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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1953件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1173 7点 名探偵 木更津悠也- 麻耶雄嵩 2022/04/13 12:41
 本書の主人公達がこだわるような、“探偵” ではなく “名探偵” と言う概念は、日本語独特のものだろうか。単なる good とか famous とは違う感じだよね。中国語ならアリ? ガラパゴス的に拗らせて進化した “名探偵” と付き合えるのは日本語人の特権かも。
 「禁区」の手掛かりが秀逸だと思う。

No.1172 7点 ルピナス探偵団の憂愁- 津原泰水 2022/04/13 12:40
 シリーズ前巻でも思ったが、謎の解きほぐし方が上手くない。
 ○○の理由は?→××だから! と言う割とシンプルな軸を設定しておきながら、その周りに色々絡み付かせるせいで、ズバッと決めて欲しい話なのに説明がくだくだしくなってしまうのだと思う。ミステリ要素以外の部分は高評価出来るんだけどな~。

No.1171 6点 倒錯のロンド- 折原一 2022/04/13 12:39
 ミステリに於いて、種明かしを如何にストレス無く読めるか、は重要であって、特に叙述トリックは基本的に探偵役が解説出来ないわけで、作者の筆力も読者の理解力も問われる。本作はその点で今一つ。オチにオチを重ねたのも煩わしい。問題編は面白かったけどね。今一つなのは私か?
 ウィリアム・アイリッシュ作品のタイトル借用は、“偶然の一致” に説得力を与える方便であると同時に、“そういう海外作品のタイトルのパクりってよくあるよね~” と皮肉としても機能していると思う。

No.1170 5点 聖シュテファン寺院の鐘の音は- 荒巻義雄 2022/04/06 15:06
 『白き日旅立てば不死』の続編。
 『異邦人』と『不思議の国のアリス』を無理矢理接木したような作品。特に後半は、世界構築が逸脱しつつ加速する一方、物語の展開はゆったりしており、絶妙な静謐さを感じさせるものの、これでは続編の意味があまり無いのではないか。その意味の無さこそがこの作品世界の意味なのだと言う気もするが、もう少し速やかに収めても良かった。

No.1169 4点 日光霊ラインの謎を追え!- 荒巻義雄 2022/04/06 15:05
 随分無理が感じられる真相も、ニューヨークとかポストモダンとかいってないで、“一族の血の歴史” みたいなおどろおどろしい、もしくは幻想的な書き方なら、伝説との絡みも含めてもっと説得力を得られたのではないか。と言うか、“伝奇” と “ミステリ” の世界観をミスマッチなまま上手く重ねることを意図しているような気がするが、成功していない。

No.1168 5点 九度目の十八歳を迎えた君と- 浅倉秋成 2022/04/06 15:04
 不思議な設定はあっさり許容出来たし、最後に色々嵌まって行く様は巧みで心地良かったが、何か今一つ乗り切れなかった。歳のせいかな。絶妙と言うか大胆なタイトル。

No.1167 6点 館という名の楽園で- 歌野晶午 2022/04/06 15:03
 息子の復讐劇で館が炎上するものだと思っていた。はっきり書かれてはいないけど、保険金も使い尽くしたと言う含みだよね。
 いかにもミステリ・マニアがやりたがりそうなトリックの為のトリックをミステリ・マニアが実践している、と言う意味での説得力はある反面、自分も同類ゆえ勘で何となく気付いてしまったのが残念。

No.1166 4点 幸福の密室- 平野俊彦 2022/04/06 15:03
 下手だな~。密室トリックは簡単だし、諸々の考察は浅いし、何より主人公の行動原理がさっぱり判らん。陰謀論に飛び付いて謎の使命感で突撃したら何故か都合良く真実を突いてしまった話?
 読者を苦笑させる狙いで意図的にこのキャラクターを造形したなら凄いけど、そう考えるには世界観があまりに同調し過ぎている。
 あっでも、これを島田荘司が第13回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞に選んだのは何となく納得。

No.1165 8点 獣たちの海- 上田早夕里 2022/03/29 13:52
 メインの中編「カレイドスコープ・キッス」の柱は二つ。カレイドスコープ:立場による世界の違い、異なる視点ゆえの摩擦。これについては結末で作者が語り過ぎかな~と言う気もする。ラスト3ページは無くても良かった。
 で、キッスのほうは中心人物二人の関係性。早川書房は百合SFアンソロジー『アステリズムに花束を』を出したり、そこから派生した小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』をシリーズ化したりしていて、それに呼応したのかな~と邪推。少なくとも出版社サイドはそういう流れが生まれたと捉えているのでは(もっとやって)。

No.1164 5点 木製の王子- 麻耶雄嵩 2022/03/29 13:50
 素材を鑑みれば、もっともっと楽しめた筈なのに……アリバイ問題で消耗し過ぎたか。精緻な状況が存在する必要はあるけどその内容自体はどうでもいい、って困るよね。そこで読み疲れたら読者にとっても本末転倒だし。

 やっと気付いた。“舞奈桐璃” と言う名前は “MY納豆売り” って洒落なんだな。

No.1163 6点 多重人格探偵サイコ 雨宮一彦の帰還- 大塚英志 2022/03/29 13:50
 ……ってことで、まとめて読めば勢いでプラス・アルファくらいはあるかも。
 登場人物達の表層を積み重ねることで、読者に勝手にその内面を構築させるような、(必ずしも悪い意味でなく)表面的な作風。コミックのノヴェライズと言う出自は当然大いに関係あるだろう。しかし風呂敷を広げっぱなしで “夢の跡” って感じは哀しい。

No.1162 5点 多重人格探偵サイコ 西園伸二の憂鬱- 大塚英志 2022/03/29 13:46
 あれっ、こんなもん? ハッタリは効いてるけど、内実が想定を上回る程ではない。分冊したのが失敗では……?

No.1161 5点 多重人格探偵サイコ 小林洋介の最後の事件- 大塚英志 2022/03/29 13:46
 あれっ、こんなもん? ハッタリは効いてるけど、内実が想定を上回る程ではない。分冊したのが失敗では……?

No.1160 8点 追憶の烏- 阿部智里 2022/03/24 12:21
 容赦無いなぁ。
 作者のペンが書き換える世界に、口をぽかんと開けて流されるしかなかった。筋は通っているから(いつから伏線を考えていたのか?)抗えない。
 私としては “外界での八咫烏や天狗の稼業とは?” と言うあたりが気になってたんだけど、そんな牧歌的な方へは進んでくれそうにない。

No.1159 8点 朝と夕の犯罪- 降田天 2022/03/24 12:19
 この人達はなかなか器用に引き出しを使い分け、しかもそれが表層的な借り物には見えない筆力を具えているのではないか。
 3分の2まで読んで、“もう大きな謎は残ってないじゃん。あとは後日談?” と思ったら、思いがけぬところから風呂敷を何枚も引っ張り出して来て感心した。しかしこれ、事実をどこまでどう明かすかは熟考を要するだろう。一度明かしたらチャラには出来ないから、警察官達のスタンスに私は賛同しかねるな。

No.1158 7点 ルピナス探偵団の当惑- 津原泰水 2022/03/24 12:18
 なんとも妙な読み味だ。ミステリとしての出来は決して悪くないのに、キャラクター小説としての巧みさに埋もれている部分があり相対的に目立たない。かと言って総体的に出来が悪いわけではなく、そういうスタイルであるとの確信に満ちた佇まいで、相応の読後感が得られた。
 ピザを食べた理由よりも、影の長さが導く手掛かりの方が面白い。

No.1157 5点 魔女の隠れ家- ジョン・ディクスン・カー 2022/03/24 12:16
 ラスト3分の1、暗号解読以降は、私の中の少年探偵団魂がムクムクと甦って楽しかった。しかしそこに辿り着くまでが退屈。しかもこれが、リアリティや誠実さ故に地味なのではなく、出し惜しみって感じ。手記や回想シーンならいいんだけど、カギカッコの中で語られる怪奇趣味には距離を感じてしまいノレない。

 フェル博士の立場は “最初から事件に関わっている御近所さん” なわけで、本来なら容疑者の一人では? 初登場だから “シリーズ・キャラクターは犯人ではない” って御約束は通用しないでしょ。
 博士が住む “水松(いちい)荘”。この字は “みる”(海藻の一種)とも読むのでイメージがユラユラ揺らぐなぁ。
 5章。追いはぎや贋金使用で絞首刑。怖い! まぁ日本も似たようなものか。
 12章。“報道は九日とつづかなかった”。 a nine days' wonder (一時は評判になってもすぐに忘れられてしまう事件)に引っ掛けた洒落?

No.1156 4点 名探偵に甘美なる死を- 方丈貴恵 2022/03/24 12:16
 ごちゃごちゃし過ぎ。それも “読み解くのが楽しい複雑さ” とはちょっと違うんだよなぁ。
 VRだからこそ成立するトリック、と言うアイデアはまぁいい。
 復讐者側が何故こんな回りくどいやり方をしたのか、色々説明しているが結局よく判らなかった。特に、グレーゾーンには踏み込みつつも “嘘は吐いていない” とフェアプレイに固執する理由(更なる上位者が居てフェアプレイを強要されているのかな……なんて思ったんだけど)。

 第九章。ライトを使うトリックはダミーとはいえ酷い。穴の真下にライトがぶら下がるんだから物を落としようがないだろう。

No.1155 7点 楽園の烏- 阿部智里 2022/03/16 12:08
 これは驚き。
 八咫烏シリーズは、雅やかな朝廷絵巻として幕を開け、キャラクター達の絡み合う “情” を軸に軍事やら信仰やらのネタも取り込み拡大して来た。しかしそれは所詮 “持てる者” の傲慢に過ぎなかった、と断罪するかの如き視点の転換!
 私の記憶が確かなら、作者はインタヴューで “読者がどんな展開を期待しているかは判るが、それを書いては駄目なのだと思う” と言う旨の発言をしていた。成程、こういうことか。この人は想像以上に肝が据わっていると思う。

No.1154 6点 五匹の子豚- アガサ・クリスティー 2022/03/16 12:06
 ミスリードには引っ掛かってたので最後の最後で驚いた。
 しかし「藪の中」な構成のせいで話がくどい。手記があるなら対話はいらないな~。

 曖昧な記述ながら “被害者の遺産を自動的に妻と子供が相続” とあるが、妻は欠格では。英国の法律では違うの?
 十五歳にしては彼女が幼稚だと思うのは偏見だろうか? 飲食物絡みの悪戯は洒落にならない度合いが高い、と言うことは弁える年齢だと思うのだが。真相に関わる要素だから、作者の都合で変なキャラクターにされちゃったような印象も……。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1953件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(107)
西尾維新(73)
アガサ・クリスティー(72)
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