皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
りゅうさん |
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平均点: 6.53点 | 書評数: 163件 |
No.7 | 6点 | 連続殺人事件- ジョン・ディクスン・カー | 2011/04/11 20:08 |
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真相自体は非常に面白いものですが、謎解きとしては少し不十分な印象です。フーダニットとしては、犯人の必然性に乏しいと思います(犯人の設定に関しては、真相とほぼ同じことが推測出来ていましたが、真犯人は別の人物というか、もう一人の人物だと思っていました)。第1の事件と第2の事件のトリックに関しては、こんな方法で本当に人が殺せるのかなと思いました(カーの勘違いのようですが)。第3の事件における密室のトリックに関しても、手法はわかりませんでしたが、感心するほどのものではありませんでした。また、この邦題は、正確な訳ではなく、作品の内容とも一致していないので適切とは思えません。
(ネタバレをしています。注意!) 第2の事件で、コーリンはアンガスと同様に塔屋から墜落しているのですが、この真相だと室内で倒れているのではないでしょうか。 |
No.6 | 6点 | 三つの棺- ジョン・ディクスン・カー | 2011/01/09 01:34 |
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作者らしい不可能状況の提示に、謎解きの方は全くお手上げでした。
複雑な真相で、フェル博士の説明を読んでもすっきりと理解できたとは言えません。不可能状況を作り出すために、あまりにも偶然に頼りすぎている印象を受けます。真相の肝と言うべき〇〇の錯誤ですが、ヒントとなる伏線が不明瞭すぎて、気付くのは困難だと思います。第一の棺に係る殺人事件で足跡がなかった理由の説明も曖昧です。現場の位置関係がわかりにくく、読みにくい翻訳も相まって、読解困難な作品でした。 |
No.5 | 8点 | 妖魔の森の家- ジョン・ディクスン・カー | 2010/07/31 14:59 |
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再読。前回読んだのはかなり前だが、表題作に関しては、細かい伏線までほぼ完全に覚えていた。伏線の張り方のお手本とも言うべき傑作である。文庫本の解説を読むと、「クイーンはこれを、推理小説の理論と実際の、ほとんど完全な作品といい、再読し、再吟味し、再礼賛すべきものだと称揚している」と書いてある。まさにそのとおりだと思う(文庫本の解説は完全ネタバレをしているので、未読の方は作品読了後に読んだほうが良い)。真相を知ったうえで読み返すと、カーがいかに大胆な描写をしているかがわかり、驚かされる。「ある密室」や「第三の銃弾」もあらすじは覚えていたが、オチは覚えていなかった。カーという作家は、謎の提示の仕方が非常に魅力的なのだが、種明かしは肩すかし気味という印象があり、この2作品も然り。表題作以外の作品のオチは、また忘れてしまうことだろう。 |
No.4 | 9点 | 曲った蝶番- ジョン・ディクスン・カー | 2010/05/02 20:03 |
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傑作。
どちらのジョン卿が本物なのか、自殺か他殺か、といった謎が二転三転し、興味をかきたてられた。2人のジョンの口頭対決や検視審問でのデイン女史の弁論などの見せ場もある。しかし、何といってもメインになるのは、被害者の周囲に誰もいなかったのに殺されたという不可能犯罪の解明だ。若干ネタバレになるかもしれないが、この作品では2つの種明かしが行われている。1つ目はアクロバチックで確実性に疑問はあるが、十分納得できるもの。2つ目は奇想天外なトリックで、これには意表を突かれた。どちらの種明かしについても巧妙に伏線が貼られている。 不満に思ったのは、1年前に起きた変死事件の背景がわかりにくかったこと。早い段階で背景の説明がほしいと思った(キリスト教の素養がある人は説明が不要なのかもしれない)。 |
No.3 | 6点 | 火刑法廷- ジョン・ディクスン・カー | 2010/03/24 19:29 |
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カーの最高傑作と言われているので、ずっと読みたいと思っていた作品。しかし、期待ほどではなかった。
犯行やそれを隠蔽する行為の合理性に疑問を感じた。犯人消失や死体消失のトリックは許容範囲だが、やや肩すかしをくらった感じ。不思議な謎を次から次と提示してくる作者のストーリーテラーぶりはさすがだ。 最後のどんでん返しには呆気にとられたが、個人的にはこのラストはあまり評価できない。 |
No.2 | 9点 | 皇帝のかぎ煙草入れ- ジョン・ディクスン・カー | 2010/03/15 18:24 |
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再読。秀作である。何といっても心理的盲点を突いたトリックが秀逸。犯人にとっても予想外の出来事が起こり、謎をより一層複雑なものにしている。
主人公のイヴにとって不利な状況証拠が次々と見つかり、まるで誰かにはめられたかのようにして逮捕されるという筋書きも面白かった。 表題でもある「皇帝のかぎ煙草入れ」が、探偵役のキンロス博士が犯人を推理するうえでの重要な鍵となっている。 |
No.1 | 5点 | 帽子収集狂事件- ジョン・ディクスン・カー | 2010/02/05 13:37 |
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(若干のネタバレあり)
江戸川乱歩がベストテンに選んでいる作品だが、そこまでの傑作とは思えなかった。 帽子収集狂による帽子盗難騒ぎ、エドガー・アラン・ポーの未発表原稿の盗難、ロンドン塔で発見された殺人事件等を絡めて、真相は結構複雑で面白いものとなっている。しかしながら、与えられた手掛かりのみで、読者が真相を推理するのは到底無理だと思われる。ロンドン塔から被害者の自宅までの移動時間が推理するうえでの肝となるのだが、小説の中ではそのことが本当にさりげなくしか記述されていない。これでは、読者が真相を推理することは難しい。推測の域を出ないとしか思われない推理を断定的な事実のように語るフェル博士には閉口した。 |