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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1759件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.17 5点 B/W 完全犯罪研究会- 清涼院流水 2022/07/22 23:04
3年連続でそれぞれ異なる殺人鬼に生命を狙われ「日本の犯罪史上もっとも有名な被害者」となった天見仄香は、現在、警視庁の犯罪被害者支援室に勤務している。未解決事件の再捜査の必要性を市民代表が審議する試験制度に参加し、自らの運命を揺さぶる「疑惑の少年」真壁巧と出会う仄香。真壁の周囲では、これまで両親や同級生など221件もの人間消失事件が起きていた。真壁巧は、はたしてクロかシロか?そして、仄香に迫る4度めの危機―。神の死を叫んだ哲学者が、現代社会に巨大な幻影を落とす。 
『BOOK』データベースより。

三回の集団失踪事件と三年連続首なし死体事件を中心に進む物語は、それなりに面白く最終章までは楽しめました。ところが最後でやってくれました。『コズミック』で悪い意味で騙されたと思った人にとっては、本作は間違いなく壁本でしょう。
かく言う私も読後は詐欺に遭った様な腹立たしさしか残りませんでした。しかし、よく考えればこの様な突拍子もない事件に、合理的な解決が得られる筈もなく、まあ仕方ないかと言う諦めの境地に至りました。

相変わらずですねえ、清涼院流水。そこまでやるかと云うほどの大風呂敷を広げておいて、結末を有耶無耶に濁す。これが普通の作家がやったらおそらく本にはなっていなかったと思います。結局期待した私が馬鹿だったんですね。本選びはなかなかに難しいものです、読む本読む本面白ければ苦労しませんやね。

No.16 6点 トップラン 最終話 大航海をラン- 清涼院流水 2020/07/17 22:12
2001年1月1日―新世紀の到来と同時に、世界は神々しいまでの輝きに包まれる。20世紀までに書かれたあらゆる小説ジャンルと隔絶する方法論でつくられた新しい物語。21世紀「娯楽小説以降」を鮮烈に印象づける書き下ろし文庫シリーズ『トップラン』完結作にして、清涼院「流水大説」の揺るぎない到達点。問答無用の最高傑作、ここに誕生。
『BOOK』データベースより。

傑作『コズミック』に通じるものがある事に好感を抱く一方、そのスケールの大きさに付いて行けない自分がいるのも実感しました。そこまで話を広げるか、というのが率直な意見。ただ、これまで様々な謎を孕んだ物語に終止符が打たれるのに相応しい内容だったとは思います。そして、一応すべての謎に回答が提示されています。
一つだけ、何故恋子だったのか?という素朴な疑問は不透明で、やはり狙いは別にあったという事なのか、言明されていないのが不満です。

トップラン・テストに始まったシリーズですが、このテスト、相手の狙いをある程度推察すれば、誰でも高得点が得られるところに捻りが加わっていなかったのは、ダメじゃないでしょうか。結局作者の自己満足の為に書かれた本作であり、自画自賛してこれまでの最高傑作と称していますが、それは客観的な事実とは異なると言わざるを得ませんね。あくまで本シリーズの売り上げに少しでも貢献するための方便だと思います。そりゃ誰でも作家たるもの自身の書いた作品が可愛くないはずがないでしょうけど、己の感情に本当に正直なのか疑問を覚えるところです。まあ努力賞として6点付けますけど。

No.15 5点 トップラン 第5話 最終話に専念- 清涼院流水 2020/07/15 22:58
水面下での駆け引きが次々と暴かれ、嘘つき勝負「一巻の終わりクイズ」は意外な終幕を迎えた。「よろず鑑定師」貴船天使は夜闇に姿を消し、謎の女・孤森ヒカルの影が見え隠れする。トップラン・テストの「M資金」「Y3K―西暦3000年の問題」とはなにか?残すは最終話のみ。20世紀にとどめを刺す書き下ろし文庫シリーズ第5話。
『BOOK』データベースより。

一巻の終わりクイズの最終局面を迎えます。残ったのは二人、恋子と少年狼。ここで物語はクライマックスに達する頃になります。前話で姿を現すかに見えたキツネ目の天才少女、狐森ヒカルは結局未だその正体さえ明らかにならず、期待に反して大した役割をしているようには思えませんでした。その後消えた貴船天使を追って、恋子の叔父で探偵の笙造が決着を付けるかと思われたが・・・。

しかし、謎の全貌はまだまだ明かされず、貴船天使の正体、どんな狙いがあって恋子にテスト、クイズを仕掛けたのか。背後にはまだ何かありそうですが、果たして最終話で全てが収束されるのか、不安でいっぱいです。現在その最終話を読んでいるところですが、一向に物語が進行せずイライラ感が募っています。
清涼院流水の最高傑作と言う人もいますが『コズミック』を超える作品は今後も書かれることはないでしょう。

No.14 6点 トップラン 第4話 クイズ大逆転- 清涼院流水 2020/07/13 22:30
トップラン・テストに関するすべての秘密が解き明かされる時が来た。「よろず鑑定師」貴船天使の紹介で、音羽恋子たち関係者一同は「少年狼」と衝撃的に出会う。時間と大金を賭けた嘘つき勝負「一巻の終わりクイズ」をめぐり、虚々実々のかけひきが繰り広げられる。舞台は整い、役者は揃った。盛り上がり最高潮の書き下ろし文庫シリーズ第4話。
『BOOK』データベースより。

第2話第3話に比べると、ストーリーの広がりが感じられ、やや盛り上がったのではないかと思います。前半はそれまでの経緯と貴船と対決するまでの説明に費やされ、シリーズを通して読んできた者にとっては特記べき点は見当たりません。しかし、恋子とその家族、友人対貴船天使、少年狼の構図はサスペンスフルで読み応えがあります。クイズ対決はそれぞれが嘘か本当かをその場で証明できる、本人にしか分からない告白をし、その真偽を賭けて大金と時間とを奪い合うというもの。

新たな少年狼という登場人物が現れることにより、物語は劇的に面白くなってきました。更には第5話で真打とも言えそうな、キツネ目の天才少女も出てきて、一層盛り上がることを期待しています。
最後の第6話まで読んで、果たしてどんな結末が待っているのか、長々と読まされて拍子抜けしないことを祈るばかりです。

No.13 4点 トップラン 第3話 身代金ローン- 清涼院流水 2020/06/25 22:47
謎の人物から誘拐予告電話がかかってきた。標的は音羽恋子の姉・銀子。相手が要求する身代金は3億7529万9500円。しかも支払いはローンで!?無気味な電話を恋子は逆に利用し、「よろず鑑定師」貴船天使を罠へと誘い出す秘策を練る。恋子の奇襲は成功するものの、敵にも予想外の切り札が…。緊迫する書き下ろし文庫シリーズ第3話。
『BOOK』データベースより。

前作から1ミリも話が進んでいない、これでは評価のしようがありません。前回誘拐されたと書きましたが、誘拐予告電話の間違いでした。しかし、それもまるで想定の範囲内の様な恋子の落ち着きぶりはどうしたことでしょうか。誰が何の為にという謎が何だかおざなりにされているような気がしてなりません。2000年当時の時事ネタとか、カラオケで誰がどんな曲を歌ったとか、どうでもいいです。本当にストーリーが前進したとするなら、ラストだけです。正直中身のない空虚な小説を読まされた感が半端ないです。

清涼院流水は『コズミック』で燃え尽きてしまったのでしょうかね。残りの作品は燃え滓だけ。大体、この作品を分冊にした意味が分かりません。せめて上下巻程度にすれば、もう少し濃密な内容になっていたのではないかと思います。相変わらず水増し感が大いに感じられ、第6話まで一気に読むつもりでしたが、飽きました。なので、一旦インターバルを置きたいと思います。

No.12 5点 トップラン 第2話 恋人は誘拐犯- 清涼院流水 2020/06/24 22:48
「よろず鑑定師」と名乗る貴船天使が課したトップラン・テスト第1問をクリアした音羽恋子。第2の課題は、『明日届ける7500万円入りのアタッシェケースを自宅で2カ月間隠し通すこと』。しかし届いたのは「104」と書かれた1枚のハガキだった。またもや謎謎!?テン(10)・シ(4)―天使?さらに謎が深まる書き下ろし文庫シリーズ第2話。
『BOOK』データベースより。

第1話の次回予告通り、トップラン・テストの答え合わせがメイン。まあ、予想通りと言いますか、当然と言いますか、要するに模範解答、必ずしも優等生的ではありませんが、が高得点となっています。裏があるのかも知れないとは言え、出題者の目論見を読み取れば、それほど難解な問題ではありませんね。つまり、己を貫く信念を持っていて、尚且つ周囲と孤立しない順応性が求められている訳で、通底する問題の解答に矛盾があってはなりません。それにしても、やはり少量の情報を無理やり引き延ばした感は否めず、余計な描写が見られるのは減点材料です。

そして、ラストに漸く話が動きます。これはかなり急展開と言ってもよく、意外な人物が登場し、更に恋子の姉の銀子が誘拐されるという怒涛の結末を迎えます。この先どうなるかが気になるように工夫されていますが、もう少しテンポよく話を進めて欲しいものですね。

No.11 5点 トップラン 第1話 ここが最前線- 清涼院流水 2020/06/21 22:39
2000年1月1日。新しい千年紀と同時にハタチを迎えた音羽恋子の眼前に現れた「よろず鑑定師 貴船天使」と名乗る男は、札束を取り出して言った。「このテストに回答したら99万円あげるよ」。突如渡された33問のトップラン・テスト―回答者に値段をつけるための人間鑑定試験??奇妙な謎が謎を呼ぶ、書き下ろし文庫シリーズ第1話。
『BOOK』データベースより。

主人公の恋子がマクドナルドで偶然会った、貴船天使と名乗る男の胡散臭い取引に乗り、人間鑑定試験を受けるという内容。試験と言っても単なるアンケートのようなもので、少なくとも怪しげな裏がある様には思われません。ごく普通の性格診断のようなもので、誰でもが分かる、これを選べば相手に喜ばれるであろう模範解答を繰り返し選択するのみです。他にもホームドラマのような一面もありつつ、果たしてこのよろず鑑定師は何者なのか、何が目的なのかがはっきりしない分、不安を煽ってきます。その意味ではサスペンス小説なのかも知れません。

そして、その鑑定結果は果たして巨額を手にするものであって、これは予想通り。期間内に貴船を探し出さなければならない条件をどうやってクリアするのかも、予想通りです。何の捻りもありません。ですが、まだ物語は始まったばかりなので、今後の展開が読めません。取り敢えず次回は鑑定試験の答え合わせが明かされるそうです。自分の身に照らし合わせて、どんな結果が出るのか気になるところではありますね。

No.10 5点 とくまでやる- 清涼院流水 2020/04/02 22:40
夏休み開けの2学期早々、フレアとクレア、双子の姉妹の通う名門女子高・聖光女学院の生徒が連続で自殺した。その週末、近くのビデオ屋で働く出有特馬の周囲でも、不可解な連続自殺がスタートする。
毎日、必ず1人ずつ自殺する。この異常な事件は、本当に自殺連鎖なのか、それとも連続殺人か?特馬は、相棒の山本新悟や双子姉妹と事件の真相を探るが……。
Amazon内容紹介より。

1日に起こった出来事を見開き2ページで描き切り、1日一人ずつ自殺していくという、一風変わった趣向のミステリ。果たしてそれが本当に自殺なのか、何故自殺するのかといった肝心の謎に関して、既に放棄してしまっている時点でダメ。まさに竜頭蛇尾というに相応しい作品となっています。まあそこが流水らしいってことなんでしょうが。だから本格ミステリと思って読むの間違いで、あくまでライトノベルとして楽しむべきだと思います。

ご本人はあとがきなどで自信のほどを誇示しておられますが、自身の著作の中でそこまで重要な位置にあるとは思えません。アイディアは認めて良いでしょうが、中身が薄いです。敢えて言えば、登場人物の個性が明確に描かれているのがせめてもの救いですね。仕掛けが子供騙しで、ハウが不明だしホワイもいい加減に感じました。

No.9 4点 億千万の人間CMスキャンダル- 清涼院流水 2020/01/20 22:41
それは、わずか十五秒の奇妙な悪夢から始まった。人気TV番組『ゴールデンU』に出ていた、もう一人の自分自身。あの「木村彰一さん」は誰だ?同じ街に住む、同姓同名で同い年のそっくりさん?「違うんだ、あれはおれじゃない!」日本中の注目を一身に浴びる中、彰一は不可解な陰謀から逃れようとするが…。著者渾身の新感覚ミステリ。
『BOOK』データベースより。

要するにもう一人の自分は誰なのか?というのがテーマです。同姓同名、同じ顔の自分だけど、自分のはずがない。木村彰一シリーズ、その裏に隠されているのは陰謀なのかはたまた超自然現象なのか。作者自身は文庫化に当たって、説明がくど過ぎるのとインパクト不足を是正する為、大幅に縮小して加筆修正したそうですが、残念ながらインパクトの大きさは全く感じませんでした。オチが披露された瞬間、はあ?ですね。分かったような分からないような、一瞬の間の後理解できましたが、ここまで盛り上げておいてそれかいと思いましたね。

巻末に特別寄稿として40ページに亘り延々自慢しています、文庫化の狙いはそれだったのかと勘繰りたくなります。己の武勇伝を実在の人物であり親友である(という設定の)木村彰一に語らせ、めっちゃ自画自賛しています。曰く清涼院流水は不世出の作家、眠らない男、アイディアが枯渇することがない、天才、時代の先を幻視しているなどなど。まあここまで自分を褒め称えられる人はそうはいないですね。だから誰も注目しないんじゃないかと思ったりします。ミステリ作家としてはもう終わった人だけど私はまだまだ読みますよ、流水大説を。

No.8 6点 ぶらんでぃっしゅ?- 清涼院流水 2019/11/12 22:36
まだ生まれる前、母のおなかの中で聞いた“ぶらんでぃっしゅ”という謎のコトバは、誕生後もずっと「ぼく」の人生を支配し続けていた。特別な人との出会いや別れをも予感してしまう、不思議な能力に目覚める「ぼく」。何度も姿を見せる、死神のようなライダーはいったい何者なのか?1500を超す候補から選び抜かれた108の名作“ぶらんでぃっしゅ”によるトーナメントは、コトバのマスターたちの競演で、興奮の頂点へ!そして、クライマックス。連続強盗殺人犯“ブラン・ディッシャー”の銃口が「ぼく」に向けられる―。この姿を見るのは、これが最後だ。
『BOOK』データベースより。

主人公常盤ナイトが誕生する前から彼の頭の中には「ぼく」がいて、その「ぼく」による一人称という形式が新しいと言えば新しいとです。つまり、ナイトと常に行動を共にし、その感覚や感情をある程度共有することが出来る訳です。しかし別人格ではなく、あくまで共感覚を有する分身の様なものでしょうか。
物語は“ぶらんでぃっしゅ”という謎の言語を巡っての言葉遊びが主体となっていて、ナイトと仲間たちによるそれに響きが似た言葉のトーナメントが、一番の見せ場となっています。コンビニ連続強盗殺人犯の残す“ぶらんでぃっしゅ”という謎の言葉に最も響きが近い類似語は何か?そんな下らないことを一生懸命追及する彼らの姿が、馬鹿馬鹿しくも微笑ましいのです。そして、そんな仲間たちとの出会いと別れを青春小説風に綴っています。まあここまではジャンル不明の異色作なんですけどね。

しかし、最終章でいきなりそれまで見ていた景色が一変します。この反転こそがこの小説の真の狙いだったのかと、暫く唖然とさせられます。これには正直やられました。
尚、森博嗣、西尾維新が名を変えて友情出演?します。でもそれはちょっとしたアクセントに過ぎませんので、あまり過度な期待は禁物でしょう。

No.7 5点 キャラねっと 愛$探偵の事件簿- 清涼院流水 2019/08/25 22:43
全世界で大人気のオンライン学園R.P.G.「キャラねっと」。学園生活をバーチャルに体験できるその仮想世界は、カワイイ妹のために俺がつくったもうひとつの現実。すべてはカワイイ妹のため。だが、あの小僧が現れてから俺の世界、そして妹への愛が壊れ始めた…「密室連続殺人」から始まった「キャラねっと」での不可解な3つの大事件に「探偵アイドル」が挑む。流水大説新境地!読者を巻き込むデジタル世代本格ミステリ。
『BOOK』データベースより。

Amazonでのあまりの評価の高さに驚きました。少数意見とは言え、R.P.G.世代のゲーマーには持って来いの作品かも知れませんが、ゲームに関心のない私にはそこまでとは思いませんでした。ただ、流水大説の無駄な壮大さが消えて、かなり読みやすくなっていることは確かです。キャラも馴染みやすく、肩の力を抜いて読めますが、一方で事件発生までとそこから解決までが若干退屈で冗長な感は否めません。

三作の中編で構成されていますが、いずれも『スニーカー』に連載されたものなので、説明が重複する点が多く、通して読んだ場合結構な水増し感を覚えます。又、ノベルスで570ページという長尺の割には内容はかなり薄いように思います。どちらかと言えば、不可能性の高い事件の不可思議性や緻密な推理よりも、キャラクター小説、或いは青春小説としての意味合いのほうが高いので、本格志向の読者には不向きでしょう。

No.6 6点 秘密屋文庫 知ってる怪- 清涼院流水 2013/12/24 22:31
再読です。
またまた流水。
本作は講談社ノベルズ中、最も短い『秘密屋 赤』と『秘密屋 白』の二作を併せたものを改稿し、新たに『黒』の章を加筆し、一つにまとめた文庫版である。
「赤」は口裂け女、人面犬、トイレの花子さん、斧男などの都市伝説がどのような状況で目撃されたのか、或いはどんなルーツで伝播したのかを、ぼく流Pが先輩の木村彰一とともに追いかけるストーリー。まあほとんどがそれらの都市伝説を紹介しているに過ぎないが、追跡調査する先々に「秘密屋」という言葉が現れ、果たしてその正体とは一体?という興味も一つの読ませどころとなっている。
「白」では、いきなりぼくのところに電話がかかってきて、自分のことを「秘密屋」と勘違いして、依頼をしようとする相手の中年男性との駆け引きを描いている。
「黒」はついに当の「秘密屋」がぼくの前に現れ、ぼくを利用し、再び様々な都市伝説を復活させようと、あの手この手で画策するというもの。
ラストは意外な方向へと物語は進展し、突然メタな展開に。
再読だが、内容は全く忘れていたので新鮮な気持ちで読むことができた上に、結構面白かったので満足している。
個人的に印象深かったエピソードは、中国での「達磨」の話。これは知る人ぞ知るという本当の話らしいが、知らない人はそのほうが幸せというものだろう。
それと、「500円ばばあ」もなかなか傑作だった。いや、世の中には色々な都市伝説が存在するものだと感心させられた。

No.5 5点 19ボックス 新みすてり創世記- 清涼院流水 2013/12/14 23:20
再読です。
懲りずに流水。まさに分類不能の短編集、唯一本格っぽいのは第三話だけで、あとはなんだかよく分からない小説になっている。
第一話は、「不幸の手紙」ならぬ「不幸のMEMO」が高校のクラスの生徒や先生の間を行き来するという、サスペンスのようなホラーのような作品。
第二話は、XとYの電話でのやり取りの途中でいきなりZが登場して、話が混乱する妙な展開の何とも言いようのない作品。
第三話は若者である「木村彰一」が誕生日の朝起きたら、もう一人の「木村彰一」が隣で寝ていた。そして次の年の誕生日には同一人物が3人に増え、結局4人になってしまう中での「木村彰一」殺人事件を扱った、若干SFの要素を含んだミステリ。
第四話は、切腹することによって悟りを開こうとする「切腹探偵」ジョーカーと、彼を切腹の度に手術で救う天才外科医ドクターの物語。
作者曰く、それぞれの短編が少なからずリンクして、読み順を変えるごとに違った感触を味わえるとのことだが、正直あてにはならない。確かに各短編が複雑に絡み合ってはいるが、どこからどう読んでもあまり変わらない気がする。
氏の意気込みは理解できるが、気合が空回りしているのではないかと思えてならない。もう少しじっくり読み込めば、それなりの味が出てくるかもしれないが、それ程の作品ではないだろう、残念ながら。

No.4 6点 コズミック・ゼロ 日本絶滅計画- 清涼院流水 2013/11/25 22:46
その年の大晦日も例年のように、大勢の初詣客で各寺社はにぎわっていた。そして年が明けると同時に、明治神宮、熱田神宮、川崎大師、伏見稲荷大社など10ヵ所の初詣客のほとんどが消された。その数およそ650万人。
更に正月休みが明けると、ラッシュアワー時のJR、私鉄の約3000万人の乗客が消された。
そして、時を待たずに今度は、東京、大阪、名古屋の3大都市がダムの爆破により水没した。
これは大規模なテロ行為なのか、或いは某国の工作員の仕業なのか、一体何の目的で・・・
といった、いきなりの怒涛の展開で始まる、この作者らしい荒唐無稽なパニック小説となっている。
単行本が刊行された際、あちらこちらでこれ以上ないほどこき下ろされた作品だが、それは全体を通してマクロな視点からパニックの状況を淡々と描写しており、ミクロの視点からの細かな描写がなされなかったため、リアリティに欠けるとの印象を持たれたからだろうと想像される。
確かに私もそう思うし、公平に見てそのそしりは免れないだろうけれど、私は本作が決して嫌いではないし、出来も悪くないと思う。少なくともお金と時間の無駄とは思わない。
そんなことを書いても、おそらく清涼院流水氏の作品を好意的に受け入れているのは、このサイトでは私以外ほとんどいないだろうから、誰も見向きもしないと思うが、面白いよ、本当に。それだけは言っておきたい。

No.3 5点 秘密室ボン- 清涼院流水 2013/10/20 22:25
再読です。
主人公のメフィスト翔はいきなり秘密室(ひみっしつ)に閉じ込められて、脱出不可能な状態に追い込まれる。しかもなぜかタイムリミットが90分に設定されていて、その制限時間内に脱出しないと秘密室は爆発してしまう。
そこに密室の神と名乗る老人の声がして、ここから逃れるには、これから出す問題に正解しながら、そこからヒントを得なければならないと告げる。
と言う、目茶苦茶な設定だが、読者は嫌でも翔と共に脱出方法を模索せざるを得ない状況に陥ることになる。
だが、老人の出す問題は密室に関するものばかりだが、抽象的なものが多く脱出の手掛かりになりそうもない。どうすればこの難関を乗り越えられるのか?
というわけだが、果たしてそのオチはいかにも拍子抜けするものであり、お世辞にも読者の期待に応えているとは言えない。
面白くないわけではないが、大方のミステリ読みには不満が残るであろう。駄作とまでは言わないが、見るべきところはあまりない。

No.2 6点 エル 全日本じゃんけんトーナメント- 清涼院流水 2013/10/18 22:30
再読です。
今年も極楽ドームで第13回全日本じゃんけんトーナメント、決勝ラウンドが行われようとしていた。
応募総数のべ3000万人の中から、予選を勝ち抜いた1024名が集結し、今まさに火ぶたが切って落とされるところである。
この中には優勝候補最有力の読心術者ミスター・トジック、過去のデータを解析し相手の出す手を予測するTVでもお馴染みの十津川教授、十代にしてゲームのシナリオライター、若き天才天草翔、そして主人公の木村彰一が一目惚れした名誉あるゼッケン番号1番の少女、京極のぞみなどがいた。
一方、その裏では大会主催者のエルが不穏な動きで暗躍し、大会を思うがままに操ろうとしていた・・・
彰一の初戦の相手はゼッケン番号777番の水野守。彼は実はのちにJDCの探偵となるピラミッド水野である。
更に過去に、2大会連続で777番を引き当てたこれもJDC第一班の名探偵、龍宮城之介も参加していたというどうでもいいような逸話も残っているらしい。
ひたすらじゃんけん勝負を繰り広げていくという、一見単純なストーリーだが、プロットの妙で読者を飽きさせない工夫がなされていて、最後まで物語に入り込めるようにうまく作られている。
また、じゃんけんだけでなく、主人公を中心にある種の人生ドラマを描いており、その意味でも楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっている。
本当は7点付けたかったが、ミステリではないしね、これくらいが妥当かもしれない。
だが、一人また一人とじゃんけんに敗れ去っていく様は、まさにサバイバルゲームの見本のようでもある。

No.1 7点 コズミック- 清涼院流水 2010/06/22 21:27
これはミステリではありません。
ミステリとしてはトリックもへったくれもないので、そう思って読むと腹が立つわけである。
しかし、キャラクター小説としてはかなりよく出来ていると感じる。
際立った活躍をするでもない探偵達だが、それぞれの個性は描き分けられていて見るべきものがある。
あくまでキャラを楽しむ小説としてこの点数。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1759件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
アンソロジー(出版社編)(23)
京極夏彦(22)
綾辻行人(22)
折原一(19)
中山七里(19)
日日日(18)
森博嗣(17)