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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.528 3点 臓器賭博- 両角長彦 2018/12/25 10:24
 ギャンブルは運否天賦と言う側面が大きなキモであるが、フィクションの場合は結局作者の都合で勝負が進むんだよな~、なんて思ってしまう時点で私にギャンブル小説は向いていない、と今更気付いた。勿論それだけでは終わらない仕込みが為されてはいるが、さほど面白いトリックでもない。

No.527 7点 探偵AIのリアル・ディープラーニング- 早坂吝 2018/12/20 12:13
 ライトな怪作。安いと言えば安いのだろうが、展開が速くて退屈はしない。探偵がAIで試行錯誤を一瞬で済ませるからね。味わいに欠ける、通常のミステリの冗長な部分を回避している、どちらとも取れるその手の作品だと踏まえた上で、私は面白かった。EQネタもあり。

No.526 8点 凜の弦音- 我孫子武丸 2018/12/19 11:22
 グッジョブ!
 名前の通り凜とした生真面目な少女の成長譚から、そもそも堅苦しい様式を孕む弓道を軸とすることで説教臭さを払拭。個のキャラクター性ではなく、各々の関係性で話の流れが紡がれるところも心憎い。ミステリ要素の無い話もあるが、それは青春小説としての筆がノッた結果ミステリは無くても成立しちゃったということではないか。盛り過ぎを控えてこれで充分、と肯定的に捉えたい。頑張れ中田君。
 強いて言えば第三話はちょっとイヤだな。“こういう謎があるから解いてみろ”と言えば良いのであって、本気で騙しに行くことは無い。これさえ無ければ“皆中”なのに。

No.525 8点 外天楼- 石黒正数 2018/12/18 11:27
 桜場刑事が館&ダイイング・メッセージに挑む捜査録は何度読んでも爆笑してしまう。ラストシーンはあまりに切ない。自在に行き来する振幅こそ漫画の利点。判り易さって大事だねっ。
 ところで“外天楼”って何だろう。造語? だったらなかなかセンスのあるゾクじゃないか。前例が無い文字列なのでネット検索すれば結果を本書が独占。かといって珍しい漢字を用いて目を引くでもなく、大きな辞書なら載っていそうな佇まい。とてもいいタイトルだと私は思う。

No.524 4点 ドッペルゲンガーの銃- 倉知淳 2018/12/17 10:54
 猫丸先輩ものではほんわかとした雰囲気を醸し出す軽めの文体が、ここではあまり上手く機能していない。登場人物に深みが無いせいもあり、小説を読んだというより“説明を聞かされただけ”と言った読後感。トリックは悪くないので勿体無いが、ミステリとしての良し悪しだけでは評価しきれない気分である

No.523 6点 Pの密室- 島田荘司 2018/12/17 10:53
 「鈴蘭事件」。とある知識を持っているから誰がどうだと言うのは論理的だとは思えない。かく言う私もこのネタは小学校の時に漫画で読んで知っていた。
 「Pの密室」。この偽装工作、本人は冷静なつもりでも実際は混乱していてだんだん何の為に何をやっているのか判らなくなっちゃったんじゃないの? と言う気がした(それはそれで面白い)。
 どちらもさほど高評価出来る謎ではないのだが、一方で紛れも無く島田ブシであって、ミステリとしての良し悪しだけでは評価しきれない気分である。

No.522 8点 インド倶楽部の謎- 有栖川有栖 2018/12/10 11:24
 諸々の要素がバランス良く配された佳品。花蓮のまっすぐなキャラクターが良い。
 気になったのは、探偵事務所のパソコンに壊されたものとそうでないものがある点。情報が共有されていないと犯人が信じる理由は無い。
 そして動機。そうきたかと驚きつつ何か既視感がある。これって'90年代の長編『G***』の鏡像では?

No.521 7点 Xの悲劇- エラリイ・クイーン 2018/12/03 14:30
 もう殺人は起こりません、とレーン氏が言ったけど、ウルグアイ領事館訪問より前だし、根拠は何も無いよね。また、死体が上手く潰れるかどうかは確実性に欠けるのでは。全体的にレーン氏のスタンスが中途半端でいたずらに事件を引き伸ばした印象を受ける。まぁ有名作が粗探しの対象になるのは宿命ってことで。

No.520 7点 零號琴- 飛浩隆 2018/11/28 10:29
 際限なく広げた風呂敷で惑星規模の市街劇に美少女アニメを絡めどこまで飛んでいくかと思いきや、いつの間にか急降下していて剥いても剥いてもまだある裏設定、なにぶん600頁の大冊であるうえ読み易いとは言えない文体なので質量共に大な言霊をバリバリと齧り飲み下すのは快楽と消耗の併せ技、恐れ入谷の鬼子母神。ざっくり評すなら酉島伝法『皆勤の徒』を裏返してエンタテインメント度を高めたような印象、と言えなくもない。ふぇ~。
 作者は小松左京~山田正紀~神林長平といったラインに連なる重要作家ながら寡作。雑誌掲載後改稿に7年費やしようやく書籍化。 

No.519 8点 QJKJQ- 佐藤究 2018/11/19 10:57
 設定は西尾維新、キャラクターは辻村深月、スピード感は舞城王太郎で結末はいつのまにか浦賀和宏? 真似と言うことではなく、新しいヴィジョンのピースとして方法論を巧みに使い回して組み上げている。その結果浮かび上がる風景は確かに新しい。やけに冷静な章題が効果的。いかにもメフィスト賞、なんだけど江戸川乱歩賞受賞作なんだなこれが。

No.518 5点 探偵は教室にいない- 川澄浩平 2018/11/19 10:52
 なかなかの人物造形、但し地味、なのは悪いことではないけれど、同系統他作品との差別化という点で弱い。偏見を承知で書くと、この手の話って“そこそこ筆力はある人が一か八かを狙わない時の安全策”になっていないだろうか。
 ところで、女性の169センチって(中学生にせよ)そんなに珍しい高身長? これって要するに“どのくらいの範囲を平均値として認識するか”という問題であって、真史は先入観ゆえに気にする、歩は視野が広いので特に気にしない、と対比にする手もあったのでは。

No.517 7点 鬼畜の家- 深木章子 2018/11/16 12:41
 なかなか見事に決まっている。ただ少々キャラクターが紋切り型。どんな人にもひとつふたつ変な癖ぐらいあると思うが、本作はレッテルをそのまま戯画化したようなつるっとした登場人物ばかりに感じる。実はそれって島田荘司にも通じる書きっぷりで、そんなところがツボに嵌って有利だったのかも? 島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー新人賞受賞作品。

No.516 7点 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 2018/11/15 13:39
 跳ね橋が上がった状態で壊れたら、斜塔に閉じ込められてしまう。こんなリスキーな屋敷には住みたくないなぁ。
 必要以上に戯画化された俗物的な登場人物がギャグにしか見えないのが難点。太鼓持ちのお追従とか、女性同士の確執とか。紋切り型のキャラクターには却ってそんな奴いないだろと感じてしまうのだ。その意味で、特に前半もう少し作品世界に入り易い書き方なら良かったのに。

No.515 5点 死者の雨 -モヘンジョダロの墓標-- 周木律 2018/11/13 12:10
 “情報は豊かだが情感は乏しい”といった悪評ももう返上だろう、とか書きたかったが、無理! どうにも硬い。登場人物が単なる記号。この作風は需要があって主体的に選んでいるものなのだろうか? 私は“小説とはこうあるべき”という思い込みにまだまだ縛られているだろうか?

No.514 7点 ハコヅメ ~交番女子の逆襲~- 泰三子 2018/11/13 12:06
 地元の市民フェスティバルに出店参加したのですが、会場警備の警察官をチラホラ見かけた時、自分の中で彼等に対する好感度が随分上がっているのに気付いてびっくりしました。『ハコヅメ』の影響大。警察庁が絵心のある職員を抜擢して始めた非公式イメージアップ・キャンペーンではないかと本気で疑っています。牧高さんが好き。

No.513 7点 奇跡の男- 泡坂妻夫 2018/11/05 10:45
 洒脱な語り口に適度な作り物っぽさを漂わせた泡坂節を堪能出来る短編集なのだが、大ネタの表題作が冒頭に配置されているのでそれ以降が相対的に地味に感じられてしまう点が痛し痒し。五百円硬貨の裏表について誤認があるけれど、作者が故人だからもう修正はされないのだろうか?

No.512 8点 夏を取り戻す- 岡崎琢磨 2018/11/05 10:42
 これは予想外の出来。『珈琲店タレーランの事件簿』ではミステリ要素が時々頭でっかちに感じられたが、本作では大人と子供の視点を並列することでクリア。トリックのしょぼさも、怪人二十面相じゃないんだから、或る種のリアリティだ。しかし何よりも、ストーリー・キャラクター・文体の向こうから感じられる作者の熱量が多少の瑕疵を無効化している。同時代の作家のだれそれに作風が似ているみたいなことは、ミステリの構造的な問題として最近あまり目くじらを立てなくなった私である。

No.511 6点 ルビンの壺が割れた- 宿野かほる 2018/11/02 11:37
 過大評価は避けたいが、つい一気読みさせられるくらいの瞬発力はある。居酒屋の壁を殴るエピソードとその解析が印象的だった。あと、相手の反感を買わぬよう慎重に話題を選んで手探りする感じ、私は寧ろリアリティを感じた。

No.510 5点 内なる宇宙- ジェイムズ・P・ホーガン 2018/10/31 12:25
 スパイ・スリラーかと思えばいつの間にかファンタジー。盛り沢山ゆえに冗長。場面場面で面白いところはあっても、ひとつの物語としての流れが悪い。タイトルである Entoverse のネタは、このシリーズである必然性が希薄なのだから、独立させて別の話にした方が良かったのではと思う。

No.509 7点 美少年M- 西尾維新 2018/10/26 11:09
 どこが探偵団だって感じでミステリ度がこうまで下がり、単なるキャラクター小説になってしまうと、私は好きだ、と言う以外に褒め言葉が思い付かなかったりして。不穏な結末が次巻への期待を掻き立てるが、果たして……?
 シリーズ中、表紙は本書が一番。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1848件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(99)
西尾維新(72)
アガサ・クリスティー(68)
有栖川有栖(51)
森博嗣(49)
エラリイ・クイーン(47)
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皆川博子(24)