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[ ハードボイルド ]
裏切りの街
ポール・ケイン 出版月: 1989年03月 平均: 8.50点 書評数: 2件

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河出書房新社
1989年03月

No.2 8点 2024/06/10 20:02
訳者あとがきの中で、チャンドラーの言葉「超ハードボイルド文体」の「超」には、「ウルトラ」とフリガナがしてあったんですね。原文では "ultra hard-boiled manner"、むしろ「極限的ハードボイルド様式」と訳したいところです。
1932年に「ブラック・マスク」に分載された後、翌年に単行本出版ですから、『影なき男』の前年。しかしハメットの長編のような私立探偵小説系統ではありません。一応巻き込まれ型の犯罪小説で、様々な人物が絡み合い、話がどう転んでいくのか、見当がつきません。
あとがきに、「原題のFast Oneは、ペテン、詐欺、裏切りといった意味だが、〝すばやいやつ〟の意味もこめられている」とされていますが、どうなんでしょう。"pull a fast one" は「だます」の意味ですが。fast には、速い、放蕩な、忠実な、等の意味があり、それらの意味に当てはまりそうな登場人物たちが登場します。

No.1 9点 kanamori 2014/02/16 22:33
東部からロサンジェルスにやってきた流れ者のジェリー・ケルズは、ある組織のボスから賭博船の用心棒にと頼まれる。しかし一匹狼を貫くケルズは断り、やがて政界とつながる組織間の陰謀と抗争劇に巻き込まれることになる-------。

レイモンド・チャンドラーが”超ハードボイルド”と評した幻の古典クライム・ノヴェル。ダシール・ハメットのブレイクに少し遅れて同じ「ブラックマスク」誌に掲載された作者のデヴュー作品で、唯一の長編でもある。
”ギャング・エイジ”と呼ばれる不況と混乱の’30年代のロスを舞台に、主人公ケルズが複数のシンジケートを相手に、ハードかつしたたかに戦い、翻弄する様を描く。
本書でまず一番に感心したのはプロットの完成度の高さ。物語が進むにつれ次々と新しい人物が登場するが、混乱せずストーリーを楽しめる。賭博船やボクシングの試合会場、離島にある大組織のボスの隠れ家など、印象に残るシーンも多く、ストーリーが起伏に富んで面白く読めた。ラストも冷徹ながら感動的。
書かれた時代を考慮にいれれば、ハードボイルド小説の隠れた名作といえるのではないかと思う。


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ポール・ケイン
2022年12月
七つの裏切り
平均:7.00 / 書評数:2
1989年03月
裏切りの街
平均:8.50 / 書評数:2