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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
訣別の弔鐘
アマチュア騎手リチャード・グレアム
ジョン・ウェルカム 出版月: 2004年12月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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論創社
2004年12月

No.1 5点 mini 2014/06/05 09:56
* 私的読書テーマ、生誕100周年作家を漁る、第4弾はジョン・ウェルカムだ
アンソロジー収録短編を除いて唯一の長編邦訳作が「訣別の弔鐘」で、本格派しか興味の無い読者にとっては余計な労力に思えるだろうが、論創社は時々非本格派作品を混ぜてバランスを取っているのが私的には好ましい、この作は叢書の初期に刊行されたものだが非本格の中では掘り出し物の1冊だ、諜報スリラー系の冒険小説である

ジョン・ウェルカムは論創社が出さなかったら私も知らなかった作家だが、本国では競馬スリラーの書き手としてそれなりに存在感が有るようで、ディック・フランシスの友人だったらしい
シリーズの主役が諜報活動も請け負うアマチュア騎手というのを見ても、さながらもう1人のディック・フランシスである
この「訣別の弔鐘」、読み出したら止まらないリーダビリティが有り、短めの長編ながら起承転結完璧に構成された隙も欠点も無い冒険小説で私もあっという間に読み終えた
とにかく読んでると楽しい楽しい、こんな面白く手に汗握る冒険小説も久し振りだ
さてここで書評閲覧者から疑問が出よう、そんなに面白いのなら何で中途半端な採点なんだと
はいごもっとも、実は欠点の無いのが唯一の欠点なのだ
再三言わせていただくが私はそのジャンルの中で、”いかにも”的なあまりに王道過ぎるものを好まない読者なのだ、例えば本格派だと様式に則った”館もの”やクローズドサークルなどは大嫌いなのだ
「訣別の弔鐘」は冒険小説としてあまりに完璧なのが逆に気に入らない、登場人物なども、宿命のライバル、曰く有る美女にもう1人の第三者的美女、ちょっと怪しい表面上の味方、荒くれ者の当面の敵、現場ではあまり頼りにならない仕事上のボス
もう完璧な人物配置と言って良く、冒険小説の作法に則った王道な冒険小説で、悪く言えばオーソドックス過ぎで良く出来過ぎているのだ、この作家ならではの尖った部分や個性が無い
私としては、いくつか欠点が有ったり途中が多少中弛みでもいいから、何か他の作家には無い独自性が欲しいんだよな、例えば同じ冒険小説でもウィルバー・スミス「虎の眼」などは単にリーダビリティが高いだけじゃなくて個性も有った
ジョン・ウェルカムの場合はアマチュア騎手を主人公に据えながら、主人公が能天気でフランシスの主人公みたいな陰影が足りず、個性でフランシスには遠く及ばない
特にこの「訣別の弔鐘」は主人公がアマチュア騎手の割には競馬が全く絡んでこないので、シリーズにそういう方面の作が有るのならその手のを選んで欲しかったなぁ


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ジョン・ウェルカム
2004年12月
訣別の弔鐘
平均:5.00 / 書評数:1