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こうさん
平均点: 6.29点 書評数: 649件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.409 7点 死だけが私の贈り物- 小泉喜美子 2009/12/06 20:50
 小泉喜美子の第五長編です。「コーネルウールリッチに捧ぐ」の献辞の言葉通りの雰囲気の復讐話が淡々とした筆致で描かれていますが正直展開は予想通りであり物足りない印象もあります。最終章で描かれる真相はひとひねりありますがページ配分で予測がついてしまうのが難点です。真相も納得いきかねるところもありますが同じ時代の作家とは違う洒落た雰囲気の作品で楽しめました。

No.408 7点 漂流者- 折原一 2009/11/14 02:23
 チャールズ・ウィリアムズの「絶海の訪問者」と洋画の「シーラ号の謎」をモチーフとしていると思われる漂流物で更に「そして誰もいなくなった」のパロディでもある意欲作だったと思います。ただ叙述トリック物としてはそれ以前の作品ほど特長は出ていないとは思います。「絶海の訪問者」はサスペンス色が強い作品ですが同じようなシチュエーションでも折原一が書くとこうも違うのが面白いです。
 漂流物は日本ではこの作品と泡坂妻夫の「迷蝶の島」がお気に入りです。

No.407 7点 冤罪者- 折原一 2009/11/14 02:13
 フェリース・ピカーノの「透きとおった部屋」の本歌取りをしていると思われる作品ですが本家より冤罪者の方がひねりがあり楽しめた覚えがありますがこの作品あたりから叙述作品としての衝撃は落ちてきた気がします。折原氏のガイド本でのお薦めを読むと過去の海外作品を初期作はうまくモチーフ、ヒントにしていたのだろうな、と思います。
 数年前の「タイムカプセル」あたりまで読んでいましたが2000年代に入って低調なのが残念です。

No.406 7点 過ぎ行く風はみどり色- 倉知淳 2009/11/09 01:00
 見せ場のトリックは既読感があるものでさほど驚きはありませんでしたが読み心地の良い作品を読ませてもらった感じがして満足です。
 ただ個人的には少し長いかなと思いました。

No.405 6点 密室殺人ゲーム2.0- 歌野晶午 2009/11/09 00:55
 先にteddhiriさんが書かれている通りで殺人の醜悪さは前作以上ですが面白みは前作より半減していると思います。
 前作はアイデア一本勝ちでしたが今作は前作ありきな内容でもあり、また衝撃がどうしても薄いです。
 前作ラストの解明もされていますがこの内容ならこのシリーズはこれで終わりでいいかな、と私も思いました。 

No.404 8点 密室殺人ゲーム王手飛車取り- 歌野晶午 2009/11/09 00:48
各登場人物の会話は鼻につきますしトリックも特別斬新とも思わなかったですし、書いている内容は腹立たしく感じてもおかしくないのですが個人的には楽しめました。ラストの部分は少し不消化ぎみですが。
 10年前なら荒唐無稽に思われることですが現代だと本当に(ここまで凝らなければ)ありうるかなあと感じてしまうのが少しこわいです。

No.403 9点 ベスト・ミステリ論18- 評論・エッセイ 2009/11/03 23:28
 たまたま初版時に購入していたのですが臣さん同様ですがなんといっても若島正氏の「乱視読者の視点」から「そして誰もいなくなった」を扱った評論が入っているのが魅力です。初読時目からうろこが落ちました。要するに「この作品では犯人を含めた全員の独白があるのに何故読者に犯人が見破れないか」という内容の評論ですが素晴らしい内容です。「アクロイド」と「そして誰もいなくなった」のトリック、犯人に言及していますがこれらの作品を読んだ後に読む価値のある評論です。若島氏の「乱視読者の帰還」にも収録されていますが「乱視読者の帰還」はかなりマニアックな内容ですのでこの本に収録されている評論だけでも十分おつりがくると思います。
 個人的には都筑道夫氏の「黄色い部屋はいかに改装されたか? 」の抜粋評論とパトリック・クェンティンを扱った法月綸太郎氏の評論も気に入っていますが「黄色い部屋はいかに改装されたか? 」は評論集そのものをお薦めします。収録部分で横溝正史の「獄門島」と「蝶々殺人事件」のトリックに触れられていますのでできればこれらの作品を読んでからの方がいいです。また法月氏の評論はパトリック・クェンティンの「わが子は殺人者」の文庫解説そのままです。それ以外にも坂口安吾の評論なども読めて貴重な評論集でした。

No.402 9点 本格ミステリ・フラッシュバック- 事典・ガイド 2009/11/03 23:09
 本格ミステリばかりではないですが本格ミステリ不毛時代の作家たちの作品が多数紹介されていてとても重宝しています。
 この時代の乱歩賞や推理作家協会賞受賞作家の大多数が受賞作以外知らないケースが多かったので今後読み進めてゆきたいと思います。個人的には梶龍雄や小泉喜美子、多岐川恭といった作者の作品に特に注目しています。
 新本格以降からの読者でも過去の埋もれた傑作群の落ち穂拾いには最適なガイド本だと思います。ページをとっていない作品でも作者の紹介のところにも作品の紹介がありお薦めです。

No.401 6点 またたかない星- 小泉喜美子 2009/11/03 23:01
 小泉作品は三部作といえる「弁護側の証人」「ダイナマイト円舞曲」「血の季節」以外は全く知らなかったのですがこれも本格ミステリ・フラッシュバックで存在を知った短編集です。
 独創的なトリックがあるわけではありませんが発表年代を考えるとこの作品も「西洋風ミステリ」という表現がぴったりなテイストで洒落た作風だと思います。
 ミステリとは言えないかもしれないですが「子供の情景」が一番気に入りました。短編集は10数冊あるようですので他作品も手にとってみたくなりました。

No.400 5点 リンガラ・コード- ウォーレン・キーファー 2009/11/03 22:51
 ガイド本の折原一氏の推薦で以前読んだ本です。コンゴ共和国を舞台にCIA職員であるヴァーノンを主人公としたスパイ小説です。
 一言でいえば「折原一」が好きそうな作品でした。この手の小説ではおそらく珍しいであろうトリックが使われていますが明らかな前例が私の知る限り2作品ほどあるのとその2作品ほどトリックが効果的に使われていないと感じました。またあまりメインストーリーもひかれない作品でした。ずいぶん前に読んだのですが再読しようとは思いません。現代のしかも日本人には通用しない作品かなあと思いますがこのトリックを読んだことのない方なら見つけたら読んでみてもいいかもしれません。(ただし前例の2作品の方が面白いとは思います)

No.399 6点 ふりむけば霧- 笹沢左保 2009/11/03 22:41
 18歳で殺人を犯した女性が主人公であと1年半で時効というところで殺した女性の夫と出会ったが彼は警察にはつき出さず主人公を匿いといったストーリーです。
 これも本格ミステリフラッシュバックの解説で期待して読んだのですが性描写がくどく感じました。またストーリーの展開が予想されやすい展開で現代では驚けない作品かと思います。真相が錯覚を利用したかなりご都合主義なのも気になりました。

No.398 5点 透明な季節- 梶龍雄 2009/11/03 22:32
  第二次大戦中の15歳の男子中学生を主人公とした青春ミステリといった趣きの作品です。配属将校の射殺事件とその妻への主人公の思慕がメインで進んでゆくストーリーでした。
 かなり前に乱歩賞全集で読んだのですが「海を見ないで陸を見よう 」を読んだ時はこの作品の続編であることに全く気付きませんでした。
 舞台が大戦中とはいえ主人公が若すぎて作品のせいではないのですが感情移入できませんでした。内容も後の作品ほど伏線も効いていませんし面白みに欠けた覚えがあります。 

No.397 4点 レーン最後の事件- エラリイ・クイーン 2009/11/02 23:13
 作者はもともとこの作品のラストまで考え前作よりペイシェンスを登場させたのでしょうが作品自体はあまり楽しめなかった覚えがあります。中学生の時読んだので犯人当て以外に興味がなかったせいもありますがやはりラストを含めた内容はカタルシスにかけますし20年経っても読み返す気にはなれない作品です。

No.396 7点 Zの悲劇- エラリイ・クイーン 2009/11/02 23:08
 X、Yの影に隠れがちですが終盤の消去法による推理は迫力がありました。ただペイシェンスが好きになれないのと3人称の文章でないためかあまりストーリーに引き込まれなかった覚えがあります。作品自体はロジックも素晴らしいと思います。

No.395 5点 運命の八分休符- 連城三紀彦 2009/10/31 23:20
 貧乏で見かけはさえない主人公田沢軍平が探偵役を務め各作品毎のヒロインとのサイドストーリーを絡めた珍しい短編集です。蒸発した夫の帰りを待つ妻を描いた「紙の鳥は青ざめて」が気に入っています。ストーリーの反転はいかにも連城作品らしいですが各トリックはさほど面白みはなく「戻り川心中」の様な世界を期待する方には拍子抜けするほど軽いストーリーです。
 個人的にはまあまあ楽しめましたがやはりユーモアミステリ調は作者の本領ではなさそうです。

No.394 8点 リア王密室に死す- 梶龍雄 2009/10/31 23:06
 昭和23年三高の学生が密室で殺される事件が起こり合い鍵を持っていた同室者(主人公)が容疑者として疑われ、学友たちが容疑を晴らそうとする、というストーリーです。
 この作品も龍神池の小さな死体と同様真相が2重構造になっていて最後に一転するところはいいのですが最後の真相はあまり気持ちのいいものではありませんでした。ただ数々の伏線の回収はこの作品でも見事でありメインストーリーはこれまで読んだ作品の中では一番気に入っています。ただ本格として推理の余地があるかは何とも言えませんが。
 「本格ミステリ・フラッシュバック」を見るまで乱歩賞受賞作の「透明な季節」しか知らなかったのですが社会派全盛時代にこのようなプロット、伏線の美学の様な作品群を発表されていたのは正直驚きです。他作品も読み進めてゆきたいと思わせる作品でした。

No.393 8点 龍神池の小さな死体- 梶龍雄 2009/10/31 22:53
 建築工学科教授である主人公の母親が「20年以上前池で溺れて死んだ主人公の弟が本当は殺された」と臨終間際に残して死亡、主人公が弟の死亡事件を捜査してゆくストーリーです。
 数々の伏線の回収は見事ですがラストの部分がとってつけた感じがして不満なのと真犯人に動かされる共犯者がいるのですがその共犯者の使われ方も不満です。伏線も合理的に回収されているかといえばそうでもない気がします。またどうしてもCC物以外の素人探偵ものは警察が無能に描かれてしまいその点は好きにはなれません。ただこういう作品を読ませてもらうだけでも満足できる作品でした。
真相が更に一転するのは「リア王密室に死す」同様ですが個人的にはリア王の方が好きです。

No.392 7点 七人の証人- 西村京太郎 2009/10/31 22:36
 面白い趣向でした。過去の殺人事件の全容が明らかにされてゆくところは面白いものでしたがあそこまで証人があてにならないことが実際にあるのかちょっと疑問に思いました。
 また島での殺人事件は正直余計だったかなあと思います。なくてもストーリーは成立すると思いますしこちらは非常に杜撰ですのでもったいない気がします。

No.391 3点 裁かれた女- 赤川次郎 2009/10/31 22:31
初期作の「招かれた女」の15年後を描いた続編です。前作が気に入っていたので読んでみました。「招かれた女」についてはほぼネタバレされているのでもし読まれるなら順番に読むことをお薦めします。
 雰囲気は割と似ており嫌いではないのですが本筋と関係ない登場人物、本筋と関係ない殺人事件などもあり恐らく読者を混乱させる目的なのでしょうがあまり効果を上げていません。
 また主人公がどうしても好きになれないので結末も不満です。前作を読まれた方にはわかると思いますが前作の遺産を食いつぶした様な結果だと思います。

No.390 5点 どんでん返し- 笹沢左保 2009/10/31 22:17
 全編二人の登場人物の会話のみで構成された異色短編集ということで読んでみました。全編殺人事件を扱い、全編どんでん返しがある作品集ですが肝心のどんでん返しがそれほどの切れ味がなく残念でした。井上夢人の「もつれっぱなし」もそうですが趣向はともかくストーリーを面白くするのは難しいようです。

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こうさん
ひとこと
 私の採点で10点は単なる好みです。10~20年前の初読時の印象で不当に高いのもありますが気にしないでください。トリックものは古臭くても昔初めて触れたトリックだったら高得点の傾向が高いです。
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好きな作家
泡坂妻夫、有栖川有栖、東野圭吾、岡島二人、梶龍雄 
採点傾向
平均点: 6.29点   採点数: 649件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(60)
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岡嶋二人(24)
折原一(22)
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石持浅海(17)
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