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メルカトルさん
平均点: 6.04点 書評数: 1835件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.255 6点 龍は眠る- 宮部みゆき 2013/01/08 21:50
再読です。
平均点が高いのも分かるけどね。
めまぐるしく展開するストーリー、緻密なプロット、超能力に見えた現象を理論的に解釈する辺り誠に素晴らしいと思う。さすがに宮部女史だ。
しかしねえ、どうも盛り上がりに欠けると言うか、サスペンスらしい緊迫感がイマイチだと感じる。
超能力を持った二人の青年を中心に、人間関係はとても分かりやすく描写されているし、どの人物もそれなりに個性的ではある。が、もう少し心理描写とかを掘り下げてもらえたら、もっと傑作になった気がする。
初読の際はもっと面白かったと感じたので、再読したわけであるが、良かったのは第一章の超能力をトリックとして解釈したところまでと、七恵の性格の良さかな。
いずれにしても、本作は宮部みゆきの代表作の一つであるのは間違いないとは思う。
ただ、私にはちょっとヌルいと映った。

No.254 9点 首無の如き祟るもの- 三津田信三 2013/01/05 21:54
再読です。
本来ならもっと早い時期に書評すべき作品だが、自分で言うのも何だけど、高得点が予想されるので慎重を期して再読にて評価した。
初読の際は単行本だったが、今回文庫版を読んでの書評とさせていただいた。
加筆、改稿されていたせいか、幾分読みやすくなっていたように思う。
前半から中盤にかけては、まどろっこしいというか、まわりくどい印象で、ワクワク感もあまりなかったし、ホラーの要素から来る背筋がゾクゾクするような怖さもさほど感じなかった。
これをもし島荘辺りが書いていたら、もっと面白かっただろうにと思うと少しだけ残念ではある。
だが、閉鎖された村での因習や、過去の因縁話など、ホラーの要素を絡めて繰り広げられる広義の密室での、首なし死体を露呈する連続殺人事件は非常に興味深いものがある。
後半の読者の推理はほとんど意味がないに等しいので、必要だったのかやや疑問に感じる。
しかし、さすがに刀城の推理は素晴らしい切れ味を見せる、これでもかと畳み掛けるような展開もとても読み応えがあって引き込まれる。
メイントリックは、首なし死体のバリエーションの新機軸と言えるものであり、過去に前例がない為非常に高い評価が期待できると思う。
それにしても一見複雑に見える謎の数々が、たった一つのヒントから芋づる式に解き明かされていく様はかなりのカタルシスが得られる、これはやはり総合的に見て高得点を与えねばなるまい。
従って、滅多に付けない9点とした。

No.253 5点 競作 五十円玉二十枚の謎- アンソロジー(出版社編) 2013/01/02 19:39
再読です。
若竹七海女史が学生時代、書店でアルバイトしていた時に実際遭遇したある不思議な出来事が本書の発端となっている。
その出来事とは、毎週土曜日の午後、ある男が50円玉二十枚を千円に両替してくれと頼んで、両替が終わるとそそくさと去っていく、というもの。
男はなぜ土曜日ごとに同じ書店で両替するのか、なぜ毎週50円玉が二十枚も貯まるのか。
その謎に、プロのミステリ作家たちと、一般公募の読者が挑戦する。
正直なるほど、と納得できる解答が提示されている作品はほとんどないが、中には面白いものもあるにはある。
個人的には一般公募の自動販売機ネタが最も良かった。解答としてだけでなく、一篇のミステリとしてよく出来ていると思う。
倉知淳のデビュー作?も公募の中に含まれており、猫丸先輩最初の事件も楽しめる。

No.252 6点 ミステリーの愉しみ⑤奇想の復活- アンソロジー(国内編集者) 2012/12/29 21:36
再読です。
アンソロジーとは言っても、競作のお披露目の場なので、正確には新作書き下ろし競作集なのだろう。
単行本で830ページ、読み応えがあります。
いわゆる島田学派を始めとする新本格の面々と、それに準ずる創元社出身の作家ら19人が、さながら百花繚乱のごとく咲き乱れている。中には狂い咲きの様相を呈してる方も。
初読の際は司凍季が気に入っていたが、改めて読み直してみるとかなり感想が変わってくるものである。
特に印象深いのは、今邑彩、歌野正午、綾辻行人、竹本健治辺りだろうか。
一番のバカミスは津島誠司の『叫ぶ夜光怪人』で決まり、でも面白い。

No.251 6点 閉じ箱- 竹本健治 2012/12/22 21:37
再読です。
全体を通しての印象は、玉石混合ですかね。竹本氏初の短編集。
ミステリ色の濃い作品もあるが、どちらかと言うと幻想味の強いホラーが多い。
そんな中なんと言っても傑作は『恐怖』であろう。氏自身もあとがきで書いているように、竹本氏の短編の代表作だと思う。
また、解説で山口雅也氏も書いているが、日本のホラー小説の最高傑作と言っても過言ではあるまい。
あと個人的に気に入っているのは『陥穽』である。
竹本氏はこの作品が嫌いで、出来れば自身の作品から抹消したいほど気に入らないらしいが、本作を編むに当たって少し見直したようだ、それほど悪くないのではないだろうかと。
他は正直特筆すべきものは見当たらないのだが、そこはかとない幻想味は竹本氏らしく、世界が反転するような、或いはあっと驚くような仕掛けはないし、ある程度展開やオチが読めてしまうものも少なくないが、雰囲気は十分味わえる。
こういう短編集は、一気に読むよりも少しずつじっくり読んだほうが印象に残りやすいかもしれないね。

No.250 7点 歳時記(ダイアリイ)- 依井貴裕 2012/12/20 21:50
再読です。
作中作という私好みの構成だが、その問題の作中作がかなり読みづらいという難点を抱え込んでいる。
その為、あまり深読みすることなく流してしまったが、解決編を読むにつれ、もっと慎重にじっくり読み進めるべきだったと悔やんでみたりして。
なぜなら、この中に伏線が嫌というほど散りばめられているのだから。
作中作の少なくない違和感は、そのまま解決編へと直結している。
なるほど、確かに読者への挑戦が堂々と宣言されているだけあって、論理的に真犯人を導き出すことが十分可能となっている。
意外なエピソードが伏線になっていたりもして、なるほどと唸らされる事しきりであった。
ただ、動機だけは犯人の告白を待つ他なかったようであるが、これは致し方ないだろう。
とにかく本作はロジックに重点を置いた、良質の本格ミステリであるのは間違いない。

No.249 7点 クラインの壷- 岡嶋二人 2012/12/18 21:33
再読です。
初読の際は、もっとなんと言うかいかがわしい印象を持ったものだが、あれから20年、私も様々なミステリを読むにつれ、少々のことでは驚かなくなってしまっていたようだ。
あの頃ならおそらく8点は付けていたと思うが、やはり再読ということで若干割り引いて採点させていただいた。
面白いのは間違いないのだが、もう少し味付けが欲しかった気もする。
ミステリではないから、もっとサスペンスを利かせるとか、心理描写を掘り下げるとか、色々出来たと思う、その辺りがやや残念な要素ではないだろうか。
描き様によっては大傑作に化けた可能性もあると思うが、まあこのままでも傑作なのかもしれないね。

No.248 8点 GOTH リストカット事件- 乙一 2012/12/15 21:32
再読です。
寄せ集めと言われようが既視感があろうが、私はこの作品集を支持する。
なぜなら、本書は日常から遥か彼方の異次元の世界へ私を誘ってくれるから。
最終話の『声』こそ意味が分からない部分があったり、冗長さを感じたりするものの、その他は乙一氏にしてはミステリ的趣向をかなり取り入れているし、絶望や虚無を漂わせるグロい異世界は読む者に少なからず嫌悪感を味わわせる。
そこが本作を持って、評価を割れさせるところではないだろうか。
だが、私のような人生の階段を踏み外した者にとっては、それぞれが共感できる面を持っていて、相当な好感触である。
特に第一話の『暗黒系』、第二話の『リストカット事件』は一も二もなく好き。
主人公の「僕」にも、相手役の少女、森野にもなぜか好感が持てるのである。
まあとにかく、本作と『ZOO』は氏の作品の中でも別格な気がする。
あ、そうそう、『ZOO』も読み返さなくては。

No.247 7点 日曜の夜は出たくない- 倉知淳 2012/12/12 21:48
再読です。
これ程バラエティーに富んだ連作短編集は他に類を見ないのではないだろうか。
しかも、それぞれの短編が水準以上を保持しているのは素晴らしいと思う。
『約束』のメルヘン風も悪くないし、『海に棲む河童』の猟奇的な奇想も面白い、また『空中散歩者の最期』の島荘のようなスケールの大きい仕掛けも良いね。
とても変化に富んだ作品が並ぶのだが、その中で何一つ変わらないのが猫丸先輩の名探偵ぶりである。
飄々としながらも、事件の情報が揃うと、瞬く間に真相を見抜いて披露する。
見事である、しかも反論されようが、突っ込まれようが全く動じない辺りはさすがとしか言いようがない。
本作の魅力の半分は猫丸先輩が担っているといっても過言ではないと思う。
それにしても猫丸先輩は神出鬼没だなあ。
また、最後二章の捻りと着地はまずまずだろうが、まあ「蛇足」かもしれないね、残念ながら。趣向は悪くないけど。
近日中に『過ぎ行く風はみどり色』も読み返さなければいけないんじゃないかな、これは。

No.246 7点 都市伝説セピア- 朱川湊人 2012/12/08 20:32
再読です。
口裂け女に代表される都市伝説や、見世物小屋、夕闇の公園など背筋が少々寒くなるような要素を取り込んだ、ノスタルジックなホラー短編集。
5篇のうち、『アイスマン』『昨日公園』『月の石』が特にお気に入り。
『花まんま』で直木賞を受賞した朱川氏だが、その原点はやはりこの作品集に集約されている気がする。
その後も私は氏の作品を追いかけているが、そのスタイルは今でも変わっておらず、終始一貫して、地味ではあるが、ノスタルジックで、随所に涙を誘うシーンを差し挟んでいる。
ホラーはホラーでも、どちらかと言うと、文芸に近い作風であり、一般読者にお勧めである。
あっと驚くようなオチやとんでもない捻りはないし、どこかで読んだことがあるような物語もあるが、じんわりと心に染み込んでくるような感覚は、他の作家ではあまり味わえない氏ならではの持ち味ではないだろうか。

No.245 7点 垂里冴子のお見合いと推理- 山口雅也 2012/12/06 21:59
再読です。
何と言っても垂里家の人々のキャラが見事に描き分けられていて、気持ちよく読み進められるのがいいね。
長女で主人公の冴子は和服がよく似合う、ちょっとおっとりした、読書大好きの33歳独身。
次女の空美はイケイケで発展家、異性関係も派手で遊び好き、姉とは歳が離れていて23歳と若い。
長男の京一はごくごく普通の受験生だが、それなりに好奇心もあり、特に冴子のお見合いには興味津々である。
それと、もう一人個性が光っているのが、伯母の合子で、この人は孤高のお見合いハンター。
過去に幾度となくお見合いを仕掛けて、成功させてきた実績を持っている。
そんな合子は今日も冴子に縁談を持ってきて、お見合いをさせようと画策する。
冴子も満更ではなく、わりと気安くOKするのだが、お見合いの度に何らかの事件に巻き込まれる、というのがお約束のストーリー。
一応ジャンルとしては日常の謎となっているが、それにしては結構な確率で死人が出る。
だが、殺伐とした雰囲気ではなく、あくまでのんびりと進行していくので、誰もが安心して読める連作短編集だと思う。
全体的にちょっぴり短いので、やや物足りない感じもするが、この作品はそれくらいで丁度良いのかもしれないね、もっと読みたいと思うくらいが。
続編が出るのもよく理解できる佳作となっている。

No.244 6点 死ねばいいのに- 京極夏彦 2012/11/27 21:37
プロットと言うか構成は宮部女史のような。
それでも文章のしつこさ、或いは粘着質な感じはやはり京極氏ならではのものだと思う。
確かに、フーダニット&ホワイダニットものと言えるのかも知れないが、これだけの手掛かりでそれらを推理するのは無理というもの。
がしかし、犯人の正体にはやはり驚きを隠せなかった。
それは良いのだが、動機は理解しがたいし、全体的にすっきりしない、後味の悪さを覚えた。

No.243 8点 バトル・ロワイアル- 高見広春 2012/11/22 22:14
再読です。
私は不思議だった。なぜこれまで、映画化され劇画にもなったこの有名な作品が書評どころか、登録さえされなかったのか。
確かにミステリではないし、そうした意味で誰も書かなかったのかもしれないが、例えば『イニシエーション・ラブ』のような作品に多くの書評が寄せられているのだから、本作にも一人くらい書評があってもいいだろう。
もう既にみなさんご存知だと思うが、概要を簡単に紹介しよう。
極東の島国、大東亜共和国では今年も“プログラム”が実施されようとしていた。
城岩中学3年B組の生徒達は修学旅行に向かう途中で、催眠ガスにより眠らされ、瀬戸内海の沖木島に運び込まれる。
そして彼らは目が覚めた時、自分たちが“プログラム”の対象クラスに選ばれた事を知る。
そのプログラムとは生徒同士で最後の一人になるまで殺し合う、といういたって簡単なもの。
勿論反則はない、決められた時間内に禁止エリアに残っていた者は強制的にはめられた首輪が爆発し、死亡する。
また、24時間誰も死ななかった場合もすべての生徒の首輪が爆発し全員死亡する。
よって、優勝者はなしということになる。
この究極の緊張状態の中で、その気になる者、自殺する者、仲間同士で集まって篭城する者、拡声器で呼びかけて殺し合いをやめさせようとする者など様々。
本作は著者が三年の年月をかけて描かれた、究極のサバイバル・ゲームであり、それぞれの青春模様を浮き彫りにした力作だ。
とにかく面白く、読者は余計な雑念を忘れてそれこそ夢中でその世界に入り込める、得がたい経験をすることになるだろう。
大部分の生徒のプロフィールが紹介されている辺りも、考えてみれば凄いことだと思うし、一体誰が誰を狙うのか、最後まで生き残るのは誰なのか、興味は尽きないところだ。
このタイプの小説が好きで未読の方は、是非読まれることをお勧めする。
尚、映画はかなり脚色されているので、映画を観た人も原作を読む価値は大いにあると言いたい。

No.242 5点 さまよえる脳髄- 逢坂剛 2012/11/16 21:43
再読です。
昔読んだ時はなかなか面白かった記憶があるのだが、改めて読み返してみるとそれほどでもなかった。
歳のせいか、若かった頃に比べて感性が磨り減ってしまったのだろうか・・・
本作はいわゆるサイコ・サスペンスと呼ばれる作品だが、脳神経に関する薀蓄や、それに付随する殺人事件など、あれもこれもと詰め込みすぎて、まとまりがなくなっている感じを受けた。
面白いエピソードもあるにはあるが、全体として今ひとつ盛り上がらず、意外な真相なども皆無に等しく、期待したような仕上がりではなかった。
残念ながら再読するほどの作品とは言えないだろう。

No.241 7点 三匹のおっさん- 有川浩 2012/11/12 22:27
還暦を迎えた三人のおっさんが自警団を結成し、ご近所の悪を懲らしめるという、典型的な勧善懲悪の物語。
彼らは時に暗躍し、時に真正面から婦女暴行犯や動物虐待犯らを懲罰するのだが、犯人をばっさりとぶった切るというところまでは行かず、多少消化不良気味に終わってしまうので、若干もやもやしたわだかまりの様なものが残る。
とは言うものの、剣道の達人のキヨさん、柔道家のシゲさん、頭脳派のノリさんの三人に加えて、キヨさんの孫の祐希やノリさんの娘の早苗が活躍する、笑いあり涙ありのエンターテインメントに仕上がっている。
ところどころに女性作家らしい柔らかい表現が差し挟まれており、ハードな面もあるわりに年齢層を問わず楽しめる作品となっている辺り、さすが人気作家と言ったところか。
ちなみに、連作短編の形式を採っており、内容もバラエティに富んでいて飽きが来ないよう工夫されているのも好感が持てる。

No.240 8点 フリークス- 綾辻行人 2012/11/07 21:50
再読です。
幻想とホラー、ミステリの融合の見事さ、綾辻氏にしか書けないであろう点、異形への畏怖と憧憬、これらの要素を評価して、悩んだ挙句8点とした。
中編3作から成る作品集だが、どれも異様な雰囲気を醸しだしており、舞台が精神病院ならではのトリックが上手く取り入れられているのも評価が高い。
『四〇九号室の患者』は無論オチが分かっているのを承知の上で読んだので、やや長く感じたが、それでも面白かった。
最後の『五六四号室の患者』が最高である。これこそ綾辻氏の真骨頂と言えるのではないだろうか。
幻想小説としても本格ミステリとしても一級品だと思う、ちょっと甘いかもしれないが。
とにかくこれはお気に入りの一作である。

No.239 6点 タイムカプセル- 折原一 2012/11/03 21:51
栗橋北中3年A組の有志で卒業式の日に埋められたタイムカプセル。
その中には誰も会ったことのない不登校の不破勇の小説も入れられた。
そして10年後、謎の郵便配達人から「選ばれ死君たち」宛の不気味な案内状がメンバー達に次々に届く。
そこから様々な出来事を経てついにタイムカプセルが開かれるのだが・・・。
タイムカプセルが開かれるシーンは例によって袋とじになっており、興奮を盛り上げるのに一役買っているが、これはあってもなくてもどちらでも良かったような気がする。
全体的にスピード感は感じられないものの、サスペンスはそこそこ効いており、最後まで飽きることなく読めるように工夫されている。
メイン・トリックは手垢塗れのものだが、まんまと騙された。このトリックは注意深く読んでいれば、比較的簡単に見破れると思う。
ジュブナイルだが、大人の読者でも普通に楽しめる作品ではないだろうか。

No.238 7点 - 麻耶雄嵩 2012/10/29 21:33
再読です。
みなさんの書評を拝読して、自分はこの小説の表層しか読み取れていないのではないかという危惧を感じた。
淡々と物語が進行していく中、結構なペースで殺人が発生したり過去の事件が絡んでくるが、それに相応しい緊迫感が全くないのはどうにも。
しかし、忘れた頃に登場するメルカトルがやけに格好良い。
本当に久しぶりに読んだわけだが、真相を含めて全く憶えていなかった自分が情けなかったりもしたが、新作を読んだかのような感覚はなんだか得した気分にもなったりして。
トリックに関しては新味はないかもしれないが、演出が上手いので、思わず唸らされる。
とにかく、まったりとしたストーリーと裏腹に、真相が暴かれるシーンはいきなり緊迫の度合いを高め、再読して本当によかったと思わせてくれ、大きな収穫であった。

No.237 7点 こどもの一生- 中島らも 2012/10/22 21:37
11月にパルコ劇場他で舞台公演されるということで、9年ぶりくらいに再読。
やはり面白い、これはB級ホラーの傑作である。
瀬戸内海の孤島に集められた5人の男女。年齢も性別もバラバラの彼らは精神科の治療を受けるため、はるばるこの地を訪れたのである。
彼らは催眠療法と薬剤により、10歳の子供に精神年齢が退化していく。子供になった彼らは無邪気に振舞いながら、様々な出来事や事件に遭遇していき、そしてついに・・・。
といったストーリーで、前半から中盤にかけてはまったりとした感じで進行していきながらも、笑いのツボは外さない。
しかし後半は一転、サバイバル・ゲームの様相を呈していく。
一気に加速するので、同じ小説とは思えないほどの急展開である。
しかも、かなりエグイシーンもありながら、尚も笑わせる辺りは凄いというか、作者の力量を認めざるを得ない。
意外と知られていないようだが、一読の価値ありと言わせていただこう。

No.236 6点 赤いべべ着せよ…- 今邑彩 2012/10/18 21:53
良くも悪くも今邑女史らしい作品。
本格ミステリと言うより、サスペンス色の濃い仕上がりになっている。それにホラーがちょっぴり味付け程度に色をつけている感じ。
全体として悪くはない出来だとは思うが、確かに突出したものが感じられないので、強烈な印象は残らない。
今邑女史は長編より短編集のほうが楽しめるような気がするね。
それと一つ気になったのは、謎が謎のまま残されて置き去りにされているところがある点。
一応本筋に関係しているものなので、ちょっとどうかと思う。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 白井智之 他多数
採点傾向
平均点: 6.04点   採点数: 1835件
採点の多い作家(TOP10)
浦賀和宏(33)
アンソロジー(出版社編)(26)
島田荘司(25)
西尾維新(25)
京極夏彦(22)
綾辻行人(22)
折原一(19)
中山七里(19)
日日日(18)
清涼院流水(17)