皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
|
まさむねさん |
|
|---|---|
| 平均点: 5.89点 | 書評数: 1282件 |
| No.802 | 5点 | 探偵は教室にいない- 川澄浩平 | 2019/01/13 23:56 |
|---|---|---|---|
| 第28回鮎川哲也賞受賞作。受賞作が堅実な学園モノであったということが、個人的には最大の意外性…といった感じ。
軽やかな筆致で、読み心地も悪くないのだけれども、如何せん小粒感は否めません。いや、新人賞作品としては確実に小粒でしょうね。前回受賞作「屍人荘の殺人」、前々回受賞作「ジェリーフィッシュは凍らない」と比較してしまうと、ね…。お上手な作品だと思うし、決して作者が悪い訳ではないのでしょうがね。「青春ミステリの新たな書き手の登場に、選考委員が満場一致で推した」という触れ込みだけれども、東京創元社さんは鮎川哲也賞をどのように捉えているのだろう…と気になったりして。ちなみに、このサイトでの書評、私を含めてここまで重複する部分が多いようですねぇ。つまりは、そういうことなのか。 |
|||
| No.801 | 6点 | 夏の最後の薔薇- 連城三紀彦 | 2019/01/12 21:28 |
|---|---|---|---|
| 2001年に「夏の最後の薔薇」として刊行された短編集。文庫化に際し「嘘は罪」に改題。私は文庫で読みました。
12の短編が収録されており、いずれも「浮気」をテーマにしています。いや、正確には「純愛」が根底テーマと言うべきでしょうか。作者らしい反転が楽しめますが、特に前半に収録された作品の方に良作が多いような気がします(中盤以降は似通った構成の作品も…)。1編ごとには簡潔で読みやすいですので、スキマ読書としてもいいかも。 |
|||
| No.800 | 8点 | 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件- 麻耶雄嵩 | 2019/01/07 20:53 |
|---|---|---|---|
| これは、凄いですね。
バッターが大好きな高めの直球かと思いきや、突然フワッと浮き上がり、フォーク以上にストンと落としながらも、最終的にはアウトコースギリギリに構えたキャッチャーミットに納まっているといった感じ。とは言え、投げっぷりは変化球投手のそれではなく、明らかな剛腕投手タイプなんですよねぇ。(ピッチングに例えるのにはちょっと無理があったかも。ごめんなさい。) 終盤における木更津の密室謎解きの脱力感には凄まじいものがあったけれども(これ、先の例えだとフォークの部分ね)、いやはや、結局はそういうトコロも含めて楽しめたと言えます。万人受けは難しいかもしれませんが、根強いファンを獲得するにふさわしい剛球であったことは十分に理解できました。個人的には、好きです。 |
|||
| No.799 | 5点 | 皇帝と拳銃と- 倉知淳 | 2019/01/02 12:48 |
|---|---|---|---|
| 作者初の倒叙形式の短編集(だと思う)。
個人的に倒叙モノはあまり好みではないということもあるのだけれども、印象としては、よく言えば手堅い、一般的に言えば普通の短編集といったところかな。死神を彷彿させる風貌の警部とイケメン刑事というコンビの設定が効果的であったかも微妙。同時期の作者の短編集であれば「ドッペルゲンガーの銃」の方が好き。 好みの作者さんだけにちょっと厳し目の書きぶりになってしまいましたが、水準以上には楽しめましたよ。 |
|||
| No.798 | 5点 | 回想のぬいぐるみ警部- 西澤保彦 | 2018/12/29 23:36 |
|---|---|---|---|
| ぬいぐるみ警部シリーズ第二弾。
いくらなんでも偶然性が強すぎるのでは?とか、とある準レギュラーのキャラ立ちがすごいけど、シリーズ主役の立場は大丈夫なのか?とか、種々突っ込みどころはあるにせよ、それはそれとして楽しめた ことも事実。全ての短編にぬいぐるみを関連付けるのも大変だと思うのだけれども、西澤さんって、ぬいぐるみ好きなの? |
|||
| No.797 | 6点 | 白霧学舎 探偵小説倶楽部- 岡田秀文 | 2018/12/23 22:58 |
|---|---|---|---|
| ストレートど真ん中の作品。古典的とも言えるプロットで、それほど驚愕の展開がある訳ではないのだけれども、何かいいな。昭和20年という舞台設定と、「探偵小説倶楽部」のメンバーのおかげかな。雰囲気がイイ。
ちなみに、177ページのとある部分は、確実に誤記ですね。一瞬、これは何かの伏線なのかと色々考えちゃいましたよ(笑)。 |
|||
| No.796 | 6点 | 消えた断章- 深木章子 | 2018/12/17 23:40 |
|---|---|---|---|
| 「交換殺人はいかが?」で小学生探偵役を務めた樹来(じゅらい)も大学四年生に。元刑事の祖父「じいじ」も老人ホームで健在。大学生になった妹の麻亜知(まあち)から、「お兄ちゃんに会いたいという子がいる」と同級生の葛木夕夏を紹介され…。
序盤から引き込まれる展開。中盤あたりまで「あれ?樹来クン大丈夫?キャラ的にも妹にもってかれてない?」といった不安(?)もありましたが、いやいや、しっかりと仕事をしてくれています。真相の一部は察しがつくし、既視感もあるのですが、リーダビリティ―は高く、不満はなかったですね。「そして誰もいなくなった」と「アクロイド殺し」ねぇ…読後にちょっとニヤリとしましたね。 ちなみに、樹来と中村刑事のコンビで続編が出たりしないのかなぁ。勿論、じいじも登場してね。 |
|||
| No.795 | 6点 | ドッペルゲンガーの銃- 倉知淳 | 2018/12/14 22:31 |
|---|---|---|---|
| 女子高生ミステリ作家の妹とキャリア官僚(捜査一課在籍)の兄というコンビ、そして彼らのご先祖が…という設定については、個人的にはちょっとアレだったのだけれども、内容自体は本格度が高く、良質であると思います。
第三話の「翼の生えた悪意」はストレートな密室モノで、途中で気付く方も多いような気がしますが、第一話の「文豪の蔵」は同じ密室モノながら捻りがあり、また、第二話(表題作)の謎も興味深かった。第二話までの評価であれば、7点を付けたかも。 |
|||
| No.794 | 5点 | 二年半待て- 新津きよみ | 2018/12/11 22:19 |
|---|---|---|---|
| 徳間文庫大賞受賞作品で、「大人のどんでん返しミステリー」と銘打たれております。その評について、個人的には半分は認める一方で、肩透かし感も半分くらい残るかな。
どの短編も、就活とか最近はやりの「○活」をテーマにしていて、その一貫性には好感を抱くのですが、各短編の構成までもが似通っているような気がします。途中で察しがつく短編もあるし、察しがつかなくとも、ミステリーとしての「驚き」とはちょっと違う印象。 とはいえ、全体的な印象は悪くなく、気軽に読みたい気分の大人向けの短編集といったところ。マイベストは、やはりミステリーとしての要素を備えている、最終話の「お片づけ」かな。 |
|||
| No.793 | 7点 | マツリカ・マトリョシカ- 相沢沙呼 | 2018/12/03 22:11 |
|---|---|---|---|
| このシリーズの第一作目「マツリカ・マジョルカ」を読んだ際には、それほど良いイメージは残らなかったのですが(キャラ設定のみ記憶に残っている)、第三作目にあたる本書の巷での一定の評価から、ずっと気になってはおりました。ようやく、手にする機会を得た次第です。
で、内容としては、現在と過去の2つの密室を主眼に据えた堂々たる本格路線で、ちょっと驚かされました。コレって、個人的には、完全に好みの範疇に入るぞ。なかなかの収穫で、何か得した気分です。 柴犬のネガティブ思考には相当イライラさせられつつも、健全な高校男子の思考回路もあって、その辺りには好感。今回のマツリカ様の名探偵ぶりも良かった。続編も読んじゃうような気がします。 |
|||
| No.792 | 4点 | 時が見下ろす町- 長岡弘樹 | 2018/11/29 19:47 |
|---|---|---|---|
| そもそもミステリーの大概は「作り物」なのでしょうが、それにしても、この連作短編の「作り物感」は強すぎます。反転を経て人間の心情を描こうという意図は分らないでもないものの、どの短編でも「いやいや、そんなことはやらないでしょ、普通は」といった面が否定できません。さすがに狙い過ぎでしょう。それに、連作短編の形態を採った意義も感じられません。読みやすいことは評価するのですが…。 | |||
| No.791 | 5点 | 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件- 倉知淳 | 2018/11/25 22:03 |
|---|---|---|---|
| 短編集で、うち1編に猫丸先輩が登場。
全般的に読みやすく、いかにも作者らしい短編集と言えるのですが、脱力感はやや強めで、どの短編も真相自体は想定の範囲内。でも、それぞれの作品でちょっとした”良さ”を感じることができる、その按配は悪くないと思います。個人的には表題作のバカバカしさが好きかな。 |
|||
| No.790 | 5点 | 屋上の名探偵- 市川哲也 | 2018/11/18 22:16 |
|---|---|---|---|
| 「名探偵の証明」に登場した探偵「蜜柑花子」の高校時代を取り上げた連作短編。
うーん、「名探偵の証明」シリーズを読んだことがあるかどうかにも左右されそうだけれども、好き嫌いがはっきりと分かれそうな作品ですねぇ。 主人公「蜜柑花子」のキャラについて、個人的にはそのイタさも含めて嫌いではないし、学園ミステリとしての工夫も分かるのだけれども、トリック自体に特筆すべき点はなく、冗長に感じる部分も否定できなかったので、この採点にしておきます。 |
|||
| No.789 | 6点 | モノレールねこ- 加納朋子 | 2018/11/14 23:12 |
|---|---|---|---|
| いかにも作者らしい短編集。ミステリ的な側面だけでみれば極めて弱いと言わざるを得ないのですが、全編から醸し出される優しさがそれを上回っている感じでしょうかね。そして、こういう読書もいいものです。
ベストは、ザリガニ目線だからこその味わい「バルタン最期の日」。こういう再会っていいよねな表題作「モノレールねこ」、映画みたいな「セイムタイム・ネクストイヤー」、実際に自分の親だったら迷うかもな「ポトスの樹」も印象に残りそうかな。 |
|||
| No.788 | 7点 | たけまる文庫 謎の巻- 我孫子武丸 | 2018/11/04 21:21 |
|---|---|---|---|
| 冒頭作の「裏庭の死体」。まさか速水三兄弟に会えるとは思わなかった。これはファンとしては嬉しい。
次作の「バベルの塔の犯罪」。内容も悪くはないのだけれど、何といってもラスト1行のサプライズが心憎い。いやはや、そう来たか。 その他の短編もバラエティに富んでいて、楽しめます。特に「Everybody kills Somebody」が好きかな。 総合的に、なかなか読み得な短編集と言えるのではないでしょうか。(ファン限定な面も一部あるけれどね。) |
|||
| No.787 | 5点 | 名探偵の証明- 市川哲也 | 2018/10/31 23:37 |
|---|---|---|---|
| 鮎川哲也賞受賞作。
「名探偵」の「老い」とか「弱さ」に焦点を当てたメタ的視点は結構面白かったですし、印象に残りそうでもあります。 一方で、それらの要素が「読み進めたい欲」を増幅させたのかと問われれば、消極的な回答をしてしまうような気もします。中だるみ感も否定できないし、トリック自体も小粒(既視感満載)と言わざるを得ません。若き名探偵「蜜柑花子」の位置づけも、少なくとも本作時点では中途半端な印象(あくまでも本作だけでの印象だけれども)。 とは言え、続編or短編集もそのうち読んでみようかなぁ…と思ったのも事実なので、まずはこの採点にしておこうかな。 |
|||
| No.786 | 7点 | オーブランの少女- 深緑野分 | 2018/10/21 22:46 |
|---|---|---|---|
| 「少女」という共通テーマはありつつも、各々異なる舞台や時代を設定し、巧みに活かしています。ミステリ要素云々は措きつつ、どの短編も次々にページをめくらされました。デビュー短編集としては、出色の出来と言えるのではないでしょうか。
ベストは、やはり表題作の「オーブランの少女」。「仮面」の深さ、「大雨とトマト」の奇妙な味わい、「片想い」の女学生心理、「氷の皇国」の切なさと雰囲気も捨てがたく、いずれも高水準でしたね。 |
|||
| No.785 | 7点 | マレー鉄道の謎- 有栖川有栖 | 2018/10/14 18:21 |
|---|---|---|---|
| 作者の本格愛と確たる技量を感じる作品ですね。密室の真相自体はアレだけれども、謎は決してそれだけではなく重層的だし、最後まで捻られています。伏線の配置もお見事。序盤は冗長に感じた面も正直あったのですが、事件発生後はあっさりと引き込まれましたねぇ。登場人物一人ひとりに役割を与え、決して「無駄にしない」姿勢も素晴らしいです。 | |||
| No.784 | 6点 | 人間じゃない- 綾辻行人 | 2018/10/07 21:04 |
|---|---|---|---|
| 単独名義の著書には未収録であった短編・中編をまとめた作品集。最も古い作品と最も新しい作品の間には20年以上の開きがあり、かつ、「内容の出来不出来や方向性などは無視して発表の順番どおりに」配置したとのことなので、何となく寄せ集め的な先入観を持って読み始めたのですが、結構いい塩梅の配置のような気もするし、各々の作品の順番自体が興味深かったりもします。「洗礼」も印象に残りそうですが、最終話の「人間じゃない―B〇四号室の患者-」がベストかな。 | |||
| No.783 | 6点 | アリバイ崩し承ります- 大山誠一郎 | 2018/10/06 09:29 |
|---|---|---|---|
| タイトルどおり、アリバイ崩しに特化した短編集。「時計修理承ります」のほか「アリバイ崩し承ります」という貼り紙がある時計店店主の美谷時乃が、新米刑事の持ち込む謎を解き明かす…という設定。
結構人によって評価が大きく異なるような気がしますねぇ。アリバイ特化といってもバラエティに富んでいるし、純粋にパズラーとして面白いという意見もあろうし、トリックのためのトリックといった感じで現実感がないとか、クイズ短編集みたいとか、アリバイ崩しだけ読まされるのも辛いといった意見もありましょう。この作者さんの短編集って、総じてそういった両方向からの評価傾向がありますよね。 ちなみに、私は肯定的に捉えていて、「いや、無理だろ」といった突っ込み自体も含めて楽しめました。最も印象に残ったのが「時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」かな。 |
|||