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りゅうさん
平均点: 6.53点 書評数: 163件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.5 7点 冷たい密室と博士たち- 森博嗣 2010/12/10 18:42
 このサイトでの評価はあまり高くないですね。作者らしい派手な展開がなく、森ファンが求めているものと合致していないことが原因なのでしょう。個人的には高く評価できる作品だと思います。犀川の真相説明は理路整然としており、なるほどと思いました。密室のトリックは地味ながらも私好みのものです。このトリックは途中である程度推測できたのですが(犯人は全くわかりませんでしたが)、真相はさらにその上を行くものでした。確かに、事件が起こった実験時における各登場人物の動きがわかりにくいのが難点ですね。動機が納得出来ないのは作者の作品に共通して言えることで、この作品はましな方だと思います。

No.4 7点 幻惑の死と使途- 森博嗣 2010/12/04 21:39
 読み終えた直後は、イマイチ必然性のない真相で、考えられる解のひとつにすぎないのではと思いました。しかし、よく考えてみると、死体消失事件の真相はこれしかないと思われるものです。マジシャンの登場が煙幕となって、まんまと幻惑されてしまいました。総じて、読者に十分な手掛かりが与えられているとは言えず、この真相を言い当てるのは難しいと思います。

(完全にネタバレをしています。要注意!)
 いくつか疑問があります。
・ 棺を霊柩車に搬入した際に、棺を運搬した人は運転手に搬入完了したことを伝えるのが普通ではないだろうか。運転手とのやり取りがないまま、車が動き出したいう設定は不自然。
・ 死体消失事件において、犯人は、ホールの玄関に霊柩車を駐車した後、有里匠幻としてのメーキャップをしたうえで棺の中に入っている。これだけのことを誰にも目撃されずに出来るだろうか(計画段階で出来ると考えるだろうか)。
・ 犯人はマジシャンと運転手との二重生活を送っているが、こんなことが現実的に可能だろうか。さらに、犯人は死体消失マジックを将来実施することを念頭において、そのためだけに葬儀会社に入社している。こんなことは普通考えられない。また、有里匠幻の葬儀を、別の会社ではなく、この会社に依頼することがあらかじめどうしてわかっていたのだろう。

 重箱の隅をつつくような粗探しにすぎません。こんなことを言い出したらほとんどのミステリは成立しないのでしょう。本当は、もっといろいろイチャモンをつけるつもりでしたが、調べてみたら思った以上に整合性が取れていることがわかりました。トリックに派手さはないものの(犯行内容自体は派手ですが)、しっかりした構成を持っています。

No.3 7点 笑わない数学者- 森博嗣 2010/11/18 20:19
(ネタバレをしています。)
 オリオン像消失のトリックは見抜けましたが、殺人に係るその他の謎は見抜けませんでした。そんなに面白い謎でもなかったので、真剣に考える気がしなかったからです(単なる言い訳ですね!)。おまけに、最後に出てくる老人の話については、物語を締めくくるエピソードぐらいにしか考えていませんでした。そう言えば、このサイトの書評で「逆トリック」って書いてあったけれども、「逆トリック」って何だろうと思いました。
 「逆トリック」について、ネット検索すると、作者のホームページが見つかりました。作品紹介のところに、「トリックは簡単で、誰でも気づくものです。意図的に簡単にしたのです。しかし、トリックに気づいた人が、一番引っかかった人である、という逆トリックなのです」と書いてありました。併せて、他の関連するホームページも斜め読みしました。
 その結果、「逆トリック」とは、読者に簡単なトリックを見抜かせることによって安心・満足させて、思考停止状態にし、作者が仕掛けた別の謎に気付かせないことではないかと思いました。別の謎については、ネット検索の結果、「最後に登場する老人の正体は誰なのか」という意見がありました。しかし、作者が逆トリックの意味を具体的に言及していないので、この解釈で正しいのかどうかも判然としません。
 実験的な作品であるという点では評価できると思います。しかしながら、私もそうですが、このサイトの書評者でも逆トリックに気付いていない人が結構いるようです。これで、作者の意図は達成できているのでしょうか。疑問に思います。

No.2 7点 有限と微小のパン- 森博嗣 2010/06/25 19:29
 かなりの長編だが、長さはさほど苦にならなかった。S&Mや真賀田四季のキャラクターには全く関心を持てないが、作中に出てくる理系的な思想・思考・表現に興味をひかれた。あまりにも突拍子のない謎が提示されるので、いい加減な種明かしをするのではないかとの不安がよぎった。確かに現実にはありえない真相で、反則気味のトリックだ。しかしながら、バーチャルリアリティーの体験場面を挿入するなど、作品そのものが現実と虚構の境界を曖昧にしていることもあって、突拍子のない謎の解決策として、個人的には納得できるものであった。

No.1 7点 すべてがFになる- 森博嗣 2010/02/27 12:25
(ネタバレあり)
 印象的な死体登場シーン。被害者以外は出入り不可能な密室からロボットに載せられて登場した死体は、両手両足が切断されていた。この不可能犯罪を可能にした手法には意表をつかれた。しかし、犯人が天才であるためか、犯行の動機が皆目理解できなかった。また、犯行計画があまりにも大掛かりすぎてリアリティーに乏しく、天才の計画にしては不確実な部分があると思った。

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りゅうさん
ひとこと
 横溝正史の作品を集中して読んだ時期はありましたが、これまではミステリを文学の1ジャンルにすぎないと考え、特にミステリにこだわった読書をしてきたわけではありませんでした。このサイトの書評を見て、ミステリ...
好きな作家
あえて挙げると、ディクスン・カーと横溝正史
採点傾向
平均点: 6.53点   採点数: 163件
採点の多い作家(TOP10)
横溝正史(22)
アガサ・クリスティー(19)
鮎川哲也(10)
エラリイ・クイーン(9)
有栖川有栖(7)
ジョン・ディクスン・カー(7)
森博嗣(5)
泡坂妻夫(5)
麻耶雄嵩(4)
西澤保彦(3)