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[ サスペンス ]
父からの手紙
小杉健治 出版月: 2003年07月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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NHK出版
2003年07月

光文社
2006年03月

No.2 8点 斎藤警部 2026/06/20 22:43
言いたい事が多すぎて、何からどう纏めてよいのか分からないのです。

自分より年上の( 長 い 中 略 )って、一体どういう気持ちなんだろう。 まして、そんな特殊な状況下に置かれながら。
あ、読み返して気付いたけど、上記については、冒頭の方に切なく優しい伏線が織り込まれているんですね。

“夢” とは何だ。。 その答えは、序盤でもしやと思い、中盤でほぼ確信した通りだったが、ここまで心を揺さぶられる事になるとは予想外。 本作を貫く大トリックがあればこその感動。

「その信頼に応えなければ、私たちは地獄に落ちます」

ストーリー1
主役は若い女性。 父の親友である零細企業経営者を助ける目的で、彼女は、好きでもない、一回りも年上の、確信犯で女癖の悪い経営コンサルタントと婚約中である。 ある日、彼の古い愛人と、彼自身の死体が相次いで発見される。 あまつさえ、結婚に反対していた彼女の弟が殺人容疑者として逮捕されてしまう。
彼女と弟には、毎年の誕生日に一度も欠かさず、母と離婚して行方知れずの父から手紙が届いている。

ストーリー2
主役は、 ’まだ’ 若い男性。 自らの殺人ホワイダニット核心が記憶から欠落したまま9年も服役し、出所したばかりである。 彼には恋人がいたが、去ってしまった様だ。 殺した相手は恐喝を嗜む悪徳警官。 殺しの背景には、腹違いの兄の、零細会社の経営難と妻の不徳とを苦に図ったと見られる焼身自殺事件(と、ある謎と疑惑と)が深く関与している様だ。 悪徳警官が最後に放った一言がトリガーになった事は憶えているのだが。。 ホワッツセッド興味の牽引力は強い。
彼は、恋人が離れて行った哀しみと共に、兄亡き後の義姉へのこだわりにも苛まれている。

「それはどんな障害があってもやり遂げなければならないことでした」

上述の二つのストーリー、最初はお互い知らんぷり、途上から探り合い、やがて、或る核心的部分のみ “非対称で” ぶつかり合う、カットバックで進行。 一度ぶつかって、再び離れて、別の場所でまたぶつかり合う。 そこまで全て、オフホワイトの大きなフィナーレへの御膳立てでしかなかった! 何というか、ゴール前でのクロスの上げ方で、相手を試してる感じがありましたね。

“この事件を終結させるのは自分しかいないのだという思いで、◯◯は◯◯◯の扉を開けた。”

回想の中で時系列のランフリーは解き放たれるが、やがてやさしく回収される。
そんな時系列の、優しい惑わし操作は、確かにあの “大きなトリック” をぼやかすのに効いた。
(あからさまに言っちゃうと、、 目につく冗長部分が、、 いや、やっぱり言いません。)
解き明かされる “精神分析” は、その意外な角度の故に、相当の熱さと、その後日談そそのかしの余力とを持っていた。
誰が誰を騙したか。 誰のために。

「なぜ、今になって父親に会いたくなったんだ?」

なるほど、そこで “冷静さ” をつぶしたってことか。
髪の毛の色が手掛かりになった。 そこは確かにリスクだったね。(他にも色んなパターン、大喜利風に考えちゃいますよね、あんまり引っ張るとネタバレ一直線だけど)
ヒール役の、がたついて冷たいバトンタッチは目を引いたね。 ただ、その強力な二人の悪行晴れ舞台と顚末がなんだか、モニャモニャと紛れて終わったのは、やはりミステリ上のツブシが足りないと言うべきかも知れない。

なーんだか誰かがこのあと自殺しそうないーやーな予感の流れとか、心が乱れたねえ。
同じ読みの漢字を敢えて使い分ける、心が動かされる一文もあったねえ。
折角の渋い隠喩が、妙に硬く説明的だったりする所があったけど、いいんですよ、もう。

まだらボケならぬ ”まだら” 信頼出来ない語り手と、(行動はともかく)叙述的には信頼出来そうな語り手。
盛りだくさんなミステリ要素、恋愛要素、人間ドラマ要素。 拘束力の強いミスリード。
大真相のドロップ・ザ・ボム地点は、二つの意味で、何処になるのだろうかと興味津々。
或る “施設” での偶然の出遭いが、おそるべき人生物語を紡ぎ出すに至ったのだなあ。

微妙にミステリとしては足場が柔らかそうな予感も、ある地点でよぎった。 だが違った。 ラストクウォーター中盤に至ってもなお吠え盛る新たな謎と疑惑の胸突きは驀進力の鬼だ。
最後の最後で絞り出されるように溢れ出すミステリ渦中の熱過ぎる人間ドラマ、人間ドラマどうしのぶつかり合い、そのもたらす震動と、降り始める切ないダイヤモンドダスト。

「よく覚えている。 井上靖の 『氷壁』 だ」

回想、夢、想像、過去、現在。
過去から未来へ、いやそれは違おう、現在から未来へ、そして、現在から現在へ、だ。 (← 正しいか?)

真相暴露の核心部分で唐突に沁み渡った本格/新本格心には悪い違和感を少しばかり背負わせてもらったが、たいした事ではない。
前半あたりは、ミステリの様式をトイチで借りた人間模様ドラマかと思って読んでたんだけど、後半の途中から、これが実は逆で、人間ドラマの心をトゴで借りた、覚悟の決まったミステリ小説である事が分かる。

何しろ、二つのメイントリックスが、どちらも熱過ぎるのだ!!
が、その行為の重さと、もたらされる効果のドラマチックな光映えとのコントラストを思うと、やはりメイントリック2(アイデアの論理・時系列的には、そっちが2 ..?)に持って行かれるかな。
いくつもの堂々伏線、ちょっと笑えるやら泣けるやら、参ったなあ。
最後に、或る行為を断罪するところ(ここ重要)まで含めて、素晴らしい結末だ。
実務的フォロー、心理的フォローも、想像させる部分含め、細やかだ。

「そうだ。 君のお父さんのことは俺がはっきりさせる。 それまで時間をくれ」


これ言っちゃうと、ミステリ神経の鋭い人にはネタバレ・ニアミスになるかも知れないが ・・・・・・・・ 人気映画 「ニュー・なんとか・かんとか」 エンディングの流儀、または原理で ◯◯◯◯◯(≒◯◯◯◯)に残された "◯◯の◯" が一気に◯を◯◯◯ ・・・ なんて妄想も走ったけれど、そっちへの展開にはならなかったね。 それでも、最後に明かされた "◯◯の◯" が見せる風景は前述の妄想にほど近い方向を向いていたし、それを踏まえてのラストセンテンスでは、映画のラストシーンのようなヴィジュアルが一気にあふれ出た。 語り草だよねえ。

やっぱり、あの映画にインスパイアされたエンディング、というかメイントリックの明かし方なのではないか、などと思ってしまいますねえ。



最後に、これはちょっと流石にネタバレ火遊びが過ぎるかも知れないけれど ・・・ RPGのアテレコを担当する声優さんは腕の筋力が発達するそうですねえ ・・

もう一つ、時々目にするあの話題、◯◯◯の某サービスね、これは流石に(本作のトリックはそれに決定的ヒネリが加えられているとは言え)核心突き過ぎなので、伏字を使わせていただきました。

それと、あの事件の真相、まさか某物議作の ・・・ いえなに、流石にもう言えませんや。

No.1 6点 yoneppi 2012/03/24 14:54
ご都合主義の箇所もあるけれど良い構成。
手紙の保存がちょっと心配。


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