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江守森江さん
平均点: 5.00点 書評数: 1256件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.18 5点 物語日本推理小説史- 評論・エッセイ 2011/02/25 11:32
海堂尊の連載作品を読む為に図書館に出向いて「小説現代」を読んでいた時に連載されていたので気になって一緒に読んだ。
連載完結して一冊の書籍となり、今回メデタク本格ミステリ大賞・評論部門の候補作にノミネートされた。
タイトルに物語と付されているが史実と評論とガイドを物語風にした作品(←内容を考えて敢えて作品と呼ぶ)
私的には谷崎潤一郎の項目がお気に入りで、本作のおかげで谷崎潤一郎・犯罪小説集も読んだのだから、それだけでガイドとしても意義があったと思う。
たぶん「エラリー・クイーン論」に負けて本格ミステリ大賞は受賞出来ないだろうが、候補作にノミネートされただけでも良かったのではなかろうか。
平成に入ってからが一章しかなく、若い読者へのアピールは非常に弱い。

No.17 6点 英国ミステリ道中ひざくりげ- 評論・エッセイ 2011/01/09 07:31
ミステリ・マガジンの海外ミステリ・ドラマ特集のノベライズ紹介で気になり小山正を図書館で検索したら本書に出くわした。
英国旅行し、ついでに古本屋も巡ってミステリの原書や日本未放送なドラマDVDを購入したい方に最適なガイド&エッセイだった(←過去形、初稿から10年以上経過し英国も少し様変わりしたのでガイドとしては補正が必要らしい)
夫婦で英国ミステリ旅行なんて羨ましいような(家なら費用が私負担になりそうだし)そうでもないような・・・・・・。
最近AXNミステリーでホームズ、ポアロ、マープルに始まりジョナサン・クリーク、ジョージ・ジェントリー、フロスト警部、バーナビー警部、法医学捜査班、リンリー警部、ダルジール警視、心理探偵フィッツ、ダルグリッシュ警視等の英国制作ミステリ・ドラマを視聴しているので、そちらのお供として私は楽しんだ(ドラマの制作時期とはズレが少ない)
英国旅行やドラマ視聴しない方でも若竹七海の英国ミステリ・エッセイとして楽しく読める。
購入せず図書館で借りた分際で何だが、単なるエッセイとして楽しむには値が張ると思う。

No.16 7点 杉下右京に学ぶ「謎解きの発想術」- 評論・エッセイ 2011/01/08 21:52
発売形態はビジネス・ムックなのだが、読者側はドラマ「相棒」からチョイスされた各エピソードをケーススタディする「名探偵養成講座」として楽しみながら勉強する本。
これを読んだら即ビジネスで成功者になれるとは思えないが、自分が杉下右京レベルの名探偵(ミステリ読者)に一歩近づく気分は味わえるので、ミステリを推理しながら読む方に向く。
名探偵としてのセンスが磨かれ日常のあらゆる場面で活用出来そうでもある。
本音の部分では身近な奴が杉下右京みたいだったら全てを見透かされていそうで嫌だと思えた。
自分が杉下右京みたいな分には何ら問題ない。
※「最後にあと一つよろしいですか」by杉下右京
「相棒」のメディア・ミックス本の中では一番面白い。

No.15 6点 21世紀本格宣言- 評論・エッセイ 2011/01/03 14:55
以前読んだ時は(分厚さに辟易して島荘作品から離れた後で)図書館の棚で目に留まり眺める程度だし、島荘の主張にも関心が薄かった。
最近、再び図書館の棚で目に留まり借りて来て再読したら、島荘の掲げたテーマと主張の殆どが他作家の国内本格ミステリで書かれるより、最近ハマっているアメリカ制作のミステリー・ドラマで存分に発揮されている事に驚いた。
主張が映像向きな事は確かだし、ミステリー好きなアメリカ人でも島荘の主張なんて知らないだろうから、アメリカ在住時に(日本の遥か先を行く)ミステリー・ドラマを観て感化されたのではないだろうか(島荘がドラマを観たか不明だし、あくまで私の推測なので違ったらご勘弁)
上記の視点で、どの主張やテーマがどの海外ドラマに該当するか?考えながら読むと興味深く面白かった。

No.14 6点 死体は語る- 評論・エッセイ 2010/10/22 14:08
テレ朝「徹子の部屋」本日のゲストが著者な事をテレビガイドで知り前もって代表作でベストセラーな本作を図書館で借りて読んだ。
実例を題材にした法医学ガイド的エッセイで、数々のエピソードがドラマや小説に転用されている。
ベストセラーらしい面白さと既視感のあるエピソードでサクサク読める。
書かれた時代には新たな捜査手法だったのだろうがCSIのドラマシリーズでの技術的進化スピードを観せられると新しさは感じなくなりつつある。
その一方で実際の日本では施設や予算面等で法医学捜査が置き去りにされている感がある。
また、別方向から法医学に問題提起している海堂尊と平行して読めばより理解が深まり楽しめるだろう。

No.13 5点 トリック専科- 評論・エッセイ 2010/08/15 15:26
マジックのタネからパズル、騙し、イカサマ、ミスディレクションに至るまで実例や作品をピックアップしながら紹介・解説して楽しく読ませる。
大ネタのネタバレには配慮しているが、小ネタや古いネタは(図解入り)ネタバレしているのは乱歩の「類別トリック集成」同様に古典作品をこれから読むなら注意が必要になる。
一つ一つの騙し自体は単純でも、人間は騙され易いし、振り込め詐欺が根絶しないのも頷ける。
この本は「ペテン師入門」として別の利用法がある実用書でもある(悪用して罰せられても責任は持てない)
※追記(11月27日)
現在Foxで放送中の「破られたマジシャンの掟」はこの本の完全ネタバレ実演版だと思う。
トリック(仕掛け)と実演(見せ方)がミステリに似ていて楽しめる(要注意:私の様にネタバレにある程度寛容な人に限定されます)

No.12 5点 アガサ・クリスティを訪ねる旅- 評論・エッセイ 2010/08/15 15:10
鉄道とバスで英国内のクリスティ縁の地を巡った旅行ガイド(巻末には年譜、作品・場所索引付き)
但し、ガイドの至る所に登場シーンやセリフが引用されている作品ガイドでもある。
英国に旅行できずとも雰囲気は充分に堪能できるし、クリスティの映像化作品と共に観れば安価に旅行気分が味わえる。
ミステリ技法論とは全く別方向から英国に馴染む事でクリスティを楽しむ立派な作品ガイドになっている。
※余談
ロンドン警視庁がイングランドの中心にありながら何故スコットランド・ヤードと呼ばれているのか?疑問だったのだが、この本で解消されて嬉しい。

No.11 6点 アクロイドを殺したのはだれか- 評論・エッセイ 2010/08/15 14:48
「アクロイド殺し」の真犯人は誰なのか?を考察したクリスティー評論。
クリスティーの諸作品を読んだ方々を対象にした評論なのでネタバレに対する配慮は一切されていません、読むに当たってはご注意下さい!!!
「創造的読解への誘い」→「潜在的多義性の追求」が第一義にあり、極論だがミステリはリドルストーリーとの結論に至る。
取り分け、第三章ヴァン・ダインの法則でのクリスティー作品全般に於ける犯人設定(隠蔽)の技法論は面白い。
ミステリの技法としての「語り手は不誠実」やポアロの行動を精神分析して「妄想」と判断して「アクロイド殺し」の別解を導き出している。
作者の提示した結論に加えて、独自視点で推理・分析する新たなミステリ読書法を提起する一風変わった論文だった。

No.10 4点 アガサ・クリスティーの秘密ノート- 評論・エッセイ 2010/08/15 14:01
上・下巻に渡るクリスティーの創作ノートを解読しながら主だった作品を考察した評論。
オマケとして最後に発見された原稿を(解読して)作品に仕上げた物が付録にある。
創作ノートが土台なので深くマニアックに考察され、クリスティーの研究論文を読む感じになる。
しかも、ネタばれ注意と最初に作品名を提示しながら注意を促してはいるが、クリスティーの主要作品をほぼ読破してからでないと確実にネタばれ被害を被る。
オマケ短編も特筆するに値しないので、クリスティー・マニア以外は迂闊に手を出すべきではない本。
逆に、ほぼ全作を読破したマニアには必読書でもある。

No.9 6点 夜明けの睡魔- 評論・エッセイ 2010/07/25 09:33
書評1000件カウントダウン「8」
これまた図書館の評論コーナーの棚で目に留まった。
本来なら海外翻訳作品ガイドは読まないのだが、嗜好についての三段論法的考察から、瀬戸川猛資とは平行線ではなく交わるのではないか?と思い眺めてみた。
翻訳ミステリに力点を置かない私でも、何冊か早急に読んでおきたい作品があったので正解だったと言える。
しかし、この本の肝は内容では無く、読書好きなら皆が頷くであろう「夜明けの睡魔」なる洒落たタイトルだろう!
これで、紹介した作品全部が徹夜本だったなら麻薬的な「悪魔の書」になっていたかもしれない。
※追記(10月17日)
私的に、海外翻訳作品は古典的名作群を含み圧倒的に未読作品が多く本書を評論として評価出来るレベルに到達していないのでガイド限定の採点になっている。
先月からミステリードラマ視聴に追われ「夜明けの睡魔」どころか年中睡魔に襲われている。

No.8 3点 ミステリ作家のたくらみ- 評論・エッセイ 2010/07/25 09:21
書評1000件カウントダウン「9」
図書館の評論コーナーで目に留まった。
作者の本業がマジックのタネやイカサマ・ギャンブルのトリック解説だと思い、その辺りに特化して面白いミステリーを紹介したガイドだと期待していたが、一般的に有名なミステリー(紹介作品の古さはさほど気にならない)を普通に紹介したガイドで期待ハズレだった。
先に読みたかった「トリック専科」が貸出中だったのもガッカリ感を増幅したかもしれない。

No.7 6点 ミステリーを科学したら- 評論・エッセイ 2010/07/13 17:41
法医学の第一人者・上野正彦《「死体」を読む》と並ぶミステリの科学者視点での分析本の双璧だろう。
作者の小説は読んでいないがドラマ化されたドクター小石シリーズは何作か観ていて、褒められた作品ではなかったが、下手に科学的知識があると創作の邪魔になるのかも知れない。
そんな事は関係なく、普段とは違う視点からミステリを眺めてみるのも楽しい。
例に挙がる作品共々読めばミステリの楽しみが格段に広がる。

No.6 6点 「死体」を読む- 評論・エッセイ 2010/07/10 22:59
《「藪の中」の死体》を改題文庫化した作品。
日本での法医学の第一人者である作者が、横溝「犬神家の一族」(松本清張・森村誠一も)から法医学書まで、文字で描かれた死体から事件を推理する。
谷崎潤一郎「鍵」からは性交死に迫り読み応えがある。
白眉は芥川龍之介「藪の中」(作品添付有)を法医学分野から解析して犯人を割り出した章だろう!
評論とは違う切り口でミステリを分析するのも偶には面白い。

No.5 5点 ミステリーのおきて102条- 評論・エッセイ 2010/06/05 05:23
先日テレ東で阿刀田作品ドラマの再放送を観た。
そして「このミス」を眺めに図書館に行ったら同じ棚にあったので気になり手に取った。
読売新聞・日曜版に掲載されたエッセイをまとめた本なので、どうでもよい話題の時も多い。
しかし、ミステリの本質を突いている点も多々あり「さりげなさの研究」・「ほのめかしの研究」から「どこまで見せるか」でのストリップ・ショウと同様にさじ加減が大切だとか、「刑事コロンボ考」での推理小説は我慢の文学で前半多少退屈になるが倒叙にして絵解きの面白さに特化した構造の勝利だ、等々の頷けるエッセイもある。
歴史ミステリーに触れた「歴史とジョーク」、この本らしい「破られた法則」も楽しく読んだ。
そして巻末の本文掲載書名一覧がエッセイと合わせて素晴らしいガイドになっている。

No.4 6点 本格ミステリーを楽しむ法- 評論・エッセイ 2010/05/28 03:03
鮎川哲也の一度は雑誌や作品解説に掲載されたエッセイを分類・章立てして一冊に纏めた物。
本格作品の解説の章には、よくぞネタバレせずにこれだけ書けるものだと感心する。
作家達との付き合い・生い立ちから日常に関するエッセイは鮎川自身に興味があれば楽しく読める。
一番の読み所は自作解説の章で「赤い密室」「黒いトランク」「達也が嗤う」などの名作を読んでから読めば非常に楽しい。
出典を記した後、所々に呟きが付されていて、それも楽しい。
それでも、限定的なファン・ブックな事を考慮して採点は6点に抑える。

No.3 5点 松本清張を推理する- 評論・エッセイ 2010/05/23 08:20
図書館で、過去の「このミス」を眺めようとうろついたら、同じ棚にあり目に留まった。
評論としては薄くて読み易い本なので「このミス」同様に棚から取り眺めてみた。
松本清張作品自体好きではなく、さほど読んでいない(映像化作品は多数観ている)が、この本の収穫は、本格ミステリに嗜好の中心があるなら、名作と云われる「点と線」や「砂の器」などから読み始めては清張を好きにはならない、とハッキリ分かった事だった。
但し、自分は上記のパターンで清張の小説から離れた事を後悔するよりラッキーだったと思っている!

No.2 6点 本格ミステリの王国- 評論・エッセイ 2010/01/31 00:10
本格ミステリ論・創作論・トリック論などをエッセイとして各所に発表した物に新たなエッセイを追加して纏めた物。
今後短編集に収録しない宣言付きな学生時代の習作短編も同時収録。
一番読み応えがあるのは「トリックの創り方」で、テキストとしての作品紹介も参考になる。
私的に、江神シリーズ以外の小説をさして評価していない作家ではあるが、根本的なミステリ嗜好は同系統なので作者の評論やエッセイは非常に楽しく読め共感できる。
このエッセイでも触れられている「安楽椅子探偵」の新作を早く観たいものだ!
(前回みたく全国ネットでの放送を切に願う、それか以前の再放送込みでAXNミステリーでの放送でもいい)

No.1 6点 本格ミステリー館- 評論・エッセイ 2009/09/27 17:21
1992年に「本格ミステリー館にて」で出版された対談集を文庫化した物。
図によるミステリー分類(代表的作品のポジション・代表的作家のテリトリー)は、ミステリ嗜好と立ち位置の自覚に最適。
私的に、高木彬光と鮎川哲也の交わるゾーンが嗜好のド真ん中だと再確認した。
途中で論じられるアイデア(トリック)の転用問題だが、作家の立場から論じられ、読者がどう受け取るのか?に触れていないのが残念。
叙述トリック論も同様で、読者が構えて(察して)しまう点への言及が甘く、出版社の(帯や内容紹介で煽る)姿勢の功罪や、読者の「察し」レベルと作者の「隠蔽技術」レベルの噛み合わせも論じて欲しかった。
私的には、結末まで違和感を感じさせず最大限の驚きを齎す、察しても再読(する気が起きる事は最低条件)で手口を満喫できる作品は賞賛している。
※配慮はしてるが、結構ネタバレになる有名作品も多いので、ある程度ミステリーに馴染んでから読むべき。

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江守森江さん
ひとこと

※「読書(ミステリ)は趣味で娯楽」「相容れない主張(嗜好)は、どこまでも平行線」を標榜している。
※多くの作品に接する努力として、映像化作品で済ます等々、ファジーな方法を常に模索している(本質的...
好きな作家
高木彬光、天藤真、平石貴樹、古野まほろ (ミステリーに限定しなければ一番は梶山季之...
採点傾向
平均点: 5.00点   採点数: 1256件
採点の多い作家(TOP10)
雑誌、年間ベスト、定期刊行物(52)
高木彬光(32)
梶山季之(30)
アガサ・クリスティー(30)
東野圭吾(28)
事典・ガイド(26)
リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク(23)
芦辺拓(21)
アンソロジー(出版社編)(21)
評論・エッセイ(18)