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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2460件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.120 8点 スカイジャック- トニー・ケンリック 2010/04/08 21:38
満員の乗客をのせたジャンボジェット機の消失を扱ったユーモアミステリ。著者のスプラスティック・コメデイの原点と言える作品ですが、ミステリとしても飛行機消失トリックのアイデアがすばらしい。
懸賞金目当てに乗り出す若手弁護士と秘書で元妻コンビの漫才風やり取りやドタバタ劇は一級品の面白さで、まさに抱腹絶倒ものでした。

No.119 8点 アデスタを吹く冷たい風- トマス・フラナガン 2010/04/08 18:56
早川書房の復刊希望投票で創刊45周年、50周年度と連続して第1位に輝いたミステリ短編集です。
某軍事国家の憲兵・テナント少佐ものの連作4編と単発もの3作が収録されていますが、いずれも格調高い文体と意外性を追求したミステリ趣向に溢れた傑作作品集だと思いました。
テナント少佐ものでは、武器密輸の意外な抜け道が意表を突く表題作や、少佐の人物造形が最後の逆転に結びつく「獅子のたてがみ」が読ませます。
単発ものでは、歴史ミステリ「玉を懐いて罪あり」が抜群の出来。15世紀イタリアの密室状況の城内からの秘宝の消失を扱っていますが、警護の聾唖者への尋問など圧倒的な迫力を感じました。密室ものアンソロジーでは「北イタリア物語」のタイトルで収録されていて、そのタイトルの方が好みです。

No.118 5点 飛車角歩殺人事件- 本岡類 2010/04/08 18:20
傍若無人のプロ棋士・神永七段が探偵役を務めるシリーズ第1弾で、著者の長編本格ミステリの第1作。
もともと、オール読物推理小説新人賞を将棋ミステリで受賞しているくらいですから、この世界に詳しいのでしょうが、主人公の造形を含めて棋界の人間関係などまずまず楽しめました。肝心のミステリの部分は、既読感のあるタイトル戦に絡む連続殺人を描いていて、物理的殺人トリックとアリバイ工作もいまいちです。まだ手探りのミステリ創作といったところでしょうか。

No.117 6点 銀座連続殺人手帖- 梶龍雄 2010/04/07 18:59
「シラケ姫」こと女子大生・奈都子を主人公にした本格ミステリ、シリーズ第3弾。
前2作「幻の蝶」「淡雪の木曽路」とも文章や変な若者言葉を度外視すれば、意外な殺人動機を核にした端正な本格ものでしたが、今作もミッシングリンクもので動機の謎を中心に据えています。奈都子が画廊で拾得した手帖にメモられた人物の連続殺人が描かれていますが、シリーズものならではの意外な犯人が秀逸でした。

No.116 5点 殺人は女の仕事- 小泉喜美子 2010/04/07 18:39
引退した元娼婦、場末のクラブで歌うジャズシンガー、純文学系出版社のベテラン女性編集者など、ほとんどが中年以降の女性を主人公にした一風変わった作品集。
副題に傑作ミステリー集とありますが、ミステリとは言えないものもあり、内容的にも薄味な印象です。
女性作家がここまで女性の醜い部分を書いたという点での驚きはありましたが、とても傑作集とは言えません。

No.115 5点 アトリエ殺人事件- 高原弘吉 2010/04/07 18:16
ジュヴナイルミステリ短編集。
4作収録されていますが、表題作がジュニア向けミステリの標準を超えた本格もので、被害者のある行動を利用したアリバイトリックは意表を突きます。
「双眼鏡は知っていた」は、少年が自宅2階から双眼鏡で目撃した殺人現場が消えてしまう。清張の「点と線」がモチーフなのが面白い。他の2編はシリーズ探偵もので本格とは言い難いです。

No.114 7点 飛鳥高名作選 犯罪の場- 飛鳥高 2010/04/07 17:54
デビュー作の「犯罪の場」やバカミス系トリックの「二粒の真珠」などは密室もののアンソロジーで既読でしたが、短編全集ともいえる本書で著者の全貌が覗うことができました。
機械トリックが持ち味であることは間違いないのですが、むしろ社会派とは一線を画する意外な動機を扱ったものや、サスペンス風の作品に良作が多くあり、認識を新たにしました。
収録作では、とんでもないトリックと精緻な推理がさえた「犠牲者」が印象に残りました。
当作に限らず、河出文庫の<本格ミステリコレクション>はすばらしいセレクションだと思います。

No.113 6点 闇の金魚- 陳舜臣 2010/04/06 18:59
清朝末期の中国を舞台にした一人の諜報活動家をめぐるミステリ。
フーダニットやハウダニットを基軸にした本格ミステリを期待すると失望するかもしれませんが、歴史小説家としての側面が出た、陳舜臣にしか書きえない小説だと思います。
主人公の周りでいったい何が起こっているのか、真相が明らかになったとき、闇の中で改良される金魚の意味が浮き上がります。
異色作だと思いますが、読後余韻の残る作品です。

No.112 2点 美食倶楽部殺人事件- 嵯峨島昭 2010/04/06 18:25
「白い華燭」などの恋愛ミステリに登場した酒島警視と人妻・鮎子のコンビが主人公役の連作ミステリ。
美食倶楽部会長の死の手掛かりを追って京都、伊勢志摩、北海道さらにはアフリカまで旅行を繰り広げます。ところが、作者の興味はミステリではなく美食のウンチクにあり、物語の9割はその感想に費やされています。事件の真相も拍子抜けです。
姉妹編の「グルメ殺人事件」(旧題「デリシャス殺人事件」)ではバカミス系の殺人トリック連発で、それなりに楽しめましたが、こちらは全くダメでした。

No.111 5点 ミステリー作家の休日- 小泉喜美子 2010/04/05 23:39
エッセイ集のようなタイトルですが、れっきとした短編集。
なかでは、女流ミステリ作家にかかってきた間違い電話の内容から意外な事実を推理する表題作「ミステリー作家の休日」がケメルマンの短編を彷彿させ、編中のベストかな。
あと「本格的にミステリー」「パリの扇」が印象に残りましたが、拾遺集の感は否めません。

No.110 6点 黒潮の偽証- 高橋泰邦 2010/04/05 23:16
海難審判の弁護士・大滝海事補佐人シリーズ第2作。
今回は小笠原諸島近くでの難破貨物船からの一等航海士の密室消失事件を手がけています。
海洋冒険小説の味わいのある前半から、密航女性の登場、乗組員からの事情聴取とスピーディな展開で、前作と違って読みやすくなっており、より本格ものを意識したものとなっています。初版の単行本では犯人の名前を伏字にして読者懸賞にしたというエピソードもわかる出来です。
ただ解決編が駆け足のきらいがあり、犯人特定のロジックは少々甘いんじゃないかと思いました。

No.109 5点 十二夜殺人事件- マイケル・ギルバート 2010/04/05 18:12
猟奇的な連続殺人犯を追う捜査陣の行動描写で幕を開けた物語が、序盤すぐに寄宿制の学校を舞台とした学園ミステリに変わり、これはどういった物語なんだと戸惑いながら読み進めました。
「捕虜収容所の死」同様ジャンルミックスというかジャンルにこだわらないプロットが著者の持ち味のようです。中盤に新任教師の正体が割れて、なるほどそうつながるのかと納得しましたが、通常の捜査小説を読みなれている身には、少々肩透かしの印象はぬぐえません。
シェイクスピアの演劇は出てきますが、このタイトルは内容にそぐわない感じを受けました。

No.108 6点 Another- 綾辻行人 2010/04/03 00:05
(以下ネタバレ)
「十角館の殺人」のネタバレもしています。

離島を学校に変えただけで、基本的に「十角館の殺人」で使ったミステリの趣向と同じですよね、これは。
ある人物を表記するのに、姓、名、ニックネーム、職制などを使い、その表記の使い分けを章毎に行って叙述トリックに利用する。
しかし、その人物を読者の容疑者候補から外す手段としては、個人的には姑息に思えてしまいます。
ホラーの部分については楽しめましたが。

No.107 4点 蜃気楼の帯- 戸川昌子 2010/04/02 23:30
日本人作家がアフリカを舞台に国際謀略ものを書くのは珍しいと思いますが、しかも著者が戸川昌子となると内容の予測は困難。
クーデターで追われたアフリカ某国の大統領の復権に絡む謀略に、日本人動物学者と女性ジャーナリストが巻き込まれるというお話なんですが、期待はずれの出来でした。
冒頭のゴリラの手首のやり取りでツカミはOKでしたが、以後男女の交情を中心に焦点が当てられ、サスペンスを持続できず、結末も中途半端です。
この時期、中薗英助、三好徹などのスパイ謀略ものが出てきた影響で作者も取り組んだのかもしれませんが、異色作という名の駄作に終わっています。

No.106 6点 ゼロのある死角- 笠原卓 2010/04/02 23:02
衣料会社間の信用調査が絡む本格ミステリで著者のデビュー作。
前半の産業ミステリのような展開が興味がない業界だけにかったるいが、容疑者が固まってからの怒涛のアリバイ崩しが読ませます。犯人のアリバイ工作が、写真、郵便の消印、電話、時刻表など重層的に設定されており、ラッキョウの皮むきの様相で、なかなか真相に到達しない。
ダミーの容疑者のアリバイ調べにページを割き過ぎるなど、無駄な描写を削れば、端正なアリバイ崩しものの秀作になったと思いました。

No.105 6点 村でいちばんの首吊りの木- 辻真先 2010/04/02 22:38
中編3作収録で表題作がベスト。
長男の殺人容疑をめぐる母親と次男の手紙のやり取りから意外な事実が浮かび上がる。伏線がていねいに敷かれ、ちょっとした叙述の省略が効いている。「街でいちばんの幸福な家族」は、父親の愛人を始末し家族の平和を守ろうとする娘の意外なトリックがしゃれている。娘の独白は読んでいて楽しい。「島でいちばんの鳴き砂の浜」は、リゾート開発に揺れる島での変死事件を無生物の視点で描く異色作ですが、ミステリの趣向自体は平凡でした。

No.104 7点 灰色の季節 ギョライ先生探偵ノート- 梶龍雄 2010/03/28 15:09
太平洋戦争前の旧制中学を舞台背景にした連作短編集。
ギョライ先生探偵ノートという副題がありますが、正彦少年などを中心にした青春ミステリの要素が強い第1短編集です。
「おふくろは霊媒」などの本格ミステリよりも、戦争の影がさしてくる後半の作品のほうが強く印象に残りました。正に灰色の季節です。
マイナーな出版社のためか文庫化もされず、手軽に読めないのはもったいない秀作短編集だと思います。

No.103 6点 人間の証明- 森村誠一 2010/03/28 14:31
「母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?」
西條八十の詩をモチーフにして、一世風靡した著者の一般向け代表作と言われる作品。
当時、森村誠一のコアな本格を追いかけていて、この作品で戸惑った人も多かったのではないでしょうか。
本格ミステリとしては不満ですが、まあ楽しめたことは事実です。
(以下ネタバレ)
松本清張「砂の器」のネタバレもしています。


この人間ドラマが清張の「砂の器」とプロットが酷似していることは有名です。
1.栄光を掴みかけた主人公が、過去を知る人物の突然の登場により、身の破滅を恐れ殺害してしまう。
2.被害者は死の直前、主人公との思い出の地名をつぶやくが、標準語に不慣れなため意味が不明となる。
「人間の証明」では被害者が外国人のため霧積がキスミーに、「砂の器」ではズーズー弁のため亀嵩がカメダに・・というふうに。

No.102 4点 蝦蟇倉市事件2 - アンソロジー(出版社編) 2010/03/28 13:55
競作アンソロジー第2弾。6名中4名が今まで読んだことがない作家でしたが、変化球ばかりで出来はいずれも微妙。
米澤穂信の作品は一種の暗号ミステリとも言えますが、あとがきを読むと<法と正義>がテーマらしい。一人だけ浮いてました。
なにもそのためにモンテネグロから蝦蟇倉市にその人物を持ってくる必要がないし、「さよなら妖精」の後日譚で連作ミステリを企画しているなら、このアンソロジーを利用するのはどうなんだろうと思いました。

No.101 6点 スパイク- 松尾由美 2010/03/27 11:55
街角で出会った男性がつれていたビーグル犬は、主人公の飼い犬と同じ名前「スパイク」だった・・・いわゆるパラレル・ワールドもののSF恋愛ミステリ。
なぜ男性は翌週の約束の日に現れなかったのか、なぜ犬の名前が同じだったのか、余韻が残る切ない真相でした。

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