎の構造としては面白い。が、私には稀覯本を求めて右往左往したり刑事事件を起こしたりするキャラクターが愚者にしか思えない。割に合わないことしてるな~という感じ。
 古書店は稀覯本に価値があるという価値観を率先して支えている筆頭なわけで、栞子さんも広義の共犯者というか、自縄自縛に陥り気味、といった印象である。

No.250 6点 化石少女- 麻耶雄嵩 2015/05/20 10:42
 私もこんな、生徒会役員がこぞって殺人を企てるような高校で青春を謳歌してみたかった。自分が被害者にならない限り。
 エピローグでの語り手のショックは上手く伝わってきたので、作者の意図は成功していると思う。
 難を言うなら、第六章で、隠滅されずに“痕が残っていた”のは恣意的なミスではないか。

No.249 8点 掟上今日子の推薦文- 西尾維新 2015/05/07 09:10
 登場人物が4人(うち2人は探偵と語り手)という、ミステリとしてはなかなか挑発的な構造で、しかもストーリー自体は結構単純で、紆余曲折で引っ張るわけではない、にもかかわらずこのサイズの長編に仕立て上げて面白く読めてしまうのだから作者の筆力恐るべし。
 ところでこのシリーズで私の印象に最も残るのは、一見萌えキャラのような今日子さんの“忘却探偵”ゆえの深い孤独(前作の語り手・隠館くんが影も形も無い)。そしてそれを平然と飲み込んでいるっぽい彼女のメンタリティの不気味さ、である。

No.248 6点 地球儀のスライス- 森博嗣 2015/04/13 07:34
 ミステリ度の高いものは面白かったが、そうでないものはそうでもなかった。「僕に似た人」はなんだかさっぱり判らん。何か裏の意味があるの……?

No.247 5点 恋と禁忌の述語論理- 井上真偽 2015/03/10 18:25
 ただややこしくしているだけ……という思いが半分。一方で、こういう味付けを加えることで、割と古典的なミステリのネタを上手く転がすのはそれはそれでアリかとも思う。
 ただ、カヴァーイラストが『ビブリア古書堂の事件手帖』と同じ越島はぐ、というのはあざとい。これちょっと反則では?

No.246 5点 天空の蜂- 東野圭吾 2015/03/10 18:25
 出入者管理表にシャープペンシルで書き込んだ名前を消して書き直したなら、元の名前の筆圧が残ってしまうから、注意深く調べれば解読出来るのでは。出来る出来ないはともかく、その可能性について全く言及されていないので、“間抜けどもめ!”と叫んでしまった。 

No.245 6点 有限と微小のパン- 森博嗣 2015/03/10 18:23
 一連の“事件”に、“犯人役”は設定されていない(よね?)。ただ単に不可解な出来事が続くだけ。それって、萌絵を観客に想定したアトラクションとしては戦略ミスではないのか。全てフェイクだと見抜かないと勝てない知恵比べ、というのは企画としてアンフェアでは。きちんとしたトリックと犯人が存在して手掛かりを辿ればその謎を解ける、というほうが絶対に萌絵は喜ぶと思う。犀川先生が気付かなかったらどうやって幕を下ろすシナリオだったのか?

 というか、先生の推理は作者のズルではないかと思うのだ。フェイクだと示す積極的な手掛かりは、見当たらない(ラヴちゃんが見たドラゴン?)。“どう考えても矛盾している、だから全てフェイク”というのは、あらゆる可能性のひとつたりとも見落としていない、という絶大な自信が無ければ出て来ない発想である。一方で先生は“現象が不可解に見えるのは観察の精度が低いからだ”といったことも言っているし、賢いひとほど自分が見落としをした可能性を排除しないと思う。例えば“窓から出入り可能なサイズのロボット複数を使った犯行”なんて仮説はどうか。あの推理がアリならば、世界中のへぼ探偵が自分の推理力の無さを棚に上げて“全て絵空事なのです”と喚き始めてしまう。

 再読してみると真賀田四季の才というのはあまり納得出来る書かれ方してないなぁと思った。優秀な学者なのは判るけど、アンタ結構舌先三寸で凌いでないか? という感じだ。

 ところで、犀川先生は“瀬戸千衣”と事が始まる前に対面しているが、顔を見て判らなかったのか。 整形した?

No.244 6点 絶叫- 葉真中顕 2015/02/25 15:29
 話題になっている社会問題を幾つか上手に組み合わせただけ、という批判をもはや前提としてこういうものを書ける度胸も立派だと感じる最近の私である。
 紋切型の表現が随所に見られるが、文体のオリジナリティとかは端から求めていないからまぁ良いのか。最後の捻りは、仰天という程ではないが上手くはまって納得出来た。二人称の不自然な語り口も、少々強引ながら種が明かされれば腑に落ちた。何より神代という、妙な魅力を持つ鬼畜キャラが最大の収穫。

No.243 5点 しだれ桜恋心中- 松浦千恵美 2015/02/19 12:00
 文楽の世界の群像劇としてはまあ面白い。人形が喋ったり呪ったりが“現実”の領域に引っ張り込まれているのも、違和感は無かった。
 ただ、ミステリとしてのカタルシスが足りない。結末で一連の出来事の裏側にあったアレコレが暴露されるけれど、成程そういうことだったのかと腑に落ちるものではない。不条理なりにもっと筋の通った理屈が欲しかった。そういうものを期待して読んじゃったのはアガサ・クリスティー賞受賞作だからで、つまりこれは余計な看板ではないか。

No.242 5点 「ご一緒にポテトはいかがですか」殺人事件- 堀内公太郎 2015/02/19 11:56
 こういう手軽な芸風を作者自身が志向しているなら、まぁいいのかなぁ。後に残るものではないが、読んでいる一瞬は確かに面白かった。
 薬を食品に混ぜてリピーターを仕立てても、ファストフードの価格では採算が取れないと思う。

No.241 6点 アールダーの方舟- 周木律 2015/02/19 11:54
 ミステリとしては定型的だし、“ありがちな変人キャラクター”ばかりだし、もう容疑者が残っていないじゃないかという意味で先が読めちゃったのだけれど、作者の“これを書くべきだ”という強い意志を感じられるところは良いと思った。
 ウェスレー博士殺害時の謎解きで、ピッケルならレンズは身体の中に押し込まれるが針金なら抉り出されて落ちる、という理屈は苦しい気がする。何が違う?

キーワードから探す
虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.21点   採点数: 2040件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(111)
アガサ・クリスティー(80)
西尾維新(73)
有栖川有栖(52)
森博嗣(50)
エラリイ・クイーン(49)
泡坂妻夫(43)
歌野晶午(29)
小林泰三(29)
島田荘司(26)