皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1943件 |
No.1943 | 8点 | 禁忌の子- 山口未桜 | 2025/04/04 11:59 |
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良く出来ているけど割とありがちなタイプの医療ミステリ、この後は作者の専門知識を生かした真相で “勉強になりました~” って〆るんでしょう?
と見切った心算でいたら、唐突にダークサイドに反転して驚いていたら、更なる攻勢で完全にノックダウン。構成の上手さが光った。その上に乗せるべきエモーションが借り物でない点も推進力になっている。このラスト、私は良いと思う。 大きな偶然が二つあるんだよね。主人公がそっくりさんの死体と遭遇したこと。そして、あの二人が同じ職場で出会ったこと。私は “キャラクターの配置に関する偶然” には厳しいから気になるなぁ。どちらも工夫次第でもっと自然に処理出来そうだし。 |
No.1942 | 7点 | 邪教の子- 澤村伊智 | 2025/04/04 11:59 |
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前半の伏線はまぁ色々読めたけど、これは作者にとっても捨て駒と言うか撒き餌と言うか、読者が見抜く前提だと思う。引き換えに最後の砦として守った力の謎。こちらにはすっかり引っ掛かった。
それとは別に、物語としても読ませる展開力が強く引き込まれた。ただ最後、“大地の民はそうじゃなきゃ駄目なの” と彼女が言う気持が良く判らない。あそこでもっともっともらしい思い込みが語られていれば完璧だったのに。 |
No.1941 | 6点 | 暗号の子- 宮内悠介 | 2025/04/04 11:59 |
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作者曰く “テクノロジーにまつわる話を集めたもの”。先端のテクノロジーには皆注目して、いずれ誰かが書くだろうから早い者勝ちである。解釈の誤謬が後に見付かるかも知れないし、それも含めやがて過去のものになる。結構リスキーな挑戦だと私は思っている。
一番心が動いたのは「ペイル・ブルー・ドット」で、やはり判り易さとチャレンジャーな子供には勝てないのか。もっとしっかり長編にすれば良いのに。と思ったが、その手のSF長編は既に色々あるんだよね。小川一水とか山本弘とか野尻抱介とか。明確な “SF” になるまで引っ張らずにサラッとぶった切る方が、ジャンル越境作家・宮内悠介の個性が出るのかも。 AIで執筆した掌編もあり。うーむ。一世紀前の文豪が書いた独り善がり強めの不人気作、って感じ。あとがきでプランを説明しているが、その狙いは戦略ミスではないだろうか。何故なら、AIでヘタウマは(あざと過ぎて)成立しないからである。 |
No.1940 | 7点 | マガイの子- 名梁和泉 | 2025/04/04 11:58 |
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この設定、特に新しくはないよね(スワンプマン?)。マガイってどっちの意味だろう? と思ったらダブル・ミーニングだった。
その上に斬新な解釈を付け加えるわけでもなく、ホラー的な曖昧さを適度に残しつつ、上手く伏線回収して何となく予想されるところに着地(悪い意味ではない)。 と言うか、反転もあるんだけど、それ以前にドカーンと行くところまで行っちゃってるので、もう驚く余力が残っていない。“終章” と名付けて消化試合感を出したのはミスではなかろうか。 意地悪く言えば、ワン・オヴ・ゼムになりがちな枠組みの中で、しかし最大限に健闘してはいる、と思う。 |
No.1939 | 6点 | マルチの子- 西尾潤 | 2025/04/04 11:58 |
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私は今までに二回、勧誘された経験あり。そういうことがあるとやはり相手と縁は切れてしまう。警戒と言うより “私のことをそんな話に乗る奴だと思ってたのか……” とがっかりしたっけ。
本作中の勧誘場面に出て来る自己啓発みたいな話とか “夢はありますか?” とか、その人達も言ってた言ってた。言葉が上滑りする感じがリアル。 と同時に、意外と普通な喜怒哀楽が描かれてもいて、彼等がすぐ隣にいてもおかしくないとも感じた。決して別世界の話ではない。注意喚起を迫るビジネス・クライム・サスペンス。おっと、マルチは合法だからそんな風に呼んだらクレームが来ちゃうね。 |
No.1938 | 8点 | 雷龍楼の殺人- 新名智 | 2025/03/28 11:25 |
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私は高く評価する。多重死事件の細かな伏線が非常に上手い。その上で、二つの謎のこういう配置と連携はグッド・アイデア。
メタでない “読者への挑戦” と言うのも珍しいが、これは挑戦と言うより “フェアネス宣言” みたいなものだろう。そしてその公約をあろうことか剥がしてしまう。ところがそのアンフェアネスがもう一つの謎を解く決め手になっているのである。 “読者への挑戦” すら聖域にせず、或る意味土足で汚しちゃっている暴挙だけど、結構痛快に感じた。まぁあんな大仕掛けを行う動機が確かに強引ではある。 ところでこうして考えると、これは “読者=犯人” の変形と言えるかも。 |
No.1937 | 8点 | 涼宮ハルヒの直観- 谷川流 | 2025/03/28 11:24 |
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ジャンル登録どうしよう。シリーズの基本設定であるSF要素は殆ど関わって来ない。後期クイーン問題から入って、謎の旅レポについてSOS団で侃々諤々する展開に燃える。葡萄踏みの情景には胸が躍った。
ページが余ってるよと思ったら、叙述トリックのみならずその先にもツイストがあって唸らされた。しかし、ハルヒがまともに謎解きを試みていて、何だかキャラが変わってない? 旧巻未読で本作だけ読んでもまぁ大丈夫。コレはミステリ読みが評価しないと勿体無い! |
No.1936 | 7点 | 血腐れ- 矢樹純 | 2025/03/28 11:24 |
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どれも面白く怖く良く出来た作品だが、短編集としてこうして一冊にまとまると似通った印象になってしまう。“家族の物語” であると言う共通点のせいか。また、私にとってホラーはあくまで “周辺ジャンル” なので、読み方の解像度が低いのかもしれない。ミステリ色の強い「声失せ」が一番良いと思ったし。 |
No.1935 | 6点 | さかさ星- 貴志祐介 | 2025/03/28 11:24 |
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霊能者イコール特殊技能を持つ探偵、と解釈して “呪物の論理” を解くコンセプトは、薀蓄も含めて楽しめた。
しかし視点人物がどうも摑みにくい。動画撮影中ってことで一歩引いたカメラ操作者のポジション、但し血縁者なので自身もリスクは負っている。それなりに知恵と知識はあるようで、後半は意外と活動的になる。 総じて、一族と霊能者の間に入って仲介する “役割” はあっても、個人としてのキャラクターが希薄。ストーカーの件は浮いているなぁ。床下で実況の真似をする場面は良かったが。 彼の妙に平坦な視点が物語全体を抑止して、血みどろの筈のエピソードにワン・クッション挟む働きを果たしている。それこそ液晶モニター越しに事態を見ているような他人事感がずっと付き纏って共感しづらかった。もっと素直に “読者を怖がらせること” に注力しても良いのでは? |
No.1934 | 3点 | 赤毛のレドメイン家- イーデン・フィルポッツ | 2025/03/28 11:23 |
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何か変だ。
読了して、色々考える程に変な話に思えて来る。ネタバレ無しでは語れないな。 コレは “真相を読者の視点で見た時に面白くなることを優先した計画” って感じ。しかもスタンスが首尾一貫していない。単独犯じゃないからか。 目的への最短距離ではなく、経過で自分が楽しんでいる感が強い。犯人は芸術家気取り。ただその割に事件の表層が地味。 ちょっと結果論だけど、死体は(とりあえず)隠しおおせている。だから全て “失踪” 事件として済ませることも出来そうで、その方が安全な筈。でも財産を動かしたいなら死亡認定された方が良いから死体は出すべき。犯行の痕跡をおおっぴらに残しているのに、死体そのものは厳重に隠しているのはどっちつかず。 動機はカネか誇りか。ゲーム的興趣と自己の安泰、どちらをどの程度優先しているのか? 元々の計画では殺害順が違う、とのこと。その場合、誰に容疑を押し付ける予定だったのか? 元軍人のあの人だからスンナリ疑われた、ってとこもあると思うのだ。 記述が若干曖昧ながら、死体発見前に殺人罪で判決まで出ているように読めるが、それは如何なものか。 そしてそれは深読みの材料にもなる。実は生きていて、彼が蒸発する為に実行犯を操ったのかも知れない。または、自分が狙われているので先手を取って消えて見せたのかも。 最も気になるのが、第一の事件の入れ代わりって必要か? と言うこと。 その為には、死体を隠し切ることが絶対条件。しかし、隠し切れるなら、単なる出奔に見せ掛けられそうだし、入れ代わりの必要は無い。軽いパラドックスになっている。入れ代わり無しで出奔に見せ掛けた場合、何か不都合が生じるだろうか? そりゃあ入れ代わりで自分を消して見せれば、疑いをそらす働きはある。でも、別人として再登場する際に同じようなポジションを選び、結果やはり疑われているのでは意味が無い。 第二以降の殺人は、①家の外におびき出して殺している②共犯者が家の中にいる――のだから、実行犯は部外者ポジションの方が安全なんだよね。全部終わってから結ばれれば良い。 これではまるで “殺人を遂行する → 逮捕される → 手記を執筆・出版する → 世人が驚嘆する” と、そこまで想定して立案したようだ。 人生を懸けた犯罪芸術である。手記で自慢することが一番の動機なのではないか。昨今ネットで皆がやっている奴。現代的? つまり、作者がそのトリックを使いたかった。そこでトリックを使ってもおかしくない犯人像を設定した。但し非常に特殊で強引な設定である。 一応スジは通っている。でもトリックの不自然な部分を全て “犯人の遊び心” で片付けるのもな~。うーむ。 ところで、mane =髪、と言うことは、このタイトルは “犬を飼ってる犬飼家” みたいな洒落だろうか。ギャグ漫画じゃないんだから、そういうネーミングはどうかと思うな。 |
No.1933 | 7点 | そのナイフでは殺せない- 森川智喜 | 2025/03/21 13:29 |
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漫画『亜人』(桜井画門)みたいな設定。なのでスッと馴染めたが、既視感もあった。警部の沸点低さと暴走に爆笑。“ファンタステックな奇譚” の心持で読み進めたところ、後半の騙し合いに翻弄されて満足。
ただ、生き返る時の設定 “傷はすべて消える” “すべての身体の部位が集まる” の線引きが曖昧だと思う。コレはラストの場面の “助かる方法はあるか?” に関わる問題で、私も熟考したがイマイチ判断し切れない。ナイフで再度自死すれば一日後に自分だけ生き返るのでは。あ、それより “食べたものを吐く” では駄目なのだろうか。 |
No.1932 | 7点 | チェインギャングは忘れない- 横関大 | 2025/03/21 13:28 |
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じんわりとした温かさが胸に残る、なかなかの快作。各々のキャラクターが立っているし、次第に距離を縮めて行く過程の繊細さとぶっきらぼうさのハイブリッドが良い。
ただ、全体の構図が芝居じみて感じられなくもない。脱走とかより素直に警察に情報を伝えた方が犯行を防ぐ可能性は高かっただろうし、回りくどい対処法をわざわざ選んでいるように見える。もっと否応無しに巻き込まれる設定に出来たら良かったのでは。 |
No.1931 | 7点 | アルキメデスは手を汚さない- 小峰元 | 2025/03/21 13:28 |
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ここには “そんな奴いないよ” と思わされるキャラクターであるが故の説得力がある。人は百人いれば百通り。共感出来なさも含めて共感出来た。
トリックの類は大したことないが、私はいつの間にか謎解き小説と言うよりも一種の寓話のように読んでいたので無問題。偶然頼みの最後の手掛かりなんぞ、寧ろ神の啓示の如く感じられたことであった。 |
No.1930 | 6点 | きみはサイコロを振らない- 新名智 | 2025/03/21 13:27 |
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ネタバレあり。
水彩画の如き淡い筆致のミステリアスなホラー、を狙っているならそれは実現出来ている。が、それ故に薄味で小粒な印象を残してしまうジレンマ。 少々引っ掛かる点がある。【小坂さん→シュウさん】と連鎖する呪いの流れがある。その上で更に、【シュウさん→語り手】の流れだと思われたが、実は【雪広→語り手】の流れだった。葉月さんのところで交差しているように見えるのは、莉久が共通の知り合いであるからと言うだけの偶然である。 と言うことだよね。それが或る種のサプライズの部分だと思うけれど、読者に伝わり易く説明されていないし、ラストの成り行きもその認識を強く踏まえたものにはなっていない。 “非科学的事象に関する論理的な説明” を求めるのも変だが、本作に関してはそのへんを理詰めでキッチリさせてこそ、最後の最後に残る理不尽が生きるのではないかと思う。 |
No.1929 | 5点 | 人形は眠れない- 我孫子武丸 | 2025/03/21 13:27 |
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あとがきで作者自らコンセプトを説明しているが、八七分署シリーズ等は捜査小説だから成立するのである。薄味とは言え本格ミステリで、“意味ありげに並べて書いたアレとコレは実は無関係でした” ではオチとして満足するのは難しい。連作短編にした方がまだましだったのでは。 |
No.1928 | 8点 | 同志少女よ、敵を撃て- 逢坂冬馬 | 2025/03/12 13:23 |
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とても格好良い冒険小説だと思う。
クローズド・サークルより剣呑な極限状況で、壊れそうになりながら足掻く少女達の苦闘。を読んで熱くならずにいらりょうか。戦争を題材にした表現にありがちな “模範的解釈” を迫る感が薄いので、遠慮無く血湧き肉躍らせた。 裏の裏を読んで勝つこともあれば、読みの浅い行動に却って負けることもある。ってのが良い。『地雷グリコ』に欠けていたのはそれだ。 |
No.1927 | 6点 | 罪人よやすらかに眠れ- 石持浅海 | 2025/03/12 13:22 |
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あまりに無色透明。大したエピソードも語られていない(ように感じる)のに、唐突に伏線が示されその裏の真実が浮かび上がってびっくり。雑誌掲載時にはそれだけで個性だったかも知れないが、一冊にまとまると、その無から有を生み出すような鮮烈さが却って仇になったか、単調に思えた。最終話だけは “事件” が最初からくっきり描かれていたけれど、他の話ももう少し色分けして欲しかった。謎の中身自体は良い出来。 |
No.1926 | 5点 | 日曜日には鼠を殺せ- 山田正紀 | 2025/03/12 13:22 |
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絶体絶命難攻不落呉越同舟裏切り必至――みたいな短編をこの作者は幾つも書いており、それでは物足りないからもうちょっと引き延ばそう、と言うことで中編の祥伝社文庫に一冊、とまぁそれ以上のものではない。あの人が自ら身を投げ出すのは意外だったけど、基本設定が弱い(舞台になる “恐怖城” の情景がイメージ出来ない)ので後半の展開もあまり驚けない。漫画の原作には良いかも。 |
No.1925 | 5点 | 絶望の歌を唄え- 堂場瞬一 | 2025/03/12 13:21 |
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語り手のキャラクターがイマイチなんだけど、その周囲の脇役達は色々な方向性の人がいて、惹き付けられる “場” になっている。或る種の諸行無常感を孕みつつもテンポは良く、熟練のカジュアルなハード・ボイルド(悪い意味ではない)。
しかし読み終えて振り返ると、場当たり的にエピソードを並べた感じ。バランスが悪く、“伏線とその回収” にもなっていない。そういうことだったのか! と認識に快感が伴うような、フィクションとして面白い真相ではないのだ。 |
No.1924 | 3点 | ハーメルンの笛を聴け- 深谷忠記 | 2025/03/12 13:21 |
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何か変だ。
ネタバレ気味になるが、一連の手紙と犯人のスタンスがおかしくないか。 たまたま奇特な刑事がいたが、本来ならあんな地味な手紙では黙殺されかねない。単なる不謹慎な悪戯にも見える。“社会状況に対するメッセージがある” なら、マスコミに大々的に送り付けるとかする必要がある。 勿論そういうことをすれば警戒され実行は難しくなる。実際、最後は情に訴えて見逃して貰っただけで、実質的には詰んでいたのだ。“ラストで示された目的の成就を優先する” なら、犯行予告などすべきではない。 実際はどちらでもない。あの手紙のやり口はまるで、関係者を不安がらせ、あわよくば警察とゲームをしてみたい、“愉快犯” のようだ。犯人としては、自己正当化の為にも、そうとだけは思われたくない筈である。 と言うことで、事件の表層的なプロットと、その根底の動機を、上手く寄り添わせることが出来ていないと感じる。そして、物凄いトリックがあるならともかく、本作の場合、“心情” に説得力が無いなら失敗ではないだろうか。 そぐわない犯行がある点は、私も気になりました。 |