皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1848件 |
No.248 | 5点 | 天空の蜂- 東野圭吾 | 2015/03/10 18:25 |
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出入者管理表にシャープペンシルで書き込んだ名前を消して書き直したなら、元の名前の筆圧が残ってしまうから、注意深く調べれば解読出来るのでは。出来る出来ないはともかく、その可能性について全く言及されていないので、“間抜けどもめ!”と叫んでしまった。 |
No.247 | 6点 | 有限と微小のパン- 森博嗣 | 2015/03/10 18:23 |
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一連の“事件”に、“犯人役”は設定されていない(よね?)。ただ単に不可解な出来事が続くだけ。それって、萌絵を観客に想定したアトラクションとしては戦略ミスではないのか。全てフェイクだと見抜かないと勝てない知恵比べ、というのは企画としてアンフェアでは。きちんとしたトリックと犯人が存在して手掛かりを辿ればその謎を解ける、というほうが絶対に萌絵は喜ぶと思う。犀川先生が気付かなかったらどうやって幕を下ろすシナリオだったのか?
というか、先生の推理は作者のズルではないかと思うのだ。フェイクだと示す積極的な手掛かりは、見当たらない(ラヴちゃんが見たドラゴン?)。“どう考えても矛盾している、だから全てフェイク”というのは、あらゆる可能性のひとつたりとも見落としていない、という絶大な自信が無ければ出て来ない発想である。一方で先生は“現象が不可解に見えるのは観察の精度が低いからだ”といったことも言っているし、賢いひとほど自分が見落としをした可能性を排除しないと思う。例えば“窓から出入り可能なサイズのロボット複数を使った犯行”なんて仮説はどうか。あの推理がアリならば、世界中のへぼ探偵が自分の推理力の無さを棚に上げて“全て絵空事なのです”と喚き始めてしまう。 再読してみると真賀田四季の才というのはあまり納得出来る書かれ方してないなぁと思った。優秀な学者なのは判るけど、アンタ結構舌先三寸で凌いでないか? という感じだ。 ところで、犀川先生は“瀬戸千衣”と事が始まる前に対面しているが、顔を見て判らなかったのか。 整形した? |
No.246 | 6点 | 絶叫- 葉真中顕 | 2015/02/25 15:29 |
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話題になっている社会問題を幾つか上手に組み合わせただけ、という批判をもはや前提としてこういうものを書ける度胸も立派だと感じる最近の私である。
紋切型の表現が随所に見られるが、文体のオリジナリティとかは端から求めていないからまぁ良いのか。最後の捻りは、仰天という程ではないが上手くはまって納得出来た。二人称の不自然な語り口も、少々強引ながら種が明かされれば腑に落ちた。何より神代という、妙な魅力を持つ鬼畜キャラが最大の収穫。 |
No.245 | 5点 | しだれ桜恋心中- 松浦千恵美 | 2015/02/19 12:00 |
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文楽の世界の群像劇としてはまあ面白い。人形が喋ったり呪ったりが“現実”の領域に引っ張り込まれているのも、違和感は無かった。
ただ、ミステリとしてのカタルシスが足りない。結末で一連の出来事の裏側にあったアレコレが暴露されるけれど、成程そういうことだったのかと腑に落ちるものではない。不条理なりにもっと筋の通った理屈が欲しかった。そういうものを期待して読んじゃったのはアガサ・クリスティー賞受賞作だからで、つまりこれは余計な看板ではないか。 |
No.244 | 5点 | 「ご一緒にポテトはいかがですか」殺人事件- 堀内公太郎 | 2015/02/19 11:56 |
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こういう手軽な芸風を作者自身が志向しているなら、まぁいいのかなぁ。後に残るものではないが、読んでいる一瞬は確かに面白かった。
薬を食品に混ぜてリピーターを仕立てても、ファストフードの価格では採算が取れないと思う。 |
No.243 | 6点 | アールダーの方舟- 周木律 | 2015/02/19 11:54 |
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ミステリとしては定型的だし、“ありがちな変人キャラクター”ばかりだし、もう容疑者が残っていないじゃないかという意味で先が読めちゃったのだけれど、作者の“これを書くべきだ”という強い意志を感じられるところは良いと思った。
ウェスレー博士殺害時の謎解きで、ピッケルならレンズは身体の中に押し込まれるが針金なら抉り出されて落ちる、という理屈は苦しい気がする。何が違う? |
No.242 | 7点 | 姫君よ、殺戮の海を渡れ- 浦賀和宏 | 2015/02/02 12:12 |
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色々突っ込みどころはあるが、ラストには意外と納得させられてしまった。語り手が情緒不安定で下らないミスを繰り返すのがイライラする、のが楽しい。 |
No.241 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖5- 三上延 | 2015/01/29 20:24 |
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風雲急を告げた栞子さんと母と五浦の有様からは目が離せない。が、各話のミステリ要素が栞子さんストーリーの単なる賑やかしのように思えてしまうのは困った。“本を巡る謎”という縛りがパターン化を招く制約になっていないか。でもそれがないと栞子さんのキャラクターは成立しないかなぁ……。
ところで、直筆だからって作家の草稿をありがたがる気持が判らない。書道や絵画じゃないんだから。文章によるコンテンツはいくらコピーしても本質は変わらないじゃないか。 |
No.240 | 4点 | 幻肢- 島田荘司 | 2015/01/27 15:02 |
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精神状態が不安定なひとに対して周囲の者たちが口裏を合わせ一芝居打つ、という設定、島田荘司は4作目か(?)。割と何でもアリになっちゃう、ユメオチに準ずるもので、あまり褒められたものではないと思う。
前半は医学小説(?)。予想出来る後半のどんでん返しは幾つかあったが、その中で最も平和な結末に落ち着いた、という感じ。 ところで、大学生が同乗者を巻き込む事故を起こして、親が何の対応もしていない? “ドッペルゲンガー”ってちゃんと雅人の口から聞いていたじゃないか。 通俗的な恋愛模様もいただけない。結局、小暮さんはどういうポジション? |
No.239 | 4点 | クローバー・リーフをもう一杯- 円居挽 | 2015/01/22 20:32 |
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なんか流行のライトミステリの真似をしただけという感じ。登場人物の行動原理もピンと来ない。“ルヴォワール”シリーズの次の一手がコレ、というのは、せっかく確保したマニアックなファンを手放してしまう戦略ミスでは? |
No.238 | 5点 | 清らかな煉獄- 風森章羽 | 2015/01/19 12:07 |
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器用な作家が既製品を上手にサンプリングして組み合わせた感じ。器用で悪いかといえばそんなことはなく、良く出来た作品ではあるが、ツルツルと小奇麗で引っ掛かりが無い印象。 |
No.237 | 5点 | テミスの剣- 中山七里 | 2015/01/19 12:04 |
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前半の“冤罪の作り方~それが露見して大騒ぎ”という流れは、しっかり書かれてはいるものの、ことさら目新しい話ではなく、“何度も読んだ本をまた読み返した”ような気分。後半も取って付けたような“意外な展開”で、たいしたことはない。
四章。仮釈放された迫水の心情描写、及び渡瀬と白須の対話は面白かった。 |
No.236 | 5点 | 今出川ルヴォワール- 円居挽 | 2015/01/19 12:04 |
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シリーズ3作目でミステリ要素は後退し、というか第一章(前半3分の1)に押し込んで、これで義理は果たしたとばかりに残りはギャンブルによるバトルに突入。意外に楽しめた。あくまで“意外に”であって、なにより“鳳”という遊戯があまり面白そうに見えない。あと、撫子という名前が西尾維新“物語シリーズ”の千石撫子と混ざって困る。 |
No.235 | 4点 | 烏丸ルヴォワール- 円居挽 | 2015/01/13 10:52 |
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まわりくどい書き方。長さに比例する面白さが得られたとは言い難い。 |
No.234 | 5点 | 未来探偵アドのネジれた事件簿- 森川智喜 | 2015/01/13 10:51 |
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タイムパラドクスは苦手だ。こまごま説明されてもどこか納得しきれない部分が残る。その点、本作は割と大雑把に“そういうもんなのよ”というスタンスで片付けているので助かる(笑)。ドラえもんやのび太があまり後先考えずにタイムマシンをガンガン使っても話はなんとなく収まる、みたいな印象。新しい試みをしようという姿勢は買いだが、ミステリにもSFにもなりきれなかったきらいがある。そういう軽さが狙いだとしても、少し物足りなかった。 |
No.233 | 7点 | 怪しい店- 有栖川有栖 | 2015/01/13 10:50 |
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どの短編も良いが、中でも「ショーウィンドウを砕く」で描かれる加害者の動機の微妙な心理に説得力を感じた。が、安易なミスをポロッとやっちゃうのは如何なものか。「潮騒理髪店」は旅行記のような面白さはあるがミステリ的には少々強引な気がする。
そしてやはり全篇に亘って、文章のさりげない巧みさが素晴らしい。 |
No.232 | 6点 | 丸太町ルヴォワール- 円居挽 | 2015/01/08 08:03 |
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ネタが出尽くした本格ミステリにおける処世術、という感じ。悪い意味ではなく、成程こういうやり方もあるか、と思った。“携帯電話の電波がペースメーカーに及ぼす影響”という点にどの程度リアリティがあるのか判らないが、作品世界内での“設定”ということでまぁいいか。 |
No.231 | 6点 | 妖盗S79号- 泡坂妻夫 | 2015/01/05 12:19 |
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「庚申丸異聞」「南畝の幽霊」「檜毛寺の観音像」が面白かった。見て判らないほど細かく裂いてセーターに編みこんだ日本画を復元って、理屈はともかく現実に可能なんだろうか。「癸酉組一二九五三七番」だけは現金を頂戴しているわけで、最後に語られるS79号の行動原理とちょっとずれているのでは。 |
No.230 | 7点 | クラウド- 門谷憲二 | 2014/12/26 20:28 |
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作者の本業は作詞家で、'70年代フォーク・シーンから登場したひと。代表作は「通りゃんせ(佐藤公彦)」「君は薔薇より美しい(布施明)」等。そっち側からの軽い興味で手に取ったが、作詞家の余技などではない骨太な作品で失礼ながら少々驚いた。但し、あまり読まないジャンルなので、舞台設定の(個人的な)目新しさに紛れてストーリーへの評価が甘くなっているかも。
日本中国台湾の微妙な綱引き関係を背景に天才ハッカー同士の対決と警察機構の諸々を描いたサスペンス、といった内容。ミュージシャンが書いた小説などにありがちな雰囲気モノでは全くない。かなりの知識もしくは下調べの上で複数の陣営の複雑な思惑を緻密に描いている。 瀬川、正宗、あかねの“瀬川チーム”のエピソードが印象的。 最終章で突如、幻想小説みたいになるのも、「名探偵」といった解説役が不在な以上まぁアリかなあと。ただ、明かされた“結城情報”の中身には失笑してしまった。 あと上下巻に及ぶのはちょっと長過ぎ。キャラクターが矢鱈多い、のはともかく、警察関係者(特に上層部)の印象が似通っているのは、しかたないかもしれないが物足りなかった。 |
No.229 | 6点 | 公開処刑人 森のくまさん-お嬢さん、お逃げなさい-- 堀内公太郎 | 2014/12/16 20:37 |
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叙述トリックを用いた構成は殊更目新しいものではないが、ストーリーときちんと噛み合って効果を上げていると思う。単なる“第二弾”ではなく、前作を上手く捻った続編である。 |