皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ サスペンス ] サタデー・ゲーム |
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ブラウン・メッグズ | 出版月: 1977年07月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 2件 |
![]() 早川書房 1977年07月 |
No.2 | 6点 | 人並由真 | 2025/10/07 05:21 |
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(ネタバレなし)
1970年代前半、その年の4月。カリフォルニア州はパサディナにある高級住宅地リンダ・ヴィスタでビニール袋に包まれて放置された、女性の全裸死体が見つかる。リンダ・ヴィスタでは宇宙計画に何年も尽力していたが、政府の方針で計画を中断させられた科学者たちが不満をくすぶらせながら、週末のテニスゲームで鬱憤を晴らしていた。パサディナ署の敏腕警部補で多彩な趣味人の40歳の美男アンソン・フレールは、恋人の女医であるテディ・ホーロヴィッツと男女の関係を楽しんでいたが、上司のフリッツ・コッケ警部の電話でこの事件の捜査を命じられるが。 1974年のアメリカ作品。 空さんのおっしゃる通り、全然パズラーではない。だがその作品の狙いは、20世紀終盤からの国内の新本格に一脈通じるところがあるし、もっと遡れば実は意外に王道ではある。 ただまあ、1970年代の半ばという欧米ミステリ界の時勢を考えるなら、なんとなくこれにスキを突かれた! という声もそれなりにあったであろうことは想像に難くない。いやさすがに2025年に初めて本書を手にした自分は、読んでる最中で(そのマジメでフェアな書き方も踏まえて)、たぶん……と、察しがつきましたが。 猥雑な風俗ミステリっぽい作風、またはそんな感じの物語の仕様が、一種のめくらましになってる? のであろう。そのスタイルは、この作品の前後にアメリカで刊行されたまた別の作品を想起させた。 そっちは少年時代に読んで、ラストのどんでん返しで衝撃を受け、その後再読はしてないが、今でも自分の中で大きな位置を占めるマイベスト作品のひとつである。 だからもしかしたら本書も、ポケミス翻訳刊行当時の1977年(70年代終盤)のリアルタイムで読んでいたら、自分のなかでそれなりの心の殿堂入りをしていたかもしれない。 本書の邦訳を刊行当時にリアルタイム(ほぼリアルタイム)で読んで、それで相応の感興を素で覚えた、という人がもしいたら、その時の記憶のご述懐を伺いたいもんである。 |
No.1 | 6点 | 空 | 2021/05/08 16:18 |
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「本格派の新しい衝撃!」というのが、ポケミスの帯の宣伝文句だったのですが、これは非常に疑問です。
全体の構成と文章は、登場人物たちの意識の流れを、各人の立場から細かく分けて追っていったもので、正直なところ、読んでいて本格派どころかミステリという感じさえあまりしないのです。「四月のある土曜日午前八時前」から始まり、ラストはその日の夜、ほんの半日間の出来事です。その中で登場人物たちが過去を振り返ったりもしていくのですが、それもほとんどは前日の夜から早朝までのことです。 テニスをしていた4人が警察の事情聴取で深夜のパーティの顛末を語った段階で、結末がどうなるかは見当がつきましたが、真相の証拠とその提示は実にあっけないもので、これでは「謎解き」になりません。一応最初の方に伏線は張ってあるのですが。奇妙な雰囲気を楽しむ心理小説だと考えた方がいいでしょう。 |