皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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miniさん |
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平均点: 5.97点 | 書評数: 728件 |
No.10 | 6点 | Xの悲劇- エラリイ・クイーン | 2015/11/25 09:54 |
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先日に原書房からクイーン「摩天楼のクローズドサークル」が刊行された、ええ!そんな未訳作があったっけ?という方も居られるかもだが、少し前に同じ原書房から出た「チェスプレイヤーの密室」と同様、”クイーン外典コレクション”の一環で今回は第2弾である
クイーンが晩年に合作の片割れリーの監修の元、ペイパーバックオリジナルを一応クイーン名義で大量発行した事は特にクイーンファンでなくとも概要は御存知と思う、何故そんな事をしたのかはリー不調説とか謎めいているが しかしその殆どは紹介されず、ラジオドラマまで訳されている割には数少ない残った未訳分野である その理由は?、もちろんクイーン本人ではなくその全てが代作者の手によるというのが嫌われたのだろう、ラジオドラマでも基本クイーン本人が創作しているのもあるみたいだからね 大体クイーンのような作風を理想と崇め特別に好むような読者ってのはさ、ハードボイルドなどは全然読みませんってタイプの読者ばかりなんだろうしさ 代作者の顔触れは今日殆ど判明しているが、全体としてSF作家とハードボイルド作家が多い印象である 例えば「チェスプレイヤーの密室」の代作者はSF作家ジャック・ヴァンス、そして今回出た「摩天楼のクローズドサークル」の代作者はハードボイルド作家リチャード・デミングだ 第3弾として予定されている「熱く冷たいアリバイ」の代作者フレッチャー・フローラは知られていないが、雑誌掲載短編として断片的にかなり翻訳されており、『ヒチコック・マガジン』や『マンハント』誌に短編を大量寄稿していた情報からするとやはりハードボイルド系の作家じゃないかな ただし、”クイーン外典コレクション”という企画は、ペイパーバックオリジナルの中から本格派として評価出来るものだけを厳選したものである 「摩天楼のクローズドサークル」の代作者リチャード・デミングは、『マンハント』誌を本拠にした典型的な通俗ハードボイルド作家で、良い意味でその通俗っぽさが魅力だ 今読めるのはポケミスの『クランシー・ロス無頼控』位だが、今年がデミング生誕100周年に当たるので私も当サイトに書評書いたので御参考までに、この短編集メチャ面白いので是非皆様読んで欲しいものである え!「Xの悲劇」の書評は?って、そんなんどうでもええわい、リチャード・デミング『クランシー・ロス無頼控』の宣伝の方がメインで・・・、てなわけにもいかんか、少し書くか(苦笑) 「Y」と比べての「X」の方が私は好き、何故なら理由は大きく2つ有る 1つ目はまず舞台設定 いわゆる”館もの”という舞台設定が大嫌いな私の性分からすると、「X」の公共交通機関にこだわった舞台設定の方が性に合うのである 2つ目は犯人設定 「Y」がいわゆる”属性”一本やりで、あとはいかにその属性である事が不自然でないかを多角的に側面補強しただけなので基本は案外と底が浅いのに対して、「X」では”属性”と”プロットによるミスリード”との両面作戦できている、これはミステリー的には「X」の方が優れているんじゃないかなぁ |
No.9 | 7点 | 災厄の町- エラリイ・クイーン | 2014/12/17 09:58 |
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先日5日に早川文庫からクイーン「災厄の町」の新訳版が刊行された、特に中古市場でもタマ不足ではないので新訳の意義が有るのか?とも思ったが、創元では国名シリーズを着々と新訳切り替え中なので、早川も定期的な切り替えなのかも知れん
でもポケミスも含め早川の場合は、マニアが新訳復刊を要望しているものが目白押しなので、もっと他に有るだろ的な意見が噴出しそうだな 私が初心者の頃にクイーンを読んだ印象は、”ロジック”ではなかった クイーンと言うと何かとロジック、ロジックと言われがちだが、アメリカの社会風俗的な面に着目する人が少ないのは残念である クイーンは冒頭で、その年のブロードウェイの演劇シーズンはこれこれこうだったとか、何々のイベントが行なわれたとかの記述で開幕するものが多い 私にとってのクイーンはアメリカ社会風俗作家であり、季節感を描く作家である 『犯罪カレンダー』という短編集も有るくらいで、クイーンの”季節感”へのこだわりはもう少し見直されてもいい気がする 後期の有名作の1つ「災厄の町」は、まさに”季節感”を最もよく表現した話だ 当サイトでの空さんの御書評で的確に言い表わされておられるように、ハロウィーン、クリスマス、元旦、春分の日の後の復活祭、など季節の節目が物語の節目とリンクしてくる クリスマスだって元々はキリスト生誕とかじゃなくて、昼が最短となる冬至の後に家族が集うイベントだという説も有るし クイーンはこれ意図的に狙っているよな、きっと 謎解き的に見たら、トリックは大体は看破してしまった、冷静に考えればこういう手順で行なえば成立するよなって感じで、見抜いた方も多いと思う また謎解きだけじゃない総合的見地でも、私は読んだ後期作の中では「フォックス家」が1番好きだ しかし従来は地方都市が舞台というローカル色ばかりが言われがちな「災厄の町」だが、”季節感”の演出という面ではクイーン作品の中で最も成功していると思う |
No.8 | 6点 | ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン | 2014/07/31 10:00 |
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昨日30日に創元文庫からクイーン「ギリシア棺の謎」の中村有希による新訳版が刊行された
中村有希は訳文がすーっと頭に入ってこなくて苦手な翻訳者なんだよな、私としては多分新訳で再読する事は無いと思う(苦笑) 「ギリシア棺」は過去に書評済だが一旦削除して再登録 御三家の中でそれぞれ読者によってこの作家が好きという好みが分かれるであろう クリスティやカーに比較して、クイーンを優先的に特に好むタイプの読者は多分私の感性と合わない読者なのだろうという思いはずっと持っている 何故ならクリスティやカーの方を好む読者だと必ずしもロジックだけを好むタイプじゃ無さそうだけど、他の2人に対してクイーンだけを特に好むタイプの読者って、ミステリー小説にロジックとフーダニットだけを求めるタイプが多い印象なんだよな、それ以外の要素は冗長無駄みたいに言う しかしこの「ギリシア棺」はロジック以外の面でも魅力を発揮しており、そういう面では「フランス」や「オランダ」よりも進化していると私は思う ただ舞台設定の面では特徴が無く、大都会の喧騒といった社会風俗的な魅力は後退している、次の「エジプト」での舞台はニューヨークを離れちゃうしね 「ギリシャ棺」は探偵クイーン君がまだ青二才の頃の事件だが、これは探偵役の青春を書きたかったわけではなく、設定上そうでないと都合が悪いからなのは明白だ 初期クイーンに顕著な”属性”による意外性だが、「ギリシア棺」の場合だけは基本設定が固定化してから使うわけにはいかんもんな 従って探偵役クイーン君の若かりし日の事件だからという理由で初心者にこれを薦めるのは明らかに不適切で、国名シリーズ入門には絶対向かないと思う 真犯人の設定に於いてクリスティ作品にも似たパターンのはあるが、クリスティがしら~っと平気で使ってるのに対して、やはりクイーンは細かい面にも気を配るなぁ ※ 以下は決してネタバレでは無いが神経質な人は読まないほうがいいかも 途中で、赤色を緑、緑色を赤、と呼ぶ人物が登場する 原文は不明だが、この人物に”色盲”という語句を使用しているなら、これは作者クイーンの勘違いである ”赤緑色盲”というのは、赤と緑が区別出来ない症状を指すのである この登場人物は色の区別は可能で、ただ単に色の名前を間違えて覚えているだけだから、頭がアホではあるが色盲ではない 空さんが指摘されていたのはこれでしょうか ところでカーにも色盲が決め手となる某短篇が有るが、カーは色盲の意味を正しく解釈していた |
No.7 | 5点 | オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン | 2013/07/19 09:56 |
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明日20日に創元文庫から「オランダ靴の謎」の新訳版が刊行予定
創元では中村有希の訳で国名シリーズの新訳版切り替えが着々と進行中でありその一環だ、もっとも私は旧井上勇訳のヴィヴィッドな感じが嫌いじゃないんだけどね(笑) 何かと言うとロジックロジックとそれだけが強調されがちな国名シリーズだが、そもそも私はミステリー小説に於いてロジックなんて最重要だなどと思った事が無い 特に書評するにあたって、ロジックの巧拙だけが評価点数での要素の全てみたいな書評は自分では絶対にしたくない、様々な要素から総合的に判断したいのである それよりもシリーズ初期では当時のニューヨークの社会風俗への活気の有る描写の方が見逃せない クローズドサークルとは対照的な、人の多く集まる場所をわざと舞台に選んだと思われるようなね、劇場、百貨店、病院、競技場etc、 「エジプト十字架」は大都会が舞台じゃないがオープンスペースな舞台だし、国名シリーズじゃないが「X」だって公共交通機関揃い踏みだったし そう考えると「シャム双子」や「Y」みたいな館ものというのはむしろ異色作なんじゃないかと、例えば「ギリシア棺」などは公共的舞台じゃないけどあれは館ものとはちょっと違うしな 「オランダ靴」は病院が舞台、ミステリー小説での病院の扱われ方ってさ、暗く怪しい雰囲気というのが古典時代の作には多かった しかし黄金時時代に書かれた「オランダ靴」での病院は実に近代的で明るい、おどろおどろしい雰囲気は感じられない しかしそれでいて病院という一種独特な異次元世界な雰囲気は良く表現されている、この辺のクイーンの目の付け所は流石 犯人の設定などには「ローマ帽子」などと共通の、まぁクイーン得意の”属性”に依存したもので、動機の平凡さなどを見ても犯人の設定ありきみたいな作で物語に深みは無い しかし結局のところ選んだ病院という舞台が非常に効果を発揮する結果となったのだろう |
No.6 | 5点 | ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン | 2012/10/25 09:55 |
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本日25日に角川文庫から「ローマ帽子」の越前敏弥による新訳版が刊行される、創元じゃなくて角川だよ
皆様御存知の通り、創元文庫の国名シリーズでは旧井上勇訳に替わる中村有希訳の新訳版への切り替えが着々と進められている、昨年は「ローマ」で今年は「フランス」を新訳版に切り替えた 角川も対抗して大御所越前氏の起用で本気度を見せようというのか、もっとも越前敏弥はダン・ブラウンの翻訳などで角川とは縁が深いんだけどね ただ越前氏は早川・創元・講談社とも関わっていて、国名シリーズの新訳対決、どちらに軍配が上がるのでしょうか その国名シリーズの原点であり作家クイーンのデビュー作が「ローマ帽子」である ネット上の書評を閲覧するに、「アメリカ」「シャム」と並んでシリーズの中では低い評価が多い事に気が付いた、曰くロジックが物足りないとか、これだけでは犯人を絞り込めないとか 私は初心者の頃からミステリーに対してロジックを重要だと思った事が無くて、ロジック面だけが評価の全てみたいな書評は自分では書きたくないなぁと思っているし、そもそも国名シリーズを楽しんで読んだ事無いし、その前に「アメリカ」と「チャイナ」以降のシリーズ作すら未読だし したがって国名シリーズの中での優劣順位なんて考えた事無いし、「ローマ」も「フランス」も「オランダ」も大同小異にしか感じなかったなぁ 「ローマ」のロジックは「Xの悲劇」と似た面が有るんだよね、「ローマ」のロジックを隙が有ると言うなら「Xの悲劇」だって同様の欠点が有るんだよな、「ローマ」だけを酷評して「X」を絶賛するのは矛盾していると思う 私は理系だったので大学受験の理科を物理で受験したが、物理の入試問題では例えば”表面は滑らかなものとする”などという前提条件が付く場合が多い、何故なら現実では摩擦の影響が多少なりとも有るからだ しかしそれを考慮すると摩擦係数などを計算式に含めなければならなくなり、試験問題としては本質的な部分ではないのに計算がややこしくなるだけだから省いているのだ、ミステリーだって同様ではないだろうか 結局は提出される謎なんて作者の都合のいいように設定するものなんだよな、作者が帽子が劇場内に見付からなかったと書いたならそれを前提条件として読者側は受け入れるしかない 現実にはどこかに帽子を隠せる場所が在るんじゃないかなんて突っ込みは野暮というものだろう、「X」だって市電から上手く処分出来て警察が見逃したかも知れないんだし、だから「ローマ」に対して推理にアラが有るという非難は私はしない事にしておく ロジックだけで語られがちなクイーンだが、むしろ初期の国名シリーズに顕著なのは当時の社会風俗を取り入れている面だろう 古典的な館という舞台設定から離れ、劇場やデパートや病院という風俗的舞台に着目したわけだね そういう点ではハードボイルド派と共通する一面が有り、ハードボイルド派とは対極に思われがちなクイーンだが、当時興隆しつつあったハードボイルド派と共に主導権を英国からアメリカへと移した「ローマ帽子」の功績は評価したいと思う |
No.5 | 5点 | フランス白粉の秘密- エラリイ・クイーン | 2012/09/27 09:50 |
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本日27日に創元文庫から「フランス白粉の謎」の中村有希による新訳版が刊行となる
創元では昨年も「ローマ帽子」の同訳者による新訳版が出ており、どうやら創元の国名シリーズは全面改訂の予定らしい、個人的には旧版の井上勇訳が活気があって好きだったんだけどなぁ 翻訳者にも相性が有って、文章がす~っと頭に入ってこなくて私はどうも中村有希は苦手な翻訳者の1人なのだ * 「フランス白粉」は書評済だったが便乗企画として一旦削除して再登録 ロジック面でしか語られない事の多いクイーンだが、風俗小説的な面も見逃せない クイーンはよく冒頭で、”その年のブロードウェイは誰々の話題でもちきりだった”みたいな文章から始めて、当時の大都会の現代社会風俗や季節感を活写しようとの意図が窺える 劇場、デパート、病院といった舞台設定もそうだし 結構、書き出しに気を配る作家だよなぁ 謎解き面での初期クイーンの特徴は犯人の設定だ 別作品での書評中でkanamoriさんが”属性による意外性”という表現を使用されてましたが、流石はkanamoriさん的確で鋭い表現ですね そう”人物の属性”ですよね、クイーンほど犯人の設定に”属性”を利用した作家は少ないでしょう 後には”プロットの展開”によるパターンも書いてるけど、その手法だとどうもクリスティやカーほど上手くない やはり”属性”有ってのクイーンな気がする この「フランス白粉」でも結局は”属性”パターンの一種で、クイーンはこのパターンがお好きなようで、しかもストレートには使わず他の某国名シリーズ作品同様にアレンジして使っている ”属性”が決まれば後はいかにして1人に絞り込むかをお膳立てするかで、まさにその作法通りの作だ その意味では「ローマ」「フランス」「オランダ」ともに同工異曲であり差は無い ただ私はミステリー小説を読者挑戦パズルという認識で解釈しておらず、ミステリー小説に於いてロジックを重要だと思った事がない読者なので、もう少し物語性が欲しいなぁ |
No.4 | 4点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2012/04/26 09:54 |
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本日26日にテレビ朝日系列で連続ドラマ「Wの悲劇」がスタートする、主演は若手人気女優の武井咲(”さき”じゃなくて”えみ”だよ)
便乗企画としてレーンシリーズからと思ったのだが、なにしろ夏樹静子作品を1冊も読んでねえんで、「X」か「Y」かで迷った 「Wの悲劇」の粗筋見たら”館もの”っぽいから、便乗企画的には今回は「Y」だ と言ってもさぁ、私はCCや”館もの”というシチュエーションに全く興味の無い読者なんで、舞台設定だけで言うなら「Y」より「X」の方が好きなんだよな、だからあまり語るべき事柄も無いんで(苦笑) 前期クイーンの特徴ってのはさ、”属性”に基づく犯人の設定だが「Y」もこの例に漏れない ところでクイーンは登場人物を多く出しても無駄に感じさせないのが上手い、この「Y」でも一見どうでもいいような登場人物にも謎解きの根幹に関わるかに関係なく何らかの役割を与えている クリスティには時々そういう意味で無駄なの有るから |
No.3 | 4点 | エジプト十字架の秘密- エラリイ・クイーン | 2012/04/02 09:51 |
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今年は1年間に渡って”ツタンカーメン展”が開催される、皆様ご存知でした?
現在は6月上旬までの上半期に大阪が会場となっており、8月~12月までの下半期は東京に会場が移る 西日本在住の皆様、黄金のマスクを見るのは今がチャンスですよぉ~ ところで何でツタンカーメンが有名だか皆様ご存知ですか? 実はツタンカーメンってエジプト古代王朝の各ファラオの中では、さして重要な存在だったわけじゃないんだよね 義父はそれまでの多神教を捨て一神教を採用した宗教改革で有名なイクナートンことアメンホテプⅣ世 このイクナートンは、特に事業も行なわず、それまでの都を捨て遷都し、一心不乱に祈ってただけの王だったという説がある ツタンカーメンは即位後は都を元に戻すが、少年で即位し若くして亡くなった病弱な体質の王だった しかし重要な存在の王でなかった事が後世に名を残したのだ エジプト王家の墳墓というのは金銀財宝などの副葬品が有る為、長年に渡って盗掘に遭い被害を免れた墳墓は殆ど残っていない ツタンカーメンの墓は奇跡的に盗掘されず副葬品の殆どが手付かずのまま発掘されたのだ、多分ツタンカーメンが重要な王じゃなかったのが幸いして泥棒が目を付けなかったのかも知れん 今年の日本はエジプト・イヤー、ってのは大袈裟か(苦笑) さてエジプトと言えば最初はこれだ、何たって題名に「エジプト」が付いているんだから この作品の肝は要するに”○○○が犯人”というパターン、これは同作者が別の某有名作でも使用している 某有名作ではこのトリックを巧妙にさり気なく使っており、読者にそれと悟らせないのが上手い 一方で「エジプト十字架」では、こんな死体を登場させたら読者に当然ながら怪しまれるの承知で、その疑惑をどう逸らすかに賭けた作品だ 取って付けたようなエジプト十字架という趣向も、こんな死体の姿にする必然性を付加するのが目的だろう もっともいくら地方の警察だとは言え、普通は死体の○○を調べるとは思うが 某作品のように読者に悟らせないのではなく、中盤で読者の疑惑通りに一旦解明し、さらにプロットを紆余曲折させて読者の混乱を狙うという新たな手口だ 流石はクイーンと言いたい所だが、どうしてもケレン味でミスリードする必要性は分かるけど、地味好きな私の好みじゃねえなぁ 真相は大部分は看破した、例の薬壜の手掛りは直感じゃなくて論理的に推理した、でもアマチュアっぽくて面白くない推理だな 3点でもいいかなと思ったが、私の嫌いな館ものじゃなくて屋外の事件という事で1点おまけ |
No.2 | 3点 | 靴に棲む老婆- エラリイ・クイーン | 2011/04/07 09:57 |
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「災厄の町」「フォックス家の殺人」のライツヴィル2作の間に発表されたメルヘン調で独自色の強い単発的雰囲気の作品
「靴に棲む老婆」を含むこの後期3作の中では個人的には「フォックス家」が一番好きだな 作風が作品毎にあまりにも異なるので、この時期のクイーンは方向性を模索していたのだろうか? 「靴に棲む老婆」の舞台設定はどこか現実離れした登場人物達が棲むちょっと現実離れした館 日本の本格愛好家がいかにもイメージするいわゆる”館もの”に近い 題名だけなら館ものっぽい「フォックス家の殺人」が、家族の絆がテーマであって”館もの”では全然無いのと対照的だ 私はCCやお屋敷もの館ものという舞台設定に全然興味が無い読者なので、「靴に棲む老婆」は舞台設定からして合わなかった 同じ一族ものでもあり「Yの悲劇」との類似性が感じられるが、後期のクイーンにはこういうくだけた雰囲気でしか書けなくなっていたのだろうか、それとも意図的に「Yの悲劇」のセルフカバーをやりたかったのだろうか 謎解き面では陰で操る黒幕の正体は判らなかったが、表面的な実行犯は判った いかにもクイーンが仕掛けそうな感じから犯人はこいつしかないと早い段階で確信したが、ただ方法が直ぐには分からなかった 途中で○の○○番号が不明という件でトリックが分かった、これはこういう手順でやればやれば普通に実行可能だろうと見破れた 後期の中では謎解き面も優れているという噂は聞いていたが、なぁ~んだ大した事無いじゃんと油断してたら続きがあったとは!、あぁぁ・・・ でも黒幕の正体の方はあまりセンスがいいとは… |
No.1 | 7点 | フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン | 2008/11/02 11:48 |
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後期クイーンと言うとライツヴィルものが一つの柱だが、ライツヴィルものとしては順番で「災厄の町」と「十日間の不思議」の間に挟まれた第2弾が「フォックス家の殺人」である
「災厄の町」が題名に”町”と入っているように地方都市の季節の移ろいや情緒は感じられるが基本的には館ものなのに対して、「フォックス家」は何々家という題名の割にはいわゆる館ものでは無くて家族の絆がテーマである 事件は過去に起こった一件だけと地味な展開に終始するので、ケレン味ばかりを求める読者向きでは無いが、ミステリーにケレンが絶対必要とは私は思わないし、地味には地味なりの良さがある 私は”地味”という語句を悪い意味として使用したくない 一般にライツヴィルものの代表作とも云われる「災厄の町」は真相も見え見えで後期クイーンの狙いが必ずしも成功していないが、「フォックス家」の方が人間ドラマと謎解きの融合が上手くいってる気がする 多分クイーン好きな人には評価低いだろうね、クイーンとか好むような人はこういうの求めてないんだろうしね しかし私には、「災厄の町」よりも「フォックス家」の方が後期ならではの良さが出ている気がするんだよなぁ |