皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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makomakoさん |
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平均点: 6.17点 | 書評数: 891件 |
No.331 | 7点 | メディアスターは最後に笑う- 水原秀策 | 2013/07/24 16:16 |
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お話としては結構面白いのだが、あまり好きな小説ではない。
主人公が気に入らないのです。傲岸不遜なうえに反省や思いやりなど一切なし。最後のほうになり何とか納得できるキャラも見せるのだが。こんなやつはいっそ犯人のほうが気分がよいぐらい。 |
No.330 | 7点 | パラダイス・ロスト- 柳広司 | 2013/07/21 09:39 |
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なかなか面白かった。実はわたしはこの作品が第3作とは知らずに購入してしまった。インターネット販売は気をつけないとこういったどじを踏むようです(わたしだけかもしれませんが)。でもぜんぜん読むのに不都合はありませんでした。
うーむ、これぐらい優秀な人間が何人もいたら日本は負けなかったかもね。若干現実感がないためか楽しく読めたことは確かです。 でもやっぱり最初の作品から読むべきなのでしょうね。早速購入します。 |
No.329 | 6点 | 猿の悲しみ- 樋口有介 | 2013/06/30 09:26 |
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お気に入りの樋口氏の新作ということで早速購入。相変わらず文章はテンポが良くなのだが、なんだか違和感がある。今までの氏の作品では話の合間に微妙な季節感のある描写があり、これがまた楽しいのだ。ところが本書ではそういった描写はあるのだが、自然に対する文章がすっかり抜けている。人工的なものの文のみではなんだか寂しい。登場人物の洒落た会話も以前の作よりはかなり低下している。
主人公のサエはヤンママで殺人の過去があり、とこれまた極端な設定ではあるが、氏にはホームレスの元刑事もあったりしたこともありそれほど違和感はない。作者の女性体験が豊富になるにつれ?女性に対する目はさらに冷えてきているようです。同世代の男として良く分かるけどもうちょっとやさしい女の子もいてほしいなあ。 それにしてもサエは強すぎるねえ。女でこれほど強い状態を維持するのなら毎日練習に励んでいないと無理そうですが--。まあ天才なのでしょう。 |
No.328 | 6点 | 崇峻天皇暗殺事件- 豊田有恒 | 2013/06/26 21:12 |
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この本はずいぶん前に読んだものなのだが余り印象に残っていない。たまたま整理していたら出てきたので再読してみた。
歴史推理は大好き。この小説の時代も興味を持っている。しかも意外な内容。どれをとっても非常に興味深いもののはずなのだが、もうひとつ面白みに欠ける。 聖徳太子が皇位につかなかった理由も推古天皇が女帝として始めて皇位についた理由もかなりすっきり説明されている。しかしわたしの頭のなかには陰気で要領の悪い聖徳太子像や恐ろしい女である推古天皇というのはどうしてもなじまないのです。 初めて読んだときはずいぶん若いころだったのだが、このある意味で驚くべき内容をほとんど忘れてしまうとは!。当時から頭が固かったのかなあ。 |
No.327 | 8点 | イニシエーションラブ- 乾くるみ | 2013/06/21 21:12 |
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「最後から2行目で本書は全く違った物語に変貌する」と裏書に書いてあるのだが、読んでみるとなかなか素敵な青春小説のよう。なんだか自分の青春時代に重なるようにも思えて実にほほえましい。これがどうなるのだろうと思いつつ後半になると何となく違和感を感じてきた。
確かに最後でびっくり。こんな風とは思わなかった。はっきり言って良く分からないまま終了。大矢氏の解説に再読のお供にとあったところを読み、再読してみるとこれはなかなかの話なのだ。 女は怖いねえ。 |
No.326 | 6点 | 十八の夏- 光原百合 | 2013/06/19 17:03 |
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日本推理作家協会賞の作品なのだが、あまり推理的要素はない。かといって帯にあるように恋愛小説部門第1位というほどのものでもないように思います。悪くはないのですが、そんなにもてはやされるほど良くもない。女性が読めばよいのかもしれない。
わたしには女性が若いころを描くものはどうも感情移入ができにくいところがあります。若い男からみると素敵な女性はいつも神秘でした。ところが女性が女性を描くとそういった神秘性は全くなく(当然ですが)、美人の描写があっても男をひきつける性的魅力が表現されていないことが多い。まあ同姓が描くのですからやむをえないのですが、女性主人公はどうも魅力に乏しくさらに男にはかけない鈍感さが目立ってしまうのです。 そういった感じがこの作品にもあり、主人公にさほど魅力を感じなかったので読んでいてさほど感銘を受けませんでした。 |
No.325 | 7点 | 追悼者- 折原一 | 2013/06/16 13:25 |
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折原一の作品は複雑で精緻な構造なものが多いため時に読むのがつらいということもあるのですが、この作品は誰でも知っている事件のようなストーリーのため入り込むのに苦労はありませんでした。読んでいくと興味深いが複雑でわたしなどは完全に作者の掌でもてあそばれた状態で、途中でぜんぜん違う結果を提示されているにもかかわらずその時点ではそうなのかと納得してしまった。
犯人など当然指摘できず、名前を指摘されてもえーと誰だったかなといった始末です。きっと読み返すとしっかり伏線が張ってあると思うのですが、もういちど読む気にはなれず、作者を信用して?これでよいということとしました。 でも読んでいて結構楽しかったのだから不思議なものです。 |
No.324 | 6点 | 京都祇園舞妓追走の殺人- 柏木圭一郎 | 2013/06/12 21:30 |
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このシリーズは結構書かれておりドラマ化もされているのですが、このサイトではまったく取り上げられていない。確かに旅情ミステリーとされるジャンルなので、本格物とすればちょっと弱いことは否めませんが、読みやすくちょっとした時間つぶしには悪くないと思います。
ダイイングメッセージなども出てくるが本格物として読むとちょっといけない気もする扱いかたではあります。 主人公に癖がなく、京都の雰囲気と料理番組風の内容が盛り込まれているので読んでいて楽しいといえば楽しい。 |
No.323 | 5点 | 最も遠い銀河- 白川道 | 2013/06/12 21:15 |
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文庫本4冊に渡る長編小説で作者は相当力を入れたことと思いますが、残念ながら私にははあまりよろしくありませんでした。出だしはなかなかよいのです。主人公も悪くありません。長編なのに読みやすくすらすら読めるのもよろしい。
ところがこの小説は根本的に天国への階段の焼き直しなのです。さらに悪いことには主人公を追い詰める退役警察官の執念が的外れなことです。これでは主人公を心から慕う女性の思いを踏みにじることとなってしまうのに命が尽きようとしているのに追い詰めていく姿は、共感が得られ難いでしょう。金が有るとは思えないのに北海道から東京へ何度も旅行して相当日数滞在して、被害者が(本当は被害者ではないのですが)最もやってほしくないことを暴き続ける姿はストーカー以外何ものでもない。 この小説の話の展開で相手のこともわかり真相も分かったら、それ以上追求しないのが人というものと思いますけども。 そういった内容なので「天国への階段」より評価が大幅に下がってしまいました。 |
No.322 | 6点 | 九マイルは遠すぎる- ハリイ・ケメルマン | 2013/05/19 11:03 |
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純粋な推理ゲームとして楽しむのなら、こな作品はできも良く実に楽しいこととなるので、このサイトでの評価が高いのはある面で当然なのでしょう。
1作ごとに巧妙なトリックが仕掛けられそれを探偵が鮮やかに解いていく、まさに本格物の真髄が楽しめます。 ただし物語としての小説を愛するものには単なる屁理屈の連続となってしまうといった面も大いに持っています。 わたしは安楽椅子探偵ものは決してキライではないのですが、本格物を読む際にも登場人物への感情移入や物語性を求めているようなのでこういった作品集はちょっと苦手です。はじめは感心するのですが、だんだん退屈になり最後の作品まで読むのが苦痛になってしまう。 パズルやトリックに興味がある方はお勧めですよ。 |
No.321 | 7点 | 珈琲店タレーランの事件簿2- 岡崎琢磨 | 2013/05/12 16:57 |
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前作では主人公に多少の違和感があったが、2作目となると雰囲気になれて読みやすくなったぶんよかったかな。
このシリーズは殺人のような物騒な話はなく日常の謎を解き明かしていくものなので、目を見張るようなトリックなどはないーーと思っていたら結構しっかりミスリードされ最後になってトリックに引っかかってしまったことを気づかされた。 軽い話で後味も悪くないのでちょっと読むにはよいのでは。この本だけで話は完結しているのですが、やはり1作目から読んだほうがより興味深いと思います。 |
No.320 | 8点 | 天国への階段- 白川道 | 2013/04/28 07:56 |
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感動した。久しぶりです。
生涯を誓った女性に裏切られ、財産も親も失った男が復讐しようとするお話がメインですが、それとともに生涯変わらない男と女の愚直なまでの生き方がすばらしく、殺伐たる話となるところを全く違った感動へ導いてくれる。 ことにヒロインの亜木子が素敵だ。近年このように心に残るヒロインに出会ったことはなかったなあ。 幼なじみの圭一と亜木子が何十年ぶりかに再開して「けいちゃん」「あきちゃん」と呼び合うシーンはほんとうに感動しました。 この小説は社会派ミステリーでもあるが素晴らしいラブストーリーでもあるのです。 長いお話ですが一気に読ませる力があります。 残念なのは後半の展開がかなりベタベタのお涙頂戴風にになってしまったこと。 以下ちょっとネタバレ エピローグはどうかなあ。ないほうがよいような気もするが。これでは主人公のために命を落とした部下が浮かばれないし、娘の深く傷つくのではないだろうか。親の勝手だよねこれって。読んだあとちょっとやりきれない。 |
No.319 | 7点 | しらみつぶしの時計- 法月綸太郎 | 2013/04/13 14:52 |
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どの作品もきちんと考え抜かれており、水準は高い。法月氏のいつものようにあとがきに作品に対する作者の考えや参考文献がのっている。内外の推理小説をよく読んで勉強家だなあと思う半分、こんなに色々と読むからそれに縛られて悩むんでしょうと同情もする。
この人の才能ならこんなことやっていないで思いついたらさっさと書いてくれればもっと面白いものがたくさんできそうなのだが。まあ作者の性格なのだからしかたがないか。 いずれも粒ぞろいの本格物だが、猫の巡礼はちょっと異質。これ結構面白かったです。 |
No.318 | 7点 | せどり男爵数奇譚- 梶山季之 | 2013/03/14 21:20 |
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なかなか面白い。発行当時の感覚と今は多少のずれがあることにちょっとビックリ。私にとってこれが発表されたのはちょうど大学時代から社会人となっていった時期なのだが、そういえばこんな感覚だったようにも。
中共やソ連といった言葉も久しぶりです。最近は大学時代は講義よりクラブとマージャンの時間が長かったような気もするのですが、最近ではマージャンもあまりやらなくなり、各話ごとのマージャンの役の名前もひょっとしたら若い人たちは分からないのかもしれない。 そういったことも含めてわたしとしては面白く読めました。 |
No.317 | 7点 | ビブリア古書堂の事件手帖4- 三上延 | 2013/03/05 21:40 |
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今回は江戸川乱歩のお話。いつものように連作ではなく一本の長編。相変わらず栞子さんは素敵で本に関してはとんでもなくすごい知識とインスピレーションをもつが、お母さんはさらにすごいようだ。
今回ようやく母親の智恵子さんがはっきりと登場となった。なかなか冷たく大変な人だが、それなりによいところもあるようです。 母娘の本に関する推理は相変わらずすごい。大輔と栞子さんのロマンスもようやく伸展してきて次回が楽しみ。大輔君そろそろバシッと決めてくださいね。 |
No.316 | 7点 | 閃光- 永瀬隼介 | 2013/03/02 17:10 |
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3億円事件は学生時代に経験した一大事件だった。その真相が、このようなものであったのかと思ってしまうほどの迫力と現実感がまず素晴らしい。ストーリーの展開も良く、描写されている登場人物があちこちに変化して普通は分かり難くなってしまいそうなのだが、ほとんど混乱なく読めてしまうのは作者の筆力なのでしょう。
ただ登場人物が好きでないなあ。警察はこんなに下品で若いのがちょっとしたことですぐ切れて先輩の胸倉をつかんで怒鳴りあげたりするのかなあ。 わたしは官憲が好きとはいえないが、これはちょっとひどい。これではやくざよりよっぽど悪そうではないか。 まあ犯人がある程度めぼしがついたところで、のっぴきならないお家の事情でうやむやになったというようなことは何となくありそうですがね。 |
No.315 | 7点 | 小説家の作り方- 野﨑まど | 2013/02/24 09:04 |
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この世で一番面白い小説を思いついたのだが、 書き方が分からないから教えてほしいというへんてこりんな出だしに、ライトノベルス風だし大丈夫?と心配しつつ読んでいったが、これが意外と面白い。
なるほど。そうくるか。 読みやすい文体だが、時折おじさんには意味不明な単語が出てくる。まあこのぐらいはよろしいでしょう。 本格物として読むと、理論が破綻したところがどうしても目立つのですが(うっとうしい読者で申し訳ない)、結構楽しいですよ。 表題だけ見て引っ込まないで読んでみては。 |
No.314 | 6点 | 妖異金瓶梅- 山田風太郎 | 2013/02/17 17:03 |
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題名からも作者からもひょっとして(しなくても)エロ?と思ったが評価が高そうなのでネット購入した。届いてビックリ。こんな厚い本とは思わなかった。ネットだと時に思わぬことがありますね。
読んでみると連作がつなぎ合わさっているようで、でも全体としてはきちんと一つの話としてできている。 初めあんまりエロくないのに拍子抜けしていたが、読み進むに従って結構な短編本格推理小説のつなぎ合わせで、しかも主人公の好色大金持ちの西門慶、お調子者の応伯爵、とんでもない妖婦金蓮が個性豊かに描かれており、だんだん面白くなっていく。 本格物として読むとちょっと甘いが、でもトリックも鏡を使ったり瞬間移動、ばらばら殺人など思ったより豊富でナカナカでした。 |
No.313 | 7点 | 伯林蝋人形館- 皆川博子 | 2013/02/03 10:05 |
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6人の作品とそれの解説といった体裁となっている。
それぞれが自分の視点で同じ登場人物、同じ時代の作品を書きその後に解説様の話がつづく。第1次大戦後の混乱したドイツが生々しく描かれ、このような無茶苦茶な時代はなかなか想像しがたいのだが、本当にこんな世界に生まれなくてよかったと実感させられる。 これでは世の中に絶望して自殺や享楽が横行し、極端な思想に走ろうというのもある程度理解できる。 それにしても複雑に内容が絡み合っており、わたしなどは作者に翻弄され続け登場人物が少ないにもかかわらず頭が混乱して内容を十分に把握したとは言いがたい。 解説の瀬川氏が年表を作ってくれており、それを読んでかなり混乱が収まったという次第です。 東西ドイツが統一されてしばらくしたころにドイツへ行き、西と東の違いをまざまざと感じたものでしたが、この小説の時代はそんな程度の混乱ではすまされない破壊と混乱が満ち満ちている。 暗く悲惨な時代を描いた秀作と思います。 |
No.312 | 7点 | 甲賀忍法帖- 山田風太郎 | 2013/01/27 10:00 |
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山田氏の忍法帖シリーズは漫画化、映画化もされてわたしたちの年代にはかなりポピュラーなものでした。忍者ものは大好きで伊賀の影丸、サスケ、赤影、カムイ、はては隠密剣士にいたるまで何でも読んで見て楽しんでいたことが思い出されます。
ことに忍法帖シリーズでは「くの一」が印象が強く(映画館でくの一の予告編を見たときの衝撃は忘れられません。)、忍法帖はエロイとの感じがずっと残っていたのですが、この本を読むとぜんぜんそんなことはなく面白く読みました。 登場人物が多いので記名力が衰え気味の頭ではどちらが伊賀でどちらが甲賀か途中で分からなくなることもありましたが、まあなんとかなりました。ちょっと登場人物が多すぎるかな。 最近の映画化では登場人物は大分少なくなってすっきりしているようですが。 |