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[ 短編集(分類不能) ] 零人 大坪砂男全集4 |
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大坪砂男 | 出版月: 2013年07月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 2件 |
東京創元社 2013年07月 |
No.2 | 5点 | クリスティ再読 | 2022/02/06 10:27 |
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創元砂男全集も4巻で終わり。この巻は幻想篇として「零人」をトップに据えて、あとは掌編のコント、ジュブネイルのSF。これで本の約6割。あとの4割は大坪の雑文と山村正夫などによる大坪と探偵文壇のエピソードの回顧談。
だから、本としてはパッとしない。評者は「零人」はそれほどいいとは思わない...それでも「天狗」っぽい香りはあるけどもね。どっちか言うと「瓶詰の地獄」みたいな味の戦前的秘境小説なのかなあ。 とくにこの人の「作りモノめいた」悪い面が出てしまっている作品が多いとも思うけども、逆に「コント・コントン」とかSFは星新一に近い味わいを感じるところもある。なるほど佐藤春夫が「描写ができない」と大坪の才を裁断した話があるけども、キマジメで外界に目を向ける余裕のなさみたいなものが、ハマった時にはツヨいけど...という不器用さにもつながっているようにも思う。いや「作りモノ」を作ることにかけては、発想の豊かさが強みなんだけども、それを「作品」にするのがどうも下手な印象がある。 だからかこの人、雑文がつまらない。「スタイリッシュ」の引き算ではなくて、雑文は足し算だからだろう。それでも推理小説の「謎解き」を奇術と比較して むしろ、このメカニズム公開という近代性あるが故に、その成功した時の効果こそ期して待つべきだろうではないか。 と、「πの文学」と比喩してみせたのに、評者同感するところがある。πは 22/7 やら 355/113 やら分数でよく近似できるから、論理で「割り切れた」みたいに見えることもあるけども、それでも「割り切れた」わけではなくて、その割り切れる/割り切れないのあわいに一番の魅力があるのではなかろうか。 |
No.1 | 5点 | kanamori | 2013/09/30 22:14 |
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創元推理文庫版全集の最終巻。幻想小説編、コント編、SF編の三部構成に加えて、250ページに及ぶ著者に関する随筆・雑文などの資料が付されている。
伊豆山中の植物幻想にドッペルゲンガーを絡めた初期の幻想譚「零人」が目玉作品ということになるが、後期作品は凡作ばかりという評判どおり、他の作品にはこれといったものがなかったのが残念。 強いて挙げれば、アシモフのロボット工学三原則を前提に不可能状況下の殺人を扱ったSFミステリ「ロボット殺人事件」が大坪作品とは思えない本格モノという点で目を引いた。 むしろ、大坪に関わるありとあらゆる文献を集めた資料編の充実ぶりがすごい。とくに色川武大氏のエッセイは短編小説かと思わせる秀逸さだ。いつもながら、編者・日下三蔵氏の丁寧な仕事ぶりに敬意を表したい。 (「魔法少女まどか☆マギカ」のアニメ脚本家・虚淵玄氏が大坪のお孫さんという情報にはびっくりした)。 |