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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.426 5点 海を渡る牙- 佐野洋 2010/06/04 21:18
動物写真家を主人公にした連作ミステリ。
前半の収録作は、壱岐の島や北海道山中など撮影現場での骨のある事件を扱っていて完成度が高いと思います。とくに、表題作の「海を渡る牙」は伏線の張り方やトリックが素晴らしい。
ただ後半の作品は、日常の謎系ミステリになってしまい凡作が並んでいます。

No.425 6点 葬式神士- 結城昌治 2010/06/04 21:09
ミステリ短編集(角川文庫版)。
軽妙でシニカルなオチの作品が多く収録されていて、今でも充分楽しめる。
「葬式神士」「絶対反対」「替玉計画」がとくに面白かった。

No.424 7点 男は旗- 稲見一良 2010/06/04 19:02
男の浪漫あふれる海洋冒険小説。
かつての豪華船で今は海上ホテルとなっている老朽船を宝探しのため大海原に出航させるというストーリー。
子供の心を捨てきれない男たちの冒険物語で、最後はなんとファンタジーに昇華します。
小説としては構成の甘さがあったり、後半は文章もひどいことになっていますが、作者が小説を書き始めた動機や本書執筆時の体調を思うと、物語の男たちと作者が二重写しに見えて、思わず感動を覚えました。

No.423 5点 明日という過去に- 連城三紀彦 2010/06/04 18:33
女性同士で交わされる手紙文のみで構成された長編ミステリ。
お互いに嘘と嘘のせめぎ合いで、告白者と告発者がめまぐるしく入れ替る。物語の人物が騙されるくらいなので、読者が翻弄されるのは当然のことですが、反転が技巧に走り過ぎていて、最後は真相はどうでもいいやという気分になりました。

No.422 7点 蒼ざめた街- 藤田宜永 2010/06/04 18:11
昭和初期の帝都・東京を時代背景にした異色のハードボイルド、モダン東京シリーズ第1作。
主人公のアメリカ帰りの私立探偵・的矢健太郎をはじめ、カフェの女給などの下層階級、男爵などの上流階級の人々が不況で倦怠感あふれる都会の情景に融け合って、ノスタルジックな気分を堪能できる。
ハードボイルドというには甘めですが、物語世界がキッチリ構築された秀作だと思いました。

No.421 6点 燃えつきる日々- 海渡英祐 2010/06/03 21:25
太平洋戦争前夜の日本を時代背景にした長編ミステリ。
77年の第1回週刊文春年末ベストテンの第2位ということでちょっと期待して読みました(当時は内外ミステリ統一で、第1位は「シャドー81」なので国内ものでは第1位)。
端的にいうと謀略系の戦争秘話に恋愛ミステリを加味した構成で、力作ではあるけれど本格ミステリとしては薄味です。当時のベストテン選者の年齢層・嗜好が影響した第2位だと思いました。

No.420 5点 バルーン・タウンの手品師- 松尾由美 2010/06/03 21:07
妊婦のみが住む街”バルーン・タウン”シリーズ第2弾。
内外古典ミステリをパロッた作品が多かった前作に比べ、今作はちょっとおとなしめですが、主人公の暮林美央を中心にした推理合戦が目立ちます。
私的ベストは「オリエント急行十五時四十分の謎」で、人間消失のバカトリックと本家の趣向を取り入れた稚気を評価。

No.419 6点 墓標なき墓場- 高城高 2010/06/03 20:38
初期の長編ハードボイルド小説。
北海道根室沖の海難事故の謎を支局の記者が追いかけるというストーリー。
簡潔で乾いた文体は確かにハードボイルドですが、地方支局の生活状況や海霧の中の釧路・根室地方の情景描写などに文芸的な香りが漂い、読み心地がよかった。結末がやや通俗的な感じがして惜しいと思いました。

No.418 4点 義経幻殺録- 井沢元彦 2010/06/03 19:03
芥川龍之介が探偵役を務める歴史ミステリ、シリーズ第2弾。
義経=成吉思汗説ではなくて、義経の子孫=清国の始祖説が今作のテーマで、例によって現在の殺人事件が絡みます。
謎の青年ミン・ヂイ(明智)やロシア皇女アナスタジアなど読者サービス志向の登場人物はともかくとして、歴史の謎の究明があれでは欲求不満が残ります。

No.417 3点 水野先生と三百年密室- 村瀬継弥 2010/06/03 18:43
新任の女子高校教師が過去の殺人と伝説の人喰い蔵の謎を解くという長編ミステリ。
作者の第2作ですが、長編となると物語の構成力のなさが如実に出ていて残念な出来です。とってつけたような蔵の謎は本筋と全く関連しませんし、過去の殺人の真相も凡庸でした。

No.416 5点 全戸冷暖房バス死体つき- 都筑道夫 2010/06/02 22:26
「退職刑事」の娘・滝沢紅子やライター猿紘一らミステリ好きの仲間が、豪華マンション・メゾン多摩由良周辺で発生した事件を解決する連作ミステリ、シリーズ第1弾。
不可解なシチュエーションの死体や事件をロジックをこねくり廻して解決しますが、往年のキレは見られず、軽めの本格という感じでした。

No.415 5点 江戸川乱歩の推理教室- アンソロジー(ミステリー文学資料館編) 2010/06/02 21:59
約50年前の昭和34年に編まれた犯人当てアンソロジー「推理教室」からのセレクト第1弾。
推理クイズレベルの作品が多いですが、当時の本格ミステリ作家の珍品が収録されていて資料的価値はあるかもしれません。
飛鳥高3編のうち、「飯場の殺人」「無口な車掌」は共に叙述トリックを使ったオチが目を引く。
楠田匡介「影なき射手」の凶器消失トリック、大河内常平「サーカス殺人事件」の大量絞殺トリックはバカミスとして読める。
死体消失とアリバイ誤認トリックで完成度が高い宮原龍雄「消えた井原老人」がマイベスト。
仁木悦子、鮎川哲也、佐野洋のビックネームの作品はいまいちでした。

No.414 6点 大東京三十五区 冥都七事件- 物集高音 2010/06/02 18:51
昭和初期を舞台に明治時代に発生した怪奇な事件を安楽椅子探偵風に解いていく連作ミステリ、シリーズ第1弾。
探偵役の玄翁老人と聞き手の下宿人大学生のコンビがいい味を出していて、昭和初期のレトロな雰囲気創りに寄与する文体も絶妙です。
最後がまたかアレというのは微妙なところですが、語り口が気に入りました。

No.413 6点 藤田先生のミステリアスな一年- 村瀬継弥 2010/06/02 18:35
小学生時代に担任の藤田先生が見せた「魔法」の数々を30年後に同窓生たちが解くという連作形式のミステリ。
正直、「藤田先生と人間消失」以外はミステリのネタ的に大した出来ではありませんが、田舎の小学生時代のほんわかした雰囲気はよかったです。

No.412 6点 神国崩壊- 獅子宮敏彦 2010/06/02 18:20
中国を模した架空の王朝を舞台背景にした本格ミステリ。
入れ子構成で4つの短編が入っていて、本編よりそちらのエピソードがブラウン神父や亜愛一郎シリーズ並みの奇想に溢れていて面白かった。
城壁をすり抜ける軍隊の謎「マテンドーラの戦い」と、街一つまるまる消失させた「帝国撹乱」が印象に残りました。
文章がちょっと読みづらいのが難点ですが、この辺が解消されれば、将来楽しみな作家だと思いました。

No.411 7点 風塵地帯- 三好徹 2010/06/01 21:00
インドネシアへ特派員として派遣された記者の一人称で描かれた国際謀略小説。
東南アジアを舞台とした巻き込まれ型のスパイ小説ということで、結城昌治の「ゴメスの名はゴメス」との類似性が言われるようです。リアリズムに関しては本書の方がやや劣る気がしますが、逆にエンタテイメント性が高いとも言えます。
特殊カメラの扱いなど通俗的な面もありますが、書かれた時代を考慮すれば、なかなかの傑作だと思いました。

No.410 6点 はだかの探偵- 辻真先 2010/06/01 20:28
サウナ風呂の常連客・布袋老人が探偵役、可能克郎がワトソン役?を務める安楽椅子もの連作ミステリ。
旅館の屋上への墜落死体の謎にはじまり、日常の謎、ダイイングメッセージものなど、趣向の異なる謎が提示され、最後はこういったタイプの連作短編集のお約束が待っています。
飛びぬけて光った作品はありませんが、手堅くまとめた感じです。

No.409 6点 グリーン車の子供(創元推理文庫版)- 戸板康二 2010/06/01 18:52
歌舞伎役者・中村雅楽シリーズ全集の第2弾。
「密室の鎧」とか「ラスト・シーン」という本格編もありますが、多くは日常の謎を扱った作品がそろっています。
その代表作が「グリーン車の子供」だと思いますが、真相は何か?以前の、謎は何か?を問う構成がユニークです。
この作品集は続けて読むとちょっとシンドイ面もあり、まったりと空いた時間に少しづづ読むのがいいように思います。

No.408 5点 赤い影の女- 島田一男 2010/06/01 18:28
ミステリ中編2本収録されています。
表題作は男女カップルがファッション界の殺人事件に巻き込まれる話ですが、通俗ミステリそのもので駄作。タイトルも意味不明。
併録の「山荘の絞刑史」は探偵探し&犯人探しという設定が面白かった。嵐の山荘もので、強盗殺人時効寸前の主人公が宿泊人の中にまぎれこんだ警察官は誰かを推理しながら、新たに発生した殺人の犯人探しをせざるを得なくなる。よく似た設定の海外ものには劣りますが、まずまず楽しめました。

No.407 6点 悪魔はあくまで悪魔である- 都筑道夫 2010/05/31 21:31
初期のショートショート系短編集(角川文庫版)。
ホラーとか恐怖小説と呼ぶのが一番近いと思いますが、単純なジャンル分けが難しい奇妙な不思議小説が19編収録されています。よくある悪魔との契約ものに捻りを利かせた表題作をはじめとして、独特の軽妙な語り口ゆえに、内容の割に恐怖感があまりないのが共通しているテイストです。

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kanamoriさん
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