皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.21点 | 書評数: 2006件 |
No.1226 | 9点 | 絶望ノート- 歌野晶午 | 2022/06/26 11:56 |
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面白過ぎて評しづらいな。ビデオのアップロードについては未消化な感じがある。刑事と探偵の会話が尻切れ蜻蛉なのも気になる。しかし、歌野晶午作品は概ね読んだが、私はこれが一番好き。 |
No.1225 | 7点 | 舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵- 歌野晶午 | 2022/06/26 11:55 |
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ちゃんと探偵しているひとみが、しかも中学生なりの関わり方だから中途半端で、それ故 “謎の完全な解明を目指さないシリーズ” 。私は良いアイデアだと思う。
「白+赤=シロ」の “隠し金庫” は、自宅で実践してみた。アレを更に捻ってああいう形で謎に組み込むとはなかなか凝っている。解明部分のカタルシスが凄い。 小説に於いて、話し方が読者の認識に与える影響の大きさを改めて感じた。それだけに、“話し方と外見のギャップ” と言うキャラクター設定がここでは生きてないんじゃないか。漫画じゃないんだから。どうしても御嬢様&ボーイッシュのイメージから抜け出せなかった。 |
No.1224 | 4点 | 「新説邪馬台国の謎」殺人事件- 荒巻義雄 | 2022/06/26 11:52 |
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邪馬台国と殺人事件の謎を直接結び付ける荒業は良いが、他の部分はミステリとしての構造が雑に思える。
荒巻義雄は、SF作品ではそれなりに雰囲気作りに貢献する文体なのに、ミステリ系は妙に通俗的。流行の伝奇ものでも書こうかな、だったらもうちょっと一般受けする文体に寄せた方がいいな、と言う心算がやり過ぎて戻せなくなった、って印象。 |
No.1223 | 8点 | メルキオールの惨劇- 平山夢明 | 2022/06/20 11:53 |
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目の前には汚泥が積み上げられており、それを掻き分けて底に至ると、そこには輝きのようなものが見出される。明らかに宝石ではないけれど、或る種の美しさではある。何某かの感動を覚えたことは間違いない。但し、泥の量を鑑みると、割りに合うのか判断は難しい。
平山夢明を読むことは、自らの耐性を測ると同時に、決して麻痺しきってはいないと確認する行為であるが、それ自体によって状態が悪化することもあり得るので注意が必要だ。 |
No.1222 | 8点 | 誰のための綾織- 飛鳥部勝則 | 2022/06/20 11:53 |
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①事件の展開や少女達の投げ遣りな存在感は非常に読ませる。雰囲気を補完する細かな描写も上手い。蛭女の場面は三津田信三ばりの怖さ。
②しかし真相はどうもぱっとしない。言い訳がましい。捻って書かないと謎にならないか。メタネタはやめて、いっそ不条理なホラーにしてもいいくらい。 両者を秤にかけて、本作では前者(ページ数としては八割以上だしね)を重視して高評価。 |
No.1221 | 6点 | ただし、無音に限り- 織守きょうや | 2022/06/20 11:52 |
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人死にを扱っていても優しいまなざしを感じるところが良い。ただし、霊関係のルールが未整理なので、ミステリだかホラーだかどっちつかず。 |
No.1220 | 5点 | 錬金術師の消失- 紺野天龍 | 2022/06/20 11:51 |
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ファンタジーだと、“何が出来て何が出来ないか” の線引きが曖昧なのである。文中で説明した範囲に収めないとアンフェアだろと思う反面、ファンタジーならではの飛躍したアイデアに期待もしてしまう。私は “水銀を操作して木の壁を自在に動かせる” と推測したが……。
殺人事件の真相より、最終章で明かされる塔の存在意義、更にその後に示唆される設定が驚きでとても良かった。 |
No.1219 | 5点 | 猫派犬派殺人事件- 本岡類 | 2022/06/20 11:51 |
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警察の捜査がテキトーな感じ。これがユーモアってことだろうか。“罠の偽装” はなかなか見事なコロンブスの卵。しかし “何故こんな高価な肉を?” は謎のままだ。
ネタバレするが、別解を思い付いた。元ピッチャーの死は事故または自殺。従って密室は問題ではない。部屋で発見された証拠品は、彼に罪を着せる為に、捜索に入った警察関係者が持ち込んだもの。そいつは逸早く真犯人の正体に気付き、金目当てで協力関係を結んでいた。どう? |
No.1218 | 9点 | 方舟さくら丸- 安部公房 | 2022/06/14 12:10 |
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今一つ盛り上がらなかった『飢餓同盟』の雪辱戦か。おかしな仲間達の珍道中(嘘)は、昆虫屋とサクラのキャラクター/役割がきっちり分かれていない嫌いはあるが、異様に読み易く面白い。新潮社の〈純文学書下ろし特別作品〉として世に出たのに、安部公房作品中エンタテインメント性はトップクラス。キャリア30年を超えて、ついに何かに開眼した? 結末も『砂の女』より遥かに説得力あり。 |
No.1217 | 6点 | さよならに反する現象- 乙一 | 2022/06/14 12:08 |
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愛読者の求めるものではあるが、代表作になる程ではない作品集か。余白の多い書籍の構成がマッチする作風は得だね。一番好きなのは「悠川さんは写りたい」。乙一らしい坦々とした変な話。でも読み返すと、伏線らしきものが不発? 意外におとなしいまま終わっちゃったか。
元ネタがある2編は、どうなんだろう?“書ける” 人にこんな企画は必要は無いと思う。 |
No.1216 | 7点 | 不可視の網- 林譲治 | 2022/06/14 12:06 |
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流石は組織論SFの第一人者。デジタル時代を背景に警察組織や貧困層の群像劇を判り易く読ませてくれる。
“あたしのために……殺ってくれたの! ありがとう” なんて台詞で情をほだされちゃって、私もちょろいな~。 ただ、それなりのキャリアに見合わず、文章が雑。あっ、近未来の架空のシステムが物語の基盤にあるってことは、厳密にはSF? |
No.1215 | 6点 | 掟上今日子の忍法帖- 西尾維新 | 2022/06/09 14:24 |
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忘却探偵ニューヨーク編。それ何語で喋ってるの? って突っ込みは野暮だが、会話のメタネタが際立つ。
手裏剣のトリックは馬鹿みたいだが感心した、と言うかテクノロジー的には充分可能だよね。つまり “バカミスに見えてもOK!” な書き方の勝利? |
No.1214 | 7点 | ハッピーエンドにさよならを- 歌野晶午 | 2022/06/09 14:20 |
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「玉川上死」が傑作。後半は少々不自然だが、犯行自体がパーフェクトなので、どうやって種明かしをするか作者も困ったのではないか。加害者の捨て身っぷりに私はグッと来た。それを高く評価するのは、法月綸太郎の最高傑作を「身投げ女のブルース」だとする気持と共通のものかも。
「 In the lap of the mother 」と言う題はクイーン(エラリーじゃないよ)の曲名「 In the lap of the gods 」に由来する。旧作にも幾つか同バンドのネタを使っているし間違いない。 掌編も含め、粒は揃っていると思う。“殺人の時効成立” は過去の話になっちゃったねぇ。 |
No.1213 | 7点 | たまさか人形堂物語- 津原泰水 | 2022/06/04 13:52 |
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ミステリと呼ぶには謎の輪郭が曖昧だし、きちんと着地もしていない。しかしそういう、ジャンル的に割り切れないところこそ、この作家の持ち味なのだと判って来た。人と人との間の湿り気が上手く文章化されていて、かと言ってべた付かないその程好さが良い。創元推理文庫版は書き下ろし短編を追加収録。 |
No.1212 | 6点 | かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖- 宮内悠介 | 2022/06/04 13:51 |
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登場する明治の文人達については知識が乏しく、また特に最初の2話の謎が妙に観念的なせいもあって、どうも無理に背伸びしながら読んでいるような居心地の悪さを感じた。
作者もそれを感じたのか3話目からは即物的なミステリに変化し、やはりこっちの方が良い。核がしっかりあれば文芸趣味も美味いスパイスなのである。でも作者の意図は逆(ミステリがスパイス)かな? 北原白秋は清家雪子『月に吠えらんねえ』の白さんのイメージそのままだ。 |
No.1211 | 6点 | 貴族探偵対女探偵- 麻耶雄嵩 | 2022/06/04 13:47 |
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ネタバレするけれども、「白きを見れば」 の殺人のきっかけになった行動は何故その状況で行われたのか? 容疑者は限定されるし、動機は周囲に知られている。
それに “伝承に倣って死体を井戸に投げ込もうとした” のは何故? ロジカルに位置付け出来ていない。単にノリでやろうとしたとしか思えず、ちょっと説明不足だ。 揚げ足取り:「幣もとりあへず」の女将。“足音には敏感で、誰かが枕許まで来れば直ぐに気づく”。しかしコレは、気付かなかった場合、気付かなかったことを自覚出来ないから、証言を真に受けてはいけない。 玉村依子。真面目にポリアモリーに邁進する御嬢様。いいなぁこのキャラクター。 |
No.1210 | 5点 | ホロー荘の殺人- アガサ・クリスティー | 2022/06/04 13:45 |
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殺人以前は流れに乗り切れなかった。この手の作品は、そこでキャラクターを把握しておかないと、後半の機微も読み取れないんだよね……。
要するに、犯人としてはしっかり考えたつもりでも、実際は隙のある計画だったと。そういう設定は作者の匙加減でどうにでもなり、私は好きではない。しかし本作、キャラクター的にソレをやりかねない犯人だと言う気はする。 原題は The Hollow だから“うつろな人々”。うむ、確かにそういう話だ。“わたしたちはみんな、ジョンに比べれば影なんです”。 5章(クリスティー文庫版81ページ)。“二叉路”とあるのは誤訳、と言うより日本語のミス。 6章。“小さな田舎の駅だが、前もって車掌に言っておけば急行を停めてくれる”。牧歌的で素敵なシステム! |
No.1209 | 4点 | 呪縛の家- 高木彬光 | 2022/06/04 13:44 |
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あまりに型通りで困る。新興宗教ネタで期待してたんだけどそれもフツーだ。苦杯を舐める名探偵をサディスティックに眺めて楽しむ為の話、ってことでいいのかな。
しかし犯人の演説、そして最後の一撃はなかなか効いた。 |
No.1208 | 7点 | 自来也小町- 泡坂妻夫 | 2022/05/27 15:46 |
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前巻よりはミステリ度が上がったか。とはいえどれも小ネタで、現代ものなら短編に仕立てるのも苦しかろう。このシリーズは、そこを江戸情緒の演出で如何に包むかと言う挑戦なのだろう。人情話的な要素も上手く絡めて、収録作いずれも失望はしなかった(が、大傑作も無かったな)。 |
No.1207 | 7点 | 少年トレチア- 津原泰水 | 2022/05/27 15:45 |
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表題に掲げられた “少年トレチア” は幾つかある柱のうちの一つであって、中心を貫くのは “緋沼サテライト” と言う “場” だと思う。そこに山海の珍味を吟味せずぶち込んだごった煮のスープ。灰汁は取り切れず、美味ばかりではないが、思いがけず澄んだ一杯を掬えることもある。かき混ぜていたら丸のままの怪魚が浮かんできた。誰だこんなもん入れたの。あたったらどうする。 |