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メルカトルさん
平均点: 6.02点 書評数: 1769件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.189 6点 ゴメンナサイ- 日高由香 2011/11/04 22:16
呪いを読者にまでかけてくるメタ構造がたちの悪い、異色のホラー。
クラスで孤立した女子高生の書いた、演劇用のシナリオを読んだ者が次々と謎の死を遂げる。
呪いをかけられたそのシナリオを巡って、様々な事件が巻き起こり、死者は増えるばかり。
呪いを解く方法は果たしてあるのか?
といった内容で、特に目新しい要素はないが、一気に読める面白さは備えている。
しかし、怖さはあまり感じない上に、文章がやや稚拙な点は気になるところではある。

No.188 6点 彼女がその名を知らない鳥たち- 沼田まほかる 2011/11/01 22:22
主人公の十和子(33歳)は同居人の陣冶の不潔さ、いい加減さを忌み嫌い、憎んでいるが、なぜか離れられない。
彼女は失踪した元恋人との過去を引きずりながら、陣冶が彼を殺したのではないかとの疑いを抱いている。そこへ新たな恋の相手、水島が現れる・・・。
といった展開で、もうドロドロの男女の愛憎劇が繰り広げられる。
しかし、意外な真相とラストシーンは間違いなくミステリであり、全編を通してサスペンスが効いていて、限りない嫌悪感を抱かせながらも、最後まで読ませてしまう腕は確かである。
同作家の『猫鳴り』も読んだが、とても同じ作家の手になるものとは思えない作風の違いで驚かされる。

No.187 6点 空想探偵と密室メイカー- 天祢涼 2011/10/27 21:43
問題の密室だがさほど特異な設定とは思わないが、これを作った理由は前代未聞であり、密室史に名を残すといっては言いすぎか。
ラストの密室を巡る攻防は非常に読み応えがあり、圧巻である。
ただし、タイトルにあるように“空想”探偵のポアロやフェル博士が謎を解くのを期待すると裏切られる。
まあしかし、全体的によく練られていて面白かった。

No.186 5点 予告探偵 西郷家の謎- 太田忠司 2011/10/23 21:42
最終章まではごくオーソドックスな本格ミステリ。
いかにもな名探偵とありがちな助手、密室殺人に過去の事件が絡む、ある意味コード型の本格推理の様相を呈している。
が、最終章で唖然とする展開に・・・。
ただし、取って付けたような印象は否めない。

No.185 6点 殺人鬼フジコの衝動- 真梨幸子 2011/10/19 21:39
10人以上殺人を犯したフジコの半生を描いたジャンル不明の小説。
あくまで暗く、重い。決して文章が上手いわけでもない。
がしかし、物語に引き込まれることは間違いない。
特に前半の小学生時代の虐め苛まれるフジコの育った環境はあまりに異常で、嫌悪感は半端ではない。
だが、この小説のキモはあとがきにある。
このあとがきによって初めてミステリとしての姿をおもむろに現すことになる。
衝撃的とか、やられたとかという声が多いのだが、個人的には「ああ、そうだったのか」くらいにしか思えなかった。
しかし、このあとがきの存在はこの作品の全体像を引き締める役割を果たしているのは間違いないだろう。

No.184 4点 死亡フラグが立ちました! - 七尾与史 2011/10/11 22:21
申し訳ないが、私には体質的に合わなかった。
こういったミステリの形もあるのだということを再認識させられはしたが、いかんせん無理がある。
殺し屋、死神のやり口はいわゆる可能性の犯罪ではあるが、そんな偶然に頼ったやり方で、ターゲットを24時間以内に殺害できるだろうか。
バナナの皮が凶器って、冗談きついですよ。

No.183 6点 スメラギの国- 朱川湊人 2011/10/07 22:23
特殊な能力を持った一匹の猫と取り巻きの猫たちと、大切な人を失ったり傷つけられたりした人間との死闘を描く力作。
朱川氏にしてはグロくはないが残酷な描写が目立つ。
しかし、やはりさすがに泣かせどころは心得ていて、終盤はかなり心動かされる。
ホラーとサスペンスが融合された、氏にしては異色の長編となっている。

No.182 3点 鉄人探偵団- 山下貴光 2011/09/26 21:51
帯によると、勇気と友情の青春ミステリーらしいが・・・正直読むんじゃなかったと後悔している。
魔が差して衝動買いしてしまったが、ほとんど見所がない。
3人の少年と1人の少女の、友情を描いた青春小説のようだが、ミステリ的要素は薄いので、読もうと思っている人は要注意である。
ま、こんなこともありますね。

No.181 7点 厭な小説- 京極夏彦 2011/09/18 23:55
誰にでも書けそうで京極氏にしか書けない、そんな作品。
あえてジャンル分けするならば、ホラーということになるだろう。
帯にあるように、読後はどんよりしている。
連作短編集なのだが、どの作品も共通の人物が登場するだけで、ほとんど独立した仕上がりになっている。
厭な子供や老人、彼女、家などにまつわるエピソードが独特の筆致で描かれている訳だが、後味は思ったほど悪くない。
ただなんとなく不安定な余韻を残すため、どんよりしているのである。
最終話ではちょっと意外な展開で、あるミステリ的手法が取られていて、個人的にはもっとも面白かった。

No.180 5点 人面屋敷の惨劇- 石持浅海 2011/09/11 23:28
はっきり言ってタイトル負けしている印象は否めない。
作者が一体何が描きたかったのか、その意図も私には理解できないし、いわゆる館ものを書きたかったようだが、その意味でも成功しているとは言いがたい。
立派なタイトルを付けているのだから、もっと内容を充実させて欲しかったと言うのが正直な感想。
内容が希薄であるし冗長に感じたのは間違いない。

No.179 4点 チヨ子- 宮部みゆき 2011/09/06 23:48
ホラー、ファンタジーの中短編集。
宮部女史の作品は久しぶりに読んだわけだが、正直期待はずれだった。
解説にもあるように、今まで未収録だった短編を集めた、いきなりの文庫本なので、その辺りに価値を見出すことは出来るかもしれない。しかし、作品の出来がどうにもスッキリしないものが多く、オチも捻りもいまひとつ。
少々退屈さすら感じる作品集となってしまっている。
最終話の『聖痕』はミステリかと期待させておいて、途中からテンションが落ちる残念な作品。

No.178 7点 キョウダイ- 嶋戸悠祐 2011/09/01 23:31
序盤の平和な家族の日常と、それ以降の異常で不気味な雰囲気を漂わせた一家の物語との対比がなんとも名状しがたい魅力である。
全体としてはホラーともミステリとも言いがたいような、奇妙な作品であり、ドロドロした物語が好きな読者には堪らないであろう。
ミステリ的要素として、お馴染みの双子トリックもどきが用いられており、新味はないけれど、それなりに成功しているのではないだろうか。
今後が楽しみな新人の登場である。

No.177 5点 七人の中にいる- 今邑彩 2011/08/27 22:05
私は本作にあまりミステリ性を見出せなかった。例えば伏線が少なすぎるとか、犯人を特定する材料に乏しいなど。
やはり作者本人が言っている様にサスペンスではないだろうか。
そうした目で見ると、かなりの良作であるのは間違いないと思うが、ミエミエの最終章は安易に過ぎるきらいがある。
サスペンスフルで中盤までは面白く読ませてもらったが、やや長すぎるのではという気がする。
もう少しコンパクトに纏めることはできなかっただろうか、と少々残念ではある。

No.176 5点 「死霊」殺人事件- 今邑彩 2011/08/19 23:48
今邑女史の作品としては珍しく読み辛かった。
冒頭に魅力的な謎が提示されているが、残念ながらその解決が納得の行くものとは言いがたい。
タイトルをこれだけ大袈裟にしたのならば、それ相応の結末を期待するところだが、それは果たされていない。
また、主人公を含む登場人物に魅力が感じられないのもマイナス点であろう。

No.175 5点 九杯目には早すぎる- 蒼井上鷹 2011/08/10 21:29
はっきり言ってどれもこれも取るに足らない、もっと言えば読んだその日に忘れてしまうような短編集。
その中で唯一『私はこうしてデビューした』が、折原一氏を髣髴とさせて面白かった。
ちょっとしつこい感じもするが、オチもキッチリついていてブラックな結末はなかなかのもの。
その他の作品は、サスペンスでもなければ本格でもない、どっちつかずの中途半端な出来映えである。

No.174 6点 エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室- 佐藤友哉 2011/08/04 21:54
どうでもいいが、なぜこんなに評価が割れるのか?どちらにしても不思議な作品ではある。
途中まではなかなか引き付けられる、なんだかよく解らない魅力を感じたが、謎解きに至って尻すぼみな感が否めない。
またキャラ萌えの要素もあり、ラノベのような作風でもある。
しかし、文体は非常に癖があり、好みが別れるところだと思う。

No.173 5点 もう一人の私- 北川歩実 2011/07/29 21:23
派手な殺人事件が起こる訳でもなく、至って平凡な短編集だと思う。
私にとっては、驚きもなく、かと言って展開の妙も感じられない、全体的に低調な印象を受けた。
中には少しだけおっと思わせるものもあったが、それはほぼ例外であって、残りの短編はほとんど記憶にも残らないような作品ばかりであった。
もう少し、読者にあっと言わせるようなストーリーを書いてもらいたいものである。

No.172 6点 水霊- 田中啓文 2011/07/24 22:06
飲料水の恐怖に神話を絡めたホラー大作。
宮崎県のとある村。
村の神社の遺跡から湧き出た水を、「おいしい水」として商品化しようとする村長。
ところがその水を飲んだ者が次々と異常な食欲を示した後衰弱し、死亡するという事件が起こる。
田中氏らしい脱力感は影を潜め、非常に生真面目に取り組まれた大変な力作となっている。
随所に見せ場があり、読み応えは十分、飽きの来ない作品に仕上がっている。

No.171 6点 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 2011/07/15 21:31
古き良き時代の怪奇小説や探偵小説を髣髴とさせる佳作。
平均して面白いが、特に『身内に不幸がありまして』が好み。
また、『玉野五十鈴の誉れ』のラスト一行には唸らされた。
取り敢えず、暗くて古風な雰囲気は今時のミステリにはない存在感を示しているのではないだろうか。

No.170 4点 4ページミステリー- 蒼井上鷹 2011/07/10 21:52
全て4ページのショートショートが60篇収められた短編集。
必ずしもミステリと言う訳ではなく、むしろジャンル不明の単なる小説の方が多い。
全く捻りのないもの、オチのないもの、様々。
たった4ページのわりに読みづらく、結構苦痛であるし、そもそもこのページ数でミステリを詰め込むのは無理があるようだ。
ついでに、この人の文章は私には合わないかも知れない。

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メルカトルさん
ひとこと
「ミステリの祭典」の異端児、メルカトルです。変人でもあります。色んな意味で嫌われ者です(笑)。
最近では、自分好みの本格ミステリが見当たらず、過去の名作も読み尽した感があり、誰も読まないような作品ばか...
好きな作家
島田荘司 京極夏彦 綾辻行人 麻耶雄嵩 浦賀和宏 他多数
採点傾向
平均点: 6.02点   採点数: 1769件
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