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makomakoさん
平均点: 6.18点 書評数: 862件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.27 6点 麻倉玲一は信頼できない語り手- 太田忠司 2021/04/28 22:42
この書評は多少のネタバレ気味です。すみません。


死刑が廃止され死刑囚で処刑されなかった最後の人物麻倉が孤島の私立拘置所に収監されている。主人公は麻倉の告白本を書くように依頼されて孤島に訪れる。
そこで麻倉本人から彼が犯した殺人の数々を聞くこととなる。どれもこれも悪逆非道で救いようがないのだが、麻倉本人は反省どころか当然のことと思っている。次第に監視している側の人物も実は麻倉に恨み骨髄の人物であることがわかってくる。結局麻倉は絞首刑となるのだが、その後に監視員たちがこれされ麻倉が犯人であることがわかる。
こんなお話なんですが、これって絶対無理ですよねえ。
はじめから怪しげなお話なんですが、それにしても絶対無理だなあと思って読んでいると、それなりに納得できる結論となりました。
作者は同郷の作家さんで応援しているのですが、時にとんでもないどんでん返し(本格推理のように見せておいてほんとはファンタジーだったといったような)を書かれるのでこれもその内かと心配したのですが、それほどでもなくまあほっとしました。

No.26 6点 ミステリなふたり- 太田忠司 2020/05/30 18:24
このシリーズは読み過ごしていたため、初めの作品が手に入らず、はからずも発表された逆の順番で読むこととなりました。
 うーん、初めはこんな感じなんだ。
 どの作品もそれなりに工夫されていた。かなり良いなあと思っていたが最後の方に来て景子の態度があまりに悪く(普通の人にこんな態度でいたら誰でも気分が悪いでしょう)さらに最後の作品は後に出るアラカルトの最後の作品と類似ですよねえ。
 こちらが先に発表されたのだからこちらから読めば問題ないが、たまたま逆に読んだためちょっと興ざめしてしまった。発表順に読めば問題なかったのですがね。でもアラカルトで興ざめとなるか。

No.25 6点 ミステリなふたり a la carte- 太田忠司 2020/05/27 17:32
シリーズものとして読めば楽しめます。
 今回は短編のお話がお食事とセットになった形になっています。
 相変わらず読みやすく内容が殺人事件の割に軽い雰囲気ですが、作者の小説はどれもですが、嫌味な感じは全くありません。これが読者によっては漫画チックでちょっと物足りないかもしれません。
 一つずつが短いのでちょっとした時間でも読むことができます。それなりに面白いが、とても素晴らしいというほどではないかな。

No.24 6点 もっとミステリなふたり- 太田忠司 2020/05/25 19:18
 このシリーズはかなり短いお話ばかりですが、内容はそれなりに充実していると思います。
 さらにその中に京堂夫妻のエピソードが加わって結構楽しめるのです。 
 お話の内容がそれなりに猟奇的だったり重かったりしているのに、さらっと解決してしまう。読みやすいといえば読みやすいが、ちょっと物足りないような気もします。
 奇抜に見えるお話でも、解決があまりにスムーズなため、お話としてはあれれ、といった感じもしてしまいます。
 一話ずつが短く嫌味な話ではないので、ちょっとした生き抜きとして読むならなかなかです。

No.23 6点 やっぱりミステリなふたり- 太田忠司 2020/05/21 18:02
 ミステリなふたりの3作目。
 太田氏の作品はかなり読んでいるつもりですが、このシリーズは初めて読みました。
 本格物の短編集です。不可解な殺人が出てきて愛知県捜査一課の氷のように鋭い女性警部補が担当するが、もう一つ解決できず、夫の優しい新太郎に相談する。
 夫はたちまちに事件を解決してしまうというワンパターンの短編ばかりですが、その中にちょっとしたスパイスが混ぜてありそれがなかなか面白い。
 事件そのものは結構猟奇的なものも含まれてはいますが、スラスラと読めてしまいます。
 作者の最近の長編はSF様のパロディーがかったものが多くちょっと寂しい。
 こんな長編がたくさん書けるのですから、もうちょっと温めて本格長編をお願いしたい。

No.22 5点 名古屋駅西喫茶ユトリロ- 太田忠司 2019/08/30 07:45
 名古屋駅西というところは名古屋人にとってはちょっと特徴があったところなのです。わたしも子供の頃はここへ入ってはいけませんとよく言われていました。現在は新幹線が通って、小汚かった小屋のような建物が一掃され、新しい街となっています。この辺りの名古屋弁はきつい(よくなまっているというべき)、まさにこの物語に出てくるような言葉でしゃべる人がいっぱいいます。私もこのあたりに勤めたことがあるので、今ではあまりない強力な名古屋弁に出会うことがしばsっしばありました。私は名古屋人ですので何の不自由もなく同じ言葉でしゃべっておりましたが、関西人が関西で関東言葉でしゃべるとなんだか気取って見えるように、この辺りの方お年寄りには名古屋弁でしゃべらないと本当のことは通じないような気がします。
 ところで本作品ですが、実に軽い話ばかりでスラスラ読めます。謎も大したことはありません。主人公の大学生は私にとっては学校の後輩のようなやつでこれまた親しみがわきます。
 東京の街の紹介が全国版のテレビで紹介されていますが、これを読んで名古屋の街も少しは親しんでくださるといいなあ。

No.21 6点 目白台サイドキック 魔女の吐息は紅い- 太田忠司 2013/11/29 20:24
このシリーズの第1作を読んだときから次が出ることを予想していましたがやっぱり出てきました。第1作の「女神の手は白い」で北小路準を何でこんな設定にしたかが疑問でしたが、この作品を読んで分かりました。
 なるほどこれがやりたかったのだ。太田さんこの作品を書くために1作目に本格物としての「キズ」をあえて作ったのですね。
 太田氏の作品ではその物語の内容より登場人物が好きで読んでしまうところがあるのですが、本シリーズの南塚君はあんまり感じが良くないね。しかも今回は北小路との掛け合いが少なくちょっと物足りない。シリーズ化するために内容を薄めたような感じでした。
 本格ものを書き続けるのは大変と思いますが、ファンとしては作者にはぜひ頑張ってもらって霞田シリーズのようなお話を作ってもらいたいのです。狩野君シリーズも書いてほしいなあ。

No.20 7点 白亜館事件- 太田忠司 2013/10/06 19:52
狩野俊介シリーズもこのあたりから本格嗜好が強くなり仕掛けも大掛かりとなってくる。言ってみれば霞田兄妹シリーズが小道具を使用しているのに対して狩野俊介シリーズは大道具を使用したシリーズといえるかも知れません。
 漫画チックな表紙や挿絵にとらわれなければ(作者は気に入っているようですが)本格物として読んで遜色ないお話となっていると思います。
 すらすら読めて結構面白いと思います。

No.19 7点 目白台サイドキック- 太田忠司 2013/10/06 19:46
 なかなか面白いのです。相棒ミステリーという分野があるのかどうか分かりませんが、本格物として遜色のない出来合いなのですが、最後に行くとがっくり(これをびっくり驚愕とは思えません)。どうしてこんな仕立てにしたのかわかりませんが、こういう形をとる必要がないように思います。最近の作者の傾向としてミステリーと幻想を融合しようとしているような傾向を受けますが、ミステリーの答えが幻想ではだまされたような感じとなるのではないでしょうか。
 本作品は最後にこんなかたちとなっていても本格物として問題はないのですが、いかにも本格物といった雰囲気で読ませた上でこういったこととなるといんちき臭い話と感じてしまうことは否めません。
 さらにこの作品は本格物としては明らかにキズだらけの終わり方をしています。謎が解き明かされていないところが多いのです。きっと続編が出て解決してくれるものと思います。
 作者は同郷で昔からずっと読み続けている数少ない方です。次を期待します。期待をこめた評価です。

No.18 8点 銀扇座事件- 太田忠司 2013/09/23 20:19
 どういうわけか狩野俊介シリーズでわたしが最も衝撃を受けた銀扇座事件がこのサイトにのっていないので追加させていただきました。
 このシリーズ初の上下二巻で登場し、上巻を読んだときは本当にびっくりしました。え?本当?。なんだか変だけどこんなのでよいの?でもまだ下巻もあるのだしいったいどうなったのだろう。
 このシリーズを読み続けていたものほどびっくりするだろうと作者も書いておられますが、まさにそのとうり。
 そのわりに下巻がもう一つではありますが、当時の衝撃を懐かしみ高評価です。これだけ読んだ方はもっと評価は下がるかも。

No.17 7点 久遠堂事件- 太田忠司 2013/09/23 20:08
この作品は狩野俊介シリーズで最も衝撃を受けた銀扇座事件のあとに発表されたものと記憶する。
 途方もない建造物(巨大な釈迦涅槃像の内にお堂と宿坊があるという設定)でおきる事件のお話で、なかなか興味深い。前作ぐらいからこのシリーズはジュブナイルとして捕らえるより表紙に書いてあるように本格推理小説の様相が強くなってきている。
 結構面白かったですよ。

No.16 6点 降魔弓事件- 太田忠司 2013/09/04 16:26
これは少年向きとしては結構悲劇的な内容です。作者は書きながら泣けてしまったとあとがきに記していますが、読後に印象が薄れる傾向の本シリーズの中ではまあ心に残るほうではあります。
 本書が発売されたときにすぐ読んだのですが、この本は何となく覚えていました。(他の俊介シリーズはほとんど忘却のかなた。新しく読み直しても全く忘れているので新鮮に楽しめました。記憶力の減退はよいこともあるのです。
 ただトリックや警察のずさんな調査(屋根に上ってちょっと調べれば分かることも分かることも探偵が調べるまで不明?、このトリックもちょっと調べれば絶対分かりそうなどなど)が目立って推理小説としてのできはやや悪いと思います。読後に印象が多少残ったということで評価はこの程度。

No.15 6点 天霧家事件- 太田忠司 2013/09/04 16:15
 このシリーズの主探偵の俊介君はでてこない。いつも脇役の野上探偵が今回の名探偵となって活躍する。このシリーズは太田氏にとって本格志向が強い霞田兄妹シリーズとジュブナイル志向のの新宿少年探偵団の間にあるものと思います。トリックはちゃんと入っており読みやすいのですが、探偵が子供と猫では子供向け風といった雰囲気は否めません。
 その点本作品は大人のみの登場で子供向きのところが少ないかもしれませんが、俊介君が出てこないとちょっと寂しい気もします。
 このシリーズは結構深刻な話もあるのですが読んで気分が悪いということはないので気軽に読めます。長さもちょうど良い。
 ところが軽すぎるため読んでいる間は楽しいのですが、読み終わるとほとんど何も残らない。時間つぶしには最適なのだが。

No.14 7点 玄武塔事件- 太田忠司 2013/08/25 18:17
ちょっと綾辻の館シリーズを思わせるようなお話です。ちゃんと本格嗜好ではあるのだが、俊介君の話なので軽くて読みやすくどうしても漫画チックなところはあります。まあそれがこのシリーズと作者の個性でもあるのですが。
 でだしはなかなかよいのです。結構わけありでおどろおどろしい雰囲気にもなりそうなのです。でもこのまま怪奇本格とはならずに終わります。
 話の内容からなら俊介君シリーズでないほうがもっとよかったのかも。結構などんでん返しもあることだし。 

No.13 7点 夜叉沼事件- 太田忠司 2013/08/18 08:35
 この小説が出てすぐ読んだのでもう20年ほどたってしまいました。今回再読しましたが内容はすっかり忘れていましたので楽しく読みました。
 俊介君シリーズは霞田兄妹シリーズとだいたい平行して出てきたので、当時こちらはなんとなくお子様向きのように思えたのですが(装丁も漫画チックでおじさんが読むには気恥ずかしい)、きちんとトリックも使ってあり軽めの本格物として十分通用する内容と思います。
 比較的つらい話なのですが読みやすく読後感も悪くありません。長さもちょうど良く一日でだいたい読めます。休日に読むにはちょうど良いと思います。
 このシリーズは本棚にすべてあるので読み直してみようかな。

No.12 6点 幻竜苑事件- 太田忠司 2013/08/03 07:58
 この作品もちゃんと本格嗜好にできているのですが、探偵がれいによって子供と猫なので(大人も端には出るが)かなり軽い感じとなってしまう。読みやすいしお話としてもそれなりなのだが、表装や挿絵がさらに漫画チックな雰囲気を盛り上げており、1作目の月光亭が結構よかったのにちょっと買うのをためらったことを思い出します(ずいぶん昔のことですが)。
 今回再読してみましたが、やっぱりそれなりに面白く一気に読破してしまいました。
 子供でも楽しめるというところはよいのですが、子供にはやや難しく大人には気恥ずかしいという若干中途半端な感じは否めません。
 本格物の入り口として読むにはなかなかよいのですが。

No.11 7点 奇談蒐集家- 太田忠司 2013/08/01 07:57
久しぶりに作者の最近作を読みました。太田氏は同郷の作家でもありひいきにしていたのですが、だんだん本格物から遠ざかっている印象がありました。ことに本格物もどきの幻想小説を読んだ際にはだまされた感がつよく、以後作者から遠ざかっていたのです。
 この作品は初めから幻想小説の要素があることを示した上での話しなので納得して読めました。
 昔のものに比べてかなり引き締まった表現となっており、作者の文章力の変化(多分進歩)を感じました。
 話の内容も興味深くいかにもといった雰囲気でよい。最後に全員見事に現実的判断が下されてしまうのでこれもまずまず爽快でした。最後のすべては奇談のためにで、もうひとひねりあるので帯にあるようにこの本は必ず初めから読まないといけませんね。

No.10 7点 月光亭事件- 太田忠司 2013/07/24 16:32
 20年ぶりぐらいに本書を再読しました。うーん思ったより本格している。メインのトリックもかなり大掛かりです。初回も今回も思ったのですが、探偵が子供とネコではねえ。当時の徳間書店版では漫画チックな表紙と挿絵がさらにお気軽主義的な雰囲気を守り立てている。
 おじさんが読むにはちょっと気恥ずかしい。
 作者は結構気に入っているようですが、本格派好きの方は初めから手に取らないのがこのサイトでの不評の原因なのかも。
 非常に読みやすくちゃんと密室トリック(しかもかなり大掛かり)もあって本来なら本格派が好みの読者にうける要素がたっぷりなのですがねえ。


 以下ネタバレ
 ちょっとだけ口うるさい読者としての付け足しをすると、じつはこのトリックの一部はほとんど成り立たない。やけどと電撃傷はちょっと詳しくみるとすぐ分かってしまうのです。鑑識が生体反応があるところとないところがあるまで調べるなら、このトリックはその時点で分かるのです。せっかく面白いものに口出しをして申し訳ないのですが、職業柄どうしても気になってしまうのです。

No.9 6点 男爵最後の事件- 太田忠司 2009/07/10 14:28
霞田シリーズの最終作という事でずいぶん期待して読んだ。このシリーズはいずれもストーリーや背景にこだわりのものが出てきてこれがまた楽しいのであるが、この作品にはそういったものはない。トリックもことになく淡々としたものだ。おなじみの人物がおなじみのように活躍して、多少のエンディング様のストーリーがあって、といったところか。ごひいきの作家の好みのシリーズの最後としては大分物足りない感じ。ちょっと残念。

No.8 7点 紫の悲劇- 太田忠司 2008/12/07 22:27
霞田兄妹シリーズを順次再読しているが、これは新しいバージョンの第1作。シリーズを短期間に順を追って読んでいくと作者の意図が何となく分かる。登場人物も怪しげだったり、志郎と対立する探偵もかなり変な人間で、良い意味でも悪い意味でも本格推理小説物の雰囲気が強くなってきている。太田忠司の小説は読みやすく読後感も良いのだがやや物足りないところがあったので、個人的にはこういった方向への転換は悪くないと思う。

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ひとこと
歴史ミステリーや、本格物が好きです。薀蓄も結構好き。変人が登場するのは嫌いではないが、冷たい人間が出てくるのは肌に合いません。外国ものは登場人物が理解不能であったり翻訳文が合わないことが多くあまり得意で...
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