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makomakoさん
平均点: 6.18点 書評数: 861件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.321 7点 珈琲店タレーランの事件簿2- 岡崎琢磨 2013/05/12 16:57
 前作では主人公に多少の違和感があったが、2作目となると雰囲気になれて読みやすくなったぶんよかったかな。
 このシリーズは殺人のような物騒な話はなく日常の謎を解き明かしていくものなので、目を見張るようなトリックなどはないーーと思っていたら結構しっかりミスリードされ最後になってトリックに引っかかってしまったことを気づかされた。
 軽い話で後味も悪くないのでちょっと読むにはよいのでは。この本だけで話は完結しているのですが、やはり1作目から読んだほうがより興味深いと思います。

No.320 8点 天国への階段- 白川道 2013/04/28 07:56
 感動した。久しぶりです。
 生涯を誓った女性に裏切られ、財産も親も失った男が復讐しようとするお話がメインですが、それとともに生涯変わらない男と女の愚直なまでの生き方がすばらしく、殺伐たる話となるところを全く違った感動へ導いてくれる。
 ことにヒロインの亜木子が素敵だ。近年このように心に残るヒロインに出会ったことはなかったなあ。
 幼なじみの圭一と亜木子が何十年ぶりかに再開して「けいちゃん」「あきちゃん」と呼び合うシーンはほんとうに感動しました。
 この小説は社会派ミステリーでもあるが素晴らしいラブストーリーでもあるのです。
 長いお話ですが一気に読ませる力があります。
 残念なのは後半の展開がかなりベタベタのお涙頂戴風にになってしまったこと。

以下ちょっとネタバレ
 エピローグはどうかなあ。ないほうがよいような気もするが。これでは主人公のために命を落とした部下が浮かばれないし、娘の深く傷つくのではないだろうか。親の勝手だよねこれって。読んだあとちょっとやりきれない。

No.319 7点 しらみつぶしの時計- 法月綸太郎 2013/04/13 14:52
 どの作品もきちんと考え抜かれており、水準は高い。法月氏のいつものようにあとがきに作品に対する作者の考えや参考文献がのっている。内外の推理小説をよく読んで勉強家だなあと思う半分、こんなに色々と読むからそれに縛られて悩むんでしょうと同情もする。
 この人の才能ならこんなことやっていないで思いついたらさっさと書いてくれればもっと面白いものがたくさんできそうなのだが。まあ作者の性格なのだからしかたがないか。
 いずれも粒ぞろいの本格物だが、猫の巡礼はちょっと異質。これ結構面白かったです。
 

No.318 7点 せどり男爵数奇譚- 梶山季之 2013/03/14 21:20
 なかなか面白い。発行当時の感覚と今は多少のずれがあることにちょっとビックリ。私にとってこれが発表されたのはちょうど大学時代から社会人となっていった時期なのだが、そういえばこんな感覚だったようにも。
 中共やソ連といった言葉も久しぶりです。最近は大学時代は講義よりクラブとマージャンの時間が長かったような気もするのですが、最近ではマージャンもあまりやらなくなり、各話ごとのマージャンの役の名前もひょっとしたら若い人たちは分からないのかもしれない。
 そういったことも含めてわたしとしては面白く読めました。

No.317 7点 ビブリア古書堂の事件手帖4- 三上延 2013/03/05 21:40
 今回は江戸川乱歩のお話。いつものように連作ではなく一本の長編。相変わらず栞子さんは素敵で本に関してはとんでもなくすごい知識とインスピレーションをもつが、お母さんはさらにすごいようだ。
 今回ようやく母親の智恵子さんがはっきりと登場となった。なかなか冷たく大変な人だが、それなりによいところもあるようです。
 母娘の本に関する推理は相変わらずすごい。大輔と栞子さんのロマンスもようやく伸展してきて次回が楽しみ。大輔君そろそろバシッと決めてくださいね。

No.316 7点 閃光- 永瀬隼介 2013/03/02 17:10
 3億円事件は学生時代に経験した一大事件だった。その真相が、このようなものであったのかと思ってしまうほどの迫力と現実感がまず素晴らしい。ストーリーの展開も良く、描写されている登場人物があちこちに変化して普通は分かり難くなってしまいそうなのだが、ほとんど混乱なく読めてしまうのは作者の筆力なのでしょう。
 ただ登場人物が好きでないなあ。警察はこんなに下品で若いのがちょっとしたことですぐ切れて先輩の胸倉をつかんで怒鳴りあげたりするのかなあ。 
 わたしは官憲が好きとはいえないが、これはちょっとひどい。これではやくざよりよっぽど悪そうではないか。
 まあ犯人がある程度めぼしがついたところで、のっぴきならないお家の事情でうやむやになったというようなことは何となくありそうですがね。

 

No.315 7点 小説家の作り方- 野崎まど 2013/02/24 09:04
この世で一番面白い小説を思いついたのだが、 書き方が分からないから教えてほしいというへんてこりんな出だしに、ライトノベルス風だし大丈夫?と心配しつつ読んでいったが、これが意外と面白い。
 なるほど。そうくるか。
 読みやすい文体だが、時折おじさんには意味不明な単語が出てくる。まあこのぐらいはよろしいでしょう。
 本格物として読むと、理論が破綻したところがどうしても目立つのですが(うっとうしい読者で申し訳ない)、結構楽しいですよ。
 表題だけ見て引っ込まないで読んでみては。
 

No.314 6点 妖異金瓶梅- 山田風太郎 2013/02/17 17:03
 題名からも作者からもひょっとして(しなくても)エロ?と思ったが評価が高そうなのでネット購入した。届いてビックリ。こんな厚い本とは思わなかった。ネットだと時に思わぬことがありますね。
 読んでみると連作がつなぎ合わさっているようで、でも全体としてはきちんと一つの話としてできている。
 初めあんまりエロくないのに拍子抜けしていたが、読み進むに従って結構な短編本格推理小説のつなぎ合わせで、しかも主人公の好色大金持ちの西門慶、お調子者の応伯爵、とんでもない妖婦金蓮が個性豊かに描かれており、だんだん面白くなっていく。
 本格物として読むとちょっと甘いが、でもトリックも鏡を使ったり瞬間移動、ばらばら殺人など思ったより豊富でナカナカでした。

No.313 7点 伯林蝋人形館- 皆川博子 2013/02/03 10:05
6人の作品とそれの解説といった体裁となっている。
 それぞれが自分の視点で同じ登場人物、同じ時代の作品を書きその後に解説様の話がつづく。第1次大戦後の混乱したドイツが生々しく描かれ、このような無茶苦茶な時代はなかなか想像しがたいのだが、本当にこんな世界に生まれなくてよかったと実感させられる。
 これでは世の中に絶望して自殺や享楽が横行し、極端な思想に走ろうというのもある程度理解できる。
 それにしても複雑に内容が絡み合っており、わたしなどは作者に翻弄され続け登場人物が少ないにもかかわらず頭が混乱して内容を十分に把握したとは言いがたい。
 解説の瀬川氏が年表を作ってくれており、それを読んでかなり混乱が収まったという次第です。
 東西ドイツが統一されてしばらくしたころにドイツへ行き、西と東の違いをまざまざと感じたものでしたが、この小説の時代はそんな程度の混乱ではすまされない破壊と混乱が満ち満ちている。
 暗く悲惨な時代を描いた秀作と思います。

No.312 7点 甲賀忍法帖- 山田風太郎 2013/01/27 10:00
 山田氏の忍法帖シリーズは漫画化、映画化もされてわたしたちの年代にはかなりポピュラーなものでした。忍者ものは大好きで伊賀の影丸、サスケ、赤影、カムイ、はては隠密剣士にいたるまで何でも読んで見て楽しんでいたことが思い出されます。
 ことに忍法帖シリーズでは「くの一」が印象が強く(映画館でくの一の予告編を見たときの衝撃は忘れられません。)、忍法帖はエロイとの感じがずっと残っていたのですが、この本を読むとぜんぜんそんなことはなく面白く読みました。
 登場人物が多いので記名力が衰え気味の頭ではどちらが伊賀でどちらが甲賀か途中で分からなくなることもありましたが、まあなんとかなりました。ちょっと登場人物が多すぎるかな。
 最近の映画化では登場人物は大分少なくなってすっきりしているようですが。

No.311 5点 ドグラ・マグラ- 夢野久作 2013/01/23 21:45
 ちょっと異端的な精神障害についての内容が多いので友人の精神科医や心理師などが読んだら喜ぶのかもしれないが、普通の人が読めばへんてこりんな内容に戸惑うことでしょう。
 帯に書いてあるように、読めばは精神に異常をきたすということはないと思いますが、こういったものを読んで面白ければ精神病に親和性が高くかなりやばいのかも。
 わたしは内容を完全に理解したとは思えませんが、少なくても読んで面白くはなかった。もっとすっきりした内容にできそうなのにわざと弄り回してごちゃごちゃにしたものを読まされた印象です。
 変な人が書いた、変な人向けのお話といったところかな。

No.310 5点 ナイン・テイラーズ- ドロシー・L・セイヤーズ 2013/01/13 10:10
ヨーロッパの田舎町には必ずといってよいほど教会があり、案内を請うとボランティア(たいていは爺さん)が由緒や美しさをとうとうと述べてくれる。もう十分ですと思ってもなかなか放してくれない。彼らにとっては本当に立派で誇るべきものなのであることは十分承知しているが、それでも話を聴くのはつらい。
 この小説はまさにこんなときに感じた雰囲気をたっぷりもっている。きっとイングランドの人たちが読めば激しく感動したことと思います。フランスとイングランドの違いなどを述べているところも興味深いのですが、いかんせん異教徒のわたしにとっては退屈で睡眠に最適。読み通すのに時間がかかりました。

No.309 6点 密室蒐集家- 大山誠一郎 2013/01/02 11:03
 ここまで密室もののトリックだけで作品を5作も作り上げたことに賞賛を惜しまない。がちがちの本格ものでトリックが何より楽しみといった嗜好の方ならまず間違いなくとても楽しめるでしょう。 わたしも本格ものが好きではあるのですが、昔読んだ本格もののトリック解説書のような感じで、はじめは感心するのですがそれだけではお話としてもう一つ。感動や雰囲気を味わうといったことにはならないのです。ああもったいない。雰囲気も十分にかもし出せそうな内容なのに。
 連作としないで長編小説を書いていただきたかったなあ。
 まあこういったトリックのみの内容としたところが、けれんみがなくてよいといった見方もありましょう。  
 7点としたいところなのですが、最後のダイイングメッセージがあまりにも無理(これだと被害者と犯人がこれほど分かり難いメッセージを瞬時に思いつき見破ったこととなります)なので1点減点しました。

No.308 6点 戻り川心中- 連城三紀彦 2012/12/31 09:31
 文学性とミステリーを高い次元で融合させた作品と思います。文章も美しく、それぞれの作ごとにミステリーとしての工夫も凝らされていて、このサイトでも多くの方の評価が高いようですが、残念ながらわたしの好みではありません。
 雰囲気や繊細な美しさに逆境や暗さが必要なことは承知しているつもりですが、この作品は根本的に「ねくら」なのです。
 読んでいてどうにもいらいらしてしまう。こんな雰囲気につかりたくはないのです。
 太宰治や水上勉が好きな方にはとてもよいのでしょうね。
 
 

No.307 2点 黒死館殺人事件- 小栗虫太郎 2012/12/28 21:27
 日本ミステリーの評価には必ず登場するマニア必読の書であるとのことなのだそうです。ああなんとも読みにくい。わたしは薀蓄が嫌いではないのだが、こんな異常な薀蓄の塊にはうんざりです。
 作者のやりたいことは何となくわかるのですが、感覚も作品のできも極めて異端。
 いってみれば新興宗教のようなもので、のめりこんでいる人にはとても素晴らしいのでしょうが、そうでない人間にとってはなんともばかばかしい。 
 かなり辛抱して読んだのだが、結局付き合うのは時間の無駄でした。好きならともかく無理に付き合うことはないでしょう。

No.306 8点 獄門島- 横溝正史 2012/12/22 20:02
 横溝氏の最高傑作と思います。学生時代(もはや40年前となってしまいました)にはじめて読んだときは見立て殺人などに対するどちらかといえば嫌悪感があり、あまり感心しませんでした。今回雑誌のミステリーランキング1位となっていたので、そんなにすごいものだったのかと古びた本を書庫から取り出して読んでみました。
 なんと面白いではないか。人間の好みは変わるもので長い年月の間にわたしも十分本格推理小説に毒されたせいか、被害者となる3姉妹にも見立て殺人の異様さにも違和感がなく、大変面白く読みました。
 映像などにも何度もなっておりそちらもみているので、だいたいの筋は覚えていてもなお面白く読めました。

No.305 7点 死の接吻- アイラ・レヴィン 2012/12/18 19:49
 なかなか面白かった。三姉妹が順番に登場して各々の特徴がきちんと書き分けられており、章がすすむにつれ違った興味を持てるよう物語の展開は素晴らしいと思います。
 物語の最初は犯人が分からないのだが、途中からは犯人がいかに追い詰められていくかを楽しむといった展開となる。そういった意味ではいわゆる本格推理小説とは異なったお話ではあるが、これはこれで興味深い。
 アメリカの女性はお世辞に弱い(どこの国でも同じか?)ようで、ハンサムな男が下調べを行って近づいたらみんなころりと陥落してしまった。羨ましいような情けないような。
 まあ世の中はこんなものなんでしょうね。
 翻訳ものがあまり好みとはいえない私が読んでも途中から止められなくなったのですから、外国ものが好きな方にはたまらないのでしょう。
 

No.304 6点 不良少女- 樋口有介 2012/12/11 23:02
 柚木草平シリーズの短編集。最初の「秋の手紙」は結論がどうもはっきりしない。連作集とのことなのであとで何とか分かるかと思ったが、話は全くつながっておらず結局不明のまま。ちょっともやもやしている。「薔薇虫」はまずまずだけどなんか文章がくどい感じとなったなあと思っていたら、つぎの「不良少女」からなんだかすっきりしてきた。あとがきをみたら作者が文体を変えたとのこと。ーーなるほど。
 それでも樋口氏の小説はどれを読んでも同じようだという評判は時々耳にする。登場人物の会話に独特のシャイと粋があるせいと思っていたが、この連作を読んで気づいたのだがちょっとした切れ目の先端には必ずといってよいほど花鳥風月の描写が入る。わたしは素敵だと思うのだが、いつもおんなじ様な描写と感じる人もいるのかも知れない。

No.303 8点 夏の口紅- 樋口有介 2012/12/06 21:30
 この作品は純粋なミステリーではない。一応謎は呈示され解決もするのであるが、本格もののような謎解きを楽しむものではない。氏独特の雰囲気と青春の空気を味わうといった趣の内容。
 解説によると樋口氏が一番書きたいものをというリクエストに答えた作品とのことである。なるほどと納得できるできばえ。
 読後感もよく素敵な小説です。

No.302 8点 幻の女- ウィリアム・アイリッシュ 2012/12/02 14:54
 翻訳ものが苦手なわたしですが、この作品はとても楽しめました。さすが不朽の名作といわれているだけのことはあると思います。翻訳文もこなれていてよかった。
 読み始めるとなかなか止められない。
 最初はこんなストーリーは分かりきった話になってしまうのではと心配?もしたのですが、どうしてどうして息をのむ展開となる。 古い友人のために一肌脱ぐといった男気のある人物が登場して、大いに感激。友はこうでなくては!とお話に没頭。
 ところがところが、とんでもない方向へ話が展開していく。真相はいかに--。
 結構なトリックなども使ってあるし、わたしなど全く結末がわかりませんでした(まあだいたいわからないんだけどね)。
 ただ、本格物として読むとなんだか「あとだしじゃんけん」みたいなところはあるのですが、良しとしましょう。
 幻の女の正体は多少肩透かしのような感じはしますがこんなものでよいのでしょう。
 とにかく最近読んだ翻訳小説の中で一番熱中したものでした。

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ひとこと
歴史ミステリーや、本格物が好きです。薀蓄も結構好き。変人が登場するのは嫌いではないが、冷たい人間が出てくるのは肌に合いません。外国ものは登場人物が理解不能であったり翻訳文が合わないことが多くあまり得意で...
好きな作家
鮎川哲也、山田隆夫、綾辻行人、法月綸太郎、高田崇史、伴野朗
採点傾向
平均点: 6.18点   採点数: 861件
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