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E-BANKERさん
平均点: 6.01点 書評数: 1785件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.10 8点 エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン 2010/12/22 23:43
国名シリーズ第5弾。
確か小学生のとき図書館のジュブナイル版で読んで以来の再読・・・(当然内容は覚えてませんでした)
~T字型のエジプト十字架に次々と磔にされていく小学校長、百万長者、スポーツマン、未知の男! その秘密を知るものは死者のみである。ついに匙を投げたと思われたエラリーの目が突然輝いた。近代のあらゆる快速交通機関を利用して、スリル満点の犯人の追跡が繰り広げられる~

読み終わってすぐの感想はただ「面白かった」の一言。
他の方の書評どおり、広大なアメリカ合衆国の東半分を縦横無尽に、愛車を駆って走り回るエラリーの姿は、他作品にはない躍動感やスリリング性を感じさせられます。
創元文庫版の解説で山口雅也氏が触れられてますが、この作品が発表された1932年は、「ギリシャ棺」や「X」「Y」も発表されており、まさに作家E.クイーンの最盛期とも言うべき年・・・そんな脂ののりきった作品を堪能させていただきました。
解決場面での有名な「ヨードチンキの推理」は、それだけではたいしたロジックではないのですが、真犯人が残したこの小さな齟齬から、連続殺人事件の謎が一気に解明されるという爽快感こそが本作の白眉でしょう。
「T」の謎自体は、従来の「首切り殺人」の理論を踏襲するものですし、確かに中盤やや冗長な部分もあるため、最終的にはこれくらいの評点で・・・
あと「裸体主義の新興宗教」って結局必要だったんでしょうか??

No.9 5点 ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン 2010/10/30 22:24
国名シリーズ第1弾にして、名探偵E.クイーンが誕生した記念すべき作品。
戦時中とはいえ、行間に古き良きアメリカの香りを感じさせ、「劇場」での殺人という設定が作品の舞台効果を高めているような気がします。
ただ、後年の作品と比べると、クオリティの面で格段に落ちるなという印象。
本作は「帽子(=シルクハット)がなぜ消えたか?」という謎にほぼすべてが費やされており、それはそれで明快なロジックと言えなくもないのですが、それだけで自動的に真犯人が決まるという解法にはやはり違和感を感じてしまう・・・
ラストの解決場面でも触れていますが、エラリー自身、中盤部分ですでに真犯人を特定していたとのこと・・・であれば、その他の捜査場面は何だったのか?
その辺り、あまりにも一発勝負すぎて、どうしても「それだけ!」という読後感になってしまいました。
それにしても、警視は息子(エラリー)を褒めすぎ!

No.8 5点 シャム双子の秘密- エラリイ・クイーン 2010/09/12 21:34
国名シリーズ。
クローズドサークル内の殺人事件や、「読者への挑戦」がないなど、シリーズ中でも異色の作品として有名。
他の方の書評でも触れられてますが、確かに全体的に中途半端感を感じてしまいますねぇ。
異形の双生児や「骸骨」という名の登場人物(すごい名前・・・)など、ちょっとおどろおどろしい雰囲気作りもあり、フーダニットとしての味わいとしては優れていますが、真相は「うーん」という感想。
今回、エラリーの推理は二転三転するのですが、徹頭徹尾トランプによるダイイングメッセージに拘り、推理内容のほとんどがそれだけに終始してしまうのも何か消化不良です。
ちなみに、NYではないためか、いつもの覇気が感じられないクイーン警視の弱気な態度が逆に新鮮でしたけど・・・

No.7 5点 レーン最後の事件- エラリイ・クイーン 2010/08/14 23:28
ドルリーレーン4部作の最終作品。
まさにシリーズの終焉にふさわしいラストが用意されています。
本作は、殺人事件ではなく(死体は出てきますが)、シェークスピア作品の盗難事件がメインとなり展開されますが、冒頭から謎の人物が複数登場し、それがいったい誰なのか?というところに読み手の興味が集中していきます。
レーンの推理は今回も見事なロジック。
特に、謎の人物を特定する手掛かり(特徴)として出てくる○○は、本邦の古典作品でも多用されます。
ラストは名優レーンらしくスマートですが、何とも言えない悲哀を感じさせるシーン・・・
とまぁ、作品としての水準の高さは感じるのですが、ミステリーとしての評価は、やっぱりXYZの悲劇よりも辛めになってしまいますよねぇ。

No.6 7点 フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン 2010/07/05 00:12
国名シリーズの第2弾。
舞台はNY繁華街の老舗デパートのショーウィンドウ。
と、なかなか派手な舞台が用意されますが、エラリーの捜査は割合オーソドックスなものです。
本作品の白眉は、殺人現場に残された数々の意味ありげな”証拠品”を、エラリーがいかに推理していくかというところでしょうか。
エラリーの「演繹的推理手法」により、証拠品が1つ1つ検討され、条件を満たす人物が最終的に真犯人として指名される最終章は、「やっぱりクイーン!」と唸らされるものがあります。
難を言えば、やっぱり「動機」ですかねぇ・・・
作品の途中で、エラリー自身も「この犯罪については動機を重要視していない」というような発言をしていますが、真犯人と動機を結びつける”線”が弱すぎる気がして、消去法ではそうだとしても、読了後なんかモヤモヤ感が残ってしまいました。
ただ、良作には間違いないと思います。

No.5 6点 チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン 2010/05/05 13:41
国名シリーズの第8作目。
シリーズ中でもかなり「異色」の作品という評判です。
本作品のテーマは有名な「あべこべ殺人」。
殺人が行われた部屋の中で、なぜか被害者は服をあべこべに着せられ、家具などもあべこべの向きにされています。
問題は、当然「なぜ真犯人はあべこべにする必要があったのか?」というところになるのですが、これは私の頭や価値観では理解不能でした。
そもそも、この時代の「中国」という国に対する見方や、欧米の生活習慣?が分かってないと、これを見破るのは無理でしょう。
密室についても説明はあるんですが、正直理解できませんし、エラリーがあれだけ拘った「タンジールオレンジ」についても、「それはないでしょう!」という解決法でした。
本作を当時NYタイムズ紙が激賞したそうですから、欧米社会にとってはたいへん分かりやすい作品なのかもしれません。

No.4 6点 Zの悲劇- エラリイ・クイーン 2010/04/22 20:13
ドルリーレーン4部作の第3弾。
名作「Xの悲劇」「Yの悲劇」から10年後が舞台であり、レーンは70歳を過ぎすっかり老境に入ってしまい、盟友サム警視は警察を退職し、私立探偵として活躍中・・・
この作品、他の方の書評どおり、読み所はラストシーン。意外な真犯人指摘まで、レーンの怒涛のような「消去法的推理手法」が披露されます。
確かに、この消去法を成立させるための伏線は見事ですし、本シリーズのレベルの高さを感じます。
ただ、途中の展開がちょっとまだるっこしいというか、今ひとつ緊張感に欠けるような部分が気になり、こんな評価になりました。(別にペイシェンスのせいではないと思うんですが・・・)

No.3 7点 九尾の猫- エラリイ・クイーン 2010/04/02 21:36
いわゆる「ミッシング・リンク」をテーマとした古典の代表作。
一見して全く関係がないと思われた多数の被害者をつなぐ”見えない輪”をエラリーが独特の嗅覚で探り当てます。
ただ、割と早い段階でこの「リンク」が判明してしまうところが玉に瑕。読者としては、もうちょっと終盤まで引っ張ってもらって、ラストで鮮やかに解決!という方がスッキリすると思うんですが・・・
確かに、ラストでもう一捻りが控えているので、不満一辺倒ではないんですけどねぇ・・・
動機はちょっと安直かなぁと思ってしまいます。
不満の多い書評ですが、それは期待の裏返しということで、良作なのは間違いないでしょう。

No.2 9点 Xの悲劇- エラリイ・クイーン 2010/01/03 21:45
ドルリー・レーン4部作の記念すべき第1作。
”ニコチン原液を塗った無数の針”という恐ろしい凶器が有名な作品です。
さすがというか、グレードが高いですね。
最終章、第1~第3の殺人までレーンの推理の過程が述べられるわけですが、その徹底したロジックには唸らされるばかりです。特に、○○傷跡の誤謬には気付きませんでした・・・
正直時代性もあり、第2の殺人については、いくら何でも現代では通用しないでしょうし、今ひとつ人物像が浮かびづらいという翻訳物の宿命は感じますが、まさしく「稀代の名作」という評価で間違いありません。

No.1 7点 Yの悲劇- エラリイ・クイーン 2009/11/01 21:39
世界的、歴史的名作というべきでしょうか。
ドルリー・レーンというのは名探偵として非常に魅力的な人物ですね。真犯人や事件の背景を知ってしまって苦悩する本作は、彼の魅力が強く出ている作品だと思います。
ものすごい作品だという評判を聞いたうえ読んだため、世間的な評価よりは厳しめの点数かもしれません。
有名な「マンドリン」という凶器の選択やヴァニラの匂いなど、読者が真相を解くヒントは多いですし、とにかくドラマティックな作品という印象です。
ただ、やっぱり私も”Y”よりは”X”の方がミステリー的には優れているとは思いますが・・・

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E-BANKERさん
ひとこと
好きな作家
島田荘司、折原一、池井戸潤などなど
採点傾向
平均点: 6.01点   採点数: 1785件
採点の多い作家(TOP10)
島田荘司(72)
折原一(54)
西村京太郎(42)
アガサ・クリスティー(37)
池井戸潤(35)
森博嗣(32)
東野圭吾(31)
伊坂幸太郎(30)
エラリイ・クイーン(30)
大沢在昌(26)