皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
こうさん |
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平均点: 6.29点 | 書評数: 649件 |
No.329 | 6点 | 幽霊刑事- 有栖川有栖 | 2008/12/22 00:08 |
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ストーリーありきな作品だと思います。本格ミステリとしては微妙ですが最後まで読ませる力を感じます。
主人公とフィアンセの須磨子の間の言葉遊び、須磨子が銃の名手であることなどはこの作品を成立させるのには必要なプロットでありうまく考えているかな、と思います。 切れ味は薄いですがまあまあ楽しめました。 |
No.328 | 7点 | 朱色の研究- 有栖川有栖 | 2008/12/21 23:59 |
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ネタバレあります。
作風というかストーリーはしみじみとして良かったと思いますがミステリとしてはまあまあな印象でした。 動機については有栖川作品らしいのでそんなにひっかかりませんがビデオから得られる推理も証拠としては疑問です。犯人の行動(犯行ではなく)も良く見られる手ですがあまり好きではありません。 個人的には犯人が容疑者圏外になるためいったんつかまる、あるいは自分の容疑を濃厚にする、というのは良くある手ですし作品外読者に見せる手法としてはいいですがリアリティがなく個人的には不自然な感じがどうしてもしてしまい好きになれません。 全体としてもミステリとしての出来というより本格としての出来はそれほど評価できないかな、と思いますが作風は他の火村作品よりは気に入っています。 |
No.327 | 7点 | ダレカガナカニイル・・・- 井上夢人 | 2008/12/10 00:03 |
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ミステリ的な合理的解決が全くされていない作品で初期の岡島作品や「そして扉が閉ざされた」とは一線を画していてとても驚いた覚えがあります。まあ「クラインの壺」からそうだったのですが。ストーリーにはひきこまれましたし最後のSF的ジレンマ(?)もありだと思いましたしこういった作品もいいなと当時は思いました。
ただずっと本格からかなり離れてしまっているのが残念です。最近は作品そのものがめったにお目にかかれませんが昔の本格テイストの強い作品を味わいたいと思ってしまいます。 |
No.326 | 8点 | 木に登る犬- 日下圭介 | 2008/12/09 23:35 |
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社会派短編の名手と個人的に思っている日下圭介の短編集です。正直長編は「蝶たちは今・・・」一作しか読んだことがないのですが推理作家協会賞のアンソロジーで「木に登る犬」を読んでから短編集を読み始めましたが非常に質の高い作品集でした。
本格的作品ではないのですが、動機や謎の行動の意図が良く考えられており、心情のすれ違い、勘違い」で暗転するストーリーは非常に皮肉が効いています。登場人物の心理、独白を上手く描写するのもうまいですしまた手紙のやりとりを上手く使っている作品も多いです。 表題作が名前は一番有名でしょうが「緋色の記憶」「手紙」の手簡のみで構成されている作品が個人的には好きです。 社会派的短編集としては模範的な作品集だと思います。 |
No.325 | 6点 | 女相続人- 草野唯雄 | 2008/12/09 23:15 |
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折原一氏の推薦を見て数年前に読んだ作品です。不治の病の床にいる大富豪が関係者を集め、過去に捨てた娘を探し、遺産を譲りたいと話す。探索の結果、大富豪のいう特徴に合う娘が二人現れる、そしてこの探索の前後で殺人事件が連続して起こってゆく、という本当に一昔前にありがちなストーリーです。
二人現れれば当然一人は偽物のわけですがそれについては隠されておらず、偽物を仕立て上げる様や財産目当てで近づく男が暗躍する所が初めの段階で明かされます。 しかし連続殺人、そしてその周囲に謎の男、女が出現し行動が示され、最後にその目的、犯人、謎の人物の正体などが明らかにされてゆくスタイルですが正体がわからないこれらの人物の行動描写がいい雰囲気を出しており一連のストーリーは面白いものでした。 殺人トリックを見破るとかそういう見せ場はありませんが良くできていると思います。犯人ははっきりいって当てやすいですが推理で当てるというより予想で当てる作品かなと思います。ストーリー自体は古臭い内容ではありますが楽しめる作品だったと思います。 |
No.324 | 4点 | エイドリアン・メッセンジャーのリスト- フィリップ・マクドナルド | 2008/12/09 22:52 |
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書き出しは非常に魅力的です。作家エイドリアン・メッセンジャーが飛行機事故で死亡する。彼が生前残していたメモにはそれぞれつながりがないように見える10人の名前のリストとなっていたが警察が照会するとほとんどの人間が死んでおりまたエイドリアン・メッセンジャーも殺された可能性が出てきた、という内容で所謂ミッシングリンクものです。
解説でも触れられていますが普通だったらなぜこの10人がつながっているのか、真犯人は、動機は、という所がメインとなるのですがはっきりいってばからしいの一言です。 解説の瀬戸川猛資は「本格ミステリパロディ」と評価していますがこれが「迷路」や「鑢」を書いたフィリップマクドナルドか、と言える内容でした。 邦訳作品は比較的本格色が高い作品が選ばれていますが未訳作品はアイデアは面白くても趣向倒れの作品が多いようです。 とにかく死人も多すぎで他のゲスリンものと比較しての「パロディ」というのも全体的にわかるところもありますが日本人には恐らく笑えない作品でしょう。 発端というかアイデアは面白そうなのにもったいない作品でした。 |
No.323 | 7点 | 絆- 小杉健治 | 2008/12/09 22:35 |
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夫殺しの罪で妻が起訴され、凶器の購入、愛人の影など状況証拠が積み重なり本人も起訴事実を全面的に認めるが弁護士は無罪を信じ裁判を進めてゆく、というストーリーです。
当然無罪なら何で夫殺しの罪を進んで認めるのか、誰をかばっているのか、ということが焦点になりますが小杉作品らしいしみじみした仕上がりとなっています。 20年前の作品であり差別用語が使われているのは少し気になりますがこれは仕方ないでしょう。 本格作品ではなく社会派的法廷ミステリですがしみじみした味わいがあり気に入っています。 但しこの妻の考え、行動は最終的に説明されますが個人的には「そういう風に考えたり、行動したりするものかな」と疑問に感じますがそこは時代性が反映されているのかもしれません。本格的要素は正直ガードナーのものほども入っていませんがミステリとしてというより読み物として評価されるべき作家、作品かと思います。 |
No.322 | 8点 | ジェゼベルの死- クリスチアナ・ブランド | 2008/12/08 01:49 |
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帰還軍人のためのアトラクション劇の出演者3人には脅迫状が送られておりまず悪評高い中年女ジェゼベルが衆人監視の中バルコニーから転落死する。皆から恨まれていた女性であるが誰もが殺人実行不可能に見えて、という作品ですが一度容疑者が全員殺人を告白してそれがどんでん返されるところも上手いと思います。
被害者の一人ジェゼベルをとにかく醜悪に描いている割に作風が暗くならないのはブランドならではだと思います。 残念なのは名前のヒントは日本人にはわからない所ですがこれは仕方ないでしょう。 作品舞台、トリックは本格の見本の様な作品だと思います。クリスアナ・ブランドといえばこの作品が真っ先に挙がるのではないかと思います。個人的には「緑は危険」の方が作品世界としては気に入っていますが出来はこの作品の方が上でしょう。クイーン以降の良質本格としてお薦めできる作品、作家だと思います。 |
No.321 | 6点 | 殺しの双曲線- 西村京太郎 | 2008/12/08 01:32 |
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「そして誰もいなくなった」をモチーフとした「山荘もの」であり、双子トリックを堂々と使った意欲作で、水準作ですが書き方によってはもっと面白くなったのでは、と少し残念な気もします。時代からか動機が社会派的なのもマッチしていませんしこてこての本格らしく書いてくれれば、と個人的には思います。 |
No.320 | 6点 | オルファクトグラム- 井上夢人 | 2008/12/08 01:26 |
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読み物として楽しめるかがメインでミステリはうすいですが「特殊な嗅覚」の描写がうまくできていると思います。ミステリ度を考えれば作品は長いかなとも思いますが作品に引き込む力がうまく発揮されていると思います。サスペンスもうすく犯人もまたサイコミステリの犯人の様なキャラクターの筈ですがあまり怖さを感じません。しかし作品の主眼はそこではなくて
やはり「嗅覚」の話を楽しめればよいのかな、と思いました。 |
No.319 | 5点 | 英国庭園の謎- 有栖川有栖 | 2008/12/08 01:04 |
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クイズ、パズルの様な作品が多くさっと読める読みやすさは相変わらずですが全体としては低調だと思います。個人的には「竜胆紅一の疑惑」のロジックはまあまあ好きです。 |
No.318 | 7点 | 待ち伏せの森- フィリップ・ケリガン | 2008/12/04 00:17 |
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折原一推薦B級ミステリの一冊ですがスリラーの典型的作品といった趣きでした。
主人公マイクはテロリストの無差別攻撃で婚約者と妹を失い自分も重傷を負い心を閉ざしてしまう。しかし彼の証言で実行犯の一人が逮捕されたため残ったテロリストの一人に命を狙われて、というストーリーです。 冒険小説、スリラーとしては典型的でストーリーも結末も読み易いです。そういう意味では無難な作品ですし作品テーマがもう一世代前に比べたら新しいのかもしれません。個人的には楽しめた覚えがあります。 |
No.317 | 6点 | 暗い宿- 有栖川有栖 | 2008/12/04 00:04 |
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これも国名シリーズではありませんが悪くなかったです。「201号の災厄」のロジック(?)は割と好きです。アシモフの黒後家蜘蛛の会の「明白な要素」に少し通ずるところがあるかな、と読んだときに思った覚えがあります。「ホテル・ラフレシア」はミステリではないのかもしれませんが作品としてありかなと思います。
大がかりなトリックというよりは「一ひねりのみ」の作品が多いとは思いますが楽しめました。全体としての雰囲気が統一感があるのもいいと思います。ただ地味な作風ではありますが。 |
No.316 | 6点 | 白い兎が逃げる- 有栖川有栖 | 2008/12/03 23:57 |
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国名シリーズの一部より断然出来が良いと思いました。「不在の証明」も「地下室の処刑」も小さいロジックですが悪くないと思います。「比類のない神々しいような瞬間」はダイイングメッセージは相変わらず良くないと思います。ラストも勘のいい人でも察するのが難しく正直賞味期限切れかなと思います。表題作は個人的に苦手なアリバイトリック物でもありますが楽しめる仕上がりになっていたと思います。 |
No.315 | 6点 | 眠りの森- 東野圭吾 | 2008/12/03 23:49 |
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他の皆さん同様初期東野作品では屈指の甘さですが作品自体は比較的楽しめました。真相に対する伏線もかなりわかりやすく言葉の端々、行動で描写されており「学生街の殺人」に少し通ずるところがあるかな、と思います。
ただ事件が最初から起こったときに実際に登場人物がストーリー通り実際に動くものかどうかかなり疑問ではあります。犯行後の犯人の行動も正直納得できないですが読んだときは楽しめた覚えがあります。 |
No.314 | 6点 | 魔球- 東野圭吾 | 2008/12/03 23:40 |
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須田武志のキャラクター造形につきる作品だと思います。キャラクターが立っており作品の真相を納得させる力があると思いました。
ダイイングメッセージの「マキュウ」の下りはあまりいらないと思いますしスポーツミステリとしてのリアリティは少し低いかもしれませんが楽しめた覚えがあります。 |
No.313 | 5点 | とってもカルディア- 岡嶋二人 | 2008/12/03 23:34 |
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山本山シリーズの長編です。単なる短編のひきのばしになっておらず山本山の持ち味を生かした作風になっているのは流石です。(といってもちょっと長い中編といった趣きですが)
かなり真相は暗いのですが山本山コンビのため明るい作風となっており普通に楽しめる作品だと思います。 |
No.312 | 6点 | 夏、19歳の肖像- 島田荘司 | 2008/12/03 23:29 |
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島田荘司版青春ミステリです。数年前に再販されてから読んだのですが、もう少し若い時に読めば共感できたかもしれませんがあまりひきこまれなかった覚えがあります。占星術よりリアルタイムで読んでいるコアなファンには絶賛されると思いますが個人的にはまあまあでした。 |
No.311 | 8点 | ウィチャリー家の女- ロス・マクドナルド | 2008/11/25 23:25 |
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これもハードボイルドの体裁をとった本格ミステリだと思います。リュウアーチャーは探偵役としては殺人を未然に防ぐこともなく事が全部済んでから真相に気付くのはいつもどおりです。〇〇トリックもありますが、個人的には衝撃度は「さむけ」には及ばないかなと思います。登場人物がアーチャーに仕掛けるトリックが実際に通用するかというと疑問に感じる(アーチャーに通用しても読者に通用するとは限らないと思わせる)点はマイナスでしょうか。あとどの人物も相変わらずアーチャーに秘密を打ち明けますが「私立探偵」にここまでべらべらしゃべるものだろうか、という点も気になります。
新本格に手慣れる前に10代あたりで読むとトリックだけでも高得点だと思いますが現代ではそこまでの衝撃はないかもしれません。またロスマクを読みなれている方だと真相もある意味ワンパターンなので更に衝撃が薄いかもしれません。 |
No.310 | 5点 | 懐かしい殺人- ロバート・L・フィッシュ | 2008/11/25 23:09 |
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いわゆるユーモアミステリで「殺人同盟」シリーズ第一作目です。
三人の英国ミステリクラブ創立者は原稿の依頼もなく経済状態が逼迫していた。そこで新聞に広告を出し、殺人請負業を始める。すると老人たちは過去の自分たちの作品に使った単純なトリックで颯爽と殺人を行い成功くが最後に失敗を犯し、法廷にひっぱられていって、というストーリーで一応落ちもついてます。 海外のユーモアミステリでも日本人には合わない作品は多いと思いますがこの作者の作品はさっと読めると思います。 ミステリとしては大したことはないですしユーモアも皮肉の利いたユーモアなので合う合わないはあると思いますがまあまあな出来でした。 |