皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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E-BANKERさん |
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平均点: 6.01点 | 書評数: 1809件 |
No.11 | 5点 | 学生街の殺人- 東野圭吾 | 2011/12/22 23:39 |
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いわゆる初期の「青春ミステリー」に分類される作品。
前作「卒業~雪月花ゲーム」と共通する喫茶店が登場するなど、物語の舞台は共有している模様。 ~学生街のビリヤード場で働く津村光平の知人で、脱サラした松木が何者かに殺害された。「俺はこの街が嫌いなんだ」と数日前に不思議なメッセージを光平に残して・・・。第二の殺人は密室状態で起こり、恐るべき事件は思いがけない方向に展開していく。奇怪な連続殺人と密室トリックの陰に潜む人間心理の真実とは?~ 割と普通のミステリーだったなというのが感想。 本作の発表が1987年ということで、やはり何か一昔前の若者群像というか、まさに「私個人」が過ごした学生時代の匂いがして、そういう意味では親近感が湧いた。 で、本筋の殺人事件だが、何となく予定調和のような読後感。 第1、第2の殺人は、フーダニットはともかく、密室トリックはちょっといただけないレベル。エレベーターを使ったごく簡易的な準密室というイメージだが、わざわざ「密室トリック」と仰々しく紹介するほどではないでしょう。 そして、事件の背景として登場するA○だが、何となく浮いている感じがして、どうもしっくりこない。 そして、第三の殺人だが、これは安易なのでは? 出てきた重要な登場人物を割り振っていったら、必然的にこうなるようなぁという感じがしてしまった。 主人公である光平君にとってはツライ体験かもしれませんが、人生ってこういうもんだよっと言いたいね。 まぁ、こういう手の作品が好きな人や、とにかく「東野圭吾が好き」っていう方以外ならスルーしてもいい作品かと思う。 (こういう光平みたいな奴がモテるんだよねぇ・・・なぜか) |
No.10 | 6点 | 放課後- 東野圭吾 | 2011/08/23 22:06 |
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当代一の流行(ミステリー)作家となった作者のデビュー作。
第31回の乱歩賞受賞作でもあります。 ~校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。先生を2人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将・・・と犯人候補は続々と登場する。そして、運動会の仮装行列で第2の殺人が起こる!~ 巨匠「東野圭吾」とはいえ、さすがに「若さ」を感じる作品だなぁという感想。 (もちろん、並みの作家ではないことはよく分かりますが・・・) 加賀シリーズなどでは、見事なストーリーテラー振りと緻密なプロットでスイスイ読ませますが、当然とはいえ、そこまでのレベルには至ってない。 本作の「核」は密室トリックと動機でしょう。 密室トリックは、正直弱すぎる。アーチェリーは全くの門外漢ですが、果たして「アレ」は「アレ」の代用品になり得るのでしょうか? 「捨てトリック」の方がよほど実現性が高い。(もちろん、アリバイとの絡みがあったことは認めるとして・・・) 「動機」はどうですかねぇー まぁ、真の動機が明らかになったときは、「エーッ!」というような軽い衝撃がありましたが、作者が主人公・前島に語らせる「女子高生特有の動機」という奴も連続殺人を画策するほどのものではないような気がしてなりません。 そして、ラストに用意されたもう1つのサプライズ! これにはヤラレました。個人的には、あの人物が本筋の真相に絡んでくるのか?と予想していただけに、逆の意味で驚かされた。 というわけで、作家・東野圭吾を知るためには、いろんな意味で欠かせない1冊のような気はしました。 (はぁー、女子高の運動会かぁー、体験してみてぇ・・・) |
No.9 | 8点 | 赤い指- 東野圭吾 | 2011/06/18 14:14 |
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加賀刑事シリーズ。
今回は、加賀の父親も登場。少しづつ加賀の秘密が明らかになってくる感じです。 ~少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。いったいどんな悪夢が彼らを狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼ら自身の手によって明かされなければならない」。加賀刑事の謎めいた言葉の意味とは?~ いやぁ、これは「重い」。ひたすら「重い」というか「痛い!」。 主人公である前原の姿に思わず自分を重ねてしまいました。(特に妻との関係・・・) 父親として、夫として、そして年老いた親を持つ「子供」として、前原の「なさけない姿」がなんともいえず、読んでて「つらく」なってしまいました。 やっぱりすごい作家ですよ、東野圭吾は! ここまで、人間の嫌なところを抉り出して、さらけ出すなんて・・・。 そして、それを解明する加賀恭一郎のキャタクター! この短さで、濃厚な人間ドラマを作り上げる手腕にとにかく感心。 ラストもにくいねぇ・・・特に、将棋! かっこよすぎ! 最後に効いてくる「赤い指」の仕掛けも見事です。 (自分の子供がこんな奴にならないように祈るのみ・・・) |
No.8 | 9点 | 私が彼を殺した- 東野圭吾 | 2011/04/15 23:08 |
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加賀刑事シリーズ第5弾。
「どちらかが彼女を殺した」に続く、"最後まで犯人の名前が明かされない”究極のフーダニット! ~婚約中の男性の自宅に突然現れた1人の女性。男に裏切られたことを知った彼女は服毒自殺を図った。男は自分との関わりを隠そうとする。醜い愛憎の果て、殺人は起こった。容疑者は3人。事件の鍵は女が残した毒入りカプセルとその行方~ いやぁ、これはスゴイ作品ですね。 「どちらかが・・・」にもかなり感心させられましたが、今回はそれ以上。 前回の「三人称一視点」から、「一人称一視点」に変わったことも、読者をさらに煙に巻く効果を発揮しているようです。 加賀刑事シリーズには何かしら毎回感心させられてますが、今回の「毒入りカプセル」の推理もかなりのもの。 毒入りカプセルを被害者に仕掛ける機会ばかりを考えているところへ、「○○物」自体の伏線まで張られていたとは・・・(袋綴じ解説を読んで初めて気付いた) ネタバレサイトもいくつか閲覧したため、一応真犯人については理解しましたが、個人的にはもうちょっと飛躍して考えてたので、やや拍子抜け感はありますけど・・・ とにかく、ミステリー作家としての作者の「腕」の確かさを改めて感じることのできる「必読の書」という評価で間違いなし。 (そんなに短いわけでもないのに、あっという間に読了してしまいました。さすが東野圭吾・・・) |
No.7 | 7点 | 悪意- 東野圭吾 | 2011/02/27 17:47 |
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加賀恭一郎シリーズの4作目。
シリーズ最高傑作との呼び声も高い作品。 ~人気作家が仕事場で殺された。第一発見者は、被害者の妻と幼馴染の男。犯行現場に赴いた刑事、加賀恭一郎の推理、逮捕された犯人が決して語らない動機とは? 人はなぜ人を殺すのか~ 一言で言い表すなら、「究極のホワイダニット作品」というところでしょうか。 犯人は早い段階で確定し、事件の構図もはっきりしたかと思いきや、さらなる「二番底」のような真相が判明する・・・ それこそがまさに「悪意」なわけです。 いやぁ・・・何かやりきれないようなストーリーですねぇ。人間の弱さというか醜さというのも、ここまで示されると目をそらしたくなってしまいます。 加賀恭一郎という男が何とも恐ろしく感じてしまいました。 作者のストーリーテリングのうまさを十二分に味わえる佳作という評価で間違いなしです。 (加賀刑事が教師をやめた理由も分かってすっきりした。でも、こんなこと現実の事件でもありそうな感じ) |
No.6 | 8点 | どちらかが彼女を殺した- 東野圭吾 | 2011/01/30 22:32 |
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加賀恭一郎シリーズの第3弾。
練馬署勤務時代の加賀刑事が描かれます。 ~最愛の妹が偽装を施され殺害された。愛知県警豊橋署に勤務する兄・和泉康正は独自の現場検証の結果、容疑者を2人に絞り込む。1人は妹の親友。もう1人はかつての恋人。妹の復讐に燃え、真犯人に肉薄する兄。その前に立ちはだかる練馬署・加賀刑事。殺したのは「男」か「女」か、究極の推理!~ なかなか評価の分かれる作品のようですね。 で、個人的には「たいへん良くできてるミステリー」だなという評価。 本作を「究極のフーダニット」と見ると、ラストの「企み」がアンフェアとかもどかしさにつながるのかもしれません。 伏線がこれでもかと張られてるわけですから、読者としては、それを1つ1つ拾わされ、結局真犯人の名前が明かされないわけですから、「なんで?」と思うのもまぁ分からなくはないですね。 ただ、その作り込みがハンパなく精密にできてます。そういう意味では、再読して伏線をすべて確認していくべき作品なのかもしれません。(あまり楽しくはないかもしれませんけど・・・) 真犯人-和泉-加賀という三者の関係性も絶妙。「犯人探し」と「倒叙形式」の融合というわけで、作者にとってはかなり難しさもあったのでは? などと思ってしまいます。 というわけで、どちらかというと「面白い」と言うよりは、「感心!」ということでの評価。 (文庫版巻末の「推理の手引き」は必須ですね。これがないと本作が成り立たない) |
No.5 | 5点 | 眠りの森- 東野圭吾 | 2010/12/25 23:09 |
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「卒業~雪月花ゲーム」に続く加賀恭一郎シリーズの第2弾。
加賀は警視庁の刑事として登場。 ~美貌のバレリーナが男を殺したのは、本当に正当防衛だったのか。完璧な踊りを求めて一途に稽古に励む高柳バレエ団のプリマたち。美女たちの世界に迷い込んだ男は死体になっていた。若き敏腕刑事・加賀恭一郎は浅岡美緒に惹かれ、事件の真相に肉薄する。華やかな舞台の裏の哀しいダンサーの悲恋の物語~ 前作の後日談も多少織り交ぜてはありますが、一旦教職に就きながらも刑事になった経緯については不明なままです。 ストーリーについてはさすがに東野圭吾というべきで、バレエ団という特殊な舞台設定をうまく絡ませ、読者を引き込んでいきます。 他の方の書評どおり、ラストシーン、未緒に対する加賀の一途な愛情は、やはりたいへんに感動的でした。 ただ、ミステリーとしては評価しにくい・・・ ホワイダニット中心で事件が進みますから、読者にとっては途中から出てくる手掛かりらしきものをもとに、加賀が解決していく過程を見守るだけ、ということになっちゃいます。 (それにしても、悲しい女性ですねぇ・・・未緒。胸が痛くなります。) |
No.4 | 6点 | 卒業−雪月花殺人ゲーム- 東野圭吾 | 2010/11/16 22:33 |
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作者初期の青春ミステリー。
大学生の加賀恭一郎が連続殺人事件の謎に挑みます。 現場の見取り図や鍵の形状をわざわざ挿入した割りに、密室トリックはたいしたことはありません。 ただ、例の「雪月花ゲーム」のトリックについては、なかなか面白い仕掛けだと思います。まぁ、「茶道」自体馴染みのない世界ではありますが、ここまで懇切丁寧に説明されれば、読者にも十分推理可能ですし、フェアでしょう。 「青春ミステリー」としてもよくできてますね。あの年代の頃の悩みや苦しみ・・・何となく思い出してしまいました。 剣道や茶道の薀蓄話も適度に絡ませてあるのも好印象です。 評点は辛めですが、作者の初期代表作、そして加賀刑事の初登場作品として外すことのできない作品なのは間違いないところです。 |
No.3 | 6点 | 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 | 2010/10/30 22:36 |
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加賀刑事物の短編集。
個人的には、久々に東野作品を読了しました。 ①「嘘をもうひとつだけ」=まずはタイトルが秀逸。たった1つの違和感から真犯人を追い詰める加賀刑事・・・素敵です。 ②「冷たい灼熱」=個人的には本作中ベスト。社会問題にもなった事件をうまく処理してますね。 ③「第二の希望」=ラストでの加賀の台詞『それが・・・あなたの第二希望ですか』が見事! ④「狂った計算」=真相はやや意外。想定内だけど。 ⑤「友の助言」=この中では一番落ちるかな? 以上5編。 すべての作品で真犯人はほぼ特定されており、「ハウダニット」に特化した展開。 どれも高いクオリティで「さすが!」と唸らされますが、突き抜けるほどの読後感ではないという感じ。 |
No.2 | 8点 | 容疑者Xの献身- 東野圭吾 | 2009/08/30 18:29 |
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ガリレオシリーズ、初の長編。
映画も大ヒットした直木賞受賞作品。 ~天才数学者でありながら不遇な日々をおくっていった高校教師の石神は、1人娘と暮らす隣人の靖子に密かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、2人を救うために完全犯罪を企てる。だが、皮肉にも石神のかつての親友である物理学者の湯川学がその謎に挑むことになる~ 評判どおりの佳作。さすがです。 いまさら書評どうのこうのという作品ではないような気がします。 (直木賞&日本推理協会賞受賞、しかもこのミス1位ですから) トリック云々はあまり気にせず、石神バーサス湯川の知恵比べというか、湯川の悲壮な謎解きを味わうべきでしょう。 しかし、男ってかわいいもんです。 今の世の中、女性からの「献身」や「純愛」なんて望むべくもないでしょうから・・・ 有名になりすぎたので、逆に嫌う方もいるかもしれませんが、読まないと損する作品という評価でいいでしょう。 (東野圭吾と二階堂黎人の本格論争なんてありましたが、そんなこと読者が気にする必要はありません。何が「本格」かなんてどうでもいいことです) |
No.1 | 5点 | 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 | 2009/08/01 23:41 |
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比較的初期のノンシリーズ作品。
ラストで作者が企んだ「大技」が炸裂!する有名作。 ~8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を絶たれた8人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まるなか、ついに1人が殺される。だが、状況から考えて犯人は強盗たちではあり得なかった。7人の男女は互いに疑心暗鬼に囚われ、パニックに陥っていったが・・・~ ある意味、たいへん作者らしい作品だなぁというのが正直な感想。 細部まで計算され尽くしていて、非常にスキのないプロット&ストーリーに仕上がっています。 ただ、ミステリー中毒の方なら、何となく途中で「カラクリ」については察してしまう可能性が高いのではないですかねぇ? ちょっと「いかにも」っぽい描写や展開が目に付いたのは事実。 ラストの「種明かし」も「やっぱりねぇ」と思われた読者も多いかもしれません。(私もそう) というわけで、あまり高い評価はしにくいんですよねぇ・・・ (「東野圭吾」というだけで、ついついハードルを上げてしまいます) |