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空さん
平均点: 6.12点 書評数: 1490件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1410 6点 犯罪コーポレーションの冒険- エラリイ・クイーン 2023/01/06 22:25
このクイーンのラジオドラマ・シナリオ集第3作は前の2冊と違い、日本で独自に編集されたものだそうです。『死せる案山子の冒険』は読んでいないのですが、『ナポレオンの剃刀の冒険』に比べると全体的に軽い感じがしました。ただシナリオ集と言っても、11編中最後の『殺されることを望んだ男の冒険』だけはノベライゼーションです。巻末解説によればダネイ、リー以外の人によるダイジェスト版だそうで、最もつまらないと思ったのは、アイディアの問題だけでなくそのせいもあるでしょうか。
表題作は非常に意外な真相ですが、家の間取りが明確にされていないせいもあるでしょうか、矛盾点があると言わざるを得ません。どの作品もそれなりに見どころはあり、なんとなく予想できたものもありますが、完全にエラリーの推理と一致したのは『善きサマリア人の冒険』だけでした。タイトルどおりのなかなか気持ちのいい話になっています。

No.1409 8点 七つの裏切り- ポール・ケイン 2023/01/03 22:46
収録7編中、謎解き要素がきっちりまとまっていると思ったのが『鳩の血』『パイナップル爆弾』の2編でしょうか。一方、『名前はブラック』は偶然が過ぎますし、『〝71〟クラブ』や『ワン、ツー、スリー』は長さの割には話を複雑にし過ぎています。そのように欠点をあげつらうことはできるのですが、禁酒法時代のアウトローな世界を描き出す正にハードボイルドという感じの客観的で簡潔な文章の前には、ストーリー的な不満もどうでもよくなり、高得点をつけざるを得ません。
なお、ケインの長篇『裏切りの街』紹介文にはチャンドラーが「超ハードボイルド」と評したと書かれていましたが、ハードボイルドを超越しているわけではありません。本作巻末解説で訳者でもある木村仁良は原文そのままに「ウルトラ・ハードボイルド」としています。"ultra" は「極端な」の意味ですので、これは納得。

No.1408 5点 琵琶湖殺人事件- 津村秀介 2022/12/28 22:45
1991年に発表されたルポライター浦上伸介シリーズの作品。大学4年で浦上の取材アシスタントのような存在の前野美保も活躍します。美穂は前年の『浜名湖殺人事件』では事件関係者だったそうで、読んだことがあるのに全く記憶にありません。ともあれ、写真アリバイ・トリックを崩すきっかけの事実に気づいたのは彼女です。
この、容疑者が最後に提出してきた写真によるトリックは、ちょっとおもしろい事実を基にしているのですが、文章で読めば何となく可能そうでも、実際の写真の構図としては無理があるのではないかとも思えます。また、それより前の鉄道や飛行機を利用したアリバイの方は、浦上が見破るのですが、これは警察がそれ以前に気づかなかったのがおかしいという程度のもの。アリバイ・トリックよりもむしろ、前半のミッシングリンク的な興味と、犯人設定の珍しさの方が、うまくできた作品だと思います。

No.1407 6点 剣闘士に薔薇を- ダニーラ・コマストリ=モンタナーリ 2022/12/25 11:06
訳者あとがきによれば元教員だったというイタリア人女性作家による、古代ローマを舞台とした元老院議員プブリウス・アウレリウス・スタティウスが探偵として活躍するシリーズの第4作です。1994年の発表ですが、2000年の映画『グラディエーター』によって、さらに売り上げを伸ばしたとか。原題 "Morituri Te Salutant" は『グラディエーター』にも出て来るラテン語で、本書では「死なんとする者どもがお別れを申し上げます」と訳されています。
一番人気の剣闘士が闘技場で暗殺され(毒殺と思われる)、それに政治的陰謀が絡まってくるという筋立ては派手で、だからこそ本作が最初に翻訳されたようですが、そんな大げさなプロットばかりのシリーズでもなさそうです。謎解き的には、悪徳法廷演説家に対する証拠の扱い部分が不満でした。
併録されている中編『イシス女神の謎』の方がすっきりしたパズラー構成になっています。

No.1406 7点 納骨堂の奥に- シャーロット・マクラウド 2022/12/22 23:26
たぶんシャンティ教授シリーズ開始以降は、コージーの代表的作家として知られるマクラウドですが、このセーラ・ケリングもの第1作に限ってはむしろサスペンス系だと思えます。一族の納骨堂の奥から発見される30年も前に殺された女の死体。納骨堂の奥を塞いでいたブロックから生じる夫と義母への疑惑。中盤不安をぬぐえないセーラを見舞うショッキングな出来事。クライマックスではセーラは相対する犯人に殺されそうになります。それがセーラの視点から描かれていくのですから、謎解き要素も持ったサスペンス作家が得意とするプロットでしょう。
miniさんご指摘のとおり、文書の隠し場所(隠し方と言うべきか?)アイディアは見事ですが、セーラがその文書に気づく段取りがまたサスペンス系っぽく、わくわくさせられるのです。
後の本シリーズ設定の大元になる事件でもありますので、やはり最初に読むべき作品でしょう。

No.1405 6点 探偵三影潤全集2 青の巻- 仁木悦子 2022/12/17 20:31
相棒の桐崎(きりざき)秀哉と探偵社をやっている三影潤の一人称形式シリーズ7編が収められています。
最初の『沈丁花の家』は本書中唯一桐崎が出て来ない作品。依頼人が家族にも隠していた秘密が意外で、しかも伏線がたっぷりあります。ただ犯人の動機がちょっと取って付けたような感じがしました。長めの『青い風景画』は、大胆すぎるトリックが使われていて、その現実性も気になったのですが、それよりダイイング・メッセージがわざとらしく、省いた方が良かったように思えました。やはり長めの『夏の終る日』は、2か月ほど前浮気調査を依頼されたことのある女から、すぐ家に来てほしいという電話がかかってくるところから始まります。これにもあまりに不自然なメッセージが(明らかに犯人の細工です)からんでくるところが不満でした。他の4編も手放しで誉めるほどではありませんが、それぞれ見どころはあります。

No.1404 5点 殺人アイス・リンク- ウィリアム・L・デアンドリア 2022/12/13 22:48
〈ネットワーク〉テレビ局の特別企画部(トラブル処理)担当副社長マット・コブのシリーズ第4作。
最初のページ、殺された精神科医の死体がアイス・リンクの上に転がっているのを「私」ことマットが見つけたところから、話は始まります。この被害者が残したダイイング・メッセージについては、早い段階でマットが刑事に「エラリイ・クイーンを読んだことはないのか?」と聞いていて、何回か議論され、最後にその意味が分かったところで殺人犯も判明することになります。巻末解説では、「日本人には馴染みのない」「淡白にすぎる」と貶していますが、それだけの作品でもありませんし、そんなに悪くないと思います。ただ、リンクの上をかなりの距離這って行ったのはさすがに無理で、旗が手近にあった設定にした方がよかったとは思いますが。
それより、第2、第3の殺人の動機が無茶なのが気になりました。

No.1403 6点 歪んだ旋律- アーサー・ライアンズ 2022/12/07 21:18
ジェイコブ・アッシュのシリーズ第8作だそうで。ちなみに全部でおそらく11冊のうち邦訳があるのは他に第5、6、9の3作。原題の “Three with a Bullet” とは音楽業界の用語で、p.13に「〝ブリット〟というのは、歌がチャートを急上昇中なのを示す赤丸のことだ」と説明されています。チャート第3位ということです。
プロモーターからの依頼を受けたアッシュですが、パーティーで依頼内容を聞いた直後コカインがヘロインにすり替えられて病人が出る事件が起こり、調査を進めていくと、さらに殺人だか自殺だかわからないような事件が続きます。全体的には真犯人の正体など意外性がなくはないのですが、あまり効果的に感じられませんでした。むしろ、アッシュとつきあっている女優だとか、ぐちゃぐちゃなパンクのライブや、その女性ヴォーカルの意外な素顔など、事件に直接関係ないことが印象に残ります。

No.1402 5点 詐欺師は天使の顔をして- 斜線堂有紀 2022/12/03 18:24
異世界を舞台にしたミステリ。カリスマ性のある「霊能力者」子規冴昼(しきさえひる)が、誰でも念力を使えたり(『第一話 超能力者の街』)、死んだらすぐに幽霊として戻って来る(『第二話 死者が蘇る街』)世界にとばされ、彼を追いかけて行ったマネージャーであり超能力ショーの脚本家でもある呉塚要がその世界で起こった殺人事件を解決するという作品です。タイトルの詐欺師とは子規のこと。
第一話は犯人がなぜエレベーターを使わなかったのかとか、階段を上り下りした痕跡が本物なのかどうかが明確になっていないため、釈然としませんでした。第二話は動機はすぐ見当がついたものの、もう一つの事件と組み合わせて複雑化しています。エピローグの異世界は、人間の設定関係ではなくなってしまっていました。
「単なる手品」という言葉が繰り返されたり、超能力ショーで鮮やかな視覚的手品をやったりしているところは、気になりました。

No.1401 7点 ランナウェイ- ハーラン・コーベン 2022/11/29 21:48
1995年からスポーツ・エイジェントのマイロン・ボライターを主役としたミステリを発表して評判になった作者の、2019年発表シリーズ外作品です。文庫本で600ページを超える大作ですが、人間関係の説明なども明確に書かれ、読みやすくできています。
カバー解説では「著者のフェアな目線」と書かれていますが、これについて巻末解説では「これは最先端の物語だ」という見解の下、現代の情報社会に対するコーベンの眼差しは「限りなく″公正(フェア)だ」〟と説明されています。コーベンを読んだのは初めてなので、他の作品についてはわかりませんが、本作はむしろネット世界の一部である遺伝子情報サイトからの知識で何が起こり得るかという点を基にして構成された作品という気がしました。
2人の殺し屋とその依頼人が最後あまりに間抜けな情報不足をさらけ出すなど、ご都合主義も見受けられますが、充分楽しめる内容になっています。

No.1400 8点 密造人の娘- マーガレット・マロン 2022/11/25 00:01
エドガー賞等アメリカのミステリ関係4賞を受賞したというのも納得のいく、コクのある作品です。作者のじっくり型の文章とプロットのテーマ性との調和がうまくいったということでしょう。意外性はないと言う人も多いようですが、個人的にはその点全く期待していなかっただけに、真相の明かし方には少々驚かされました。シンプルなミステリとしておさまりのいい結末にしてあると思います。「私」こと密造人(酒のということですから古い話です)の娘でもある弁護士のデボラ・ノットが判事に立候補する件が、メインになる殺人事件とは無関係なのですが、事件関係者の一人の思惑とも絡んできたり、投票結果にも反映するなど、小説としてまとまっています。
ただし、最初のうちはかなり読みづらさを感じました。登場人物表(それだけでも25人も挙げられていますが)に載っていない登場人物が多すぎて、誰が誰だかわからなくなるのです。

No.1399 5点 狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役- 竹本健治 2022/11/11 23:23
竹本健治を読むのはこれが初めて。2006年に出版された中編3編を収録したものです。探偵役の牧場智久は、1980年の『囲碁殺人事件』当時Tetchyさんの書評を拝見すると12歳だったそうですが、そうすると? まあ、エラリー等を始めとして、名探偵の年齢はあまり厳密に考えない方がいいのでしょう。作者あとがきによると、元々マンガの脚本として作られたものの、企画が流れたため、小説として再構成したものだそうです。
最初の『騒がしい密室』の密室トリックは、よくあるパターンにちょっと工夫を加えたもので、悪くありません。しかし傘の文字の意味には無理があるでしょう。山本ヤマトによる挿絵でなんとか説得力を出してもらいたかったですね。表題作の犯人のミスは、いくらなんでもと思えます。『遅れてきた屍体』の第2の殺人は余計な気もしますが、内臓をえぐり取った理由には感心しました。

No.1398 5点 暴発- ビル・プロンジーニ 2022/11/06 11:09
今回読んでみようかと意識する前には、字をちらっと見ただけで何となく「爆発」だと思い込んでいました。タイトルの出来事は、本作最後の事件として起こります。
名無しの探偵(オプ)シリーズの中でも作者のお気に入りらしい『殺意』に続く第4作ですが、シリーズとしてはその前作との間が4年も空いています。オプは医者から肺に腫瘍らしきものが認められると診断され、禁煙を始めています。癌なのか、良性のものなのか、不安な日々を送るオプが、友人に頼まれてキャンプ場でのもめごと解決にでかけていくと、予想外の殺人事件が起こり、という展開です。検査の結果を医者に電話で聞こうとして電話ボックスに入りながら、結局電話をかけることもできずに出てきてしまうという優柔不断さ。それでも事件の方は、危ない目にあいながらも、きっちり解決してくれます。最後の一ひねりは、どうなんだろうという感じでした。

No.1397 6点 死の匂い- カトリーヌ・アルレー 2022/10/23 16:46
まだ死んではいないし頭もはっきりしているけれど、動くことが全くできない状態になったステラの一人称形式で回想されるサスペンス。ただ、謎の要素はほとんどなく、あまりミステリ的な感じはしませんでした。ラスト近くになって、冒頭部分とほとんど同じ文章が、2ページ以上出てきます。夫のスペンサーが、彼女はもうすぐ死ぬけれど、自分は生きながらえて行かなければならないという意味のことを語るのですが、その中に原題の "Tu vas mourir!"(You are going to die)という言葉が出て来るのかどうかは、よくわかりません。
登場人物表では、この主人公はステラ・フォールディングとなっていますが、実際にはすぐにスペンサーと結婚してブリッグスに改姓します。彼女は、享楽的なところの全くない真面目な医者と結婚したからこそ、悪女にならざるを得なかったのではないかという感じがしました。

No.1396 6点 観覧車- 柴田よしき 2022/10/09 19:34
失踪してしまった私立探偵の夫を継いで探偵業を営むことになった下澤唯を主人公とした連作短編小説集で、7編が収められています。と言っても、5編目と部分的に関係した6編目から7編目については一貫した流れで、特に7編目は『終章、そして序章』となっていることからもわかるとおり、エピローグ的なものです。
カバーの内容紹介では「恋愛ミステリー」とされていますが、恋愛とは限らず、もっと広い愛がテーマとなっている作品もあります。主役が私立探偵ではあっても、煙草に関して「チャンドラーを読んだことないんか」という友人の刑事からの問いに「ない。ハードボイルドなんか嫌いやわ」と答える(第3編『送り火の告発』)ような作品です。まあ、多少ハードボイルドっぽい『砂の夢』もありますが、むしろ殺人事件のアリバイトリックなどを使ったりした謎解きタイプと言えるでしょうか。

No.1395 5点 自殺の丘- ジェイムズ・エルロイ 2022/10/06 21:23
ロイド・ホプキンズ刑事シリーズの第3作です。ホプキンズに対する精神分析結果所見から始まりますが、精神科医は、ホプキンズは早期退職すべきだとの診断を下しています。第2作『ホプキンズの夜』は未読ですし、第1作『血まみれの月』もあまり覚えていないので、ロス市警察内部の人事関係やホプキンズの立場など、よくわからないところもあり、読み進んでいくのに苦労しました。なお本作は、犯人グループとホプキンズの視点を切り替えていく構成になっています。
それにしても本作、よくもこんな情緒的に不安定な登場人物ばかり集めたものだと思わせられました。感情・欲望をコントロールできないのは、ホプキンズと強盗主犯ライスだけではありません。特にガファニー監査内務課警部の行動と最後の「対決」部分など、ほとんど理解不可能で、ホプキンズより前に精神科医にかかる必要があったのではと思えました。

No.1394 5点 The Private Practice of Michael Shayne- ブレット・ハリデイ 2022/10/01 10:17
このマイケル・シェーン・シリーズ第2作は、2022年現在邦訳がありません。今回の事件は、友人のキンケイド弁護士からの依頼で、富豪が脅迫されているので、対処してもらいたいというものですが、シェーンは弁護士が仲介しているとこの手の事件は問題があるということで、依頼を断ります。しかし夜、キンケイドが面倒に巻き込まれているので、浜辺まで来いという電話がかかってきます。
この事件と、前作『死の配当』の依頼人であったフィリスとシェーンとの関係を絡み合わせた展開で、途中、ほとんどどたばたコメディー的なところもあります。そのコメディー的シーンで、シェーンはフィリスにプロポーズすることになり、最終章は事件解決後、レストランでの二人の仲睦まじい会話です。
ただし、殺人事件の真相の方はどうということもないもので、犯人を罠にかけるシェーンの策略も、ちょっと無茶すぎと思えました。

No.1393 5点 尾瀬殺人湿原- 梓林太郎 2022/09/27 23:28
これまでに読んだ梓林太郎4冊の中では、最もオーソドックスな警察による捜査型謎解きミステリでした。
犯人の名前が出て来るのは半ばを過ぎてからですが、その人物にたどり着くまでが、なかなかおもしろくできています。荒竹刑事の殉職した同僚の弟からの相談で、彼の恋人が尾瀬で失踪したというのが発端ですが、その恋人とさらにもう一人女の死体が発見されます。この死体の状況が、チェスタトンの『秘密の庭』をも思わせるもので、どんな理由があったのかと期待させます。しかしその部分はどうということもありませんでした。まあ現実主義的立場からすれば、そのような発想になってもおかしくない状況ではあるのですが、もう一人の女の登場は作者が事件を派手にしてやろうと考えたからに過ぎないと言われても仕方ないでしょう。
山岳ミステリの作者らしいシンプルなアリバイトリックは悪くありません。

No.1392 6点 論理は右手に- フレッド・ヴァルガス 2022/09/24 09:52
nukkamさんのおっしゃるとおり、第3章まで(というより、犯人の独白である第2章以外の2章)はとっつきにくいです。事件の発端になる骨の件を除くと、ほとんど何が何だか。その第3章に、訳者あとがきにも解説されている、邦題の元になった「支配と方法と論理は右手に存在する。」という文も出てきます。右手のほうに少し進みすぎると「冷酷な愚か者」になってしまうという警告です。
この警告を発するのが、本作の主役、元内務省調査員ルイ・ケルヴェレール。ペットのヒキガエルをいつもポケットに入れて持ち歩いている(そんなことして死なないか?)変わり者です。三聖人のうちマルコは最初から彼を手助けしますし、マタイも途中から加わりますが、これじゃ二聖人です。
アリバイトリックなどフェアプレイが守られているとは言えませんが、それでもエキセントリックなパズラーとしか言いようがない作品です。

No.1391 6点 落ちる男- マーク・サドラー 2022/09/21 21:07
片腕探偵ダン・フォーチュン・シリーズのマイクル・コリンズが別名義で発表した作品です。本作の探偵ポール・ショウものは6冊あり、そのうち3冊が翻訳されているようです。ショウは平均的なハードボイルドの私立探偵らしいキャラクターで、首を締められたり、縛り付けられたりといった危機に見舞われもしますが、結婚していて、しかも奥さんは成功した舞台女優(結婚当時は駆け出しだったのですが)だというのが珍しいところです。ただ、本作ではその設定がそれほど活かされているとは思えませんでした。仕事で奥さんの舞台を見に行けないとか、最後の部分でちょっと気まずい思いをするとか、まあなくてもかまわないような気がします。
ショウが事務室に忍び込んだ銃を持つ男を、窓から突き落とすところから始まる事件そのものは、特に「なぜ」の部分が謎めいていて、結末の意外性もかなりのものです。

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空さん
ひとこと
ハンドルネームの読みはとりあえず「くう」です。
好きな作家
E・クイーン、G・シムノン
採点傾向
平均点: 6.12点   採点数: 1490件
採点の多い作家(TOP10)
ジョルジュ・シムノン(110)
アガサ・クリスティー(65)
エラリイ・クイーン(53)
松本清張(32)
ジョン・ディクスン・カー(31)
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