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江守森江さん
平均点: 5.00点 書評数: 1256件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.32 7点 邪馬台国の秘密- 高木彬光 2011/02/18 08:13
高木彬光・歴史推理シリーズ第二弾で神津恭介が邪馬台国の場所特定に迫る。
邪馬台国の場所特定は未だに完全解明されていない最上級な歴史テーマであり、諸説を読めて楽しめる。
しかもネット検索すれば、松本清張との論争や論説パクリ疑惑まで読め(歴史学者以外の立場なら)より楽しめる一粒で二度おいしい作品。
※余談
作者が今でも生きていたなら「大相撲(八百長)の秘密」を神津シリーズで書いて欲しかった。
誰が八百長していて誰がガチンコだったのか、名探偵が取り組みや時代背景を検証した推理を読んでみたかった。
千代の富士は汚れた国民栄誉賞なのだろうか!

No.31 5点 古代天皇の秘密- 高木彬光 2010/12/23 11:58
東京タワーも誕生日、真っ先に思いつく乱歩「黒蜥蜴」は以前書評している。
ならば、今日は天皇誕生日。
「日本人ならクリスマスより先ずは天皇陛下でしょ!」って、昭和天皇みたいに誕生日当日に競馬の天皇賞(春)があったワケでなし、平成天皇は年末の傍迷惑な時期に生まれたせいか、国民は祝日の有り難みすら感じずクリスマス〜有馬記念〜正月に流され忘れ去る。
さて本作だが安楽椅子歴史推理の第三弾でネタ切れなのか古代天皇の謎なんてイマイチ興味の薄い題材になってしまっている。
日本史のお勉強じゃないんだし小説なのだから魅力的なお題と面白さも追求してほしかった。
推理する側の人物も神津恭介でない方が良かったかもしれない。
※余談
本日、競艇の賞金王決定戦が開催されるが、公営ギャンブルで天皇賞があるのが競馬だけで、年に春秋二回もあるのは依怙贔屓過ぎる。

No.30 5点 神津恭介の回想- 高木彬光 2010/07/27 09:36
書評1000件一番乗りバンザイ!ばんざい!万歳!
記念すべき1000件目は一番好きな名探偵・神津恭介で飾ろう!
ここまでは予定通りだが、悲しいかな本作は、埋もれた作品の復刻作品集(5話収録)でしかない。
しかも別作品や長編として改稿された為に埋もれていた作品達を平成シリーズ(一部の神津ファンには黒歴史)発行に抱き合わせして纏めた感が、ありありとしていて残念でもある。
唯一の楽しみは鮎川哲也でも言える事だが、本作(原点)と改稿作品の読み比べだけであろう。
それでも、読み比べると改稿での工夫などが見えて楽しいのは間違いない。
※読み比べガイド(前が本作収録作品)
「死せる者よみがえれ」→百谷シリーズ「破壊裁判」
「白魔の歌」→長編化
「四次元の目撃者」→「死を開く扉」
「緑衣の女」→「小指のない魔女」
「火車立ちぬ」→「火車と死者」

No.29 2点 ハスキル人- 高木彬光 2010/07/13 16:15
作者のSF作品集で、中編の表題作に短編(読み飛ばしたので何編あったか忘れた)のオマケ付き。
私的なミステリーの範疇にはないので2点だが、笑える表題作にハジケタ短編のセットで裏の代表作との声も一部にはある。
初期の少年向け探偵小説にも、やたらとSF設定が登場してた事から、この手の妄想作品を書くのが好きだったのかもしれない。
私的に普通のSFは嗜好の範疇外なので一般的評価も上がらない。

No.28 2点 連合艦隊ついに勝つ- 高木彬光 2010/07/12 12:27
無敵艦隊(スペイン)ついに勝つ!
ワールドカップ(南アフリカ大会)優勝おめでとう!
って書きたい為に今日まで登録せずに温存していた作品。
タイムスリップ型「もしも〜」戦記シミュレーション小説。
戦争関連の読み物は嫌いだが、作戦面を中心にした戦記だけは嫌悪感なく読める。
私的にミステリーの範疇に含めないので2点だが、高木彬光の代表作の一つなのは間違いない(一般なら7点)
妄想を発展させ、タイムスリップ小説にして勢いで書ききる辺りは作者らしさが存分に発揮されていてファンには嬉しい。
所々に史実に合わない誤解があるのもご愛嬌。
最終的に日本は敗戦国になりタイムパラドックスは起きない。

No.27 6点 密告者- 高木彬光 2010/06/16 15:38
検事・霧島三郎シリーズの長編。
梶山季之「黒の試走車」で産業スパイが脚光を浴び始めた頃の作品で、作者も経済犯罪絡みな作品も書き出していたので社会派作品だと思いながら読み進めた。
産業スパイ物なら確実に梶山の方が面白いが、さすが高木彬光といった本格ミステリに転じる作品だった。
作品レベルの落差が激しいが佳作の部類だろう。
神津恭介シリーズで下手に駄作を書かれるより、他シリーズで社会派を融合させた本格ミステリに転じ成功して良かったと思えたのだが(先々、黒歴史な時期を迎えて終わるとは予想だにしていなかった)

No.26 4点 狐の密室- 高木彬光 2010/05/30 00:28
高木彬光ファンには自前のシリーズ探偵・神津恭介と大前田英策の共演は嬉しい筈だった。
しかし(元々、落差は激しいが)作品レベルの低下をキャラの共演では誤魔化しきれずに多数の高木彬光(特に神津恭介限定)ファンはガッカリした事だろう。
当時かくゆう私も、本を手にした時の喜びと、読後のガッカリ感との落差が大きかった。
この作品のせいで初期・神津シリーズの再読以外は長期的(約十年)に作者の作品から離れたほどだった。
さほどのファンでなく今から高木彬光を読み進むならば、初期の神津シリーズのみ、社会派も許容範囲なら「誘拐」あたりまで読んで打ち止めでよいと思う。
※採点は神津恭介に対する愛で1点加点している(いちいち記載していなかったが個人的には黒歴史な作品も含め神津恭介登場作品は全て思い入れで1点加点してある)

No.25 5点 仮面よ、さらば- 高木彬光 2010/05/23 08:41
高木彬光は、神懸かり的名作から素人レベルの凡作まで同じ作家が書いたとは思えない位に作品レベルに落差がある。
このシリーズも第一作から、シリーズを貫く作者の狙いが透ける展開に終始しながら完結した。
しかし、脳梗塞に作者が倒れなければ、ミエミエな展開をミスリードにした神懸かり的で強烈な一撃を与えてくれたのではないか?との思いは尽きず、完結した喜びより惜しい気持ちの方が断然大きい。
さらには、この作品以降に書かれた作品を作者の黒歴史として抹消したいとすら思っている。

No.24 5点 魔弾の射手- 高木彬光 2010/04/12 08:11
何故、神津恭介に予告状が届いたのか?が読後もスッキリせずモヤモヤした作品。
新聞連載時に読者挑戦したページは解説に示され、その時点で七割方の真相は犯人当てのデータとして提示されている。
※ここからネタバレします。
犯人を特定しやすい第二事件のみ実行犯が別人なのが、本格探偵小説としては残念な部類になる。
しかし、作者の狙いは、その真相をもダミー推理にした「真の魔弾の射手」と神津恭介の心の揺れを絡めた劇的結末なのだろう。
以上、作者を擁護してみたが、導入部から毎度お馴染みな犯人隠蔽手口では「真の魔弾の射手」に直結で褒めようがない。
読者挑戦型本格探偵小説としては少年物と同レベルで4点。
それでも、神津恭介の人物像に幅を持たせた事が嬉しく1点加点した。
この作品では、シリーズ名探偵が長編で抱える「犯人に翻弄される弱点」は、神津恭介が恋に揺らぐ事で解消している(これが、この作品の肝なのかもしれない)

No.23 6点 わが一高時代の犯罪- 高木彬光 2010/04/10 14:14
※はじめに(但し書き)
表題作は中編で、神津恭介シリーズ作品集として、何種類も出版され、他の収録作品が違う為、この書評は表題作単独の扱いにした。
2つの消失の謎を含む事件全体の真相から、神津&松下の生涯唯一の犯罪と友情を描いた本格探偵小説としては異色な作品。
時代背景と謎の融合のさせ方も上手い(但し謎自体はチープ)
それ以上に神津恭介の成長過程が読めるのが嬉しい。
神津恭介シリーズを読むと毎度の事ながら、名探偵が中短編で示す才能が長編では最後にしか発揮されない本格探偵小説のシリーズ探偵が抱える弱点が顕著に露呈し、苦笑を禁じ得ない。

No.22 6点 幽霊の血- 高木彬光 2010/04/10 09:36
光風社の名探偵・神津恭介シリーズの一冊で七話収録。
表題作は、幽霊屋敷の謎のチープさよりも、真相の先に伺える「呪縛の家」同様な悪意にゾッとする。
「罪なき罪人」は、アンソロジーで読んだ時は単なる凡作と思ったが、プロットは後に応用され(歌野「有罪としての不在」・若竹「クールキャンデー」など)現在でも驚きを齎す(←見せ方が下手な典型例)
気付きと枯れ尾花な「女の手」や密室状態からの消失を竹取物語に見立てた「月世界の女」なども楽しい。
「小指のない魔女」は、「緑衣の女」を愛情表現に工夫・強化し改稿した作品で、愛していても「そこまでやるか!」と口あんぐりだった。

No.21 5点 私の殺した男(角川文庫版)- 高木彬光 2010/04/08 00:57
ノン・シリーズの短編集で六話収録。
作者の本格探偵小説らしく神津恭介物にも出来ただろう「幽霊西へ行く」にして水準レベルで、他も取り立てる程の作品はない。
しかし、他で読んだ「公使館の幽霊」は単独では小品の域を出ないが、「幽霊西へ行く」と順番に並べると楽しさが増す作品で、短編集は収録順や作品選択で印象が変わる事に気付かされた。
本来なら4点だが上記の好印象で1点加点した。

No.20 4点 オペラの怪人- 高木彬光 2010/03/21 01:40
偕成社・ジュニア探偵小説・全26巻の一冊(作者の顔ぶれは豪華の一言)
表題作+3短編な構成で、各話でシリーズキャラの少年の名前が違うなど整合性を欠くのは少年向けには適さない(減点材料)
表題作は、超絶設定が登場しない真っ当な少年向け探偵冒険活劇に仕上がり犯人がミエミエなのもご愛嬌(対象年齢を考えれば普通なのかも)で楽しさと懐かしさに溢れている。
短編は学年誌掲載レベルでオマケ(ページ数合わせ)な印象。
小学校の図書室には何故か明智とルパンシリーズしか無かった事が思い出される。
※余談
巻末の世界科学・探偵小説全集リストの記載作品と翻訳者の顔ぶれも豪華で、小学生時代に全作読みたかった(溜め息)

No.19 5点 白蝋の鬼- 高木彬光 2010/03/19 21:51
朝日ソノラマで出版された「神津恭介対死神博士」の第二弾。
今回は無理くりな超絶設定は‘特殊な皮膚’のみで、それもルールを明快に提示しながら運用し捻りも効いている。
少年向け探偵冒険活劇としても良いデキだと思う。
「土曜ワイド劇場」の明智シリーズが好きだったなら波長は合うはず。
逆に犯人(笑える位にミエミエ)や展開は上記同様にご愛嬌で活劇を楽しめば良いと割り切った。
諸々の少年向け作品と比較して水準レベルな5点とした。

No.18 5点 死神博士- 高木彬光 2010/03/17 11:56
今では「朝日ソノラマ」で出版された版すら入手困難になり一部ファンの間では復刊が待たれる作品。
神津恭介対死神博士の少年向け探偵冒険活劇としては乱歩の怪人二十面相物を彷彿させ懐かしさと嬉しさがこみ上げてくる。
フーダニットにあたる死神博士の正体や最初の手術のホワイダニットなんか実に作者らしい。
ここまでなら満点に近い評価なのだが、架空の薬品を用いた操りと、そこから紐解かれる密室ハウダニットは(冒険活劇主体な事を考慮しても)適用ルールの明示がなくフェアさを欠き、推理する楽しみを少年達に普及する意味では適していない。
彬光は少年向けになるとルールを明示しない架空設定を謎やトリックに運用している事が多々あり残念でならない。

No.17 4点 悪魔の口笛- 高木彬光 2010/03/12 18:44
初期の神津恭介シリーズで、少年向け故に埋もれていたが復刊した(もう一作の復刊作品は芦辺拓編「少年探偵王」に収録済←そちらで書評もした)
冒頭からいきなり怪人Xと神津恭介が遭遇して如何にも少年向けらしく展開する。
話半ばで明かされる怪人X=ロボットのSF設定は活劇に味付けを齎すが謎の解決としては褒められない。
その後に展開する宝捜しや首領の正体は作者らしさが嬉しいが、大人にはミエミエ過ぎた。
本来なら3点だが、小学校低学年からのミステリへの入口としての復刊意義を考慮し1点加点した。

No.16 5点 高木彬光探偵小説選 - 高木彬光 2010/02/16 19:07
幾ら好きな作家の本でも値段を考え即時購入せずに判断を保留した。
貴重な資料扱いなのか図書館に出版即時入庫したので早速読んだ。
大前田シリーズの中編「黒魔王」他、単行本未収録短編が16編と随筆・評論が収録された豪華版な本だった。
しかし、収録小説に神津恭介物は1編も無く、埋もれていた事に納得する程度な作品が揃い自腹購入は断念した。
随筆・評論では、私的な本格ミステリ嗜好の原点である作者の論考が読めて非常に嬉しかった。
しかし、トリック創作論での、あわやパクリ容認な主張は、当時の日本探偵小説界のモラルが浮き彫りになっていて残念でもある。
※マニア以外はわざわざ購入する程の本ではない。
採点は小説4点・評論6点で平均した。

No.15 8点 成吉思汗の秘密- 高木彬光 2009/10/08 17:07
歴史バラエティー番組の原点と云え、壮大なテーマを気軽に楽しめる三部作の一作目。
結論が出ないテーマを名探偵・神津恭介が犯罪捜査の手法と推論で追求した歴史推理小説で、高木彬光が新境地を切り開いた記念すべき作品。
中盤以降の白熱した討論は論理的で読み応えがある。
読者の発見から加筆された最終章の解釈で「強大な征服欲の源泉が愛した女性への遙かなる想いだった」に・・・石部金吉の神津自身で到達しなかったのも神の思し召しだろう。
国技・大相撲がモンゴル勢に席巻されている起源も、この辺りにあるのかもしれない。

No.14 7点 黒白の囮- 高木彬光 2009/10/01 04:33
近松検事(グズ茂)シリーズ(光文社文庫の作品紹介ではシリーズ第一長編となっているが実際は「黒白の虹」が第一長編)
自動車事故に見せかけるトリック看破~冤罪を晴らす為のアリバイ証明~時刻表を用いたアリバイ崩しを捨て駒とした展開の先に“読者挑戦”を付したフーダニットが待ち受ける構成で、作者の本格に対する情熱がほとばしる作品。
神津を起用せず新たな探偵役を構築し読者挑戦したのにも作者の狙いが潜んでいた!(解決編で狙いに触れている)
しかし、好き故に高木作品を読み込んだ為か、作者の好きな犯人隠蔽技法(何度となく使用している)のアレンジだと察してしまった(私的事情なので採点には反映させていない)
証拠が後付けされる解決編が少々残念で満点(8点)には及ばないと判断した。

No.13 6点 首を買う女- 高木彬光 2009/08/20 17:17
神津物を量産していた時期の6編に、最後の神津物短編「棋神の敗れた日」を加えた短編集。
初期の各編は、入り組んだプロットが作者らしく、その構図をアッサリ見破る神津はまさに名探偵。
しかも、解決の過程がバラエティー富み、神津の色んな面が見れ嬉しい。
反面、好き故に読み込んできたせいか作者の手口に馴れ、私にも“神津並み”にプロットが見えてしまい満足度は低かった。
ミステリ度が低くプロット頼みではない「棋神の〜」が一番楽しめる皮肉な読書になってしまった。

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江守森江さん
ひとこと

※「読書(ミステリ)は趣味で娯楽」「相容れない主張(嗜好)は、どこまでも平行線」を標榜している。
※多くの作品に接する努力として、映像化作品で済ます等々、ファジーな方法を常に模索している(本質的...
好きな作家
高木彬光、天藤真、平石貴樹、古野まほろ (ミステリーに限定しなければ一番は梶山季之...
採点傾向
平均点: 5.00点   採点数: 1256件
採点の多い作家(TOP10)
雑誌、年間ベスト、定期刊行物(52)
高木彬光(32)
梶山季之(30)
アガサ・クリスティー(30)
東野圭吾(28)
事典・ガイド(26)
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芦辺拓(21)
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